増税の夜明け、税理士バブルの幕開け

27年1月。
増税が予定されている税金があります。
ちなみに、消費税ではありません。
23年の税制改正では廃案となり、24年の税制改正では政局優先のために見送りとなる。
そう、相続税です。
実際に27年1月からの増税が実現するかは現時点で不明ですが、25年、26年、27年の税制改正と3回の機会があります。
政権が変わっても、財務省が基本路線として決めている増税のため、既にカウントダウンが始まっている点では消費税と変わりません。
相続税の発生が予定されている方、準備は進めていらっしゃいますか?
というのも、相続税ほど“取り扱い注意”の税金も珍しいのです。
毎月源泉徴収される給与所得税や住民税、年に一回ある法人税や個人確定申告所得税とは異なり、多い方でも一生に2回程度の経験(つまり両親からの相続)。
そのため、対策が後回しにされる税金の筆頭格です。
そして、実際に相続税を突き付けられたときに驚くというのがお決まりのパターン。
また、税理士によって相続税の額が変わりやすいというのも特徴です。
「あなたの会社の法人税を取り戻します!」
という税理士はもともと見かけませんが、
「あなたの相続税を取り戻します!」
という税理士が多いという事実はあまり知られていません。
それだけ専門性が高い税金であり、どの税理士にも気軽に頼んでよいものではありません。
そうであるにもかかわらず、『大相続税時代』の夜明けは間近に迫っています。
過払い利息返還請求バブルに踊った弁護士や司法書士を羨んでいた税理士が、手ぐすね引いて待ち構えているのが『大相続税時代』。
しかも、相続税に弱い税理士ほど、「増税」に期待しています・・・。
普段扱わない仕事の売上げが見込めますから。
では、どうするのがよいのか?
相続税は、まず相続が発生した時点で勝負の半分が決まり、税理士を選択した時点で残りの半分が決まります。
つまり、相続が発生する前に各財産に対する基本方針を決めて対策を行い、税理士は事前に選択しておくというスタンスが必要です。
それでもご心配であれば、複数の税理士にセカンドオピニオンを依頼するというのも有効です。
結局は『事前準備』という一言につきてしまいますが、これ以外ないのです。
先程、相続税の還付ビジネスがあるとお伝えしましたが、還付で取り戻せても30%から50%近くを成功報酬で取られてしまいます。
事前に準備しておけば、税金も成功報酬もムダに取られる必要がありません。
それが相続税という税金の世界です。
とはいえ、27年から増税が“予定”されている相続税に対して、なぜ今このようなことをお伝えするのか?
それは、増税が決まってからの事前準備と今からの事前準備では、相続税の額も変わってくるから。
これもシンプルな結論です。
また、相続財産の中でも特に注意をしなければならないのが、『不動産』と『中小企業の自社株』になります。
理由は、皆さんお察しのとおり以下の二つです。
・換金が困難
・評価額が専門家によって変わりやすい
逆を言うと、事前対策を行うべきなのもこれらの資産ということになります。
当法人では、セカンドオピニオンで相続に対してのご相談も承っておりますが、あくまで自らご相談いただいた方々に対してのみにしか、この事実をお伝えできません。
とはいえ、このまま増税を待っていてよいのかというジレンマもありました・・・。
そこで、ひとまず当法人では、近年相談が多い中小企業の自社株について、専門窓口を設けることにします。
もし気になるようであれば、お申込みください。
事前対策の第一歩です。
https://www.aaps.jp/ltr/assessment.html
来るべき『大相続税時代』・・・。
電車の中吊りに、『相続税申告 1万円から!』、『過払い相続税の還付請求を行います!』という文字が並ぶような、税理士がそのような形で収益を上げるような時代を目にしたくはありません。
そうなってしまっては、税理士が専門家という時代は終わるということですから。

逆選択とリストラ

『有期契約社員が同じ職場で5年を超えて働いた場合、本人が希望したら、正社員にしなければならない。』
このような改正案が盛り込まれた労働契約法が閣議決定されたことを受けて、経済評論家である池田信夫氏は自身のブログにおいて次のように語っています。
「これがどういう結果をもたらすかは中学生でもわかるだろう。企業は契約労働者を4年11か月で雇い止めするだけだ。」
政府は、このような改正をすることで、社会的立場の弱い契約社員が減って正社員が増え、“皆が安心して暮らせる社会の構築”を意図しているはずですが、おそらく結果は異なったものとなるでしょう。
5年経ったら正社員として雇用しなければならない(=人件費の増加を招く)ため、同氏の指摘するとおり、企業は4年11か月で雇い止めをし、契約社員はまた1から職を探さなければならなくなる・・・。
つまり、政府が意図する“皆が安心して暮らせる社会”とは、真逆の社会が構築されてしまうことになります。
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このように、主宰者の求めていることとは真逆の結果を生み出す代表的な例として、『保険業界における逆選択』が挙げられます。
※※※※※※※
保険会社××生命は、(適正な利益を確保するために)保険料を引き上げました。
健康体のAさんは、そんなに高い保険料を払ってまで保険に入る必要がないため、××生命の保険を解約します。
残るのは高い保険料を払っても元がとれると考えている不健康体のBさんと、超不健康体のCさんです。
××生命は不健康体の人だけが契約者として残ったため、保険金を支払う事由が増えることに備え、(適正な利益を確保するために)また保険料を引き上げます。
不健康体のBさんは、「そんなに保険料が上がるなら・・・」と思い、××生命の保険を解約します。
その結果、最後に残るのは超不健康体のCさんです。
当然ながらCさんは、保険金支払い事由の発生する可能性が最も高い、××生命にとっては招かざる客です。
つまり、保険会社は、適正な利益を確保しようとすることで(=従業員の生活を守る、社会に貢献する)、最も集めたくない客だけを集めてしまう、というジレンマに陥ってしまうのです。
(現在は、加入時の告知や医師の診断等で保険料が調整されるため、かなり是正されてきています。)
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経営者である皆さんは、このような社会的仕組みを理解し、経営へと応用していかなければなりません。
※※※※※※※
○△株式会社のCEOである甲さんは、利益を確保するために、人件費を抑えることにしました。
甲さんは、特定の人をリストラすると恨まれそうで怖かったため、皆の給料を一律10%カットしました。
「み、みんなで、痛みに耐えて、不況を乗り切ろう・・・!」
優秀な社員である乙さん、丙さんは、給料カットに腹を立てて退職しました。
乙さん、丙さんは優秀な社員であるため、再就職先も引く手数多。
退職することになんの躊躇もありませんでした。
優秀な社員を失った○△株式会社は、売り上げが急降下・・・。人件費を抑えたにも関わらず、大赤字へと転落してしまいました。
自らの経営判断が意図せざる結果を招いたことで、甲さんは大変後悔しました。
「一律10%カットなどせずに、勇気を出して、問題のある社員からリストラすればよかった・・・」
このようにして、○△株式会社からは辞めて欲しくない優秀な社員が去り、他に行くあてのない(=痛みに耐えるしかない)社員だけが居座り続ける結果となってしまいました。
これはもちろんフィクションです。
しかしながら、このように手法を一つ間違えると、集めたいモノが集まらず、逆に、集めたくないモノが集まることになってしまいますので注意しましょう。

請求書ひとつで

『○×修繕工事一式 150万円』
『△◎支援コンサルティング料 300万円』
『☆★制作費 60万円』
「当然、全額経費でしょう!」
皆様はそうお考えかもしれません。
しかし、税理士がこのような請求書を見ると・・・。
「これじゃ内容が分からないよ。とりあえず、○年間に渡って費用にしよう」
と、本来全額経費が可能なものも、その請求明細の曖昧さから保守的に処理してしまう事があります。
もちろん、内容すら確認しないまま全額経費として処理してしまい、税務調査時に問題になる事も少なくありません。
「社長、これは全額経費にならないものでした。修正申告が必要です・・・」
この時点で、経営者の方が駆け込むように当社にご相談に来られ、
「税理士が税務署寄りなんです!」
と訴えます。
また、最近顧問契約をさせていただいたお客様でこんな事がありました。
「社長、この保証金というのが長年資産計上されていましたが、返金されないものなので経費処理出来ます。そもそも保証金ではありませんので。これをきちんと処理していれば今までに税金が100万円減っていました」
経費処理出来るものを処理せず、処理出来ないものを処理してしまう・・・。
経費処理出来るか出来ないかはちょっと調べれば分かることですし、分からなければその支払先へ直接問い合わせるのが当然です。
それすら行わない職務怠慢な税理士が悪いのは間違いありません。
従って、比較的金額が大きいものや、抽象性が高い支払いを検討している場合、事前に税理士に問い合わせを行う癖を身につける事が大事です。
事前に相談すれば流石に調べますから。
事前に相談してもおかしな事を言うようであれば、当社にご相談ください(笑)
と同時に、支払先にもっと明確な請求書を出していただく事も大事です。
100万も200万円も支払うのに、明細一行の請求書って・・・。
「これじゃ、税理士さんが処理出来ないって言っています」
これくらいは支払先に求めてもいいのではないでしょうか。
一概には言えませんが、内訳明細が細かいほど経費に落とせる割合が高くなる傾向があります。
例えば、100万円を支払うにしても、明細一行だと全額資産計上しがちなのが(してしまう税理士が悪いのですが・・・)、内訳明細が詳細に分かれていれば、50万円が経費処理出来て、50万円が資産計上になるという事は少なくありません。
また、契約期間がいたずらに長い場合も気をつけなければなりません。
例えば、支払ってから本来3ヶ月の契約期間で終わってしまう内容であるにもかかわらず、相手先が念のために5ヶ月の契約期間を取ってきたとします。
この期間が決算月をまたぐような場合、またいだ後の残りの期間分は経費処理出来ません。
そもそも、それが納品を伴う支払いの場合、納品が終わるまで全額経費に落とせません。
このように、期間が設定されている支払いは、決算日までに取引が終わるように設定していただくのがポイントです。
その発注の担当者が経営者や経理担当者とは限らないので、関係する社員にもこのようなポイントは事前に伝えておく必要があります。
「全額経費にならないなら、あえて今やらなかったのに・・・」
「税理士が言ってくれたら、詳細な内訳が記載されている請求書をもらったのに・・・」
最近、このような相談が多く、我々も曖昧な内容の請求書を多く目にします。
より多くの支払い額を経費処理するためには、正確な情報が必要であるとともに、経費処理する上での要件を充たした取引を行わなければなりません。
当然、そのような請求書を自社で発行していないかも確認するべきでしょう。
「あの会社へ100万円も払ったのに、経費に落ちなかった・・・」
と、変に恨まれても困りますから。。。

ホントに目立たない消費税の改正がありましたのでご注意を。

昨年末に公表された税制改正、近年あまり見なかったような、ド派手なコンテンツになっており、トップ(特に官房長官)の影響からか、ちょっと赤みを帯びて見えます。
再分配、再分配、再分配、再分配、再分配、再分配・・・。
(まぁ、政治主導の真逆をつき進んでいるわけですから、影響力なんて気のせいなのでしょうが・・・)
今回の改正は、唯一の減税策である『法人税率の引き下げ』の穴埋めのために、他の税目、特に個人関係での増税策が並びました。
「法人税が高い、高い、と経済界がうるさいから、日本国民の皆さま(特にお金持ちの方々)『ご協力』をお願いします。」が今回のコンセプトです。
そして、この『ご協力』は来年以降、大多数の日本国民の皆さまへと移行していくことになるでしょう。
さて、しばらく巷の話題から遠ざかっている感のある、消費税率アップについてはどうだったのでしょうか?
「社会保障制度の抜本改革と併せて、早急に検討を行ってまいります。」
と、何度も聞いたような記述はありましたが、具体的な話はうたわれませんでした。
今の民主党政権で、消費税率アップを掲げようものなら、即座に吹っ飛ぶことになるでしょうから、当然と言えば当然です。
(ここでは、マニフェスト通り、政治主導を存分に発揮したわけです。)
しかし、消費税について何もなかったわけではありません。
ここで、タイトルに帰還するわけです。
「ホントに目立たない消費税の改正がありましたのでご注意を。」
事業者が、消費税を納める義務があるか、ないか、は前々年度の売上高(※)が1千万円を超えているかどうか、で判断されます。
(※消費税法上の課税売上高ということになりますが、今回は簡易的に売上高とします)
つまり、開業して1年目、2年目は、そもそも前々年自体が存在しないわけですから、売上高がどのくらいあろうと、消費税を納める義務はありません。
(法人であれば、資本金1,000万円未満のケースに限ります)
しかし、今回の改正で話が変わってきたのです。
判断材料とされるのが前々年だけではなく、
『前年の上期半年で、売上高が1,000万円を超えている事業者については、消費税の納税義務を課す。』
ということになったのです。
0からスタートした開業の場合、例えどれほど精巧に経営計画を立てていたとしても、なかなか思い通りには行かず、売上げが伸び悩むこともあるでしょう。
その場合には、前年の上期で1,000万円超の売上高があるかないかという話は、さほど問題ではないのかもしれません。
しかし、『法人成り』であれば話は別です。
個人事業として開業したが、経営も軌道に乗ってきたので、そろそろ法人組織にしようか。これが、いわゆる『法人成り』です。
従来の制度であれば、法人成りした1年目・2年目は、法人としての前々年が存在しないため、丸々2年間は、消費税の納税義務がありませんでした。
しかし、今回の改正により、(法人成り1年目は、前年が存在しないため、従来と変わらず納税義務はないのですが、)2年目は前年の上期半年の売上高で判定されますので、もしもその売上高が1,000万円を超えていれば、消費税を納めなければならなくなってしまいます。
例えば、売上高1億円で、半分くらいが課税仕入で飛ばせるような業態だった場合、年間の消費税は250万円です。
売上高1億円の会社にとって、キャッシュアウトで250万円のウェイトはかなり大きいです。
この改正は、平成24年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
つまり、法人成り2年目を、平成24年10月1日前に設定することで、今までどおり2年間の消費税免除を受けることができます。
具体的には、法人成りを平成23年9月に行い、平成23年9月~平成24年8月を第1期、平成24年9月~平成25年8月を第2期、と設定することがベストの選択です。
あくまでも現時点では大綱レベル(見込み)のため、実際に法施行がされる4月くらいから法人成りシミュレーションを組むことになり、また、今回の改正による給与所得控除の制限など、判断要素が増えたことで、より緻密なシミュレーションが要求されます。
今回の消費税の話は、他の改正項目があまりにも眩しすぎて、道端に落ちている石ころ程度にしか感じないかもしれませんが、関係のある方々にとって見れば、とても大きなものであり、その石ころにつまずいたら大怪我をします。
長年、法人成りについて気になっていたが、“重要だけど緊急ではない”事項として位置づけてきた個人事業者の方々、ついに、決断をするその時がきたのかもしれません。
お金持ちの方々の『ご協力』のおかげで法人税率も下がることですし。

いろいろなものの賞味期限が終わり始めた

中学受験で、子どもを有名中学に
入学させて、そのまま大学まで
トコロテン・・という方法は、
都内に暮らす中流以上の家庭が考える
有効な戦略だった。
しかし、今、この戦略で
早稲田大学系の中学校に入学し
早稲田大学に入ると
就職がどうなるかはわからない。
ここのところの就職難で明らかになってきた
事実の一つは、
卒業生が1000人以上、いわゆるマンモス大学
の卒業生の就職率が落ちてきていることである。
小粒の大学では、
就職サポートも充実しているが、
大きな大学では、サポートを享受できない
学生が多く出てしまうらしい。
もちろん、
早稲田大学の中にも
就職率の良い学部はあるし
この有名中学入学コースをたどって
別の大学に入る手もある。
また、小さい大学だから、
良いというわけでもない。
しかし、
今まで王道だった戦略の
賞味期限は終わったと見てよい。
相続対策という言葉がある。
どうやって財産を守るかの戦略が
この相続対策になる。
そして、相続対策における
目玉商品的な対策の
賞味期限も一昨年に終わりを告げられた。
そして、
昨年の税制改正大綱で、
さらに、土俵際に追い詰められてしまった感がある。
昨年は、出てこなかったが、
国税庁には、相続税の抜本改正のアイデアもあるので、
今後も追い詰められていく可能性は高い。
ぶっちゃけ、相続対策全般の賞味期限も
終わってしまうかもしれないのだ。
そして・・・・・・・・。
・・と、あらゆる対策、戦略の賞味期限が
終わりを告げようとしている
時代が変われば、政策も変わり、
私たちの対応策もかわる。
当たり前のことである。
その対応策の変更が目白押しだ。
私たちの頭は、
自分でも情けないくらい固くできていて、
賞味期限切れのものにこだわりたい気持ちもあるけれど、
ここは、一度、全てをゼロにして組み立て直しの時期である。
いろいろな意味で、難しい時代に入った・・。

申告もれが多かったそうです

もちろん、法人の税務調査のお話。
国税庁から、平成21年度の法人税等の調査実績が公表されました。
過去20年間で、二番目に多い申告もれ所得金額です。
その額は、なんと2兆493億円!
平成20年度の申告もれ所得金額は、1兆3,255億円と過去20年間で最低でした。
これはサブプライム問題から端を発したリーマンショック前後までの期間と重なるので、当然と言えば当然かもしれません。
ちなみに、平成21年度の調査件数は、前年よりも4.5%低い13万9千件(法人数全体の約5.3%)。
これは、国税庁の下記アナウンスから意図が読み取れます。
「平成21事務年度における法人税等の調査については、大口・悪質な不正計算が想定される事案に加え、社会・経済情勢の変化を踏まえつつ、無申告法人、海外取引法人、公益法人等をはじめとする波及効果の高い事案に取り組みました」
“取れるところから取る!”
国税庁は選択と集中により、効率の良い調査を行ったという事になります。
そして、気になる点は、法人全体の申告所得もれの対前年増加額が7,238億円であるのに対し、資本金1億円以上の法人(以下、「大企業」)の申告所得もれの対前年増加額は7,555億円だったという事です。
つまり、資本金1億円未満の法人(以下、「中小企業」)の調査においては、過去最低であった平成20年度よりも、更に申告もれ所得金額が減少しました。
また、平成21年度の赤字企業の割合は74.5%で、平成20年度の71%(平成19年度67%)より悪化しています。
という事は、中小企業の調査でも・・・
“取れるところから取る!”
という事になります。
当然、企業努力により黒字を確保している中小企業は、税務調査の頻度が多くなるのは間違いありません。
「ご注意ください!」
というのもおかしな話ですが、
実際、セカンドオピニオンで、黒字企業の税務調査でのご相談が非常に増えています。
税務調査一発でガタつく企業も意外と多く、その後に税理士と仲違いされます。
「何もやましい事はない!」
という経営者の方でも、“税務調査”と聞くと、一瞬ギクッとなるのは人の理・・・。
しかも、税理士による確認もれや判断ミスは、企業側ではどうにもなりません。
これは、近年、企業取引が非常に複雑化しているにもかかわらず、年配の税理士や経験が浅い税理士が、企業の動きについて行けないという事を意味しています。
セカンドオピニオンでご相談が多いのも、このような税理士が顧問の企業様です。
とはいえ、税務調査を怖がる必要は一切ありません。
また、怖がるよりも積極的に税務上の守りを固めてください。
積極的にというのは、保守的な税理士が好きな“無難すぎる”守りではなく、税制上の制度を使い倒して、無駄な税金を払わなくするという事です。
増税に、減税・・・。
廃止された税制に、新しく始まる税制・・・。
グループ法人税制という、関連会社がある企業は見逃せない制度も始まりました。
民主党政権になって、企業を取り巻く税制も大混乱する気配が漂いますが、この大混乱に巻き込まれてしまっては、無駄なエネルギーを使わせられるだけ。
一部の業界では景気の回復傾向も見られますが、補助金を含め税制上の恩恵が消えた瞬間に流れは変わるかもしれません。
さあ、今年よりも更に荒れそうな平成23年度の開始は目の前に来ています。
攻めも守りもスタートダッシュが成功するかは、年末年始の一番頭が切り替わる時期の判断に掛っているのではないでしょうか。
体は休めても、頭はフル回転の年末年始を迎えましょう。

移動年計の効用

先般、お客様から、既存客数や既存客売上高が
低下しているという相談がありました。
そして、過去3年間の既存客数などの統計を頂きました。
確かに、頂いた数値を検証していると、
数値は低下傾向にあるように思えましたが、
私は、移動年計のグラフを項目ごとに作るようにお願いしました。
移動年計については、過去の私の本で説明していますし、
今度ダイヤモンド社から出版される本でも詳しく解説をしていますので参照いただければと思いますが、
簡単に言ってしまうと、
毎日または毎月、1年間の売上げや顧客数を見ていく方法です。
たとえば、
2010年11月の数値を見るとすると
一般的には、11月単月の数値や期首から11月までの累計の数値を計測するのが一般的です。
移動年計では、「年計」というように、
2009年12月から2010年11月の合計の数値を見ていきます。
つまり、決算書の売上高の数値を毎月見ていくわけです。
こうすると、季節要因などが排除できて、
長期的な傾向が見えてきます。
また、2年合計を半分に割って、
1年合計と比較することで、
短期、長期の傾向値比較も可能です。
毎月、1年間の合計を集計していくということは、
それほど数値に大きな変動がないように
思うかもしれませんが、
実際は、かなり大きく揺れるのが一般的です。
つまり、その「揺れ」が
分析に値する事象です。
相談いただいた方の年計グラフを見ていても、
グラフが低下トレンドになる時と
上昇トレンドになる時が
明確に分かれていました。
毎月の一年計を出しているだけなのですが、
こうした傾向が現れるのが中小企業です。
つまり、
企業のちょっとした動きの違いが
敏感に繁栄されているのです。
そして、
それぞれのトレンドについて
その時何があったかを追いかけていきます。
こうすることで、
意外な発見があります。
ぜひとも試してみてください。
2010年も、もう少しで終わります。
小売業の方々は、これからクリスマス、年末商戦。
特に、インターネットでは、
年々、クリスマス商戦が盛り上がっていますので、
息の抜けないところです。
小売業や飲食業以外の方々は、
そろそろ来年の戦術などの整理の時期だと思いますので、
年末にでも、年計分析を実行してみてください。
もちろん、年末が忙しい小売業などの方々は、
商戦が終わった以後にぜひとも実行してみてください。

会計は、思想である

ダイヤモンド社から2011年9月に出版した本は、久しぶりに会計の本です。
この本では、最後の章で、小さな架空の物語を書きました。
会計を知らない家族が、ビジネスをはじめ、ライバルの出現と共に会計に翻弄されていくお話です。
この架空の物語で、何を明らかにしようとしたかを一言で言えば、経営には、思想が必要だということかもしれません。
そして、経営に必要な思想はいろいろあるけれど、会計も思想であると言いたかったように思います。
実際、この本の第二章では、思想としての会計をテーマにしています。
そして、次のような文章ではじめています。
******************************
第二章は、一般的な会計の本の文脈から考えると少し特殊なトーンが
あるもしれません。
なぜならば、これから「会計」という道具を使う「思想」について考えて
いこうとしているからです。
そして、会計を利用するひとつの「思想」から会計とは何かを明らかに
してみようと思います。
会計の思想を語るというのは少し生意気かもしれません。ここで言う
「思想」は会計専門の学者や官僚が法律などを策定するときに拠り
どころとするようなものではありません。
中小企業経営者が、会計という道具を利用する際に必要な「思想」です。
「思想」などと大上段に構えることなく、単に「アイデア」と言い切ることも
できないこともありませんが、あくまでも「アイデア」とは違います。
ひとつの「思想」というものは、誰もが受け入れられるものではありません。
また、思考に飛躍がある可能性もあります。しかし、現在の中小企業の
会計に足りないものは「思想」だと思うのです。「思想」がないために、
混乱しているのです。
企業経営を上手に運営している経営者には、思想があります。通常、
そうした経営者の経営における思想は巷間に多く流布していますが、
彼らには会計に対しても思想があります。そうしたことを明らかにし
ながら、目指すべき会計=思想を考えていきます。
******************************
この考えは大きな分岐点になります。
会計を単なる技術と考えている限り、会計は武器になることはありません。
もちろん、多少はなるでしょうが、限界があるのです。
会計の専門家が、時折、おかしなアドバイスをしてしまうのは、彼らが教科書通りのことをするからです。
つまり、技術としての会計に焦点を当ててしまうところに、失敗があります。
しかし、会計を思想と考えてみると、まったく違う世界が現れます。そして、いろいろな数値管理の手法が浮かんできます。
経営に占める会計の役割は数パーセントとおっしゃる方もいますが、それは大きく間違っています。
そういう方は、単なる技術としての会計について言っている。つまり、会計が何かをわかっていないのです。おそらく、会計は分析レベルのものと思っているのです。
しかし、思想としての会計を考えるならば、その位置づけは、40%以上は占める重要なものに変わってきます。
思想としての会計を考える時、別に私の新著を読んでいただく必要はありません。
自分は、どういう数字にしたいのか・・が明確ならば、それはもう思想です。
それを単なる希望とか目標と思うからいけないのです。
ちょっとした言葉の違いですが、このちょっとした言葉の違いはとても大きいと思います。

タバコ増税にみる参照価格

「いっそのこと、1,000円になれば禁煙するのに・・・」
喫煙者から良く聞こえてくるセリフです。
10月1日、タバコ税の引き上げにともない、タバコの値段が上がりました。
過去10年間で、3度の増税がありましたが、いずれも値上げとして反映されたのは20円程度。
今回のように100円以上の値上げは初めてのことで、業界関係者の不安は募る一方です・・・。
タバコの値段と禁煙意思との関係について、京都大学の依田教授が興味深い研究を行っています。
2007年に発表された『禁煙意思に関するコンジョイント分析』は、今回の値上げに際し、政府税調も参考にしたとか、してないとか。
調査に際し、研究チームは喫煙者に「タバコの価格がいくらになったら禁煙しますか?」というアンケートを実施しました。
結果はつぎのとおりです。

縦軸は喫煙継続率、つまり、「その値段になってもタバコを吸います。」という数値です。また、3本のグラフは回答者のニコチン依存度を示し、依存度別に価格と禁煙意思の相関関係を測っています。
当時の価格300円でも継続率が100%を下回っているのは、「価格が変わらなくても、いつでも止めたいと思っている・・・」という意思の表れです。
お決まりのセリフ、「いっそのこと、1,000円になれば・・・」を検証してみると、確かに1,000円になれば、依存度にかかわらず、ほぼすべての人が禁煙を試みるようです。
さて、今回の値上げ水準である400円を見てみましょう。
依存度の高い人の約10%、中位の人の約20%、低い人の約35%がタバコをやめようとします。
実際には喫煙者のニコチン依存度が平均的に分布しているわけではない、という前提はありますが、仮に単純平均してみると、全体の22%、およそ5人に1人がタバコをやめようとするはずです。
・・・でも、あれ?皆さんも周りを見渡してみて下さい。5人に1人もいますか?タバコをやめようとした人。
ニコチンには依存性がありますので、実際に禁煙した、ではなく、禁煙を試みた、で構いません。それでも私の実感としては、10人に1人いるかどうか・・・。
京都大学の研究結果とのズレはどこから生まれたのでしょうか?
違いは、今回の値上げについて、いくらを『参照点』として認識しているか、というところにあります。
消費者はモノの価格を判断する際に、基準となる『参照点』からの距離で価格の良し悪しを判断しています。
そのモノがもたらす有用性・経済的価値を冷静に判断し、0地点から価格を判断することなんてあり得ません。
京都大学の研究において、対象者は、当時の価格300円を基準に価格を判断しました。
今回の値上げでも、300円を基準に判断したはず・・・、なのですが、値上げに至るまでのノイズがかなりありました。
平成22年度税制改正に向けて、当時の長妻厚労相はテレビ放送で「600円をめどに」とコメントしていましたし、他の方面からは「欧米並みの1,000円を基準に」との声もありました。
喫煙者は無意識的に、これらの高価格帯を一度は覚悟したはずです。
それを基準にすれば、今回の400円なんてたいしたことはありません。
・・・少し気になりませんか?
そういった雑音が自然発生的に起こったものなのか、意図的に起こされたものなのか。
政府は、今回の値上げについて「国民の健康増進のため」との御旗を掲げていますが、税収が厳しいのは周知のとおり。ホンネを言ってしまえば、税収を確保したかったはずです。
(ちなみに依田教授の研究によると、タバコ税の増加と、喫煙者の減少により、タバコ税収自体が減少に転じるクロスポイントは600円と予測されています。)
また、JTにしても、
「値上げ反対!400円反対!」と言って400円に落ち着くよりも、
「値上げ反対!1,000円反対!」と言って400円に落ちついた方がいいわけです。
・・・真偽のほどはわかりませんが、・・・こういったノイズ、いろいろなところで使えますよね。

税法だけで考えるのは止めよう

先般、当社のコンサルティングのお客様に
税務調査が入りました。
そして、ある処理が不正と判断され、
3000万円ほどの納税を請求されました。
そして、その方の顧問税理士も、
税務署同様、処理の間違いを認めて
払うべきだと主張。
そのお客様は、納得できず、
当社の『財務プライベート・コンセント』という
税理士セカンドオピニオンのサービスを使い
相談にきました。
その方の話を聞いて
私が出した結論は、
税務署の言うことは聞く必要がない。
こちらの主張を言い切るべきということでした。
そして、
どのような主張をするべきかを
伝授しました。
結果は、納税の必要なし。
こちらの意見が無事通りました。
その方の顧問税理士さんに対する
不信を残して、税務調査は無事終了しました。
さて、この取引の認定では何に問題があったのでしょう?
それを一言で言うと、
税務署と顧問税理士さんは、税務だけから考え、
私は、税務で考えず、
民法で考えた。これだけです。
取引を、民法の原則で
俯瞰すれば、その目的も形態も明かで、
課税になる要件など最初からどこにもなかったのです。
その「最初からどこにもなかった事象」に3000万円の
納付を要求してきたのです。
それも、悪気があったわけではありません。
なぜならば、顧問税理士さんもその意見を受け入れたのですから・・・・。
しかし、
誠実に、税法だけを見て判断した・・というのでは困ります。
税務の現場では、時々、こうした税法の拡大解釈が起こります。
そして、それを阻止すべき税理士さんも民法をご存じでないと
税務署の言い分が正しいと判断してしまうようです。
私たちが毎日行う取引は、
民法、商法に基づいて行っていることになっています。
もちろん、そんなことを気にする人はいません。
こうした法律は、争いになったときに、
初めて、その存在がクローズアップされるからです。
しかし、主張が物別れになった場合、
こうした法律の存在感が大きくなります。
ですから、
民法、商法は私たちにとって大事な法律です。
しかし、税理士は、税務の専門家であって、
こうした法律は守備範囲ではありません。
それが、時々、問題を起こすことがあるのです。
この問題もそうしたケースでした。
もし、ご自分の生活感覚と税務の主張に
乖離がある場合、
このように民法や商法から考えてみてください。
自分の違和感が正しいという証明になることもありますから・・。