信用保証制度の改正がやって来る…

「ゾンビ企業は市場から撤退しろ!」

このようなことが検討されていることをご存知でしょうか?

それは、信用保証制度の改正です。

中小企業にはお馴染の信用保証制度は、金融機関から融資を受ける際、国が返済を保証する制度です。現在は原則として80%が国によって保証されています(2007年までは100%保証されていました)。

仮に中小企業が返済できなくなった場合、金融機関は20%だけ泣けばよく、残りの80%は国が肩代わりしてくれます。これにより、金融機関は融資を実行しやすくなり、結果として中小企業は融資を受けやすくなっております。

ところが、この制度につき保証率を50%~80%に引き下げることが検討されています。現時点では2017年度以降とのこと。

意図は、中小企業に一律同じ保証率を適用するのではなく、創業間もない企業には高い保証率を、創業から一定期間を経過した企業には低い保証率という様に、メリハリをつけることのようです。

信用保証を受ける際、中小企業は信用保証料を支払い、信用保証協会はこの信用保証料を原資に返済できなくなった中小企業に代わって金融機関に弁済します。しかし、現状では信用保証料ではまかないきれないくらいの弁済額があるのです。

このまま現状を放置すれば、国の財政負担が膨らむということになります。

そのため、国は保証率を引き下げるとともに、金融機関の負担リスクを引き上げ、より厳密な審査により融資するよう金融機関に求めます。また、同時に保証制度の対象事業の絞り込みにも着手するようです。

この信用保証制度の改正によりどのようなことが起こるかは、皆さまもご想像ができるはず…。

金融機関からプロパーのみで融資を受けられる中小企業というのは財務状態が良い会社であり、信用保証制度に頼らざるを得ない中小企業の方がずっと多いのは間違いありません。

結果として、プロパーのみで融資を受けられない中小企業は融資枠が少なくなりますし、融資を受けられても借入の際の利率が引き上げられていくことになります。

金融機関の負担も増えれば、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)により返済を猶予し続けてもらっている企業も、大目に見てもらえなくなります。おそらく、2016年度中には再建の目途を付けなければなりません。

つまりは、借入について精算を迫られ、再建できない限り…

「ゾンビ企業は市場から撤退しろ!」

ということにつながります。

深い意味では、ゾンビ企業への国の支援を少なくし、成長企業に手厚く支援するという意図も隠されていることでしょう。それは近年の税制改正の流れでも明確です。

国がゾンビ企業を市場から撤退させたいのは間違いありません。限りある税金、労働力をどこに使うべきか?答えは明白です。そして、実際に撤退に追い込むことも簡単です。

しかし、現実問題として、市場からの撤退に追い込みきれない最後の砦となっているのが「雇用」です。ゾンビ企業も従業員を雇用しているからです。

もし、ゾンビ企業の従業員が他の健全な企業に円滑に雇用されるのであれば、国はゾンビ企業を簡単に潰しにかかります。

そういう意味では、国が大企業に賃上げを求め、人材難でもある大企業グループが雇用を積極的に増やしている現状を考えると、人材の流動化の環境が整いつつあるようにも思われます。

もちろん、いくら何でも簡単に中小企業を潰せないだろうという意見も根強いですが、外堀が徐々に埋まっている以上、このような流れを無視するわけには行きません。

2016年…。金融機関対策を含め、資金をかき集めるために重要な1年になるのは間違いありません。現状で資金繰りが大変な中小企業のみならず、安定している中小企業も中長期的な視点の下に資金計画をご検討ください。

金融機関との付き合い方も、少し深くせざるを得ないかもしれませんね。

 

“マイナンバーで脱税者を一網打尽”はホントか?<活用編>

三回にわたってマイナンバーによって変わる税金の話をさせていただきましたが、今回が最終回です。

前回までは、いろいろと細かな話をさせていただきました。
自分で言うのも何ですが、専門家が重箱の隅をつついて、面白おかしく話をしたに過ぎません。

私も仕事柄マイナンバーの講演依頼をいただきますが、「何も変わりませんよ」と言ってしまったら依頼者のご迷惑になりますので、話はしますがその程度のものです。

新しい制度がはじまるのですから、今までと何も変わらないということはありません。
ですが、日の当たる場所で普通に仕事をしている中小企業に対して、私は「何も変わることはありません!」と言わせていただきます。

こういった機会を後ろ向きにばかりとらえていても、何もプラスになることはありません。

そこで最終回として、マイナンバーの活用法をご紹介させていただきます。

マイナンバー(個人番号)制度が大きく取り上げられたために陰に隠れてしまいましたが、すべての株式会社などの法人や団体に対しても、新たに企業版マイナンバーとでも呼ぶべき『法人番号』が決められました。

この法人番号の特徴は、

  1. 利用範囲に制限がない
  2. 専用サイトで全面公開される

というものです。

つまり、はじめから民間で利用してもらうことを前提に用意されたものだということです。

具体的な利用方法をひとつご紹介いたします。

それは『法人番号公表サイトを利用した新規設立法人の把握』です。

現状、民間企業では、新規営業先の開拓や会員勧誘先の把握に当たり、インターネットや登記所の商業登記、信用調査会社などの様々な情報源から『有料』で情報を入手しており、人件費や手数料などの手間・コストがかかっています。

今後は、株式会社など新たに設立されると、法務省から国税庁に登記情報が連絡され、それによって法人番号を指定し情報が公開されることから、新たに法人番号を指定された法人は、新規設立会社として把握することが可能になります。

ただし、マイナンバー開始時に既に存在している法人の法人番号については、平成27年10月に一斉に通知・公表されていますので、新規設立会社の把握に法人番号が活用できるのは、平成27年11月以降に新たに設立された法人からとなります。

それでは具体的は方法をご紹介いたします。

まず、専用サイトで公表されている情報は『基本3情報』と呼ばれる次の3項目です。

▼[国税庁]法人番号公表サイト
http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

  1. 法人番号
  2. 商号又は名称
  3. 本店又は主たる事務所の所在地

ファックスやメールアドレスまでは記載されていませんが会社名と住所が分かれば、DMの発送が可能です。

検索条件の設定で『変更年月日』を平成27年11月以降の日付で絞り込むことで新規設立会社だけの抽出を行うことが可能となります。

(図 公表サイト詳細検索)

ただし、変更項目の中には新設だけでなく、住所や商号の変更・合併等も含まれてきますので、さらに絞り込んだ抽出を行うために『基本3情報ダウンロード』を利用します。

データはCSV形式等でのダウンロードが可能となっており、サイト上では絞り切れない情報を抽出することができます。

ダウンロードできるデータには『全件データ(各都道府県別)』と『差分データ(全国)』の二種類があります。

差分データは文字通り日々更新された全国のデータを一覧にしたものです。

(図 差分データ)

一ヶ月分の差分データをもとに毎月月末に都道府県別の全件データファイルを作成し、毎月1日の午前0時までに公開されることとなっています。

データの形式は、『CSV形式・Shift-JIS』、『CSV形式・Unicode』、『XML形式・Unicode』の三種類がありますが、エクセルで簡単に編集できる『CSV形式・Shift-JIS』を使ってください。

ダウンロードしたファイルを開くと無造作にデータが羅列されているため、どこに何が書いてあるのかがさっぱりわからない状態となっています。

そこでまず最上部に行を一行挿入し、それぞれ該当する列に次のとおり項目名を入力してください。

(図 リソース定義)

項目の入力が終了したら次にエクセルの『フィルタ』を設定します。

 

(図 フィルタ設定)

フィルタの準備ができましたら項目の絞り込みを行っていきます。

先ほど項目名の設定でご覧いただいた図をもう一度ご覧ください。

黄色くなっている項目が絞り込みを行う項目です。

  1. 処理区分は『1』のみチェックを入れてください
  2. 訂正区分は『0』のみチェックを入れてください
  3. 変更年月日は平成27年11月以降で抽出したい該当月にチェックを入れてください
  4. 法人種別は『301』が株式会社、『305』が合同会社となっています

以上の作業によって新規設立会社の絞り込みを行うことが可能となります。

私が実際に作業をしたデータを検証したところ、かなりの精度で新規設立会社が抽出されていることを確認することができました。

しかし、データの中には法務局に設立登記のない法人など、一斉に法人番号をふることができなかったと思われるものが、法人で後から法人番号が付番されたものが、散見していました。

そのようなデータは今後少なくなっていくものと思われます。

マイナンバー制度『法人番号』は、まだはじまったばかりの制度で、ほとんどの企業がこの法人番号をどのように活用していのか見当もついていない状況です。

今回ご紹介した以外にも、法人番号公表サイトでは法人番号の活用法が紹介されています。

この新制度をうまく活用し、ビジネスチャンスにつなげてください。

 

“マイナンバーで脱税者を一網打尽”はホントか?<預金口座編>

引き続きマイナンバー制度の導入によって、税金にどのような影響があるのかをお話しいたします。

今回は『預金口座へのマイナンバー付番』とその影響についてお話しいたします。

『マイナンバー法』成立直後において、マイナンバーの利用範囲は『社会保障』、『税金』、『災害対策』の3つに限られていましたが、その後の改正によりあっという間に利用範囲が拡大されました。

それが、いわゆる『改正マイナンバー法』で、これにより施行日より3年以内の平成30年を目途に預貯金口座へのマイナンバーの付番が始まる予定となりました。

ただし、当初は預貯金口座へのマイナンバーの付番は義務ではなく、あくまで預金者の『任意』となっています。

その一方で、来年以後の銀行取引においては、投資信託や国債などの証券取引全般、外国送金などを行う際に、マイナンバーの提示が必要になります。

これらは金融機関等において支払調書の作成の可能性があるため事前に収集するものですが、折角収集したマイナンバーを預金者が拒否したからといって、(銀行が)預金口座に付番しないことなどあり得るのか、甚だ疑問が残ります。

また、平成33年からは預金口座や証券口座への導入も義務化されることを確定的に伝えているサイトなどもありますが、正確には『検討』を行っているという現状です。

預金口座にマイナンバーが紐付くと聞いて、誰もが真っ先に思い浮かぶのは『相続財産』のことではないでしょうか?

相続税の申告において、不動産や株式等に比べると預貯金は申告漏れの多い財産です。

正直に申し上げると、申告が漏れるというよりは財産隠しが行われ易い財産です。

税務署から相続税の調査と言われたときに私が真っ先に調査官に探りを入れるのも「預貯金の漏れがありましたか?」です。

今でも「亡くなる前に口座を解約しておいたほうがいいでしょうか?」とよく聞かれるのですが、その度に、私は「何のためにですか?」と聞き返しているくらい。(汗)

預金口座へのマイナンバー付番の理由として明確に『税務調査』が挙げられており、相続税の税務調査では絶大な効果を発揮するものと思われます。

相続税の調査では、税務署が事前に被相続人や相続人の預金口座を調査します。

その際に調査する口座は、所得税の確定申告などで把握しているもの、住まいや勤務先近くの金融機関、地元の金融機関が中心となります。

調査にあたっては各金融機関毎に照会をかけなければならず、また、金融機関にとってもあまり嬉しいお客様ではないためその対応もなおざりになりがちで、その結果、一行一行の調査にかかる時間は相当なものだと聞きます。

そのため、県外の金融機関にまで照会をかけることは現実的には不可能で、その結果、県外の金融機関の口座は把握され難いのが現状です。

ところが、すべての口座にマイナンバーが付番された場合、金融機関への照会はマイナンバー一つで行えるようになるため、今までは把握できなかった口座についても容易に補足されるようになるというのが世間の一般的な論調です。

果たして、本当にそのようなことになるのでしょうか?

全ての金融機関の口座をマイナンバーで一元管理する?どこが?どんな権力で?

この点に関して内閣官房マイナンバーHPに次のようなFAQがあります。

Q5-2. 国が個人情報を一元管理するというのは本当ですか。

A. マイナンバー制度導入により、情報を「一元管理」するようなことは一切ありません。情報の管理に当たっては、今まで各機関で管理していた個人情報は引き続きその機関が管理し、必要な情報を必要な時だけやりとりする「分散管理」という仕組みを採用しています。

特定の共通データベースを作ることもありませんので、そういったところからまとめて情報が漏れることもありません。

国がどこまでを『一元管理』と認識しているのかは図り知れませんが、金融機関すべての口座情報を、特定の機関が情報として持つというのは現実的でないと私は思います。

それよりも、マイナンバー付番の最大の『副産物』は別にあるように思います。

それは、マイナンバー付番が義務化されたときに現われる『浮遊口座』です。

本当に悪質な脱税行為は自分名義や自社名義の口座では行いません。

そこで出てくるのが偽名口座や借名口座です。

金融機関ではこれらの口座所有者のマイナンバーを勝手に入手することはできないため、マイナンバーが付番されない口座が宙に浮いてしまうのです。

それが『浮遊口座』です。

国税調査官の質問検査権の範囲において、不特定多数の浮遊口座のみを金融機関に照会することは現時点では不可能ですが、何らかのきっかけでマイナンバーの無い口座を把握することがあれば、脱税だけではなく犯罪を発見するきっかけになるでしょう。

今まさに、その準備がすすんでいることは間違いありません。

 

新国立競技場・・・ではないけれど?!

先日、お客様よりこのようなご質問がありました。

社長:社屋を建築しようと準備をしておりましたが、その計画を変更しようと思うのです。これまで支払っていた調査料・設計料・デザイン料などの処理はどうしたらいいのでしょうか。

2020年の東京五輪のメイン会場である、新国立競技場の建設計画でもスッタモンダあったのも記憶に新しいですが、果たしてどのように処理すればよいのでしょうか。

 

減価償却か?損金か?

税務の知識が多少あれば、「計画の変更前の支出は、新たな計画による建物の取得費を構成し、減価償却すべきではないか」と感覚的に思われるのではないでしょうか。

しかし、国はこの処理の考え方について、次のような見解を示しています。

・ 法人税基本通達7-3-3の2
(固定資産の取得価額に算入しないことが出来る費用の例示)

(2)
建物の建設等のために行った調査、測量、 設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額

上記のように、原則、費用として処理できることを示しています。

しかし文中の「計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額」という部分がミソです。

「不要となった部分」・・・
すなわち、「まったく採用されなかった部分のみ費用処理が出来る」という意味として明示されているようです。

例えば、同一の建物の建築のために同時並行して、いくつのも設計案があり、それに修正を加えながら最終的な設計案が確定した場合。

この場合には、損金とされる部分は存在せず、すべての設計費が建物の取得価額を構成するものと解釈されています。

あくまで、計画の白紙撤回・当初の計画自体の変更によって、以前の設計等で採用されなかった部分に係る支出が、費用処理できるということのようです。

そうすると、新国立競技場の設計・デザイン費(報道にあった外国のデザイナーへの監修費用ですね)は、計画自体の白紙撤回ということで、すべて損金・・・。

国家の話ですから、単なる税金の無駄使い、ですね。。。

予期せぬ経済情勢の変動や、社内情勢の変動での計画変更の場合は仕方ありませんが、ご存知のように損金に出来るか出来ないかの前に、計画自体に大幅な変更を期さないような綿密な計画を立てることのほうが大切です。
損金に出来る部分は、同時に同額のお金も減ってしまっているのですから。

 

情報格差

「知らなかった。」

私たちは関連会社の会員の方からのご相談やセカンドオピニオンなどを通じて、顧問先様以外の方のお話を伺う機会が比較的多くあります。そんな時によく感じるのが「情報格差」です。

情報格差とは通常、都市部と地方間における放送・通信の情報量やサービスの可否に差があること、また、情報技術(IT) を使いこなせる者と使いこなせない者との間に格差が生じていることを指します。特に情報技術を使えていない、あるいは取り入れられる情報量が少ない人々、または放送・通信のサービスを都市部と同水準で受けられない地域および住民のことを「情報弱者」とも呼びます。

しかし税務の場合、その多くは都市部と地方間の差というよりは顧問税理士若しくは担当者、ひいては税理士事務所そのものの「知識」、「情報収集能力」の差にあるように感じます。

クラウド型会計ソフト、クラウド型マイナンバー管理ソフト、マネーフォワード、フリー、会社設立フリー、事前確定届出給与、短期前払費用、旅費規程・・・・

それぞれの説明は省きますが、例として挙げたこれらは古くからあるもの、最近のものを含め、全て税務・会計等に関するものになります。これらは少なからず経営に影響を与える内容でもあります。最近のものならまだしも、古くから行われている節税方法等については、未だに知らない人がいるのか…!?と、こちらが驚くこともしばしばです。

今回のマイナンバー制度に関しても、企業によって得ている情報にはかなりの差があるように感じます。その原因の1つは、その企業の顧問税理士や社会保険労務士によって発信している情報に差が生じてしまっていることです。

マイナンバーについては紙で管理している場合や、PCを使用したとしてもデータをそのPC上で管理している場合には、共にある程度のセキュリティ対策を講じなければなりません。しかし、クラウド型のマイナンバー管理ソフトを使用すれば、セキュリティ対策などの煩わしい面からはほぼ解放されることとなります。

もちろんITを使用した最先端を行くことが全ての企業にとってベストとは限りません。従業員がそれほど多くない会社ではマイナンバーが記載された書類を金庫に保管しておく方法でも問題ありませんし、コストと手間を考えれば、むしろそれがベターかもしれません。

しかし、こうした紙での保管を専門家に提案されているケースの中には、従業員の数が少ないわけではなく、クラウドシステムなどの選択肢を提案されているわけでもなく、単に専門家の情報収集不足により、結果として最もアナログな方法のみを提案されているといったケースが多く存在しています。

マイナンバーへの対応に限らず、選択肢が少ないことは経営の幅を狭めます。他の選択肢も知っていて敢えてそれを選ぶことと、他の選択肢を知らないが故にそれを選んでしまっていることでは大きな違いがあります。

IT・AI・IOTといった技術は日々驚くべき速度で進化を遂げており、経営に大きな影響を与えています。ITが商売を変え、商売が税制を変え、税制が商売を変える時代なのです。

たくさんのことが来年は今年と同じではなくなっている現代。情報収集、発信能力が高い専門家と付き合うことが自社の情報力を高め、経営の幅を広げる手段の1つとなる得ることは言うまでもありません。逆を言えば情報収集、情報発信能力の低い専門家しか周りにいなければ、いつの間にか自社が「情報弱者」になってしまう危険性があります。

今回のマイナンバー制度の導入にあたって御社の顧問税理士・社会保険労務士は充分な情報を提供してくれたでしょうか。
「情報収集、情報発信能力」。
専門家を選ぶ際は、是非こういった視点も加えてみてください。

 

消費税還付案、隠された意図~財務省のホントの狙いは!?~

財務省は消費税率が2017年4月に10%に引き上げられるのに伴い、一部の商品の税率を低く抑える『軽減税率』の導入にあたって、軽減税率対象品目の2%を還付する仕組みを先月提案しました。かなり話題になりましたので、多くの方がご存知かと思います。

では、その財務省案について、仕組みをざっと確認しておきましょう。

私たち消費者は、買い物の時点では軽減税率対象食品にも通常税率にあたる10%の消費税を支払います。それと同時に、私たちはマイナンバーの個人番号カードを店頭のカード読み取り機にかざします。仮に軽減後の税率が8%であれば、消費税2%分の「還付ポイント」が個人番号カードのICチップを経由して政府の「還付ポイント蓄積センター」に送られ、個人がパソコンからなどで請求することにより、口座に還付されるというものです。

この財務省案、公表されるやいなや反対意見が続出していますが、小さな商店など小売りの現場の隅々にまでカード読み取り機を行き渡らせる必要があることや、パソコンに不慣れな高齢者はどうするのかなど、多くの課題を解決する必要があるものの、個人的にはなかなか良いアイデアだと感じました。

しかし、冷静になって制度の仕組みをよーく考えるとこの還付案、もしかすると別のところに財務省の意図が隠されているのかもしれない、ということに気が付きます。

それは“小売店の売上高の捕捉”です。

皆さんは「クロヨン(9・6・4)」という言葉をご存知でしょうか。これは本来課税対象とされるべき所得の内、税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値である“捕捉率”に関する業種間格差に対する不公平感を表す言葉です。

この捕捉率が、給与所得者は約9割、自営業者は約6割、農業、林業、水産業従事者は約4割であると1960年代後半頃から言われています。もちろん現在はここまで低い捕捉率ではなく、クロヨンという言葉自体、既にかなり時代錯誤の感がありますが、税務署が個人商店など自営業者の所得を正確に捕捉することに苦労している事実は、現在も変わりません。財務省の中には小売店などの売上高を正確に捕捉できないため、数千億円~数兆円の課税漏れがあるとの見方があるそうです。

さてさて、そこでこの財務省案です。そうです、この財務省案が導入されれば、カード読み取り機から、その店での買い物履歴が税務署に送られます。つまり税務署はその店の売上高を容易に捕捉することが可能となるわけです。

財務省は税務署に届く情報は軽減税額だけで、何を買ったかなどの買い物履歴は把握できないと強調しているようです。しかし、財務省の言葉をそのまま鵜呑みにする気にはなれません。この制度が導入されれば、小売店が税務申告する以前に「税務署は既に売上高を把握している」と考えるべきです。

マイナンバー制度もいよいよ番号通知が始まっています。マイナンバー制度が始まることで政府による個人情報の管理が強まることは明らかです。消費税の軽減税率導入にあたり、今回の財務省案が導入されるかはわかりませんが、今後マイナンバーを使っての様々な徴税強化策が実施されていくことは想像に難くありません。今まで一部の業種・業界で当たり前のように行われてきた税金を回避する手段も、今後は間違いなく通用しなくなるでしょう。

企業も個人も、所得や財産は税務署に容易に把握される時代です。早いうちから“合法的・戦略的に税金をコントロールする”という思考に切り替え、頼れる専門家を味方につけるのが、最も賢い選択ではないでしょうか。

この原稿を書いた後、10月13日に政府・与党は財務省案を白紙撤回する方針を固めたとの報道がなされました。

 

いまどきの家計簿とクラウド会計ソフト

私、家計簿を付けています。

具体的にお伝えすると、最近TVでCMも流れている「マネーフォワード」というクラウド型の家計簿サービスを利用しています。既にご利用されている方も多いかもしれません。

「マネーフォワード」の運営会社は、「MFクラウド会計」というクラウド会計ソフトも提供しており、簡単に言えば「マネーフォワード」はクラウド会計ソフトの家計簿バージョン。

基本的な機能は無料で使用でき、有料バージョンは500円/月です。

私が家計簿を付けているのは職業柄と思われてしまうかもしれませんが、研究活動の一環で始めました。

なぜなら、私が「マネーフォワード」を使い始めた頃は、法人用のクラウド会計ソフトは発展途上段階で、家計簿のような個人向けサービスの方が自動連携機能(銀行、クレジットカード、年金、ネットショッピング、マイル、電子マネーなど)が充実していたからです。

また、スマホのアプリもあるので、いつでもどこでも使用できるというメリットがあります。どうせやるなら徹底的にと、取り込めるデータは全て「マネーフォワード」に連携させ、極力現金を使わないように決済方法を変更しました。

そして、この家計簿サービスは予算も登録できます。

月々の食費や日用品、交際費の予算を登録しておくと、「あと15日・残り64,686円」のように項目ごとに残り予算枠や消化額が表示されます。

私の場合、モバイルSuicaやクレジットカード決済、銀行口座の引落、アマゾンでの購入データが自動的に取り込まれ、数少ない現金支払いはスマホですぐに入力することにより、ほぼリアルタイムの家計簿が出来上がり、その時点での予算消化額などが表示されます。

これらは、機能だけを考えれば驚くようなものではありません。当然と言えば当然の機能です。しかし、現状の会計ソフトにはリアルタイムに予算消化額を管理する機能はありません。

ここまでのお話で何をお伝えしたいかと言うと、クラウド会計ソフトの次のステージが、経営計画や予算管理にあるということです。そして、その先行バージョンとして「マネーフォワード」のような家計簿サービスが存在しています(少なくとも私はそのように捉えています)。

もちろん、家計簿サービスとクラウド会計ソフトは全く別物なのですが、いまだクラウド会計ソフトでは実装されていない機能が家計簿サービスには存在します。

企業における月次決算というのは過去会計、つまり既に終わったことについて記録する業績管理。これに対して経営計画は未来会計、目標とする業績を定めるもの。この過去会計と未来会計をつなぐものとして、モニタリングと言われる予算実績管理があります。

しかし、月次決算が終了し、該当月の予算実績比較を行っても、タイムラグが存在します。結局、「先月はこのような結果だったね」止まり…。

「では今月からこうしよう」と決めたときには、既に月の3分の1程度は経過しており、その決定が該当月に完全に反映されることはありません。

ところが、予算の消化状況、あるいは売上の計画達成状況につき、クラウド会計ソフトから毎日又は毎週メールで配信されてきたらどうでしょう?

「今月の交際費が、予算額を大幅に上回っています。来月の交際費の予算枠は〇〇万円となりますので、注意をお願いします。」

「本日までの売上から予測される当月の目標達成度は78%です。対策をご検討ください。」

1ヶ月分の業績報告を後日まとめて受けるのではなく、都度情報が配信され、その情報について即時フィードバックが可能となる場合、目標達成度合いが高まるのは間違いありません。

つまり、経理担当や税理士から試算表を見せられ、過去の報告を受けるよりも、余程、有用であると考えます。さらに経営計画をきっちり作っているのであれば、進捗管理も容易です。

実際、freeeやMFクラウド会計では、先週のレポートという形式でメール配信が行われます。現状では利用価値のないレポートですが、内容が伴えば月次決算よりも早く結果を得ることができます。

私は、月次決算ならぬ日次決算なるものには懐疑的ですが、それがデータの自動連携可能なクラウド会計で運用され、予算の進捗管理とともに自動的に経営者に報告される形であれば、それは素晴らしいことだと思います。

現状のクラウドサービスの提供状況を考えると、現時点で最もクラウド会計での日次管理体制に移行しやすいのが、飲食業や小売業です。クラウドのPOSレジの多くがクラウド会計と自動連携しているので、クラウドのPOSレジとクラウド会計ソフトのセットで導入を図るケースが増えてきました。

これに対して、建設業など個別原価計算が必要な業種は当面実現が難しい状況です。

家計簿サービスに話を戻すと、「マネーフォワード」では利用者のお金の使い方を勝手に診断する機能があり、同サービスの利用者のうち、同程度の収入の人のお金の使い方・予算、毎月の貯蓄金額なども教えてくれます。

クラウド会計ソフトについては、クラウドで利用できる・銀行口座が自動連携する等がフォーカスされますが、真の力を発揮するのは利用者が増えて、データが蓄積されてからです。

つまり、利用企業間での業績ランク付けやAIでのアドバイザー機能まで実装してきた時、会計ソフトが業績管理及び分析ソフトに発展します。

お伝えしたように、家計簿サービスで既に類似の簡易機能が実装されているため、何ら障害はありません。

クラウド会計ソフトにて、いつ頃このような機能が実装されるのかは分かりませんが、それほど遠くない時期ではないかと考えられます。これは技術的な問題ではなく、開発に人員を割けるか程度の問題だからです…おそらく。。。

クラウド会計ソフトというものは、現時点で皆さまがイメージされている機能とは別のところに価値があります。今回お伝えしたのはその一端ですが、家計簿にさえ今回お伝えした機能があります。

クラウド会計ソフトの利用はまだ無理という方も、「マネーフォワード」などの家計簿サービスで、これから広がるであろうお金の管理方法を体験されてみてはいかがでしょうか?

 

意外と忘れられている退職金課税の改正?!

社長:先生、4年前に設立した子会社なんですが、息子もしっかりしてきたので、今期でこの子会社の社長を退任して、息子に承継しようと思います。

税理士:なるほど、いいですね!親会社の承継へ一歩前進ですね。

社長:そうですね。ところで退職金を取ろうと思いますが、退職金の税金は安く済みますよね?

税理士:いいえ。今回の退職で退職金を取っても、1/2課税にはなりませんので、高くつきますよ!

社長:ええっ?

先日、このようなご質問を当社の「セカンドオピニオン」にて受け付けました。

この退職金の改正は、平成24年度の税制改正によるもので、H25年1月1日から既に適用されています。

毎月支払われる給与などの改正ならともかく、一生においても通常は1度か2度程度、人によっては1度も貰うことがない退職金ですから、仕方ないかもしれません。

一般的な中小企業でも、役員に対して退職金を支給することは、そう滅多にはないことでしょう。

そこで、今回は改めてこの改正の中身を再確認してみます。

1/2課税なし!!
所得税において退職金課税の優遇面は、なんといってもいわゆる「1/2課税」が適用できることです。
要するに、2,000万円の退職金を貰っても課税されるのは、その1/2相当である1,000万円となるということです。
(実際には、勤続年数によって退職所得控除がされるので、さらに低くなります)

言い換えれば、2,000万円に対し課税された場合には、例えば30%の税率が適用される人でも、その1/2である15%の税率で済むということになります。
(実際には1/2にした後の金額に対し累進税率を適用しますので、厳密には1/2にはなりません。)

しかし、この改正により、勤続年数5年以下の役員等に対する退職金に対しては、この「1/2課税」の適用がされないこととなりました。

対象は役員のみ!!
前述の通り、この5年以下の縛りと1/2課税の不適用の対象となるのは、「役員等」となります。
言い換えれば「兼務役員さん」も、その役員部分に関してはこの適用の対象となります。

いわゆる、取締役総務部長、取締役経理部長、取締役工場長などの役職の方は、一般的には「兼務役員」となりますが、こういう方への退職金の支給に関して、役員部分と従業員部分の混合で退職金を支給する場合には注意が必要です。

中小企業でも、定年の数年前に使用人から兼務役員に昇格、あるいは本役員に昇格させ、3~4年程度で退職となる人事はたまに見受けられます。

この場合には、最低でも5年以上は役員として勤務させるか、退職金規定をうまく作成し(5年以上在籍した役員のみ支給対象とするなど)、従業員としての退職金のみ支給するなどの工夫が必要かと思われます。

最近は某企業では、女性役員の比率を引き上げるなど、女性の進出も多くなってきていますが、このような税制面を考慮した役員人事制度にすることが、会社の経営にも関わってくるものと考えます。

あなたの会社ではいかがですか?
上記に当てはまる可能性があれば、この機会に規程を見直されてみてはいかがでしょうか。

 

役員報酬改定時期に自社を長期で考える

配偶者控除の見直し、ベビーシッター代の所得控除の検討などなど、給与をめぐる所得税関連の改正や議論が多くされています。平成25年分以後に上限が定められた給与所得控除については来年、再来年と漸次引下げられることが決まっています。

個人への課税が強化されている一方で法人税率が下げられていることは、もうよろしいでしょう。そのことは解っているものの、役員報酬の改定時期のたびに、「今、税率って何%でしたっけ?」と顧問税理士に聞いている方もたくさんいらっしゃるはずです。では現在、法人と個人の税率はどの程度になっているのでしょうか。比較しながら改めて確認していただきたいと思います。
まず市県民税・事業税を含めた法人税の実効税率を確認しましょう。

(図:平成27年4月1日以後に開始する事業年度)

仮に法人の所得が800万円であった場合、上記の実効税率にしたがって計算した法人税額は1,783,600円です。所得に対する法人税の比率は【22.295%】です。法人の所得が2,000万円であれば、法人税額は5,903,200円、所得に対する法人税の比率は【29.516%】です。5,000万円の所得では【32.4%】程となります。

では、続いて個人の税金を見ていきましょう。税金には当然、社会保険料も含めて考えます。ご存知のように社会保険料は企業と本人で折半します。従業員の場合は自らが負担する社会保険料だけを考えれば良いでしょう。しかし、経営者が自らの役員報酬を考える時、従業員と同じように企業が負担する社会保険料を分けて考えて良いのでしょうか。

中小企業の経営者にとっては【企業が負担する】=【経営者本人が負担する】ことと同じではないでしょうか。実際、多くの経営者はそうした感覚を持っていらっしゃいます。であれば当然、企業が負担する社会保険料も役員報酬にかかる税金の1つと捉えて考えるべきなのです。

(図:役員報酬月額に対する各種税金)

この表は役員報酬の月額に対する税金を集計したものです。各種税金合計(1)と税負担割合(1)は通常どおり、会社負担分の社会保険料は考慮していません。しかし、各種税金合計(2)と税負担割合(2)については先に述べたとおり、会社負担の社会保険料も役員報酬にかかる税金の1つと考えて税負担割合を算出しています。

どうでしょうか?一瞬目を疑った方もいるはずです。月額20万円の役員報酬ですら、その税負担率は33%を超えています。いかに社会保険料の負担が重いかが分かります。

この結果を見ると現在の税制下で、ある程度、税負担の最適化を求めた場合、役員報酬は“そこそこ”にして会社に内部留保していくのがベターではないかという至極まっとうな考えにたどり着きます。しかし、今回考えていただきたいのは、内部留保のさらにその先です。

ここでお伝えしたいことは、現在の税構造においては、来期1年間の売上云々などではなく、「長期的な視点で企業経営を捉え、その一つとして役員報酬を決めていく必要がある」ということです。つまり、長期的な視点で自社の経営スキームを組みつつ、税制の変化や自社の変化に合わせて毎年そのメンテナンスを行い、それに合わせて役員報酬を改定していくことになります。

例えば事業内容的に自分の代で解散するであろう会社の場合であれば、税負担を覚悟のうえで会社に余計なお金は残さず、早い段階から個人に財産を移転していくのも一つです。しかし、既に退職(解散)時期がそう遠くない段階であれば無理に今、高い税金を払って役員報酬で取らずとも、今から法人税法上認められる退職金の額を予測し、計画的に会社に内部留保を行い、所得税・住民税の優遇税制の恩恵を受けられ、社会保険料もかからない退職金で取ってしまうというのも非常に有効です。

長年の経営により個人の財産もしっかり蓄え終わっているようであれば、役員報酬を抑えて、会社の内部留保をより厚いものとしていき、次世代へ引き継ぐ準備をするという戦略もあるでしょう。

しかし、実際にこうした長期的な視点で物ごとに備えて役員報酬を決めている中小企業は多くありません。来年1年や目の前の数年のことだけ考えて決めているケースが圧倒的に多いのです。

個人課税の強化が現在進行形で行われ、法人税の引下げも進む現在、私たち中小企業は、経営者個人と企業の「現在のステージ」と「今後進むべきステージ」をしっかりと捉え、長期的な戦略を練っていかなければなりません。税務戦略も長期で行うべき時代なのです。
次の役員報酬改定時期には、是非じっくりと考えてみてください。

 

副作用

「相続税対策にお孫さんを養子にしませんか?」

専門家から、こんな提案を受けたことのある方、たくさんいらっしゃるはずです。
手続きは簡単、実親との親子間関係もそのまま、もともと名字が同じなら養子縁組によって孫の名前が変わることもありません。それで相続税の対策になるならと、実親も前向きに検討するケースが多いようです。しかし、未成年の孫を養子にする場合には、少し注意が必要です。

ご存知のように未成年者には「親権者」がいます。通常は実父母が親権を持っています。離婚裁判などで親権を争う話などを聞く機会がありますので、比較的よく知られた法律用語です。

もうピンと来ましたでしょうか?
そう、「未成年者である養子の親権は誰にあるのか」です。

実は未成年者を養子にした場合、その親権は実親から養親に移ってしまいます。
つまり法律上、実父母には実の子に対する「親権」が無くなってしまうのです。

相続税法上、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までを養子とすることで法定相続人の数に含めることができます。そして相続人が増えることにより相続税法上、次のような効果が生まれます。

  • 相続税の基礎控除(非課税枠)が増える。※1人当たり600万円
  • 生命保険金の非課税枠が増える。※1人当たり500万円
  • 退職金の非課税枠が増える。※1人当たり500万円

孫養子の相続税は20%割り増しになるというデメリットもありますが、通常は上記のメリットの方が大きく作用しますので、手続きも簡単な「孫養子」は一般的な相続対策として幅広く知られ、利用されています。

しかし、しかしです。前述のように、養子となった未成年の孫の親権は養親に移ってしまいます。
さて、実の親の心情として、実の子の親権を持たないというのは、どうなのでしょうか・・・
私は3人の娘(未成年)の親です。あくまで私の個人的な意見ですが、仮に私の親が資産家で、娘を私の両親の養子とすることで、相続税を減らせたとしても我が子の親権が自分にないという状況には大きな違和感を得ます。親権が私になくても、何かなければ特に問題は起きないかもしれません。しかし、それでもやはり私の子の親権は私が持っていたいです。

もちろん、相続税対策としてはとても有効ですし、考え方は人それぞれです。こうしたことを、ご理解のうえで未成年の子を両親の養子にするのであれば問題ありません。
しかし問題なのは、この養子と親権の話、意外と知らない方が多いのです。

専門家に勧められ、我が子を両親の養子にすることに同意したが、後から自分には親権がないことを知ってショックを受ける・・・こんなことは避けなければいけません。

もちろん何も起きないまま、子(孫)が成人すれば親権の話は関係なくなります。
しかし、逆に養子となった子(孫)が未成年の間に養親(祖父母)が亡くなってしまった場合でも、その親権は実父母には戻りません。この場合には家庭裁判所で後見人を選任しなければならないのです。

繰り返しになりますが、孫を養子にすることは相続税対策として有効であることは事実です。しかし、養子縁組のような法律行為を行おうとする場合、どのような法律効果をもたらすのかをよく理解したうえで実行していただきたいのです。

もちろんお金は大切です。しかし、それ以上に大切なこともあります。こうしたことは、一人ひとりの価値観によるところが大きい問題ですので、正解は人それぞれです。
相続税に限らず、節税効果を期待する行為の裏側には副作用のようなデメリットが発生することが少なくありません。メリットもデメリットも過不足なく分かり易く説明してくれる、頼れる専門家を味方につけ、みなさんにとって最適と考えられる選択をしていきましょう。