セブン&アイ・ホールディングスは今月10日の第2四半期決算発表にて、2022年度末までに傘下の百貨店と総合スーパー事業の人員の2割に当たる、同社過去最大の3千人を削減すると発表しました。
インターネット通販の普及や慢性的な人手不足などで小売業の苦境が鮮明になる現在、収益力が低下している、そごう川口店など百貨店5店を閉鎖することにしたようです。
店舗閉鎖による人員削減を実行することから、業績が振るわないのかと思いきや、2019年3~8月期の連結決算は、売上高に当たる営業収益こそ1%減の3兆3132億円ですが、営業利益は3%増の2051億円、純利益は9%増の1106億円と、第2四半期としては過去最高を記録しています。
セブンアンドアイというと、セブンイレブンを稼ぎ頭に毎年出店を増やし拡大し続けているイメージがあるかと思いますが、注目したいのは、その利益です。
拡大路線の企業の多くが売上高を伸ばす一方で利益を下げてきたなか、セブンアンドアイはここ9年間、売上高が前年を下回ることがあっても、営業利益、経常利益が前年を下回ったことがありません。
そのセブンアンドアイが実行する今回のリストラは、利益最大化のために「戦略的に縮む」(出典:未来の年表 -人口減少日本でこれから起きること- 講談社現代新書 河合雅司著)ことに他なりません。
私たち中小企業にとってこそ重要なのが、この「戦略的に縮む」という考えです。
進み行く人口減社会においても利益を維持若しくは最大化していくためには、過去の成功体験を捨てて「戦略的に縮む」ことが求められるタイミングが必ずやって来ます。
ただし、私がお伝えしたいのは、単に事業規模を縮小しましょうということではありません。
重要なのは自社のリソースに合わせて、捨てるものは捨て「戦略的に“一時的“に縮む」という思考を持つことです。
思うように利益が伸びていかない場合、多くの経営者はまず売上を増やそうと考えてしまいますが、それよりも収益構造を見直す必要があるケースがほとんどです。
そして、収益構造を見直し、変えようとした場合、多くのケースでは、いったん売上高を下げる必要が生じてきます。
なぜならば、収益構造を変えるには多くの場合、売上高の中身を変える必要があり、売上高の中身を変えるためには、今ある売上をいったん捨てる必要があるからです。
今までの売上を維持しながら、売上の中身を変えていくことは並大抵ではなく、リソースが限られる中小企業でそれを行えば、まずもって現場が混乱・疲弊してしまい、中途半端な改革になるか、既存顧客からも新規顧客からも信頼を失ってしまい本当に縮んでしまって終わりです。
もちろん今ある目の前の売上をいったん捨てることは、とても勇気のいることですが、人口減少によって今まで以上にリソースが不足する中小企業が収益構造を変えていくには、その勇気が必要なのです。
間もなく消費税増税から1ヶ月が過ぎようとしています。
キャッシュレス決済によるポイント還元などもあってか、今のところ目立って消費が落ち込んでいる感じはありませんが、その分じわじわと景気が後退していく可能性が高い気がします。
人口減少社会に合わせて縮むことは、決して後ろ向きな選択ではありません。
「戦略的に縮む」
ぜひ、この発想を頭に入れておいてください。