「NISA」(ニーサ)には罠がいっぱい?!

年間100万円までの投資によるリターン(売却益・配当)が5年間はすべて非課税!!
これだけ聞くと、なんとも耳を疑いたくなるようなオイシイ話ですが、果たして本当なのでしょうか。最近テレビのCMでもよく耳にするこの「NISA」(ニーサ)ですが、実はテレビでは決して流さない「罠」がたくさん仕掛けられているのです。
そのご説明の前に、まずはこの制度の簡単な概要はこうです。
先日の10月1日より投資するための専用口座の開設の受付が始まりました。なお、実際の投資開始は来年の1月からとなります。
この制度は、平成26年~平成35年までの10年間限定の規定です。専用の口座内であれば、年間100万円までの元本に限り、以後5年間はその元本に対するリターン(配当・売却益)はすべて非課税となっています。適用期間が10年間ですので、最大で累計1,000万円までの投資が非課税枠で可能になります。また、毎年の100万円までの元本は5年間有効ですので、同時に持てる非課税枠は最大500万円ということになります。

出典:価格.com/マネー/NISA ホームページより
トータルでこのくらいの金額の話になってくると、「なんだか、とてもオイシイかも!」なんて気がしてきます。
しかし、ここで注意が必要です。
非課税!非課税!が表立っていますが、実はまだあまり知られていない罠がたくさん存在するのです。
(1)口座内で新規で購入した株式のみが有効。既に所有している株式を使うことはできない
・・・現金から新規で購入(投資)したものだけが非課税の対象になります。
(2)年間100万円の限度額は、5年の間に売却してしまえばそれで終了。再度その枠を使うことはできない
・・・要するに、最初に購入した銘柄を最大5年間は非課税枠で持ち続けることができ、かつ、5年の間に売却してしまったモノはそれで非課税制度の適用が終了することになります。
そしてここからが、さらに大きな罠(特徴)になります。
(3)リターンは非課税になるが、譲渡損もなかったものとされる
・・・通常、特定口座などで売買した株式の譲渡損は、他の株式の譲渡益等と通算ができますし、また、損失を3年間繰り越せるなどの規定が存在しています。しかし、「NISA」では売却益も売却損もなかったものとみなされてしまうので、売価益が見込まれる(腕がある)場合でないと、実は素人には難しい、という側面があります。
(4)「NISA」専用口座で5年が経過すると、その株式は特定口座等へ移管されることになるが、その際には、移管時の時価を取得価額として移管されるので、その後売却した時に、本来は売却損になるものが売却益として課税されるケースがある
・・・図で表すとこうなります。

出典:価格.com/マネー/NISA ホームページより
結果的に、当初100万円で取得した株式が80万円で売却したものの、移管時の50万円を取得価額とみなされているため、30万円の売却益が課税対象となってしまうのです。これでは本末転倒です・・・
もちろん、その反対の場合にはメリットになります。移管時の時価が130万円で、その後120万円で売却した場合には、本来は20万円の売却益になり課税されるはずですが、移管時の130万円を取得価額とみなすので、10万円の売却損となり、他の譲渡益との通算や3年間の繰り越しなどが可能となるのです。
そもそもこの制度の最大の目的は、国民の持つタンス預金などの約1,500兆円超といわれる個人金融資産を、リスクマネー市場へ誘い出し、市場の活性化と経済成長を推し進めることにあります。
すなわち、「皆さんの預金をドンドン投資してください!その代わり、リターンは条件付きで非課税にしますよー、でもリスクは自己責任でね!」ということです。
当然ですが、損失の補てんなどは誰もしてくれません。
元本の100万円限度、というところにも、実はリスクの高いところへ誘い出そうとしていることが顕著に表れているように感じます。きっと、紙くずになってしまっても、あまり問題にならないよう限度額を抑え、単年では効果が薄いので長期に分散させた、とも考えられるからです。
そもそも、100万円の元本で、かつ、売却したらその枠は終了、という内容で一体どれだけ非課税のリターンを得られるというのか疑問です。。。
私には、「国民には広~く、毎年100万円づつ損してもらうことで、少し経済の活性化に寄与してもらおう!」という政策としか思えません・・
さて、皆さんはどうお考えですか?
投資に自信のない人は手を出さない、あるいは、手堅い銘柄で5年間の配当狙い、などというのが賢明かな、そんな気がします・・・

その相続税対策、大丈夫ですか!?

「賃貸アパートを建てれば、相続財産の評価が下がって相続税対策になりますよ!家賃収入だって入ります!相続税の増税も決まっていますし、消費税だって上がります!賃貸アパート建てるなら今でしょ!」こんなセールストークがあちこちから聞こえてきそうです。
相続税対策を考えた事のある方であれば、1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「賃貸物件を建てれば、相続税が減る。」
このこと自体は決して間違っていません。しかし、不動産経営にかかる費用やリスクを十分検討せずに行うと、相続税の節税効果を打ち消す結末を迎えてしまうことも少なくないのです。
相続税も消費税も増税されることが決まった今、冒頭のような住宅メーカーのセールストークを聞き、不動産経営に乗り出そうと多くの方が考えているはずです。実際、住宅メーカーでは賃貸住宅の受注額がかなり増えているそうです。
しかし、節税対策のつもりが自らの首を絞めてしまうことのないよう、賃貸物件を建てることによる節税メリットと、そのリスクについて知っておきましょう。
繰り返しになりますが、賃貸物件を建てれば相続税が減る事は間違いありません。これは相続税における財産評価の方法による効果です。
例えば相続財産が2億円の現預金のみであった場合、その相続税評価額は額面通り2億円となります。これを子供2人が相続した場合の相続税は2500万円になります。
では、1億円で土地を買い、そこに1億円の賃貸アパートを建て、その土地建物を相続した場合はどうでしょうか。この場合、土地は「貸家建付地」建物は「貸家」として相続税評価額を減らすことができるのです。具体的な計算方法はここでは省略しますが、2億円で手にした土地建物について、場合によっては1億円程度までその相続税評価額を下げることもできるのです。そうすると、これを子供2人が相続した場合の相続税は350万円ほど。相続財産が現預金から土地と賃貸アパートに変わることで、節税額は2150万円となり、その効果の大きさが分かります。
これでだけの節税効果が期待でき、長期に渡って安定した家賃収入を得られるのであれば、この相続税対策は大成功です。こんな試算を見せつけられれば、その気にならないほうがおかしいかもしれません。しかし、現実はそううまくいくとは限りません。
まず、不動産経営にかかる費用は思った以上にかかります。固定資産税や管理費、入退去時の原状回復費用、賃借人を募集する広告費、さらに年数が経つにつれ多くの修繕費がかかるようになります。
そして不動産経営を行ううえで最も考えなければならないのは、家賃の下落や空室のリスクです。不動産経営を勧める住宅メーカー等の試算では、多くの場合その入居率は高く見積もられ、家賃も下がらない前提で予測されているため、安定した収益が得られると錯覚してしまいがちです。
しかし実際には一度空室になると、よほどの好立地でない限り、すぐには次の入居者がきまらないことも多く、また、近所に新築の似たような物件が建ってしまったような場合には賃料も下げざるを得ません。
先程の例では手持ちの現預金で賃貸不動産を購入したと仮定しましたが、これが借金をして購入した場合に家賃下落や空室のリスクにさらされると、賃貸収入では借金返済ができないといった事態に陥ります。中古の賃貸物件が数多く売りに出ているのを目の当たりすると、こうした事態に陥って、結局、賃貸不動産を手放さざるを得なくなる方が多く存在することが容易に想像できます。しかもその売却価格は、都内であれば別ですが新築時の半分以下になることも珍しくありません。
専門家の中には借金をして賃貸物件を購入し、不動産経営を行うことによる相続税対策を勧める者もいます。なぜなら、先程も申し上げたとおり、賃貸物件は相続税評価額を下げることができ、なおかつ、借金は債務として相続財産をマイナスすることができるからです。
しかし、こうした方法は目先の相続税を減らす効果を期待できることは確かですが、その後の不動産経営にかかる経費やリスクを正しく見積もらなければ単なる“ばくち”になってしまいます。みなさんご存知のように賭けごとは外れるのが常です。
こうした不動産経営による相続税対策を行う前提条件は納税資金があること、老後資金が十分にあること、賃貸需要が見込める土地をすでに所有していることなどがあげられます。
目の前の増税に翻弄されて、節税するつもりが資産を減らしただけだったなどという結果を招かない為にも、確かな知識を持つ信頼できる専門家を味方につけ、冷静な判断を下すことが重要です。

税理士と、自己防衛のコンプライアンス

税務調査の負担軽減、優良企業は頻度少なく
国税庁、租税回避対策に力点

という見出しで、8月下旬に日経新聞に掲載されていた記事を読んだ方も多いのではないでしょうか。
以前から国税庁が進めている大企業の税務コンプライアンスの維持・向上のために、「税務に関するコーポレートガバナンス確認書」を配り、下記の状況把握をしているというものです。
1.トップマネジメントの関与・指導状況
2.経理・監査部門の体制・機能の整備状況
3.内部牽制の働く税務・会計処理手続きの整備状況
4.税務に関する情報の社内への周知状況
5.不適切な行為に対するペナルティの適用状況
業界紙やセミナー等では以前より情報が出ていましたが、一般新聞でも出てきたということは、本格的に税務調査対象企業の選別を始めるということでしょう。
もちろん、まだ大企業レベルですが、中小企業においても書面添付の提出等により税務調査の対象先の絞り込みが行われていますから、この辺を意識していくのは中小企業の経営者にとっても重要なことだと考えます。
一概にはいえませんが、企業の税務コンプライアンスがしっかりしていれば、税務調査でも大きな問題が出る可能性は低くなるというのは、業界人の共通認識です。
さて、ここで中小企業の税務コンプライアンスといった場合はどうでしょう?
言葉は悪いですが、「えいっ! やー!!」でも十分通用してしまう泥臭い側面も有しているのが現実です。
皆さまも、少しは心当たりがあるのではないでしょうか・・・。
「コンプライアンス? 何それ? 適当にやっておいてくれればいいよ」
税理士がお客様にこんなことを言われてもおかしくない世界です。
従って、税務署は基本的に中小企業の経営者を疑ってかかるのです。
こういう世界だと税務署も認識していますから。
そういう意味では、税務にかぎらず、コンプライアンスを徹底した方が、企業としても評価を受けやすいということになるのでしょうか・・・。
しかーし、
コンプライアンス重視といった場合の問題は、建前として「お客様のため」といいつつ、本音は事業者が自らを守る術にも最大限利用しようとすること。
つまり、法令遵守さえすれば、問題ないのだという意識。
謝罪会見している大企業経営者の言葉を聞いていると、コンプライアンスの問題があったから、こういう事態に発展したと言わんばかりの口振り。コンプライアンスを掲げれば、さも問題解決が行われるかの如く。
もちろん、コンプライアンスはとても大切なことです。
ただし、それが自己防衛につながったとき、それは良い仕事につながるのか?という懸念が出てきます。
それでは、税理士のコンプライアンスはどうなのでしょうか?
もともと、税理士は税法の「法律家」たる側面を有しています。
税理士法においても守秘義務が強く要請されているため、コンプライアンスが極めて重要な職業です。
しかし、税理士の主なお客様は、あくまで中小企業・・・。
昔は、良い意味での「お任せ」が、税理士にとっての仕事でもありました。
それでは、「お任せ」されていた税理士が、悪い意味での仕事を行うとどうなるでしょう。
【税理士職業賠償責任保険の保険金支払い状況】

-税理士職業賠償責任保険事故事例(2012年度版)・日税連保険サービス-
昔はこういうミスも覆い隠されていました。なぜなら、「お任せ」しているので、お客様の方も税理士のミスに気付かない。
しかし、情報が溢れかえった現在では、お客様も気付けるくらいの環境になってきました。
そのため、税理士も自己防衛に走ります。つまり、これについては責任を負えない、こういう条件下でしか仕事をしない、分からない仕事はやらない・・・etc.
そうして、仕事がどんどん細分化されていき、細分化されると単価も下がるため、お客様の方も細分化して依頼を行う。
確かに、お互いに責任の棲み分けという意味ではよいのかもしれません。
しかし、本当にそれでよいのでしょうか?
本来、税理士を信頼して任せたい。いい意味で「丸投げ」したいというのが、中小企業の皆さんの本音ではないでしょうか。
そして、税理士も「私に任せてください!」という態度で臨んで欲しいと、そうお考えではありませんか?
ですが、税理士自体が、自らの仕事に対して逃げ腰になってきています。。
こうなってくると、「責任を負わない」という姿勢が、中小企業と税理士の関係性をどんどんドライなものにしていく。
そうすると、税理士は本当に事務処理屋になってしまい、相談相手をなくした中小企業の目の前に、得体のしれない「コンサルタント」が出てくる。
皆さんも経験則としてご存じのとおり、当たりの「コンサルタント」に当たることなど、そうそうないのです。
また、税務・財務のこと“以外に”に精通しているコンサルタントに企業の重要な部分のかじ取りを「お任せ」するのが長期的に見て本当に良いのかどうか。
かつて、マーケティングに特化したコンサルタントの指示に従って、どんどん集客を仕掛けたところ、資金繰りに行き詰って破綻したという企業の話を聞きました。
確かに、税理士の職務に「資金繰り」などという項目はどこにも出てきません。
webサイト上などでの売り込み文句としては使われるものの、契約書などには絶対記載がありません。
それは、税理士の“コンプライアンス上”、当然のことかもしれません。
ですが、そこすらも業務を細分化して、逃げの姿勢を取ってしまっては、税理士が求められている社会的な役割って何なのだろうか?と考えてしまいます。
その業務に関しては、お金をもらっていないのでできません。
それ自体は正しいのです。
ビジネスですから。
だから、顧問という曖昧さを残した制度があるのであり、ある程度の幅をもって「お任せ」されているのではないかと考えます。
「その点について、伝える義務がなかったから、伝えなかった」
これを税理士が自ら放棄したら、日本にいる税理士が、日本にある企業の申告書作成業務を独占しなければならない理由などなくなります。
既に海外への外注など特別なことではなくなってきていますし、コストも恐ろしいほど低いですしね。
少なくとも、私は税理士がコンプライアンスを自己防衛に使い始めれば、この業界に未来はないと思います。
皆さんも、税理士に違和感を受けるのは、税理士が自己防衛をしているときではないでしょうか?

○○は事業承継の“カンフル剤”となり得るか!?

今回は事業承継問題を解決するためのあるスキームをご紹介いたします。
はじめに、事業承継問題と一口に言っても様々なパターンがありますが、代表的なものは次のとおりです。
ケース1 親族内に後継者がいない
ケース2 経営の承継したものの、(株価が高く)株が移せない。
ケース3 兄弟間で経営権の取得を巡って争いがある
今回ご紹介する手法は、ケース2とケース3を問題を解決するための手法です。
次のような家族構成の同族会社を前提とします。

長男は代表取締役社長、次男は取締役副社長です。
株式は全て会長である父親の名義となっています。
長男である社長の要望は、経営権(株式)を取得したというものです。
いうまでもありませんが、代表取締役の地位など経営権をもっていなければ、ただのお飾りに過ぎません。
このような場合に、生前に株式を動かすことには2つの問題があります。
ひとつは、贈与税でもうひとつは、譲渡承認手続についてです。
株価の計算方法については省略しますが、時価以下の金額で株を譲渡した場合には、譲渡を受けた人は贈与税がかかります。
そこで、株価の高い株式を生前に移転する方法として、『事業承継税制』の活用が考えられます。
この制度を使うことによって株の移転に贈与税がかからないようにすることができます。
しかし、この制度で贈与税が免除されるのは、発行済株式総数の3/2までです。
それを超える株式の贈与については贈与税が発生します。
2/3を取得できれば経営権を取得できることは間違いありませんが、少数でも株式をもっていれば相当の権利が認められています。
次に、譲渡手続き上の問題についてお話します。
株式会社で株式譲渡制限を設けている場合、譲渡の承認は原則として、つぎの機関で受けることとなります。
取締役会非設置会社・・ 株主総会
取締役会設置会社・・・ 取締役会
したがって、経営権の獲得を巡る争いがある場合、株主でもあり取締役である次男が、譲渡承認について正式な手続きを経ていない株の移転についての訴えをおこすことが可能です。
この2つの問題を解決する手法が、『遺言代用信託』です。
“遺言”というと、死んでから効力が発生するように思われがちですが、遺言の代わりという意味ですので、信託の委託者が生存している間から効力を発揮する信託のことです。
一般的な株式は『配当をもらう権利(受益権)』と『経営を決定する権利(議決権)』の2つの権利をあわせ持っています。
遺言代用信託を利用した事業承継手法とは、議決権を行使する権利のみを長男とし、当初の受益者を父親、父親の死亡時には長男と次男がが受益権を取得するものです。

長男が取得する議決権については、信託契約によって取得する権利ですが、相続税法上の株式評価においては、原則として、議決権の有無を考慮せずに評価することとされていますので、議決権の取得について贈与税は発生しません。
しかし、このスキームが租税回避を目的とするものではなく、あくまでも事業承継を円滑にすすめるための手段として利用を検討することが必要です。

意外な盲点!?

取締役が1人しかいない会社で、その取締役が急に亡くなってしまった!
そんな事態を考えてみたことはありますか?
実はこうなってしまった時には、
想像を超えたリスクがあることをご存知でしょうか。
皆さんご存知でしょうが、平成18年の会社法の改正以来、株式会社の取締役は1人だけでも可能になりました。いわゆる「一人取締役の会社」です。
この改正以来、会社運営上のその取り回しの良さからこれまでの取締役が複数いた形態から、この一人取締役の形態に変更された経営者も多いのではないでしょうか。
しかし、この形態の抱えるリスクを認識しないまま、とんでもないことになってしまった方がいらっしゃいます。
そう、「この一人取締役が亡くなってしまった」場合です。
この場合、最悪、どんな事態が待っているのでしょうか?
会社の業務執行は止まり、取引先との取引も停止してしまいます。
「そんな、大げさなー!」
なんて思われるかもしれませんが、実際に起こりえます。
一人取締役がいなくなってしまったので、新たに取締役を選任する必要があります。
選任するのは株主総会です。しかし、株主総会を招集する取締役が不在のため、この招集自体ができません。
実際には株主による招集も可能ですが、その場合には「裁判所の許可」が必要になります。
仮に、先の亡くなった一人取締役がこの会社の100%株主であった、なんて場合には、その株主も不在ということになり、やはり株主総会の招集ができません。
そうすると次に、この株式の議決権を相続する相続人を確定させる必要が出てきます。この場合には、相続すべき株式の議決権は、相続人同士の分割の協議によって決めていくことになります。
この亡くなった一人取締役には2人の息子がいますが、
しかし、実は仲が悪い・・・
最悪です。
どのように分けるかの話し合いがまとまり、かつ、その引き継いだ相続人による同意(総会の招集と議決権の行使)がないと、
結局は次の取締役の選任はできず、会社は動けない状態になってしまうのです。
こうなると、実際に会社の業務執行は停止状態に陥るだけでなく、
取り引き先からも、取引を停止される可能性もでてきます。
会社の謄本(履歴事項証明書)は、法務局で誰でも簡単に手に入れられます。
すなわち会社の基本的な情報は誰でも入手可能なのです。
ここには、取締役に関する事項があり、過去から現在の取締役の状況(いつ、誰が取締役になったか)がわかります。
取締役が不在となり、その後任も決まらないような会社との取引をする会社は・・そうは無いはずです。
では、どうしたらよのでしょうか。
●一人取締役の持つ株式の相続先を、遺言によって指定しておく
●一人取締役の形態をやめて、複数の取締役を選任しておく
結局は、主にこのどちらかになってしまうと考えられます。
そのうち考えよう。。。。
こういう返答を頂く経営者さんは多いように見受けられます。
しかし、こういう事態はある日突然にやってくるものです。
あなたの会社は一人取締役でしょうか。
もしそうであれば、一度考えてみることをお勧めいたします。

コーヒーブレイク ~税理士探しのための、業界事情~

今回は、税理士業界のお話をさせていただきます。
今年の税理士試験も8月上旬に終わりました。
税理士業界の就職及び転職活動は、税理士試験が行われる8月前後と、合格発表が行われる12月から1月に掛けてがピークです。
しかし、近年、どの税理士事務所も採用活動で悩まされます・・・。
それもそのはず。下記データをご覧ください。

(注)平成25年度データについては、近年の平均データを利用して算出。
下の折れ線グラフが税理士試験の受験者数の推移ですが、ものの見事に減少傾向です。受験者数の減少は、この業界で働く人数にも直結します。
就職難、資格人気の時代といえど、税理士試験の人気がなくなっているのは、その試験の難易度に比べて、年収が割に合わないといわれるのも要因です。
弁護士試験、公認会計士試験ほど難しくないといわれますが、1科目ごとの科目合格制が採られ、さらには1度合格した科目は継続的に有効なので、働きながら受験する人が圧倒的に多いのが税理士です。そのため、逆に5科目全てに合格するまでには長い期間が必要となります。合格まで10年掛かるというのも珍しくはありません。
また、受験しながら働くため、実務経験も中途半端になります。従って、一般的な事業会社で働く30歳での社会人経験年数と、税理士事務所で働く30歳での社会人経験年数を比べた場合、半分にも満たないというのが現実です。
世間一般では最も戦力になり始める年齢でも、まだルーキークラスというのが税理士業界なのです。
さらに、税理士の収入は、一般の会社員に比べても大差はありません。
税理士事務所自体、小規模経営(10人未満が9割前後)がメインですので、中小企業の会社員と待遇は変わりません。大手税理士事務所に入れる人数などごく限られています。
また、最近はブラック企業が話題ですが、この業界はブラックが当たり前だよというくらいの状況です(詳しく説明すると色々問題がありそうですので・・・)。
独立税理士となると少しは状況は変わりますが、開業して間もない税理士など、勤め人よりも収入が少ない場合もあり、高収入の税理士は“古き良き時代”から事務所を構えている高年齢の方がほとんどではないでしょうか。
こうなってきたら、若者には夢も希望もない・・・。
また、お客様から頂ける報酬も減少傾向にあり、事務所経営が苦しい中、人件費の削減と共に、とにかく効率化を図ろうとします。お客様からの余分な業務は対応せず、事務的な対応に終始する。
せっかくこの業界に入ってきた若者に、このような事務的な仕事を叩き込めば、どんなに素材が良くても、型にはまった仕事しかできなくなります。
税理士業務というのは、やはり経験がものをいうので、事務作業だけを叩き込まれた“事務処理屋”が増えれば増えるほど、中小企業の経営者が求めるアドバイザーはどんどん減少していきます。
若手に、経営者ときちんと話せる人材が少なくなってきているのも、このような業界の傾向が反映されているように感じます。
ただでさえ、そのような人材が集まる業界であるにもかかわらず・・・。
また、どんなに経験豊富なベテランの税理士が良いとはいえ、事業承継で世代交代した若手経営者や、ベンチャー企業の若手経営者にとっては、やはり50~60代の税理士はとっつきにくいものです。
当然のことながら、税理士登録者数は増えていますが、受験者数が減れば減るほど、税理士の平均年齢は上がります。
平成16年の税理士実態調査では、20~30歳代の税理士の割合は約11%(40歳代でも約16%)です。これが約10年前のデータであり、この間に増加した税理士の割合が全体の約7%くらいですので、現在は20~30歳代の税理士の割合が10%を切っていてもおかしくありません(しかも、実務経験年数は10年未満が大半!)。
正直、これは業界の危機的状況ともいえるのではないかと思いますが、この状況がお客様である中小企業の経営にも悪い影響を与えかねません。
税理士をお探しの経営者からお話をうかがうと、フットワークの良い若手税理士を探されている場合が多いですが、業界的にはこのような事情もありますので、そう簡単には見つからないということもご理解いただいておく方がよろしいのではないかと考えます。
また、経営者にとっては税理士報酬は低ければ低いほど良いと思われるので、現在のような報酬減少傾向は歓迎すべき状況でしょうが、業界的には、付加価値が高い業務を行いにくい環境ともいえます。
さらに、WEB等を利用して積極的に広告展開を行う税理士は若手に多く、営業も比較的こ慣れていますが、実際の実務能力的にはいかがなものでしょうか・・・。
少し疑問があります。
実務経験もしっかり積み、フットワークもよく、現在の経営環境にも精通しているとなると、アラフォーあたりの中堅どころからが一番バランスが取れているように感じます。
日常のやり取りもさることながら、非常時の対応能力は経験がものといいます。
そういう意味では、報酬を比較的高く設定している中堅税理士というのは、その辺の構造も理解した上で、自分の能力に自信を持っている証拠かもしれません。
これらの事情はあくまで傾向を踏まえた上でのお話であり、報酬が高い税理士を探せという訳ではありませんが、これも税理士の探し方の手段の一つといえるのではないでしょうか。

『決算確定の日』が重要なワケ

みなさんは、税務署に提出する申告書に『決算確定の日』というものを記載するところがあるのをご存じでしょうか?
恐らくほとんどの社長さんはまずご存知ないはずです。
実は多くの場合、税理士が勝手に日にちを決めて記載しているケースが多いのです。
ただし、税理士にその事実を確認すれば、「社長に聞いたら、いつでもいいって言ったじゃないですか!」と答えるでしょう。
中には『空欄』という申告書もあるかも知れません。
決算確定の日はここに記載されています。

この決算確定の日とは、会計事務所が申告書を完成させた日ではありません。
これは、株主総会において決算が承認された日を意味します。
さらに踏み込んだ言い方をすると、会社の決算は、決算日から2ヶ月(又は3ヶ月)以内に開催される『株主総会』において承認を受ける必要があります。
つまり、決算確定の日とは、『株主総会が開催された日』ということになります。
法人税法では、「内国法人(略)は、各事業年度終了の日の翌日から二ヶ月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき~申告書を税務署に提出しなければならない。(以下略)」と決められています。
ここで言っている『確定した決算』というのが、まさに株主総会で承認された決算のことです。
株主総会!? ウチの会社は株主も役員もすべて家族だからそんなのやったことないよう!という声が聞こえてきそうです。
確かに、中小企業の大部分はオーナー親族によって支配されている『同族会社』のため、株主総会の開催等の手続きは省略され、監査役による監査についても形骸化しています。
では、株主総会をちゃんと開催しなかった場合にはどうなるのでしょうか?
一般的には株主総会を開催しなかったことによって問題になることはありません。
なぜなら、それを問題にする人がいないからです。
しかし、親族間において何らかの争いが生じた場合には、株主総会の決議について効力を争う、裁判を起こされることがあります。
それが、『株主総会決議取消しの訴え』や、『株主総会決議不存在確認の訴え』といったものです。
そして、ひとたび裁判を起こされれば、ほとんどの中小企業が正式な総会手続きをとっていないため、株主総会決議は取り消しとなってしまいます。
その場合、税務署に提出した申告の効力はどうなってしまうのでしょうか?
この点について、過去の裁判例を見る限り、実務的には、その申告の効力を有効とするものが多数あります。
その中でも、近年における代表的な裁判例としては、福岡地方裁判所平成19年1月16日判決があげられます。
この判決では、「確定した決算」に基づくことは、申告の要件ではなく、「申告の正当性を確保するため」あるいは「正確な所得が得られる蓋然性が高い」ためであるとしています。
さらに、別の判決においては「確定申告自体が、実質的に、法人の意思に基づきなされたもの」であれば有効な申告であるとして、納税者である法人の意思を重視しています。
いずれも当初申告の効力を有効と指示していますが、だからといって株主総会の会社を省略してもよいということにはなりません。
適切な株主総会の開催と決算承認を行い、議事録の作成、保管を心がけてください。

首都圏の家庭を直撃!迫りくる相続税改正の影響!

首都圏においては、なんと10人に4人が相続税の申告の必要が出てくるかもしれない時代に入ろうとしています。今まで相続税と言えば一部の富裕層以外には縁のないもので「相続税!?うちには関係ないよ~。」という人がほとんどでした。しかし、平成25年度の税制改正によって、首都圏に住むみなさんにとっては特に、相続税は身近なもの変わろうとしています。
みなさん既にご存知のように平成25年度の税制改正で、相続税の基礎控除額が40%引き下げられることが決まりました。現行の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数ですが、平成27年1月1日以降の相続については3,000万円+600万円×法定相続人の数となります。法定相続人が妻と子供2人で合計3人のケースで基礎控除額は、なんと8,000万円から4,800万円に減ることになります。(図1)

現行制度下では、このケースの場合、相続財産が8,000万円以下であれば相続税はかかりませんが、平成27年以降は相続財産のうち4,800万円を超える部分に相続税がかかることになります。首都圏に少し広めの不動産と貯金があればすぐに越えてしまう金額であることがわかります。
それでは実際にどれくらいの人が相続税を納めることになると予想されているのでしょうか。
平成23年の死者数のうち、相続税の課税対象となった人の割合は全国平均で4.1%でした。改正により平成27年以降、相続税を納めなければならない人は全国平均で6%~7%になり、人数にすると3万人前後増加すると言われています。しかし、これはあくまで全国平均の数字であり、東京、名古屋、大阪など不動産の評価額が高い首都圏において相続税の課税対象となる人は10%~15%になるのではないかと見られているのです。
相続税を納める必要はなくても相続税の申告は必要という人については、さらに増えることが予想されています。相続税は財産が基礎控除の金額の範囲で納まっている人は申告の必要はありません。しかし、基礎控除が下がれば、財産が基礎控除の金額を超えて相続税の申告が必要になる人がかなり増えるのです。
ここでは説明は省きますが『配偶者の税額軽減』や『小規模宅地の特例』などの特例を使えば、結果として税金を納める必要がある人は、かなり減ります。しかし特例を受けて納税をなくすためには必ず『申告が必要』なのです。そこで冒頭で触れたように、首都圏においては10人に4人が相続税の申告の必要が出てくるということが予想されているのです。
また、基礎控除の40%カットに加えて最高税率が55%に引き上げられ、税率は8段階に分かれます。この基礎控除の40%カットと税率の引き上げによる相続税額の影響については(図2)を見てください。

これだけでも大きな影響があることが分かりますが、更に大きな影響が見込まれるのは2次相続、つまり妻や夫が亡くなった1次相続の後の相続、子供達世代が相続する段階です。
なぜなら1次相続、夫婦間の相続では税負担が大幅に軽減される「配偶者の税額軽減」という制度があり、税額を抑えることができますが、2次相続、子供世代への相続ではそうした軽減制度がないからです。(図3)

今回の改正を目の前に控え、今、まず皆さんがやらなければいけないことは、まず相続財産を把握し、個々の資産がどれくらいの評価額になるのか、そしてどれぐらいの相続税がかかるのかを知ることです。相続財産の評価額が分かれば、次は個々の資産を、いつ、誰に、どのような方法で渡していくかを考えて行きます。
相続を“成功”させるには大きく分けて(1)節税(2)納税資金(3)争族の3つの対策が重要であり、事前準備が不可欠なのです。
繰り返しになりますが、相続対策はもう一部の富裕層だけの問題ではありません。まずは相続財産の把握と評価、相続税額の試算を行うことを、今始めることが、みなさんの相続を“成功”へ導く第一歩です。

目前!!消費税改正への備え

先日こんな相談を受けました。
「うちの総務やってる奥さんに、何かいい肩書ないですかねぇ」
「対外的にカッコつけた方がいい、って時があるんですよね。。。」
会社法上のいわゆる「取締役」であれば、何の問題もなかったのですが緒事情で「取締役」にはしたくない、というのがそもそもの前提でした。
そこで、みなさんご存知の「執行役員」という話になりました。
しかし、そもそも「取締役(役員)」と「執行役員」ってなにが違うのでしょうか。
★執行役員制度の導入は97年6月のソニーが最初
元々、日本の取締役は欧米と比較して人数が多く、取締役会の中に受託機能・監督機能・執行機能が混在しており、特に業務執行に対する内部監視が十分にできない構造になっていました。
そこで、取締役とは別に実際の業務執行にあたる「執行役員(CO)」を置いて、取締役会がその執行役員の業務執行を監督し経営に専念することと、同時に責任の明確化と意思決定の迅速化を図るため導入されたのが執行役員制度でした。
要は特定の事業部門などのトップとして、実際の業務執行に対する責任と権限を持つ幹部社員が執行役員なのです。最近では普通によく聞く「CEO(最高経営責任者)」なんていうのは、この執行役員のトップであり、執行役員制度からきている肩書になります。
しかし、執行「役員」と言っても、会社法上のいわゆる「取締役」とは違い、法務局への登記もありません。あくまで幹部社員ですので、役員としての法的な地位は無く社内的組織的な肩書きとされています。
また税務上においても、執行役員は原則として会社法上の使用人または重要な使用人の地位に立つと解されており役員には該当しません。
もちろん、会社の制度によっては、会社法上の「役員」と制度上の「執行役員」を兼任しており両者に該当することも少なくはありません。しかし、本来は全く別の概念・制度になっているのです。
★中小企業におけるこの制度の可能性
例の総務の奥様は、「執行役員 総務部長」になりました。
こんな肩書だけでも、「業務に以前より張りが出てきた!」と仰ってました。
また対外的にも、「以前より、相手の対応の感じが変わった。丁重になった」とも仰っていました。
今思えば、「CAO(最高総務責任者)」なんていうのも良かったかもしれません。。
余談はさておき、この制度の本来の目的は「会社の経営(取締役)」と「業務の執行(執行役員)」の分離です。
分離することで、意思決定の迅速化、業務執行の監督、責任の所在の明確化が可能になり、スムーズな経営が出来るのです。
また先の奥様の例の様に、肩書(ポジション)の明確化による従業員への意識改革と責任の明確化、対外的なインパクトによる自社への有利性、などへの波及効果も十分に考えられます。現在でも上場企業や上場子会社から同族会社まで、多くの企業がこの制度を導入し始めています。
御社では、あなたが下した意思決定はスムーズに実行されていますか。
こんな制度もきちんと機能するように利用すれば、おのずのその効果も望めるのではないでしょうか。

経営計画の二面性

近年、経営環境の不透明さから、大多数の中小企業は“抑え気味の”経営計画を立てています。来年の消費税の増税も考慮すれば、先を読むことなど不可能なのも事実・・・。
また、前年度の計画と実績の差が大きく開いた企業ほど、次の年度の経営計画は抑え気味になります。これは、経営者が“計画通りに行かない=企業の状態が悪い”と認識するからです。その結果、“差”が出ないような無難な計画が立てられます。
つまり、現実路線の経営計画ということになるでしょうか。
もちろん、現実路線の経営計画が悪いという訳ではありません。達成可能性の低い計画を立て続け、無謀な行動の果てに破綻する企業もあるくらいです。
しかし、現実路線の計画を立て続ける企業はどうなるでしょう?
結論から申し上げると、
“縮小均衡に陥ります”

“現実路線の”計画を立て続ける企業が縮小均衡に陥り、経営者自らの手で自社の成長を抑制してしまう。これは経営計画のダークサイドと言えるかもしれません。あくまで結果としてですが・・・。
ですから、もし、成長を図るために経営計画を立てているのであれば、現実路線での計画は再考が必要になる場合があります。
また、ここで一つ明確にしておきたいのは、
“経営計画と業績予測は全く違うという点です”
現実路線で立てている計画というのは、1年早い業績予測を行っているのと同じです。業績の予測可能性を高め、精神衛生上の安全性を確保しているだけ・・・。
そういう意味では、やはり背伸びをした経営計画というのは必要です。
背伸びをした経営計画を立てれば、簡単に達成する事は出来ないでしょう。しかし、計画と実績の間に“差”が生じる事が重要です。
計画通りに行かないからといって現実路線の計画を立て続けていては、有効な『差異分析』が出来ません。計画事業年度がスタートした後、『差異分析』を含め、徹底した業績管理を行う事が重要なのです。
しかし、“差”が生じる計画を立て、実績との『差異分析』を行うにしても、大きな問題があります。
例えば、“8月”の試算表で、売上高が計画通りに行っていないと“9月”に把握した場合、その原因の検討と対応策の実行を早急に行ったとしても、それが反映され始めるのはどんなに早くても“10月”。そして、その把握が“11月”・・・。
しかも、第一四半期辺りでは、「まだ事業年度が始まって3カ月くらいだから、これから取り戻せばいいよ」と、様子見の企業が圧倒的に多いのが現実です。
一月一月の差が雪だるま式に増加し、差を取り戻す対応策を実行するのにも時間が掛る・・・。これが、計画通りの実績を残せない根本的な原因です。背伸びした計画が悪いというよりも、軌道修正までに時間が掛る事が問題なのです。
これが、売上高や利益等の財務数値による『遅行指標』での『差異分析』の弱点です。
では、『遅行指標』による管理が遅いのであれば、どうすればよいか?
“『先行指標』による管理を行うしかありません”
『先行指標』とは、財務数値に先行して動く指標の事です。一般的には、景気の先行指標として新規求人数や製造業の設備投資、在庫状況等が用いられます。企業経営においては、行動や技術といったパフォーマンスドライバーが『先行指標』にあたります。
ここでお伝えする『先行指標』による管理とは、売上高や利益という結果が出る前に、関連する特定の行動(先行指標)で『差異分析』を行い、“売上高や利益の結果を変える”という事になります。つまり、最大のメリットは、軌道修正までの時間短縮です。
先程の例えでいえば、“8月”の試算表(遅行指標)が出る前に『先行指標』での差異分析を行えます。ビジネスモデルによっては数ヵ月先に行う事も可能です。
ただ、『先行指標』による業績管理の難しさは、売上高や利益のように、全企業共通の指標が存在しない事です。業種業態、規模、ビジネスモデルにより管理すべき指標が異なり、これが『先行指標』による業績管理の普及を妨げています。
実際には、売上高という『遅行指標』につき、契約数という『先行指標』で管理されている企業は多い。これは、納品(=売上高=遅行指標)よりも契約(=行動=先行指標)が先行するという取引上の流れなので、当然といえば当然です。
しかし、契約より先の見積書提出数、アポイント数、更には反応率等、先の先まで管理している企業となると数少ない。仮に、実績値の集計はされていらっしゃっても、
“その先行指標の計画値まで作成されている会社は少ない”
もちろん、自社の行動の起点となりそうな先行指標全てについて管理するのは大変です。しかし、どの会社にも、いくつかの『キラー先行指標』というものがあります。ですから、『キラー先行指標』を見つけ、この指標だけでも計画を立てて管理する事が重要になってきます。
繰り返しになりますが、
“財務数値だけの管理では、計画の達成は困難です”
そのため、財務数値以外の『先行指標』の計画数値を作成する必要があります。
“独自フォーマットによる『先行指標』=『行動数値』の計画”

“共通フォーマットによる『遅行指標』=『財務数値』の計画”

これが、経営計画の本来あるべき姿になります。