ドラッカーの指摘

ドラッカーの指摘
P・F・ドラッカーは「節税」という言葉についてこう言いました。
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「節税」という言葉は、納税者が保有し続けることを特別に許可されていないものはすべて政府に属するということを暗に意味する。
そして、納税者が手元に残せるのは、政府が、その知恵と雅量によって、個人が持つことを許可する範囲内においてである。
もちろん、これらのことが明示的に行われているのは、共産主義国家だけである。
しかし、アメリカにおいてさえ、納税者が保有し続けることを政府が明示したものを除き、すべての所得は政府に属するということは、とくにケネディの時代において、ワシントンとくに政府官僚の間では、当然の常識だった。
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1993年の著書『ポスト資本主義社会』でドラッカーが言ったことは、私たちの国、日本にも当てはまるのでしょうか?
一昨年導入された「特定同族会社の役員報酬の損金不算入」の制度を思い浮かべるだけでも、ドラッカーの指摘が日本にも当てはまることは明らかでしょう。
赤字決算の会社でも納税の可能性があるという制度(今までも、そうした制度はありましたが、この制度はそれが一般的な法人に広く適用されます)、つまり「会社の内部留保など国は考えてないよ!」と宣言しているような制度ですから、その思考の底流に流れるものは明らかではないでしょうか。
こんな考え方をしてしまうと、働く気が急に失せますが、ドラッカーの指摘は言い過ぎではないでしょう。
むしろ、ドラッカーの指摘を踏まえておかないと大怪我もあり得ます。
私たちは、税金の仕組みを考えるとき、自らの生活感で善し悪しを判断する傾向があります。
しかし、官僚は私たちの生活感や仕事の苦労など頭にはありません。
これは、私が彼らの立場になっても同様です。それは、官僚という仕事以外したことがないのですから仕方がありません。
私はサラリーマン時代、ある政府機関の官僚に、自社が置かれている立場を切々と訴えたことがあります。
その私の訴えに対する、官僚の反応には驚きました。
私の訴えに彼はまったく別のことを話し始めたのです。
それは、彼らの事情であり、都合でした。
20代の私は、この時初めて、コミュニケーションが空振りする事態を経験しました。
しかし、それは彼らが悪いとは言い切れません(今だからわかることですが・・)。
私にも、彼らの根底にある考えがわかっていなかったのです。
だから、私はバカ正直に訴えた・・・。
しかし、そんなものは最初から通じるものではなかったのです。
同様に、私は一年に一回、国税庁の方の話を聞きながら何も言えなくなる気分に襲われます。
なんだか、何を言っても通じない。そういう無力感を感じるのです。
その無力感の根底にあるものを、15年前に読んだドラッカーはすでに教えてくれていました。
そして、そこがわかるからこそ・・・・・・。諦めではなく、そこが大事なのです。

【低コスト化】と【コスト転嫁】

最近、中国で製造している冷凍食品の問題が世間を騒がせています。
この原稿を書いている時点ではまだ調査中のため、どこに問題があったかは分かっていません。
今回は中国ですが、低コスト化を進めれば進めるほど、製造は自社から外部へと変わり、更に国内から国外へと移っていきます。
そして、流通経路も陸、海、空と複雑となるため、問題の特定には時間がかかります。特に国外となると、文化や認識の違いも大きいため、そう簡単にはいかないでしょう。
だからといって、国外がダメなわけではありません。
今後の日本は、年々国外への依存度が高くなっていきます。
国外へのアウトソーシングを大前提にしていかなければ、経済活動は成り立ちません。
更に言えば、昨年から続く国内メーカーの偽装問題を考えると、国内か国外かはそれ程重要ではないはずです。
しかし、それでも一番付加価値が高いのは、国内における自社製造、かつ、品質管理も厳重に行っている商品です。
その分コストが高くなるので、販売価格も高くなるのは当然です。
市場規模は限定されるので、どちらかと言うと、中小企業が狙いやすい市場です。
当社のお客様にも、頑なに自社製造にこだわる会社があります。
アウトソーシングに出す場合には、ものすごい時間と手間をかけて、外注先を選別します。
そのような事を行っているため、そう簡単には儲かりません。
しかし、コストや利益よりも品質を最重要視するため、その会社にとっては当然のことなのです。
また、先日お話したサービス業のお客様は、人的リソースを社内に集中させるため、アウトソーシングは極力行わないとおっしゃっていました。
短期的にはアウトソーシングの方が儲かると分かっていても、やらないのです。
その業界で行われているアウトソーシングの実態を聞くと、確かに恐ろしい。。。
収益構造的にも、同業他社とは逆に向かっているようです。
それで軌道に乗せているのですから、底力はすごいですね。
そこまでに行き着く苦労は並大抵ではなかったでしょう。
例えば、今回のように国外へ製造拠点を移し、仕入コストを下げるということは、単に浮いたコストを儲けにつなげてよいということではありません。
カットしたコストを、危機管理コストに多く振り向けるべきなのです。
要は、事業に対するコストをどこに配分するかが肝心になります。
コストカットが出来たと喜んでいると、落とし穴が待っています。
JTフーズに関しても、昨年最初に問題が発生してから公になるまで、かなりの期間放置されていたとの事。
危機管理部門が弱いとしか言いようがありません。
弱いということは、十分な体制が構築されていないのです。
つまり、必要なコストがかかっていないとも言えます。
もちろん、単純に危機管理部門にコストをかければ、危機管理能力が高いという訳ではありません。
しかし、このコスト配分は、会社の基本姿勢そのものです。
姿勢がある会社は、やはり意識が高いのです。
皆さんの会社はいかがでしょうか?
もしかしたら、収益構造にその姿勢が現れているかもしれません。
それが、お客様にとって歓迎すべきものか?
それとも、自社にとって都合が良いものなのか?
一度、検証してみる必要があるかもしれません。
それが、真の企業価値につながりますので。

やられたら嫌な事

1月4日、当社の年頭会議での議題。
「ライバル会社にやられたら、自社にとって嫌な事を挙げて」
こう言われてブレーンストーミングしてみると、そこから導き出された【やられたら嫌な事】は、全部既存プロジェクトとして掲げられているものでした。
つまり、改めてブレーンストーミングしなくても、既に方策は検討済み。
単にプロジェクトが実行されていないだけです。
まさか、このようなアプローチで、プロジェクトの遅れを指摘されるとは考えてもいませんでした。
まさに、岡本の思うツボです(苦笑)
スタッフからすれば、プロジェクトが進行しなかった“それなりの理由(言い訳)”があります。
しかし、スタッフ自ら、“既存プロジェクトが最も効果的”と、導き出しました。
岡本の「じゃ、早くやってよ」に対して、「・・・はい」としか言えません。
遅ればせながら、プロジェクト実行の環境も整ってきました。
どこまで結果を出せるかは、年末会議での議題になるでしょう。
そして、会議後に思い出したのが、マキアヴェッリ。
優れた指揮官ならば、次のことを実行しなければならない。
第一は、敵方が想像すらもできないような新手の策を考えだすこと。
第二は、敵将が考えるであろう策に対して、それを見破り、それが無駄に終るよう備えを完了しておくこと、である。
ニコロ・マキアヴェッリ ―『政略論』―
~塩野七生『マキアヴェッリ語録』より抜粋~
それでは、皆さんの会社はいかがですか?
「ライバル会社にこれをやられたらお仕舞だ!」
という策を考えていらっしゃいますか?
考える事によって、自らが実行しなくても、相手の策を封じる事が出来るかもしれません。
また、策は経営者一人で考えるものでもありません。
「自分の為にも考えなければ・・・ライバル会社にやられたらお仕舞いなのだから」
スタッフも、自分の身を守るために真剣になりますよね。
防衛本能そのものが動機付けになるのですから。
ライバル会社に先を越されたら、また新しい策を考えなければなりません。
とはいえ、ライバル会社を駆逐する策など、簡単には出て来ません。
とにかく、誰よりも先に考え、そして実行する。
これだけです
既にキラーコンテンツを持っているとしても、市場を獲る前に、ライバル会社に展開されたら終わりです。
皆さんも十分お分かりのように、今の経営環境はスピードが全てですから。
必要なのは、「周りが、想像すらもできないような新手の策」を考えるという姿勢です。
これは、攻めではありません。
会社を守るための手段です。
さあ、今年も始まりました。
年末に、「やられた!」と言わないように。
ライバル会社に「やられた!」と言わせるように。
時は待ってくれません。
ライバル会社は既に行動しているかもしれないのですから

商魂

出光興産の創業者、出光佐三は、「士魂商才」という言葉が好きだったそうです。
1953年のイラン政変により、石油の供給が途絶える危険が起きた時には、石油メジャーの圧力をものともせず、イランから直接原油を輸入することに成功しました。
しかし、マスコミからは「商魂たくましい」と表現され、立腹したと言います。
菅原道真が言った「和魂漢才」が、佐久間象山によって「和魂洋才」という言葉になり、明治以後、この「和魂商才」をさらにもじって「士魂商才」という言葉が商人(あきんど)の間で使われるようになりました。
武士の志と商人の才覚。
この2つの両立が実業人の掟とされました。
「商魂」という言葉が使われるようになったのは、戦後のことです。
もちろん、あまりいい意味で使われることはありません。
出光佐三は、士魂を発揮して行った行為を、マスコミから「がめつい」と叩かれたというわけです。
三井家の二代目、越後屋八郎右衛門(えちごやはちろうえもん)は、金利と在庫をいつも気にさせたと言います。
「無駄な在庫や金利負担がないように、ソロバンを胸に」
こうした教育が三井家の基本でした。
今の私たちが驚くべきなのは、所得税も法人税もかからない時代にも、三井家では在庫と金利を重視した点です(もちろん、売掛金も重要ですが、三井家は現金掛け値なしですからね・・)。
ですから、税金がかかる現代の私たちは、彼ら以上に在庫や売掛金、そして金利を気にしなくてはいけないはずです。
出光佐三は原油の直接輸入で「商魂」と言われ、越後屋八郎右衛門は、ソロバンを胸に「商魂」を貫きました。
年明けに原油が100ドルを超えました。
すでに、静かに中小企業の倒産は続いていますが、今年は金利が上がり、さらに倒産が増える可能性が高くなってきました。
「損して得取れ」という言葉は、大阪商人の在庫処分の商法から生まれた言葉ですが、今年は、こうした先人の知恵が役に立ちそうな臭いがします。
1970年代から80年代にかけては、こうした先人の知恵は重宝されたものです。しかし、最近はIT長者のような経営者ばかりが目立ち、あまり先人の知恵は語られなくなりました。
時代が危うくなれば、否が応でも耐える知恵が重要になります。
そして、耐える知恵では、会計の知恵が筆頭で重要になってきます。
「無駄な在庫や金利負担がないように、ソロバンを胸に」
この当たり前の言葉が、経営を左右する時です・・・。

自己利益の定義は難しい

私の担当が今年最後なので、思いついたことをつらつらと書こうと思います。
「お金」というものを「効用」と最初に位置づけたのが誰なのかは、私のような不勉強な者にはわかりません。
何となくホッブス以後の自己利益の追求に貨幣的測定を加味したのは、アダム・スミスじゃないかと思っているのですが、ヒュームやモンテスキューだったのかもしれません。
有名なクラ交換を例に上げるまでもなく、本来は自己利益の定義は難しいところがあります。
クラ交換では、贈与と返礼を続けているうちに、「このやろー、これでもかー」の贈与競争になっていき、最後は破産してしまう原住民も出ると言います。
彼らが贈与と返礼を繰り返し破産すること。それが自己利益というわけです。
こうなると、自己利益の数値的な測定はマイナスになる方が偉いわけで、私たちの常識なんてカンタンに吹っ飛んでしまいます。
ただ、そうとも言えません。
世の中には、案外、借金が多いことや出費の多いことを威張る人がいます。
私も、昔、父親から「借金がたくさんできるような男になれ!」と教えられました。
借金を単純にマイナスとは言えませんが、借金の多さを競っていたらどこかで破綻します。そういう点でクラ交換と似ていますね。
また、税金を多く払うことを誇りにしている人がいると思えば、税金を払いたくないと、やっきになっている人もいます。
税金を積極的に払う人には業績のいい人が多い。これは事実です。
しかし、誰もムダな税金は払いたくないでしょう(私も絶対に嫌です)。
この払う税金の金額を測定数値と見た場合、自己利益の問題はもっと面倒になります。
税金を払わない一番良い手は利益を出さないことです。
それが自己利益ならば、積極的にそうするべきでしょう。
日本では、サラリーマンの税金負担率は限りなく少ないですからサラリーマンというのも税金を払わないことを自己利益にした場合の選択肢としては上位に来るでしょう。
そして、税金を多く払うことを自己利益にしている人は、ガンガン稼ぐことが自己利益の手段になります。
どう客観的に見ても、こっちの方が矛盾しない行動を取れるように思えますが、なにせ自己利益の定義は面倒なのですから、これが絶対とも言えません。
世の中の社長の中には、稼ぐことよりも、格好をつけたいことを自己利益としている人も目立ちます。
当然、格好をつけたいことが最優先ですから、稼ぐことを平気で犠牲にします。税金をなるべく払わないという自己利益同様に、こうした自己利益も稼ぎとは矛盾するわけです。
今から見ると、アダム・スミスの論のどこが画期的であるのかはわかりずらいですが、こうして考えてみると、アダム・スミス(または、ヒュームなど)はかなり画期的なこと言ったのかもしれません。なにせ、人々の自己利益を数値に集約してすべてを説明してしまったのですから・・。
ショーペンハウエルは、これに対して逆を言います。
「あらゆる精神活動のうちで最低のものは、算術的な精神活動である。その証拠は、それだけが機械によってもなしとげられる唯一のものである、ということである」(『知性について』より)
この言葉が、19世紀の中頃に言われたというのは凄いと思います。
単なる数字集計をしている税理士さんには、重い言葉でしょう。
でも、この言葉は数字の集計などを行っている人たちに対する皮肉なんかではありません。
商業活動をしている私たちすべてに対する言葉です。
実際、「算術的な精神活動」はインターネットの登場で自動化がかなり現実になってきました。
さてさて、こうしてショーペンハウエルの言っていることは現実になってくると、私たちは考え込んでしまいます。
自己利益とは何でしょうか?
これに対する答えも、実は多くの哲学者が既に言っていますが、その答えを答えと考えると再び話は元に戻ってしまい、結局なんなのやら・・。
ただ、言えることは、私たちはそれでも稼がなくてはいけません。
どうしてか?
それがまたわからないんですよねー。

【企業の不祥事】と【逆レバレッジ効果】

英会話学校最大手のNOVAが事実上倒産。
解約返金トラブルから発展した業務停止命令から半年も持ちませんでした。
NOVAの場合、契約者から多額の前受金を受け取っていましたが、解約による返金リスクを極めて少なく見積もっていたのです。
報道では前受金は400億円を超えるとありましたが、前期の決算書を確認しても、解約に伴う引当金の計上が少ないように感じます。
決算時には既に問題が表面化していたにもかかわらず・・・。
これを簡単に説明すると、解約時には100円を返金しなければならないにもかかわらず、実際は10円くらいしか解約返金が発生しないだろうと判断したのです。
もちろん、返金のための100円は持っていません。
この判断の甘さは、短期間で倒産まで追い込まれた事実が証明しています。
英会話学校に限らず、前受金を投資費用等に利用し、レバレッジをかけるビジネスモデルは他業界でも存在します。
成長にはレバレッジが不可欠ですが、今回は前受金というレバレッジが、「不祥事」という引き金によって企業を倒産まで追い込む、逆レバレッジ効果となりました。
ですので、NOVAはレバレッジをかけた事業が失敗したという事とは少し違います。
そのレバレッジが内包するリスクが不祥事と連動しやすかったため、逆レバレッジが発生したのです。
あくまで仮定ですが、NOVAに多額の前受金が存在しなければ、こうも短期間に潰れてしまうことはなかったかもしれません。
当然、前受金の存在が急成長を支えたという事実もありますので、否定するわけではありませんが。
しかし、総資産550億円、年商570億円のNOVAクラスでも、一歩間違うと一瞬にして倒産するという実例を提供してくれました。
これは、我々中小企業にとっても他人事ではありません。
最近目立つ食品関係の偽装表示・消費期限切れは、ほとんどが中小企業です。
年商数億円の会社経営者が、テレビカメラを前に憔悴仕切った状態で頭を下げる。
中小企業の不祥事がメディアで報じられてしまえば、その存続は極めて困難ですし、実際その後はほとんど倒産しています。
数百円から数千円の商品偽装で、会社を失ってしまうのは悲しいですね。
同じ食品関係の不祥事でも、不二家は何とか止まったようです。
業績自体は急降下しましたが、倒産には至りませんでした。
これは、ブランド力の大きさ、支援企業等も影響していますが、NOVAに比べて逆レバレッジが小さかったとも言えます。
不祥事等により業績が悪化(=売上が激減)した場合、会社がどれくらい持ちこたえる事が出来るのか?
これは決算書から判断できるので、事前に意識しておくのも必要かもしれません。
そして、不祥事自体が起きないように細心のリスク管理を行い、万が一起きた場合もダメージを最小限に抑えるための仕組みを構築することが最も重要です。
誰もが考え付くことですが、実際にやられている会社は少ないように感じます。
利益を上げるために、ほんの少し相手を欺いたとします。
ですが、その行為に対して、リスクという目に見えない負債が蓄積されていることを忘れてはいけません。
それが決壊したとき、逆レバレッジが起きて会社がどのような末路を辿るかは、実例が証明してくれています。
最近の企業不祥事は、会社で扱っている商品やサービスにどれだけのリスクが内包されているかを改めて考えるきっかけになりますね。

3次元だけじゃない・・

「わたしたちの暮らす3次元世界は、人間の目に見えない5次元世界に組み込まれている」
リサ・ランドール1999年にが発表した「5次元世界の存在」は面白い。
私のような素人でも面白いと思うだけではなく、物理学の世界でも注目を集めている。
3次元に「時間」と「次元方向への距離」を加えたものが5次元という話は、まったく実感ができない話のため理解できないが、私たちの住む3次元が膜のようなもので、その膜が多次元世界に張り付いてるのだそうだ。
私たちが見ている数字にも似たようなところがある。
決算書の数字は3次元の世界の結果だが、この3次元の世界だけでは計れないことは意外に多い。
この間、ある累積赤字が続いているお客様と話をした。
社長もスタッフの方々も私の顔を見ると、
「いやー、なかなか黒字が出せなくて困ったものです・・」
と言う。
しかし、私は、
「別にこれくらいの規模ならいいんじゃないですかー」
などと無責任に答える。
そして、「赤字で・・」という方々にも、どこか社交辞令の趣がある。
私は話しながら、この会社のCLVについて考えていた。
この会社のCLVは思惑通りには増加していないが、確実に増加中である。
この会社の数字のターゲットは、決算書の数字にはなくCLVの数字にある。
感覚としては、CLVという多次元数字に張り付いているのが決算書の数字という膜である。
銀行や税理士などは、決算書の数字ばかりで会社を判断する。
税務署も同様だ。
しかし、「そうじゃないのよ!」と銀行などに反論したくなるときはあるはずだ。
そうした場合、私たちは決算書よりも未来の決算書の数字を作る「数字」に注目しているはずだ。ただし、その「数字」の資料がなくて歯がゆいという場面も多くの人が経験しているだろう。
そして、当然だが、そうした数字の方が大事である。
ところが、そうした数字の管理について本などで語られることはほとんどない。
経理を中心とした数字周りだけが権威なっている現実がある。
実は、結果でしかない3次元の数字は、未来を作る数字ほど重要ではない。
税務署や株主には重要な数字だし、経営者も経営成績の測定という意味で大きな意味はあるが、それより重要な数字はある。
そして、経営者はその数字を作るために日夜がんばっているはずだ。
それなのに、どうして測定をしていないのか?
中小企業ではよくある話である。
お客様とは、決算書の数字についての会話はカンタンなところにして、私はCLVを増やす方策の確認に入った。
こっちの方が重要なのだ・・。

私、太ってます

あるレストランの財務諸表を見せられた。
だいたい会計に興味のある人間は、損益計算書よりも貸借対照表に興味があるので、そそくさと貸借対照表を見る。
なにせ、貸借対照表は面白い。
経営者の性格が出る。
だから、占い師の手相と同じようなものなのだ。
私は、このレストランの貸借対照表を見て驚いた。
デブなのだ。
脂肪体質のメタボリック症候群。
かなり運動をしないと死に至る。
そんなレストランだった。
私はつぶやいた。
「これりゃ、レストランと言うよりも、ディズニーランドですね・・」
経営者は、それを誉め言葉だと思ったらしく、ニコニコしている。
んー、ディズニーランドみたいなことをして、メシだけ提供しているというのは不効率なんだけなんだけどなー・・と内心思うが、そのまま言うと怒り出す可能性があるので、経営者が自慢話を終えるまで待つことにする。
積極的に複数店舗を展開したセンスは悪くない。
レストランのΣ(標準偏差=リスク)を低減させる常套手段でもある。
このことを知らないで飲食業をはじめる人が多いから、そういう点で出発点は間違っていない。
しかし、その展開した店舗が予定通りのパフォーマンスを上げていかないと、たちまち装置産業のような貸借対照表になっていくのが飲食業だ。
いやいや、飲食業だけではない。
ほとんどすべての業種に当てはまると言ってもよい。
そして、ディズニーランドのような財務体質になって商売を続けていくことになる。
相撲取りではサッカーはできない。
しかし、体質は相撲取りで、参加する勝負はサッカーなんてことになる。
損益計算書を見ると、利益は出ていた。
どうせ税務会計の利益だから実質は赤字だな・・などと思いつつ。
「立派ですね~」
とヨイショをしておく(旅人同士の出会いとはこんなものです)。
経営のメタボリック症候群も回復には時間がかかる。
税務会計で黒字だとさらにタチが悪い。
デブがデブであることを自覚しない悲劇は、そのうち膝を壊し、股関節を破壊していく。
貸借対照表は、健康診断のチェック表のようなもの。
興味のない人も一年に一回くらいは見ておきたいもの。
経営は、目の前の状況とこの健康診断表との狭間で打ち手を選ぶことこそが面白いのだから・・・・。

【経営者と経理担当者】と【意識のズレ】

皆さんの会社の経営者と経理担当者は、どのくらい意識の共有が出来ているでしょうか?
中小企業の経営者で、数字に強い方は多くありません。
しかし、経営環境の変化が速い中で成長を計るためには、財務状態の把握は不可欠。
それでは、経理担当者は、経営者が必要な数字を報告できているのでしょうか?
昔の経理担当者の仕事といえば、出納帳や伝票に手書き、電卓で集計、銀行に回って記帳と振込み etc.
重要な仕事であるにもかかわらず、周りからは何をやっているか分かりづらいと言われていました。
とはいえ、経理はそういう仕事であり、担当者が悪い訳ではありません。
しかし、時代の変遷と共に、経理担当者の仕事も変わってきました。
経理業務はパソコンでの処理が大半を占め、会計ソフト、エクセル等で済んでしまいます。
銀行関係もインターネット・バンキングが主になっていますし、電子納税の利用も進んでいます。
その分、他の業務も平行されているはずなので、単純に仕事が楽になったと言いたい訳ではありません(苦笑)
経理業務自体は、以前に比べて省力化出来ているはず、ということです。
ですが、最近は盛んに、「経理担当者は、空いた時間で管理会計の領域まで踏み込み、経営者の判断のバックアップをすべき!」とまで言われています。
そして、管理会計まで踏み込むには、両者の「意識」が合致している必要があります。
とはいえ、これが出来ている会社は中々ありません。
経営者からすれば、「試算表や資金繰り表だけ出されたって・・・。」
と言いつつ、何が欲しいのかも分からない。
経理担当者からすれば、「経営者が何を望んでいるのか分からない・・・。」
と言いつつ、別の資料を提案しようとしない。
経営者はセミナーに参加したり、書籍を読んだりと、漠然とですが、経営判断に必要な資料が分かっています。
しかし、経営者はその漠然とした感覚を経理担当者に上手く伝えることができず、経理担当者は経営者が何を言いたいのか理解できない。
そのためには、経営者と経理担当者の密なミーティングは不可欠です。
経理担当者は、その気質として、受身の業務をされる方が多いように感じますが、的確な指示を出しさえすれば、正確な仕事をしていただけます。
また、会計系のセミナーに一緒に参加するというのも有効な手段です。
やはり、同じものを見聞きすれば、意識の共有を図りやすいはずですから。
当社主催のセミナー「会計するカラダVS会計するアタマ」も、経営者と経理担当者が一緒に参加されるケースがあります。
これは、資金繰りという会社の生命線から、経営者にとって不可欠な戦略的会計を網羅した内容です。
過去には、経理担当者のみが参加され、経理体制の再構築と、経営者に対し提出する管理資料の提案を行なった方もいらっしゃいます。
経営者の参加が多いセミナーですが、実際に業務を行なう経理担当者の意識を経営者に近づけるためには、経理担当者の参加が非常に有効です。
経営者が求めることを理解できるでしょうし、受身の経理担当者の思考にストレッチをかける事は大切なことですから。
・・・宣伝になってしまいましたが(笑)
また、当社では今秋から、経理担当者向けのセミナーの開催を予定しています。
少人数のワーク形式で、経営者の経営判断に有用な人材の育成を目的としています。
税理士事務所のスタッフである私が言うのもなんですが、自社の経営状態を理解するのに、税理士に頼る時代は終わりに近づいています。
しょせんは外部の人間。
自社の内容を一番理解し、コミュニケーションを取りやすい経理担当者が、経営者に全てを説明できるのが理想です。
経営者の皆さんは、もっと経理担当者の方とミーティングを重ねてみたらいかがですか?
経理担当者との意識のズレは、資金繰りのズレ、利益のズレ、そして経営のズレにつながります。
そうならないためにも、二人三脚の体制を構築することをお勧めします。

もうひとつの裏帳簿

みなさんこんにちは。
税理士の笹川和幸です。
みなさんは次の文書を目にしたことがあるでしょうか?
これはわたくしどもが「裏帳簿」などという言葉を使っている理由です。
「裏帳簿」というのは、国税庁および税理士などの専門家に対する皮肉でつけた名称です。
本来は、企業のものであった帳簿は税務行政と専門家が、役に立たないものにしてしまいました。
そこで皮肉って、本当に役に立つ帳簿を「裏帳簿」と表現しました。
したがって、このメールマガジンは、決して脱法行為を推奨しているわけではありません。
皮肉からつけた名称ですから、ご容赦ください。
今年になってから税理士の業界において、あわてて行っている研修に「中小企業の会計に関する指針」というものがあります。
この指針では、中小企業が、計算書類(以下「決算書」と呼びます。)の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理等が示されています。
わたしどもでは随分前から、中小企業の決算書が法人税法の基準によって作成されており、企業の経営実態をしめすものではなくなっているということを「裏帳簿」という言葉を使って表現してまいりました。
本来「裏帳簿」などという言葉を選ぶべきではなかったのかもしれません。
しかし、一人でも多くのみなさまに関心をもっていただくために、あえてこのような言葉を使ってきたのです。
この指針では、中小企業の決算書にひそんでしる「ゾンビ」を排除するためのいくつかの具体的方法が示されています。
そのため、この指針に従って決算書が作成されているかどうかということに、非常に関心を示しているのが、金融機関や信用保証協会をはじめとする利害関係者です。
その証拠に多くの金融機関や信用保証協会では、この指針に従って決算書が作成されている場合に、低利融資、無担保融資および保証料率の割引といった特典を用意しています。
http://www.nichizeiren.or.jp/taxpayer/chusyo.html(日本税理士会連合会)
では、この指針によって中小企業の決算書は本当に経営に役立つものにかわるのでしょうか?
残念ですが、わたしは変わらないと考えています。
それには2つの理由があります。
一つには、この指針が法的に強制力がないということです。
つまり、この指針にしたがった決算書を作成するか、しないかを決めるのは経営者のみなさま自身ですが、そのための情報を提供するのは税理士の役目です。
ところが、その税理士の多くが、この指針にしたがって決算書を作成することに難色を示しています。
当然ですが、難色を示しているわけですから、このような指針ができたことを皆さんにお知らせし、選択肢を提示することもないでしょう。
これでは、変わるものも変わりません。
顧問税理士さんから情報を受けられないみなさんは、この指針に従って決算書を作成してほしいという意思すら顧問税理士さんに伝えることができないのです。
もう一つの理由は、この指針でも取りきれないゾンビが決算書には存在しているということです。
この点に関しては残念ですがお手上げです。
それでは私たちはどうすることもできないのでしょうか?
実は、わたしはこの点に関して驚くべきセミナーを目の当たりにしました。
それが「会計するアタマVS会計するカラダセミナー」です。
このセミナーでは、われわれ税理士の多くが絶賛した「お金と数字」に関する戦略的管理手法が数多く紹介されています。
このセミナーに参加した方は、もうこれ以後、会計や財務に関するあらゆるセミナーに参加する必要はないでしょう。
もう、無駄な時間とお金をつかう必要はありません。
このセミナーで学んだことを実践するだけです。
最後に、確認です。
みなさんはこの指針の存在を顧問税理士さんから耳にしているでしょうか?
残念ですが、情報は求めるものにしか与えられません。
もしも、このお話を聞いていないとすれば、本当に役立つ決算書が作成できる日は遠いのかも知れません・・・。