来年発売予定の本があります。
この本は5部立てで、最後の5部はある家族の物語で始まります。
今回は、その本のある部分の抜粋から始めてみようと思います。
第五部 中小企業会計再論
(第一章 省略)
第二章 会計における重要な真実
第一章の家族の物語をお話しましょう。
家族は、現実を見ないふりをして過ごしつつも、在庫や税金の問題に翻弄されるようになりました。そして、昔のようにカゴの現金のやり取りでは商売をやっていくことができないことを悟りはじめました。
そもそも、そのことは借金をしたときに薄々感じていたことでしたが、税金の問題に翻弄されるまでは、何とかなるような気でいました。 家族は、早速、書店に行って会計の本を数冊買ってきました。これさえ見れば、全てが解決すると家族は思いました。 |
空手の試合に出る人が空手の入門書を買ってきて試合に勝とうとしていたら、誰もが笑います。しかし、中小企業や自営業者の現場では、こうしたことが意外にも起きています。
確かに、本を読むだけで解決することもありますから、本を読んでもダメというわけではありませんが、本を読む者の態度に、怪説盲従的な態度や近道思考があることも事実でしょう。
家族の問題も数冊の会計の本で解決するというものではまったくないわけですが、家族はこうして問題の第二段階に突き進んでいくことになります。
この第二段階がどのように進んで行くかは、実際に本を手に取っていただくか、立ち読みいただければと思います。しかし、実際は、このような家族が、会計の本に手を出したときには、手遅れになっていることが多いというのが事実です。これは、会計の世界ではよく起こることです。
今度出版する本でも、この家族を題材に、経営の最初の出発点で誤りをしてしまった・・・としたら(この物語の家族はそうです)、その誤りは最低でも全治三年以上の病になるという話をさせていただいています。
3年なんて言うのは、かなり遠慮をした話で、実際は、5年から7年。場合によっては、完治しない・・という可能性さえあります。
そういう病気の人が、とりあえず会計の本から学ぶ・・という図は、悲劇的に見えて仕方がありません。
私も会計関係の本を書く立場ですから、こんなことを言うことは許されないかもしれませんが、これは誰もが知っておかなくてはならない事実でしょう。
『会社にお金が残らない本当の理由』にも書いたように、経営の舵取りは車のハンドリングのようにはいきません。どちらかと言うと船の操作に似ています。ハンドルを切ってもすぐに方向は変わらないのです。
そして、そのうえ財務的毀損もすぐに改善することはありません。
やったことがすべて地層になってくるからです。
これからの不況は、この培った地層の性質が勝負になります。
先般、あるお客様から
「あんたのおかげで、内部留保も十分にできているから、当分は、アクセルを少しゆるめて経営をしていくよ。不況期の入り口はそれが良いんでしょう?」
と電話をいただきました。このお客様は、良い地層を作り上げることができたというわけです。
私たちは、たまたまですが、今回の事態を想定し、早く警告を発していました。
また、私たちもファンドを売る立場にありましたが、某証券会社の代理店でありながら、ファンドを1円も売らないという暴挙をやっていました(おかげで、代理店は昨年辞めました)。
どれもこれもが過去の行動の地層として結果が出る。不況とは、地層の確認のために起こるような気がしてなりません。
今の時期は過去の行動が問われます。
この時期は、「乗り切ればいい」という態度では乗り切れません。
もう一段謙虚な考えで歩いていきましょう。