お粗末行政に税務署長も“ダメ!”

弊社の新潟事務所がある新潟県上越では、あまり知られていない話ですが関係者の間ではちょっとした騒動が起きています。
それは、契約錯誤による、約1億2千万円の納税問題です。
これは、平成18年の4月に、上越市が上越地域医療センター病院の運営管理を指定管理者制度に移行する際に、本来課税の対象とならない『人件費』分を課税対象となる『委託料』に含めて(契約)支払っていたため、本来、支払いを避けることができた消費税約1億2千万円相当を指定管理者に対して支払っていたという問題です。
ちょっと読んだだけでは、一般の方にはわかりにくい問題です。
誤解を恐れず言いますと、『ちょっと契約の方法を変えれば払わなくてよかった税金を、何も考えずに契約してしまったので税金が増えちゃった!』という話です。
予算削減の折、これに気付いた上越市は、平成20年10月以降、委託料から人件費相当分を切り離し、『診療交付金』として支払うことによって消費税相当を支払わないこととしました。
この報告に対し、市議会で議員の一人からの指摘によって、問題となった模様。
この問題について、議員より「過去にさかのぼって修正申告(本当は更正の請求)すべきではないか?」との指摘があり、税金を還付してもらうための請求『更正の請求』手続きをしたところ、税務署長より『NO』が突き返されたということです。
その理由は『更正すべき理由がない』というもの。
これは至極当然な回答です。
うまいこと言っておけば避けられた消費税があったことに気付いたので、それを『錯誤』がありましたと税務署長に言い訳したのです。
更正の請求ができる場合とは、『申告書の計算が法律に従っていなかったこと、または、計算に誤りがあった場合』に限られています。
しかも、申告書の提出期限から1年以内に限られます。。
(平成23年度の改正によって、5年以内になる予定。)
今回のケースでは、申告書の作成、計算には何の誤りもないことから更正の請求が認められなかったということです。
上越市との契約において、委託料を収受することには、契約時においては何らの思い違いもなかったのであって、交付金として収受することによって消費税が非課税(本当は非課税ではないが、わかりやすいので。)と計算されただけのことであって、もし、それが契約の錯誤に当るとすれば指定管理者制度自体の運用に違反があったことにほかなりません。
私が、今回の話からみなさんに学んでいただきたいことは、契約書の書き方一つで、あるいは、物の言い方一つで税金が変わるのか?ということ。
優等生の答えは『かわらない』
しかし、現実には『かわる』
だからこそ、上越市では契約を変更した、平成20年10月以降、指定管理者に対して消費税相当額を払っていないのです。
これはまさに、『事実は小説より奇なり』といったところでしょう。
さて、上越市は現在、税務署に対し異議申し立てを行っており、8月中旬までに
処分が決まる。
税務署長がこの還付請求を認めるようなことがあったら間違いなく、今後の税務訴訟のメルクマールになります。
この結果はいずれまたご報告いたします。

何で税金かかるの?

震災特例法によって、被害にあわれた方の税金の取り扱い
が国税庁より公表されました。
自動車重量税、登録免許税それから一定の場合の相続税又は贈与税が
減免される場合があります。
また、固定資産税についても、消滅した建物等については減免が
あるようです。
しかし、所得税、法人税並びに消費税等についての免除に関する
措置は出されていません。
既に確定した所得に対する税金ですので仕方がないでしょう。
これを見てもわかるとおり税金はちょっとやそっとでは
まけてもらえないものです。
以前、こんな話がありました。
ある日のこと、以前顧問をさせていただいていた会社の
社長さんから連絡が入りました。
その会社は数ヶ月前に、債務超過によって倒産し、
社長さんは県外に引っ越しておられました。


社長「笹川さん、○○です。お久しぶりです。」
笹川「ご無沙汰しておりました。○○さん、お元気そうですね。」
社長「はい、おかげさまで何とかやっていますよ!」
社長「もっと早く(会社のこと)決断しておけばよかったです・・・。」
笹川「まぁー済んだ話ですから。お元気そうで何よりです。
今日はどうかされましたか?」
社長「実は、税金のことなんですが。住民税で困っているんです。
何とかよい方法はないものでしょうか?」
笹川「といいますと?」
社長「倒産前に、役員報酬を多めに取っていたので、
そのときの住民税の通知が来ているんです。」
笹川「税金は破産でも免責されませんからね・・・」


皆さんは、『破産』についてどれだけの知識を
お持ちでしょうか?
少し前まで、多重債務による自己破産が社会問題に
なったこともありますので、名称くらいは皆さんも
聞いたことがあると思います。
しかし、実際に自己破産すると自分の身に何が
起こるのかまで知っている方は少ないと思います。
まず、これだけは覚えておいてください。
破産によっても税金は免責(免除)されません。
ただし、生活保護の適用を受けた場合については、
減免の申請をすることによって住民税の免除を受けることが
できるようになります。
それ以外の場合には、納税が免除されることはありません
ので納税しなければなりませんが、もしも納税できない場合に
は『差し押さえ』が行われます。
その場合にはどうなるのか・・・。
住民税の話は、会社経営者が破産した場合に発生する
トラブルの一部にすぎません。
経営者として、万が一、経営を続けることが困難な状況と
なっても、スタッフはもちろんのこと、ご自身の家族とその
生活を守る準備も万全にしておく必要があります。
倒産に直面した場合における経営者の対処法について、
ご興味のある方は、こちらをご参考にしてください。

私は、あなたの奴隷ではない

「俺は、親父の奴隷じゃない!」
これは、顧問先のご子息が私に訴えた言葉です。
お酒の力もあってのことでしょう、いつもよりもすこし感情的でした。
その方の会社は、父親である社長で二代目となる典型的な中小企業です。
社長さんは、すでに還暦を向かえられており、専務取締役であるご子息に事業を承継することを考えておられました。
ある日のこと、社長さんが「先生、黄金株は(事業継承対策に)いいですか?」と聞いてこられました。
当然、この話は専務も耳にしており、今回のような訴えになった訳です。
株式には『普通株式』と『種類株式』の2種類があり、『黄金株』とは、新会社法の施行によって発行が可能となった種類株式のひとつです。
この黄金株は、取締役の選任・解任、会社の合併や事業譲渡等の重要事項について、『拒否権』をつけることによって、敵対的買収に対する防衛手段として利用されていました。
ところが、その効力から、後継者に株を渡した先代経営者が、事業継承後において当分の間、後継者の暴走を監視する目的から、事業承継においても利用を勧める専門家や専門書がたくさん出ています。
しかし、私は、事業承継の中でも親族内承継の場合には黄金株は使うべきではないと考えています。
何故ならば、黄金株を発行し、それを先代経営者が持つということは、「俺はお前が信用できない!」と無言で言っているのと同じことだからです。
多くの専門家や専門書は、現在の社長の目線から書かれており、事業を承継する後継者のことはあまり考えられていません。
少し言葉が過ぎると思いますが、私から言わせてもらえば、後継者に事業を承継すると言っておきながら、黄金株を発行するなど、子供を馬鹿にするにも程があります。
それならば、社長だけ交代して、株を渡さなければいいだけです。
そこに、『相続税対策=事業承継』と考えている経営者の誤解があるのです。
事業承継でもっとも大切なことは、税対策でも、株式対策でもありません。
事業承継に関わる方々の内面の在り方です。
“策士策に溺れる”とならないよう、お気をつけください。