改めて、今後の税理士の役割とは

気が付けば、私が税理士業務に携わってから20年以上たちました。

この間、法律や使用するソフトウェアなどにさまざまな変化がありましたが、基本的な仕事の仕方は驚くほど変わっていません。

思い起こせば、私が新人のとき、はじめて担当したお客様の帳簿にだらしなさを感じ、社長夫婦にお説教をしたことがあります(自分の親と同世代でした)。

今では「生意気を言って、大変申し訳ありませんでした」という気持ちでいっぱいですが、その後、そのお客様とはより深くお話しができるようになり、頼ってもいただけました。

そして、いまでも、お客様との最初の仕事は「正確な帳簿付け」の指導から始まります。

特に現在は、各システムを連携させながら帳簿を改善していく必要があるので、落ち着くまで数年かかる場合も少なくありません。便利な反面、うまく連携させないと泥沼です。

従って、どんなに便利なツールが出てきても、私ども業界人が、中小企業のお客様と継続的に良い関係、良いお仕事をさせていただくには、以下しかないと考えております。

  • まずは正確な帳簿を付けていただく
  • 正確な帳簿から分析を行い、改善点を検討する
  • 帳簿から確認できない情報は、お客様との会話、お客様の現場を回って把握する
  • お客様に改善点を伝え、行動していただく
  • その結果を、税金として計算する
  • これらを繰り返す

ただし、作業時間自体はどんどん少なくなってきました。

正確な帳簿付けは既に会計ソフトの機能で実現し始めていますし、分析および改善点の抽出も実現可能です。電子データから帳簿を作成するようになれば、税理士が確認するよりも正確、かつ迅速です。

また、税理士しかできないと思われがちな申告書の作成(=税金の計算)は、ほとんどの中小企業のレベルでは自動作成が可能な時代が近づいています。今でも十分できると思いますが、まだそのようなシステムはリリースされていません。

自動車でいえば、「自動運転はある程度可能だけど、まだ法整備がされていないし、責任の所在があいまいなので、提供しておりません」というレベルと同じかと思われます。

仮に、申告書の作成が自動化されれば、税理士不要論が台頭してもおかしくはありません。自動作成された申告書が間違った場合には、自動車保険のように損害保険で担保できるはずです。

そのため、最終的には税理士が担ってきた大半の仕事は会計ソフトベンダーが提供できるという世界が待っています。

現在、会計ソフトベンダーは「形式上」税理士を立てて付き合っていますが、この力関係が遠からず逆転するでしょう。

あとは時間軸の問題です。

電子保存やインボイス制度、各種申請の自動化および電子化など、法律とITの親和性がさらに高まってくれば、ゲーム・チェンジです。

税理士よりも会計ソフトベンダーの力が強まってくれば、スマートフォンの機種変更のように税理士を変える時代が到来してもおかしくはありません。

税理士は、会計ソフトベンダーから紹介される業者という位置付けになるでしょう。
(実は既に始まっています)

それでも…

オーナー経営者が考えることは、会計ソフトベンダーの担当者には理解できません。AIがオーナー経営者を理解する時代がくるとも思えません。

つまり、税理士しかできない役割は、必ず残ります。

税理士は、システムもAIもアクセスできない、中小企業の核であるオーナー経営者にダイレクトにアクセスできるのが最大の強みです。

これは私が税理士であるからではなく、これまでの経験上、税理士が時代について行ける限り、相談相手として適任であるのは間違いないと確信しているからです。

ただし、皆さまは税理士に対して、貪欲に相談をぶん投げる必要があります。
淡泊な関係では何も生まれません。

皆さまも、ぜひ税理士を良き相談相手としてお使いください。

皆さまの経営が変わるはずです。

「専門家」の罪

三井住友銀行は今月15日、相続、健康相談などをワンストップで提供する高齢者支援サービスを立ち上げると発表しました。サービスは提携先の「専門家」を通じてサブスクの仕組みで提供するそうです。

日々、セカンドオピニオンなどでご相談をお受けして感じるのは、世の中には多くの「専門家」がいる一方で、その専門家が必ずしも「適切な相談相手」として機能していないという事実です。

私はここ半年で、信託銀行による遺言信託がらみの相続の相談を2件受けました。

ご存じのように遺言信託とは、信託銀行などが遺言書作成の相談から遺言書の保管、遺言書の執行まで一貫してお手伝いしてくれるサービスです。

今回、いずれのケースも残された遺言に不公平感を持つご相続人がいらっしゃり、争いに発展する一歩手前でのご相談でした。

愛するご家族に争いが生じないことを願い、良かれと思って残した遺言状。故人の遺志がつづられる付言には「兄弟仲良く」と書かれています。

しかし、過去の経緯を含め、ご家族のご事情をお聞きすると残念なことに「争いが起きてしまうことが避けられない」内容の遺言状になってしまっていました。

悔やまれるのは、初めからこのご家族をよく理解した「適切な相談相手」が力になっていたなら、容易に争いを避けられる形を作れたであろうということです。

税理士は相続税の「専門家」です。お金の「専門家」である銀行員には優秀な人がたくさんいますので税理士よりも相続税に詳しい人もいることでしょう。

しかし、いずれの「専門家」も皆さんにとって「適切な相談相手」であるかは別のお話しだということを理解していなければなりません。

相続において最も難しく、そして大切なのは皆さんの「感情」。
誤解を恐れずに言い切ってしまえば、税金なんて二の次です。

どんなに仲の良いご家族でも、ご相続に際しては必ず一人ひとり別々の感情や想いを抱いています。それはご家族がたどってきた歴史によって積み重ねられた、とてもとても複雑なもの。専門家と呼ばれる人間が専門知識だけで簡単に量れるものではありません。

複雑な事情を抱えがちな中小企業経営者のご相続をお手伝いするにあっては特に、そうした歴史をきちんと把握したうえで皆さまの感情に寄り添うことができなければ、役割を全うすることはできません。法律うんぬんよりもまず「その会社、そのご家族の専門家」でなければならないのです。

ですから私たちは、セカンドオピニオンとしてスポットでのご相談をお受けすることはあっても、直接的なご相続のお手伝いは顧問先様以外お断りしています。

中小企業経営者には「適切な相談相手」となる「自社の専門家」の存在が必要です。
簡単には見つからないかもしれませんが、諦めずに探し求めてほしいのです。

ただし、ただの「専門家」を「自社の専門家」に育てあげるには皆さんの力も必要です。
普段から密にコミュニケーションを取り、自社のことをよく知ってもらう努力を忘れずに。

プロフェッショナルか否か

一時支援金の申請が始まりました。

1月に発令された緊急事態宣言の影響を受けた事業者に支給されるものですが、時短営業の協力金を受ける飲食店などは対象外となるため、要件を充たす企業はそれほど多くは無いと思われます。

ただ、不正防止の観点から登録確認機関(税理士、金融機関や商工会など)の事前確認を受けたうえで申請することになりました。そのため、登録確認機関としての資格を有する機関には国から“強め”の協力要請が出ています。

3月15日時点での登録状況は以下のとおりで、士業等には中小企業診断士や行政書士士などが含まれています。

全国の税理士事務所数は3万弱程度のため、登録状況に他の士業が含まれているとしても現時点で2割前後の登録数と考えられます。

登録機関が事前確認を行った場合、国から事務手数料として1,000円/件が支払われます。事務手数料を辞退した場合は申請者に対して自由に手数料を請求できますが、国が金額を決めている以上、申請額の1割というような請求は難しいところでしょう。

「この忙しい時期に、ボランティアなんかやっていられない!」

これが有資格機関の正直な感想であるはず。そして、自らのお客様に対して「うちは対応しないから、よそで確認してもらってくれ!」という税理士が意外に多いと耳にしました。

個人確定申告の詰めの時期であり(今年は4月15日まで延長されました)、続けざまに3月決算法人の確定申告というタイミングでもあるため、気持ちは分からなくもない…。

ただ、お付き合いがあるお客様に対して協力しない、あるいは協力する余裕すらないというのはすごい感覚だなと感じております。

また、事業再構築補助金についても「顧問税理士がやらないと言っている!」などのご相談を実際に受けております。

確かに給付金や支援金と異なり、ノウハウが必要とされ、膨大な手間が掛かる補助金申請については非対応も致し方がないとは考えます(誤解なきようにお伝えすると、補助金の申請にはそれなりの報酬が発生するのが一般的です)。

しかし、事業計画の作成まで必要となると顧問税理士が適任であることは間違いなく、それが無理であれば窓口を広げている他の支援機関に依頼が殺到するはず。しかし、大量にさばける支援機関はごく一部と考えられるため、順番待ちによる補助金難民企業が多数出ることが予想されます。

今後、不正防止、生き残りをかけた中小企業を深く支援するため、国が認める支援機関の関与が必須となるものが多くなってきますが、その認定支援機関の代表格である税理士がこのようなスタンスだと雲行きが怪しくなってきます。

そもそも、1年前から始まった新型コロナ関連の支援策につき、各専門家の対応に疑問を感じている中小企業の経営者が多いのではないでしょうか。

雇用調整助成金の開始時期における社労士からの拒絶反応もなかなかのレベルでしたが、コロナ禍でも積極対応していた専門家は拡大志向であり報酬目当てでもあるようでした。

当然ですが、毎年合格者が増えているのですから各専門家の人数は増えています。しかし、プロフェッショナルの割合が急速に減少していると感じるのは私だけでしょうか?
私どもはコロナ禍で専門家の化けの皮が剥がれ始めたとすら考えております。

そういう当社も、顧問税理士のご依頼をいただいても元々お付き合いがない企業様からはお引き受けしていません。現在はセカンドオピニオン契約にて継続してご相談いただいているお客様からご依頼いただいた場合のみ検討させていただいている状態です。

いまさらですが、コロナ禍のずーっと前から経営環境が急速に変化していました。そのため、お客様一社一社に掛ける時間やエネルギーが確実に増加しており、より丁寧に、より深くお付き合いしていかなければ良い仕事はできないと考えております。

これはプロフェッショナルであれば共通認識であるはず。

コロナ禍で今も苦しんでいる中小企業の中には、プロフェッショナルとお付き合いしていなかったことが原因であることも多いように感じます。

今後はより混迷が深まる可能性がありますので、皆さまも安心してお付き合いできるプロフェッショナルは確保されておいてください。

いざというときに「うちはやりません」、「うちはやれません」では何のためのお付き合いなのかということになってしまいますので…。

なお、これはあらゆるビジネスに共通の課題だとも考えております。

コロナ禍ですが税務調査の時期、到来

本来であれば税務調査本番の時期です。

先月10日は税務署の定期人事異動発令日であることから、7月から書類審査が始まり、例年であれば9月頃から税務調査が本格的に実施されます。

さて、現在のコロナ禍にあって、税務調査はどのように実施されるのでしょうか。

税務専門誌の国税庁への取材によれば、納税者から口頭等で明確に同意を得られた場合において税務調査をするといった、納税者の状況にも十分配慮したうえで、税務調査は進められるとのことです。

令和2年7月~令和3年6月事務年度における当面の調査方針

  • 納税者の個々の事情等を十分に考慮
  • 納税者の明確な同意があれば調査を実施
  • 企業がテレワークを実施している場合、必要に応じて調査官と相談し、担当者の出社日等に合わせてスケジュール調整。調査対応のためだけの出社は求めず。
  • 所得税、法人税、消費税、相続税等で同じ対応
※出典:税務通信 3610号

日本の現状を鑑みれば、おそらくは実地調査に入る前の机上調査の段階で、税務署はいつも以上に入念な検討を行い、実地調査が行われるのは、高確率で申告漏れなどが疑われる事案に絞られることが予測されます。

そのため、通常の企業についての実地での税務調査は、申告漏れなどが強く疑われるケースを除いて、当面の間はかなり減ると考えていいでしょう。

ただし、「巣ごもり需要」によって業績が急激に伸びている業種については、今後、重点業種として狙われていく可能性があるので注意が必要です。

いずれにしても、コロナの影響による売上減少と闘いながら、感染者を出さないように最大限の注意を払って経営を行っているところに、素性の知れない調査官を会社に入れることは極力避けたいところです。

私が顧問税理士であれば、明確な理由が示されない限り、現状、特に東京での税務調査は断りますし、受けざるを得ない場合には、抗議の意味も含めて外に机を出して、そこで調査をしてもらうくらいのことはします。

知っておいていただきたいのは、今回に限らず、もともと任意の税務調査については、こちらの事情に応じて日程調整、交渉を行うことができるということです。私は場合によっては調査日数の交渉さえもします。

特に今年度については「納税者の明確な同意があれば調査を実施」するというのが、国税庁の基本方針のようですので、感染拡大防止のための策を講じて懸命に営業を行っているところに、いつ何処に呑みに行っているかも分からない調査官を自社に入れるのは不安だとの理由で調査の無期延期を主張するのは当然のことです。

例年であれば、税務署から税務調査の電話連絡が顧問税理士に入りだす頃です。

万一、このコロナ禍にあって税務調査の連絡が来た場合には、この状況下で調査を行う理由を明確に示してもらい、それがない場合には無期延期を願い出るなどの対応を顧問税理士にきちんと取ってもらうようにしましょう。

税理士の機能不全

中小企業の経営状態・財務状態を確実に把握できる「ポジション」に立てる外部関係者は税理士です。

断言します。

税理士は税の専門家ですが、経営の専門家ではないと言われます。当然、資金繰りの専門家でもありません。

しかし、事実を把握するという点に関して専門は無関係。

専門家ではなくても、起こっている事実に対していち早くアクションを起こせれば問題の80%は解決します。

経営者であれば当然アクションを起こすでしょうが、何をどのようにという意味においてその質が変わります。

だからこそ税理士が強力な武器になる。

そのようなポジションにいる税理士が実際に事実を把握し、それを重要な問題と捉えて経営者と共にアクションを起こす…。このような税理士とお付き合いしている中小企業の生存率は極めて高いと思われます。

コロナ禍のような未曾有の危機が訪れたときにある程度面倒を見てくれるのは国。生存に必要なお金を貸してくれるのは金融機関。そして、そのような危機が訪れる前に準備ができるのは経営者と税理士です。

これが今回のコロナ禍においても中小企業の生死を分けた可能性がある言っても過言ではありません。

税理士が強力な武器になるための必要条件を挙げれば以下のとおり。

  • 税理士が、お客様に起こっている事実を常に把握すべきと考えている
  • 皆さまが、事実を把握できるようなレベルの仕事を税理士に依頼している
  • 税理士に、事実を把握できる能力がある
  • 税理士が、把握した事実を無視しない

「いやいや、税理士に多くを求めすぎじゃないの?」

そのとおりです。

ですが、求めてみないとその税理士の覚悟は分かりません。

「私にはそこまでできません…」と言われたら、次善の策を検討するのが経営者の仕事です。中には「私にお客様の背中を預けてください!」と言い切ってくれる税理士がいるかもしれません。

ここで本当に背中を預けられるかどうかを見極めるのは皆さまの仕事です(私に任せてください!と言いつつ、1年後に平気で転職する担当者が腐るほどいます)。

私どもは、このコロナ禍で税理士が機能していない現実を改めて認識し、残念な気持ちでいっぱいでした。

毎度の例えが飲食業で心苦しいのですが…税理士が飲食業のお客様からいただいている報酬は全業種で最低クラスです。規模が比較的小さい・手間も掛からない点も関係していますが、それでも最低クラスです。

税理士業もビジネス。報酬が極めて低いお客様の仕事は、いかに業務効率を上げるか「だけ」を考えます。お客様に起こっている事実にアプローチするという「とても手間が掛かる仕事」をボランティアでやる余裕はありません。

つまり、税理士が有効に機能しない理由の一つに報酬の低さがあります。コロナ禍で大打撃を受けた代表格である飲食業が典型であり、税理士も「お客様に何かがあったとき、どのようなことが起こるのか?」という準備を行っていませんでした(それは受け取っている報酬からは業務範囲外だと考えていたことでしょう)。

その報酬の低さから、経営者は税理士に何も期待をしていないし、税理士も何かを期待されているとは考えていない…このような構造から起こった悲劇の一面があると考えます。

なお、最近は「なんちゃってコンサルティング」を行う税理士が増えてきましたが、その主な動機は低い税理士報酬のカバーと自分たちの仕事がなくなっていくという危機感からです。残念ながら、本当にお客様のことを考えた末のサービスではありません。

このような動機から始まったコンサルティング業務がどのような結果を招くか…。さらに効率性を考えた「なんちゃってコンサルティング」がどこまで長続きするか…。

税理士が効率を追い続けることは必然です。AIに仕事を奪われる職業の筆頭格です。

だからといって、お客様に起こっている事実を把握しようという税理士が増えるわけではありません。コンサルティングを行おうという税理士が増えても、必要条件を充たすかどうかは別問題です。

それでも経営者の皆さまは、今後どのような税理士と、どのように付き合っていくのかを真剣に考える必要があります。

例えば、私どもが真剣にお客様とお付き合いする覚悟として、必要条件以外にも以下を守ることにしています。

  • お客様と同エリアの同業種の企業(つまり競合企業)とは契約しない
  • お付き合いするお客様の数は制限する
  • セカンドオピニオンにて一定期間お付き合いをして、
    お互いのことを理解した後でないと顧問契約は結ばない
  • 役員が必ずお客様を担当して、中長期的に最善となるサポートのみを考える

お分かりのように、この覚悟により私どもが犠牲としているものがあります。それ故に、お客様からいただく報酬も業界相場からはだいぶ高く設定しています。

たかが税理士、されど税理士。

「雨の日に傘を貸さない金融機関」とは言われますが、十分な報酬をいただいていない税理士については「ずぶ濡れになると分かっていても、それを伝える義務がないと考える税理士」と言えるかもしれません…。

少なくとも私どもは「コロナ禍で経営が大変ですね…。今ならこのようなお手伝いをさせていただけますが、そのためにはこの程度の報酬をいただかなければなりません」とお伝えしたくはありません。

金融機関も税理士も、皆さまの付き合い方次第です。

セカンドオピニオンの使い方

今ではごく当たり前になった「税理士のセカンドオピニオン」。
当社がWEBサイト上で顧問税理士以外の税理士に意見を求める業界初のセカンドオピニオンサービスとして「財務プライベートコンセント」を始めたのが2006年3月のこと。
今回、税理士によるセカンドオピニオンの普及に伴い、導入期の当社の役割は終えたと考え、今月末で本サービスを終了させていただくことにしました。
そこで、13年に渡るセカンドオピニオンの経験から「税理士とセカンドオピニオン」について思うところを書いてみたいと思います。
セカンドオピニオンの場合、顧問税理士とは別に料金を支払うことになりますので、多くの方は顧問税理士では解決できない難解な事例、判断が難しい特殊な事例などをご相談いただく場面を想像するのではないでしょうか。
しかし、実際はけっこう違います。
統計を取ったわけではありませんので正確な数字ではありませんが、数多くのご相談を受けてきた私の印象だと、ご相談内容の7割ほどは「そんなこと顧問税理士に聞けばいいのに!?」と思わず口走ってしまいそうな、税理士なら誰でも同じ回答となるような、ごくごく一般的な内容でした。
残り3割のうちの2割ほどは、顧問税理士の言っていることが本当に正しいのかという確認のご相談です。そして、その多くは「正しいですよ。」という結論に至るもので、顧問税理士の見解が誤っているというケースは、そう多くなかったように記憶しています。
残りの1割ほどが特殊、難解な事例や、実務経験が不足していることによって顧問税理士の腰が引けてしまうケースです。
ご相談内容をとても大雑把に括ってしまいましたが、ある意味セカンドオピニオンが本来的に有効な難しい事例の相談というよりは、顧問税理士に対してなんらかの不満や不信感を抱いてるが故のセカンドオピニオンというケースが圧倒的に多かったというのが実際です。
逆に言えば、些細なことでも何かあった時に顧問税理士にすぐに連絡を取れる関係性が築けていれば、基本的にセカンドオピニオンが必要(有効)な事例に当たるようなことは、そうはないはずと言ってよいのではないでしょうか。
当たり前かもしれませんが、セカンドオピニオンを利用しなくても済むには、顧問税理士選びが重要だということになります。
一般的に不満を抱えていても「じゃあ誰に頼めばいいのか」が分からず、税理士を変えることに二の足を踏む経営者が多いと理解していますが、不満や不信感があれば、税理士変更を積極的に検討すべきだと私は思います。
しかし、税理士も実際に付き合ってみなければ分からないことが多く、「自社にとって良い税理士」は誰なのか、どうやって探せばいいのか分からないというのもよく分かります。
顧問変更を考え、無料相談等を受けてみても、その税理士事務所の実際の仕事を見ることはできませんので、ミスマッチを繰り返す可能性が否定できず、結局不満を抱えつつも何か重大事件が起きるまで「とりあえず今のままでいいか・・・」というありがちな結論に落ち着きがちです。
そこでセカンドオピニオンを利用してみてはいかがでしょうか。
セカンドオピニオンは、顧問税理士を変更することなく、他の税理士の実際の仕事を見たうえで値踏みをすることができる絶好の機会と言えます。
しかも、現在では気の利いた事務所であれば大抵の事務所がセカンドオピニオンサービスを展開しています。
もちろん料金はかかりますが、長い目で見て自社に合う顧問税理士を探すためのコストと考えれば、そう高くはないはずですし、実際の仕事を見ずに自社に合わない顧問税理士と契約してしまうリスクを考えれば、メリットは小さくないはずです。
当社ではWEB上のセカンドオピニオンサービス「財務プライベートコンセント」は終了させていただきますが、新たなサービスとして、対面型個別相談形式による「税理士セカンドオピニオン」を提供させていただいておりますので、今後はぜひこちらをご利用ください。

知ってますよね?税理士は皆さんの幸せなんか願っていませんよ!

『この先生、お客様の幸せなんて考えてないな!』と強烈に思った出来事がありましたので、この機に話をさせていただきます。
先日、付き合いのある社長さんから電話が入りました。
いつもは軽快な調子で話をされる社長ですが、今回は声のトーンも低く重々しい内容であることは直ぐに感じとることができました。
私 「社長、どうされました?何かありましたか?」
社長「先日ご相談させていただいた、“アレ”なんですが顧問の税理士からそんなことしちゃだめだって言われたんですよ・・・」
社長「なんでダメなんですかねぇー?」
私 「顧問の先生は何と言ってるんですか?」
社長「同族会社だから税務署から寄付と言われるとかで・・・」
私 「….そういう話ですか、困ったものですねー」
今回私がお話するのは、この社長の相談内容についてではありません。
税理士もしくは、税理士事務所の職員の『姿勢』についてです。
私どもが顧問のご依頼をいただくお客様の中には、まだ会社経営の経験が浅く、どのような節税方法があるのかさえ全くわからないという方がいらっしゃいます。
そのような経営者が知合いの経営者から飲み会の席で節税話しを小耳にはさみ、後日そのことを税理士に「なんで教えてくれなかったのか?」と尋ねると必ずと言っていいほど次のセリフがかえってきます。
「聞かれなかったので言いませんでした。」
「(節税の)相談がなかったので・・・。」
いかがですか?
それがわかっていて相談できるくらいなら、顧問なんか頼まないよ!と言いたくありませんか?
でも、残念ながらこれが税理士業界の現実です。
恥ずかしい話ですが、私もこのようなことでお客様から叱られたことはあります。
その一方で、ある程度経験を積んだ経営者ともなると、自ら節税方法を考えて税理士にその実行の可否を相談して来られるようになります。
今回の社長の相談も、そういったものの一つでした。
ただ、今回は節税対策もさることながら、『赤字経営からの脱却』が主眼となったご相談でした。
「会社が赤字になっているので、コスト削減できるものはないか?」というものです。
そこで、社長は自らが会社からもらっている事務所家賃を大幅に下げることとしたのです。
会社が毎年のように赤字になっているのに、オーナー経営者に役員報酬+家賃を支払っていては、個人では納税をして、会社は資金繰りに苦しむ結果となります。
今回の判断は、まさに会社が生きるか死ぬかの話であって、さらに言えば、そこで務めている従業員全員の生活がかかった話です。
そのような場面にもかかわらず、だれよりも会社の状況を知っているはずの顧問税理士が、税務署から寄付と言われる可能性があるからダメだなんてよく言えたものだと逆に関心します。
この手の税理士が真っ先に考えているのはお客様の幸せではなく、間違いなく自分の『保身』です。
我々は、それが違法な行為でもなければ身を挺して会社と社長の代弁者として、税務当局と対峙するのが顧問税理士の役目だと考えています。
こうした顧問税理士の不可思議な言動にお悩みの方は是非弊社の『税理士セカンドオピニオン』をご検討ください。
一般的な相談はもちろん、今回のような顧問税理士対策もアドバイスしています。
最後になりますがもう一言だけ言わせてください。
「それを言ったのは本当に所長先生ですか?」ということです。
それは税理士はそんなこと思っていなということも、十分に考えられるからです。
重要な事項にもかかわらず、所長(税理士)の判断も仰がず、中には自分の判断だけで不適切な受け答えをする職員(従業員)もいます。
皆さんからすると、それも含めてお前のせいだとおっしゃりたい気持ちはわかります。
それでも、重要な事項については担当者ではなく所長である税理士に直接相談してください。
今回のケースが所長先生の言葉でないことを祈ります。

書面添付のキキメ

【3.3423%】。

100件に対して、3件ちょっと。
平成26事務年度の東京国税局管内での法人税の申告書提出数に対して、実地の税務調査が行われた割合です。

【0.0426%】。

10,000件に対して、僅か4件ちょっと。
こちらは同じく平成26事務年度の東京国税局管内での法人税の申告書提出数のうち、【書面添付】を実施した企業に対して、実地の税務調査が行われた割合です。

これは税理士会と東京国税局との定例協議会において東京国税局が発表した数字です。
税理士が書面添付をして提出した申告書に税務調査があったのは、申告書全体の0.0426%という極めて低い数字に改めて驚きました。

このメルマガでも何度かご紹介させていただいていますが【書面添付制度】とは、税理士による申告書の、言わば「品質保証書」です。「この項目について、この資料を、この程度確認していますので、この申告書に間違いはありませんよ。」という内容の書類を申告書に添付し、太鼓判を押して税務署に提出するものです。

何度かお伝えしているように、この「書面添付制度」には大きなメリットがあります。
書面添付を実施している会社への税務調査は、事前に顧問税理士に対して「意見聴取」を行ってからでなければできません。
ちなみに東京国税局の平成26年事務年度における意見聴取件数は約1,500件で、書面添付した申告書の3.2%ほどです。

そして、この事前の意見聴取で税務署が納得すれば実地の税務調査は行われません。もちろん意見聴取をしてもなお、実地調査を行わせて欲しいということもありますが、書面添付を実施することにより、実地での税務調査が省略される可能性が生じます。

東京国税局の平成26年事務年度において意見聴取の結果、実地調査が省略となった件数は意見聴取1,500件のうち1089件、調査省略割合は74.6%です。書面添付の結果、意見徴収の対象となったとしても、実地調査が省略される可能性が高いことがわかります。

しかし、納税者にメリットがあると同時に税理士にはリスクも生じます。書面添付をし、確認したはずの範囲に虚偽記載があれば税理士は懲戒処分の対象となります。
つまり税理士は、自身の資格を懸けて書面添付を行っているのです。
その為、書面添付をしたがらない税理士が多いのが実情です。それはそうです、自身の資格が懸かっているのですから、そう簡単にはできません。

書面添付を積極的に行わない税理士がほとんであることは、東京国税局において平成26年事務年度の法人税の書面添付割合6%いう数字が物語っています。

とはいえ税務調査に入られる確率がこれだけ下がるのであれば、顧問税理士に書面添付してもらいたいと考えるのが普通でしょう。

私は「書面添付」を行う大前提として、納税者が自社で記帳を行っていることや、月次決算をきちんと行っていること等、会計帳簿に信頼性があることが必須であると考えています。
そのうえで、当たり前ですが法律に沿った税務処理を施します。
少なくとも弊社では、これらがきちんと出来ていないお客様への書面添付はさせていただいておりません。

また、私は帳簿だけでなく、私たちと経営者様との間にきちんとした信頼関係が築けていることも、書面添付をさせていただくうえで、とても重要だと考えています。

このように、他にもいくつかある弊社の基準を満たしている顧問先様の申告書に関しては、私たちは基本的に書面添付をさせていただいています。なぜならば、やはりお客様が享受できるメリットが大きいと考えているからです。

税務調査は3年に1回来るのが当たり前。来たら、いくばくかの追徴課税が発生するのが当たり前だと誤解している経営者が少なくありません。きちんとした申告をしていれば税務調査は減らせます。税務調査を減らす第一歩は、もしかしたら“税理士選び”なのかもしれません。

 

マイナンバーで税理士いらず!?

御社の顧問税理士について考える良い機会かもしれません。
6月19日の日本経済新聞にこんな記事が掲載されていました。
『医療費控除 領収書不要に』
皆さんご存知、医療費が一定額を超えた場合に税負担を軽くする制度「医療費控除」。現在は1年分の領収書を保存、確定申告の際に提出しなければなりません。電子申告する場合においては提出せずに済みますが、この場合には領収書1件1件について、医療機関の名称や治療の内容を入力する必要がありました。これがなかなか地味に面倒で、申告を諦めている人も多いようです。
しかし、来年1月に導入されるマイナンバー制度によって集積する医療費のデータを使うことで大半の領収書は出さなくてよくなるとのことです。
具体的には2017年夏までに健康保険のデータがマイナンバーに紐付けされ、国民健康保険や健康保険組合から「医療費通知」がマイナンバーの個人用サイト「マイナポータル」に送られます。利用者はこのデータを税務署にインターネット経由で送ることで税務署に領収書を出さなくてよくなります。
このことは現在、皆さまが依頼している税理士業務が今後、どんどん“無くなる”若しくはわざわざ“税理士に依頼せずとも自社(自分)で簡単にできる”方向に進んでいくことを如実に表しています。
そう遠くない将来、おそらく医療費控除だけでなく確定申告そのものや、年末調整なども“無くなる”若しくは“税理士に依頼せずとも自社(自分)で簡単にできる”ようになるでしょう。
なぜならば、年末調整や確定申告に必要な情報の大半は、マイナンバーに紐付けが可能だからです。番号制が実施されている他国の中には、番号により紐づけた収入、控除の情報を記載した書類を行政が納税者に送り、納税者は間違いがなければサインして送り返すだけという形になっている国も既にあります。
実際、「税理士の仕事が無くなってしまうから、税理士会を挙げてマイナンバー制度に反対すべきだ!」と声をあげている税理士もいるくらいです。
おそらくこの流れは年末調整や個人の確定申告に留まらず、法人についても同様でしょう。クラウド型の会計ソフトは既に会計入力の自動化を実現しています。記帳入力に関しては「税理士事務所に頼まなくても」というよりも、既に「わざわざ人間がしなくても」というところまで来ています。
決算業務、法人税の申告書についても、例えば「期中に支払った事業税の金額を入力してください。」といった質問に答えて数値を入力していく形式を取れば、専門知識がない方でも、それなりに申告書の作成をすることができるソフトが今後できるはずです。
仮にそのようなソフトを利用し自社で申告書を作成して多少の間違いがあり、追徴課税を受けたとしても、税理士に払う記帳・申告書作成報酬が無くなれば、そのくらいのコストは吸収して、もしかするとさらに余ってしまうかもしれません。
さて、私が言いたいことは皆さんもうお分かりでしょう。
誤解を恐れずに言うなら“申告書を作ってもらうだけなら、税理士はもう必要ない”時代になりつつあるのです。
「申告書を作ってもらうだけで、節税のアドバイスも何もない」
「若い担当者が資料を取りにくるだけで、何年も税理士と会っていない」
税理士変更を検討されている方から、本当によく聞く言葉です。
税理士を選ぶポイントは、人それぞれ違うかもしれません。しかし、申告書の作成まで全て自社でできるようになったとしたら、皆さんは税理士に何を求めるでしょうか。
皆さんは些細なことでも何か困った時、迷った時、顧問税理士の顔が頭に浮かびますか?
そんな時、すぐに気軽にメールや電話で連絡が取れますか?
御社の顧問税理士は、それにすぐに対応してくれていますか?
これらは皆さんが税理士と付き合ううえで、求めるべき最低限のことではないでしょうか。逆にいえば、この程度の関係性を築けていない税理士に報酬を支払うメリットはあるのでしょうか。
税理士の仕事は元来、申告書の作成だけではありません。ITが発達して申告書の作成が自社でできるようになったとしても、生身の人間を相手にする経営においてITが全てを解決はしてくれません。しかし経験と知識が豊富な、本当の意味で頼れる税理士が御社の顧問であるならば、その存在は皆さんをきっと助けてくれるはずです。
申告書の作成だけなら税理士に頼まなくても自社でできてしまう時代は、もう目の前です。御社の顧問税理士について考える、良い機会かもしれません。

中小企業において、社外取締役は必要か?

最近、皆さまも「どこそこの会社の社外取締役に、前〇×社の社長が就任した」という報道をよく見聞きするのではないでしょうか。

ご存知の方も多いと思いますが、5月1日から“企業統治(コーポレートガバナンス)”の強化を主な目的とした改正会社法が施行されました。簡単に説明すると、「社外取締役を増やして、経営の監視を強化してください」ということになります。近年、上場企業において様々な問題が起こったことも影響していることでしょう。また、金融庁と東京証券取引所も企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を決定し、社外取締役を2人以上選任するよう促しています。

つまり、大企業においては社外取締役を増やしていくのが流れであり、社外取締役には“CEO”(元も含む)という人材が理想と言われていますから、スター経営者が社外取締役に就任すると、冒頭のような報道が行われます。

しかし、社外取締役が経営強化にどれだけ有効に機能するのか?という疑問は誰にでも湧き上がるものですし、“あの”大塚家具にも社外取締役はいたそうですから、社外取締役という制度設計と、それが有効に機能するかどうかは別問題であることは明白です。

結局は、どれだけ社外取締役として適切な人材を確保できるのかということと、その企業の経営陣が社外取締役の意見をどれだけ経営に活かせるかどうかが問題になります。今後、社外取締役の本格的な導入に伴い、日本企業がどのように変わっていくのか(あるいは何も変わらないのか)、楽しみでもあります。

ということで、本題に移ります。
それでは中小企業において、社外取締役は必要なのでしょうか?

「いやいや。関係ないでしょ、中小企業は…」

と、皆さまがお考えのように、私も関係ないだろうと思います。

そもそも、自社の取締役とはいえ、オーナー経営者がどれほど他人の意見を聞くのか? やりたいことを即座に実行できるのがオーナー経営者の強みであり、止めろと言われるとやりたくなるのがオーナー経営者の気質ではないでしょうか(違う方も多いと思いますが、あくまでイメージということでご容赦を…)。

従いまして、「社外の人間には、うちのことは分からない!」というお考えの経営者は、上場・非上場にかかわらず、社外取締役は無用の存在です。むしろ、存在するだけで会社に混乱をもたらし、有害にもなり得ます。もちろん、他人の意見を排除する場合は、全てオーナー経営者の責任となるのは望むところでもあるでしょう。

これに対して、制度が要求している社外取締役の機能は…

社長「現在、このようなことを考えており、来年から実行に移す予定です」

社外取締役「ちょっと待ってください。それは〇×社が数年前に実行して大失敗しているじゃないですか。それをなぜ当社がいまさら? このような方向性の方が当社に合っているのでは?」

社長「それは…」

という具合に、取締役会などで社外取締役からの牽制とアドバイスの下、経営を進める必要があるということです。これが上手くいっても上手くいかなくても、評価を受けるのは経営者自身です。従って、得難い社外取締役を持つことは、会社にとって強みとなります。

そして、社外取締役は必要ないとしても、オーナー企業の弱みは、制度が要求する社外取締役のように「それはダメだよ!」、「こういう方法があるよ!」と明確に言ってくれる人材が皆無ということです。仮に外部でもそのような人材が身近にいればラッキーですし、社員にそのような人材がいたらそれは本当に幸せなことです。

もちろん、一般論的な正義感から「それはダメだよ!」と言うだけでは意味がないのは当然です。知識と経験に基づいた客観的な意見であることが重要です。

ここまで言えば分かるように、中小企業にとって最も大きな問題は、大企業における社外取締役のような機能を果たせる人材がいないということです(大企業も人材の確保に奔走しているようですが…)。

この点、中小企業の社外取締役には、自社の業績を把握している顧問税理士、契約している経営コンサルタントに白羽の矢が立つこともあります。しかし、これがベターな選択かというとそうではありません。

社外取締役にはCEO(元も含む)が適任と言われているのは、同じように組織を率いてきた経験と知識を見込まれてのものです。

これに対して、顧問税理士や経営コンサルタントがどれだけの組織を率いているのか?そもそも、顧問税理士や経営コンサルタントの会社の業績は万全なのか?

よーーくお考えいただければお分かりかと思いますが、9割以上の税理士も経営コンサルタントも大して社員を抱えていないですし(つまり一般企業に比べて組織の体をなしていない)、会社が私物化されているという意味では、一般企業よりも酷いのではないでしょうか(もちろん、例外となるような方はいらっしゃいます)。

また、持っている知識は専門特化されすぎていて、それ以外の知識はどこかの受け売り。顧問税理士や経営コンサルタントとして付き合っている分にはよいかもしれませんが、社外取締役という重責を担える職種かというと大いに疑問があります(職種として疑問があるというだけで、適任の税理士やコンサルタントがいらっしゃるのも事実です)。

以上から、基本的に社外取締役なんてものは中小企業に根付くことはないと考えますが、同様の機能を何らかの形で取り入れられる中小企業は、やはり成長・成功しやすいというのは間違いありません。

例えば、顧問税理士のアドバイス一つで、会社の財務状態が劇的に変わることだってあるくらいですから、本来求められる社外取締役の機能を果たしてくれる人材がいれば、経営に大きなインパクトを与えます。

そして、そのような人材を活かすために重要なことがあります。それは、その方に正確な業績や財務状態を開示できること。また、その方がその業績や財務状態を意味することを十分に理解できるということです(こういう意味で、税理士が選択肢に入ってしまうのは仕方がない面もありますが…)。

会社の正確な情報を把握できずに、適切なアドバイスを行うことはできませんし、アドバイスはできるけど業績や財務は少し分かる程度というくらいでは、アドバイス自体が正しくても、その会社にとって正しいものかどうかは別の問題になります。

いずれにしても、コーポレートガバナンス・コードが社外取締役を2人以上と促しているとおり、ただ1人だけの人材では、経営の監視やアドバイスは十分ではないということになります。

従って、中小企業には社外取締役は必要ないけれど、同様の機能を持てるのであれば好ましい。その際は、1人ではなく2人以上が好ましい。というのは大企業と変わりません。もちろん、取締役会なり、それに近い形式の会議が中小企業でも行われるというのが前提にはなります。無駄な会議は排除すべきですが、有用な会議のスタイルは構築すべきです。

皆さまの会社はいかがでしょうか?
外部の意見を柔軟に取り入れる仕組みはありますか?

社内に入るということは本気でなければできませんし、一緒に経営の強化を目指す以上、責任もありますので当然のことかと考えます。

もし、皆さまの会社でも社外取締役をご検討されているのであれば、付き合いとか顧問だからとかお金を払っているからということではなく、本気で皆さまに意見してくれる方をお探しになってください。