早目が肝心!役員報酬の変更

「来年は業績が回復しそうなんですよ。役員報酬を上げようと思うんですが。」
「現状から判断すると、役員報酬を下げた方が良いと思うんですが、いつから下げるべきでしょうか。」
役員報酬の変更に関する質問には、これら以外にも、実に様々なものがあります。
その時々の経営環境に応じて役員報酬の変更をしていく、確かにこれは必要なことです。ただ、税務上、「役員報酬の変更」に関しては、厳しいルールが設けられているんです。
そこで、今回はこの「役員報酬の変更」について取り上げていきましょう。“厳しいルール”をかいくぐる望ましい「役員報酬の変更」とは、どのような変更なのでしょうか。
文頭でも触れましたが、「役員報酬の変更」には実に多くのパターンがあります。今回は、その中でも特に多く見受けられる2つの変更パターンについて取り上げていくことにします。
その前に、まずは結論から。
「役員報酬の変更は、原則として、期首から3ヶ月以内に行ってください!」
そうです、期首から3ヶ月以内です。これが望ましい変更です。期首から3ヶ月以内の変更であれば、税務上、特に問題になることはありません。
それでは、まず1つ目の変更のパターンです。
ここからは、具体的な例を使いながら進めていくことにしましょう。
【変更期】
期首から6ヶ月が経過した後
【金額】
40万円⇒50万円
【費用にならない金額】
60万円(注)
(注)10万円×6ヶ月=60万円
「10万円」は変更前の役員報酬40万円と変更後の役員報酬50万円の差額です。
「6ヶ月」は変更した後から期末までの月数です。
期首から3ヶ月経過後に役員報酬を変更した場合、一定の例外を除いて、変更後の差額分(具体例でいうと、60万円)は、費用として認められません。
それではもし、この変更が期首から3ヶ月以内に行われていたらどうなっていたでしょうか。
期首から3ヶ月以内の変更であれば、費用にならない金額はありません。つまり、変更後の役員報酬の全額が費用として認められるということになるんです。
まったく同じ変更でありながら、「期首から3ヶ月以内の変更」と「期首から3ヶ月経過後の変更」では大きな違いが出てくることになります。
「期首から3ヶ月以内の変更」が有利となることは、明らかですよね。
2つ目のパターンは、役員報酬を増額後、その増加分を期首にさかのぼって支給するという場合です。それでは、具体例です。
【変更期】
期首から3ヶ月目
【金額】
40万円⇒50万円
【3ヶ月目に支給した役員報酬】
70万円(注)
(注)次の金額の合計額
・50万円(変更後の役員報酬)
・20万円(1、2ヶ月目に支給されるべきであった、それぞれの増額分である10万円の2ヶ月分)
【費用にならない金額】
20万円(注)
(注)3ヶ月目に、さかのぼって支給した1、2ヶ月目それぞれの増額分である10万円の2ヶ月分
いかがでしょうか。
まず、今回の変更ですが、期首から3ヶ月以内に行われていますよね。従って、この変更に関しては、何ら問題はありません。
問題となるのは、期首にさかのぼって支給した増額分の20万円です。この20万円は、費用としては認められないということになるんです。役員報酬の変更が、「期首から3ヶ月以内(・・)」にもかかわらず、です。この点に関しては、注意が必要です。
なお、今回の変更が「期首から3ヶ月経過後(・・・)」であり、「期首にさかのぼって増加分を支給した」場合でも、当然ながら、結論は同じです。
いずれにしても、期首にさかのぼって役員報酬の増加分を支給するということ自体が、税法上、認められていないわけです。
いかがでしたでしょうか。よくある役員報酬の変更について、具体的な例を出しながらご紹介しました。
ここで、改めて今回のポイントをまとめてみましょう。
・ 役員報酬の変更は、期首から3ヶ月以内
・ 期首にさかのぼって支給した増加分は、損金不算入となる(費用とならない。)。
ここで1点、補足です。それは、「期中に役員報酬の変更をすること」や「期首にさかのぼって増加分の役員報酬を支給すること」がダメというわけではないということです。
「期中に役員報酬の変更をすること」や「期首にさかのぼって増加分の役員報酬を支給すること」。両方とも、
もちろんOKです。ただし、そこには今回ご紹介した税務上の「厳しいルール」があります。
その税務上の「厳しいルール」をかいくぐるという意味で、上記の2点を意識していただければ良いでしょう。
さらに、もう1点。役員報酬を変更した場合には、その旨を記載した議事録を忘れずに作成しておきましょう。
「役員報酬」に関しては、今回ご紹介した「役員報酬の変更」を始め、税法上、多くの規定があります。そして、その取扱いも厳格なものとなっています。
当然、税務調査の際にも、そのチェックは厳しいものとなります。この場合に、議事録を作成していないということになると、調査官に対する印象も悪くなってしまうことでしょう。
「役員報酬の変更」と「議事録の作成」。両者はセットです。今回のポイントとともに、押えておきましょう。

LLC判決に学ぶ「仕事の品格」

米国LLCを使った節税手法に一つの判断が出ました。
米国LLCからの分配金は「配当所得」とされ、米国LLCは日本の私法上「法人」に該当することが相当とする判断が東京高裁において示されました。
米国LLCからの分配金が配当所得とされたことにより、損益通算を利用した節税法の利用ができなくなりました。
損益通算とは一方の事業で利益が出ており、他方の事業に損失が出ている場合、この二つの事業の利益と損失を±(プラスマイナス)して税金を少なくする方法です。
米国LLCは「check the box」という規則によって法人で税金を納めるか個人で税金を納めるか選択できるようになっています。
この制度を利用し海外のLLCへ投資をし、そこから生じた所得を使って損益通算を行う事例はほかにもあることから、今回の司法判断が投資家に与える影響は大きいといえます。
今回の裁判でポイントとなった点は次の3つです。
(1) 外国LLCは実質で判断
(2) check the box規則は判断基準にならない
(3) 国税庁はLLCを原則法人と判定
一方、日本版LLC(合同会社)は法人格を有するため法人課税が行われパススルー課税は採用できません。従って、法人が稼いだ儲けに対しては、法人税が課税されます。
更に会社から利益の分配を受けた出資者に対しても所得税が課税される、二重課税の構造となっています。
米国LLCのようにパススルー課税が適用され組織として、日本においてはLLP(有限責任事業組合)があります。
ところが、LLPの損失を取り込み損益通算だけに利用する租税回避行為が予想されることから、それを防ぐために全構成員が業務執行に携わることが要求されています。
LLPというと、とかく租税回避目的で利用される趣が強いように思われます。
その証拠に、「組合契約は、不当に債務を免れる目的でこれを濫用してはならない」(LLP法3-3)と条文上に制度の濫用防止規定がもりこまれています。これはとても珍しいことです。
私が普段、実務の現場において、ふと頭をよぎる思いがあります。
それは最近、経営者の中の一部に「仕事」に対する誠実な姿勢が薄れているということです。
自社の仕事について使命感をもち、社会的使命の実現にむかってひたむきに邁進する姿勢。いわば「仕事の品格」とでも言うべき姿が薄れているように思うのです。
とかく仕事がお金儲けの手段のように語られ、営業のテクニックやノウハウだけが語られることに、えもいわれぬ違和感を感じます。
このことは会社経営における税金に対する考え方についても言えることです。とかく税金を払うことを避ける傾向があります。
それ事態は当たり前のことです。少しでも納税を少なくしたいという気持ちは自然なことです。私もそれはあります。
しかし、問題なのは本来成すべき仕事のことを二の次にして節税対策に没頭する・・・これでは「節税にあわせた仕事」になってしまいます。
LLPやLLCが創設された本来の趣旨はパススルー課税ありきではないのです。
企業規模も立場の違うもの同士が、共通の理想に向かってそれぞれの強みを持ち合わせて共同事業を行うことを可能とする素晴らしい制度なのです。
私は、私どものお客様にとって価値ある仕事を成し遂げるために、「仕事の品格」をいつも忘れてはならないと心がけています。

地下経済

「ソープランドの非合法所得は7,346億円」
『週刊東洋経済』2008年3月8日号には、そんな試算が計算されていました。
ソープランドの市場規模は約1兆円(すごい!!)と推計されていますから、その70%以上が非合法所得として申告されていないことになります。
この話を知ると、きっちり納税している私たちは怒りを覚えるところですが、実は10年以上前に一般国民も鷹揚に非合法所得を得ていたことがあります。
その点について、P・F・ドラッカーは次のように書いています。


日本経済の秘密の一つとして、資本形成にかかわる脱税の奨励がある。日本では、金利が非課税となる中規模の貯金口座を一つもつことが許されている。
ところが実際は、日本にはそのような口座が、子供を含めた人口の五倍あるという。
もちろんこれは、マスコミや政治家が攻撃する違法行為である。しかし日本では、この制度の濫用を防ぐための措置については、きわめて慎重である。
その結果、日本は世界で最も資本形成率の高い国になっている。


1985年にドラッカーが指摘したマル優制度の全国民による濫用は、ドラッカーの指摘の後、大がかりな名寄せ作業を経て、追徴。濫用もできない形になりました。
そして、その後、例外を残してマル優制度は廃止になりました。
あの税額の増収はどこにいったのか?
日本政府、当時の名寄せ作業でかなりの税額を手にしたはずです。
消費税の施行、金貨の放出と共に、日本政府がセコセコと収入を上げようとしていた時代の景色でした。
しかし、ソープランドの例のように、まだまだ収税に鷹揚な部分があるのも事実です。
ドラッカーが指摘するように、日本政府いつもそうしたいい加減さを内包しているようです。
「税は平等」という御旗は、昔から、為政者側が放棄している部分があるというわけです。
こうしたところには書けないものも含め地下経済の非業所得は膨大です。
しかし、私たちはそれでも一生懸命働き納税をしなくてはいけません。
この現実をどう考えるか?
この点は私たちの生き方そのものが問われる部分かもしれません。

税務署もリスケする 2

≪前回の「税務署もリスケする」の内容≫
税金の納税をするときに、実は税務署にリスケを申し込むことができます。
しかし、税金の分割払いは原則認められていません。つまり、滞納は法律違反。
それなのに分割納付を申し込むわけですから、その後の約束を守るのは当然なこと。その約束を守れないような、無理な計画で組んではいけません。
無理な計画の結果、約束が不履行になると滞納整理の専門家『特別国税徴収官』が登場してきます。
その『特別国税徴収官』とはどんな人かという・・・。


『特別国税徴収官』は長期滞納者や、金額が大きい案件の督促や滞納処分を専門に手掛けるという専門家です。
先日も次のような話がありました。
滞納をつづける会社に特別国税徴収官が訪れたのです。
対応にあたった社長夫人は、その徴収官のあまりの高圧的な取り立て(徴収)に恐怖に声を震わせ税理士に電話をかけてよこしたそうです。
話では徴収官から次のように言われたそうです。
「税金を払えないはら取引先の売掛金を差押さえます。税金を払えない会社なら潰してしまっても仕方がないでしょう」
詳しいやりとりの前後はわかりませんが、この言葉だけを聞くと本当に公務員の言葉かかと耳を疑ってしまいます。
多額の滞納税金がある場合には、早い段階できちんとした説明を税務署に行わなければ、売掛金の差押え等により取引先に対して混乱を生じる可能性があります。そうなれば死活問題です。
さらに、特別国税徴収官が会社を訪問した場合には、今後の納税予定が決められたうえで最後に『誓約書』を書かせられます。
この誓約書には次のように書かれています。
「今後、納期限が到来する国税については、期限内に納付します。万一、納付が不履行となった場合あるいは新たに滞納を発生させた場合には予告なく差押え及び公売処分されることについて、説明を受け、承知しています。」
この誓約書に従い、その後に不履行があった場合すぐに差押え等の処分が行われるかというとほとんどの場合がそのようなことはありません。
しかし、誓約書を書いている以上・・・というよりも滞納している以上、いつでも滞納による差押えはできるのです。
特別国税徴収官が出る幕を作ってはいけません。
最後に、3つめの『継続して連絡をとる』ということですが、これは現在の状況、今後予定通りの納税ができるかを報告するということです。
相手も人間です。納税意識をもって誠実に向かってきている者に拳を振り上げるようなことはしません。
継続的に連絡をとる意味はもうひとつあります。
それは、資金繰りによっては支払える範囲内で優先順位をつけて、支払予定を変更する必要があるからです。
ここで大切になるがの「優先順位」です。
たとえば法人税と消費税のいずれも滞納している場合には、それぞれの税金について延滞税が発生してきます。
何も相談をしていなければ税務署では『法人税の本税→延滞税→消費税の本税→延滞税』という具合に税目ごとに片付けようとします。
これではダメです。
ヤミ金は雪だるま式に利息は増えていきますが、税金の場合には利息に利息はつかないからです。
つまり本税さえ完納すれば利息(延滞税)は増えないのです。
そこで優先して本税を納めるように計画することが必要です。
このことを担当者とよく打合わせしておかないと、徴収されたお金がどこに充てられるかわかりません。
そのために継続して納税予定について打ち合わす必要があるのです。
銀行の借入金をリスケする場合と同様、税務署に対してリスケする場合には現状の資金繰りをわかりやすく説明したうえで、納税に対しての前向きな姿勢を継続して示す努力を怠ってはいけません。

税金の前では、だれもが幼稚になる・・というお話

(今回は、有料メルマ『週刊 岡本吏郎』風の軽いノリで文章を書いているので、少々失礼な表現があるかもしれませんがお許しください)
昔、就職活動をしていたとき、面接のマニュアル本に出会った。
まぁ、誰もが経験してきたことでしょう。
その本を見ると(「読む」ではない・・)、面接のテクニックがずいぶん書いてある。
「なんだ、こんなものか・・」
大学4年生の私は思った。
気分としては、「世間をなめてかかった」と言う感じ。
世の中の全てはコントロール可能。そんな全能感を覚えた。
しかし、面接する側はそんなことは百も承知。
だいたい、みんなで同じようなことを答えていたら、おかしい・・と思うわね・・。
そして、現在は、そんな「世間をなめてかかった」行動に出会うと、二十歳を過ぎた青い少年の箱庭的な思考を思い出すのであった。
税金をごまかそう・・という思考はこれに似ている。
面接のテクニックが面接官からはお見通しのように、とてもお見通しなことを、とても頭のいい人が「おまえ、バカじゃないのー」という感じでやってしまう。
または、「よーこそ、いらっしゃーい!!」という感じでやってしまう。
中には合法的な節税なのだが、長い目で見たら「後で後悔しますよー」というものもある。
そういうものも冷静に考えればわかること。
でも、やってしまう頭のいい人はよくいる。
どうして、税金が相手だと、突然幼稚になってしまうのかわからないけれど、それは世の中の常識なのであった。
そういえば、こんなこともある。
例えば、ある人が「こうすると税金どうなるかなー?」と私に聞いたとする。
それに対して、私はプロとして答える。
ところが、その人はその答えが気に食わないとする(つまり、思いのほか税金が高いと言われたということです)。
すると、たいていの人が私に怒り出すのだ。
「どうして、そんなに税金が高いんだーーーぁ」
ってな感じである。
私は言う。
「私が安い税金を言って、税金が安くなるなら、いくらでも言ってやる。ゼロ円って言ってもいい。でも、私が何を言っても税金はかわらん。あんたは、怒る相手を間違っている、私を怒って税金が安くなるなら、いくらでも怒られてやる。しかし、私を怒っても意味はない」
だいたい、現実を見た段階で工夫が始まる・・というのはビジネスの常識なのに、どうして税金の話になると、いつも冷静な人が感情的になってしまうのか?
税金を安くする工夫はいつでも必要だ。
無駄な税金など一銭として払う必要はない。
しかし、その工夫を幼稚な思考でやるならば、待っているのは「しっぺ返し」という現実。
実は、税金の前で幼稚にならない・・という人ほど儲けている。
これ本当。
そういう人は、自分のビジネスにおいてもいつも冷静なんでしょう。
税金とは、経営者の優秀さを見るリトマス試験紙なのだ。
冷静に節税しましょう・・。

100ポイントの壁!?

私がよく利用する家電量販店の店先には、会員カードをつかったルーレットマシーンが置いてある。実はこのマシーン、あるポイント以外なかなかでない・・・そして、出したという人の話を聞いたこともない・・・
確率が知りたい。
家電量販店から航空会社まで販売促進を目的としたポイント制度を導入している企業は数え切れません。
このポイントとは商品やサービスの販売額に対して一定の割合でポイントを付与。
そのポイントは将来にわたって一定の経済的利益を受けることができるというものです。
付与した企業にとっては将来に対する潜在的な債務(負債)といえます。
その額2005年度発行総額は4500億円に及ぶものとされており、各企業では、「ポイント引当金」や「販促ポイント引当金」等のそれぞれ異なった勘定科目で表示されています。(参考:週刊経営財務)
そこで、今年に入り、日本経済新聞ではこのポイント制度についての会計処理をルール化する動きがあることについて1面で報じました。
これによりポイントの取り扱いをめぐる動きがあわただしくなっています。
帝国データバンクの調べでは、2006年4月以降の決算で「ポイント引当金」およびされに準じた引当金を計上している上場企業は136社にとどまり、その額2870億円となっています。
そのうち上位4社中3社が携帯電話会社です。
ここまでであれば、一部の上場企業だけの問題であり、中小企業には無関係のように思えますが、実はこれは中小企業の節税にとっても大きな意味があります。
弊社で受ける質問の中にもこのポイント制度を導入する動きや、ポイントに対する税務上の取り扱いに関するものが増えています。
また、セカンドライフをはじめとした仮想通貨に対する課税問題が水面化で取りざたされる中、このポイントに対する利用者の課税問題も大きな注目の的となっています。
当初はポイントに対する認識も薄くいろいろな弊害もあったことでしょう。
しかし、現在ではポイントの取り扱いに対する企業側の取り扱いも整備されています。
例えば、以前はポイントを充当して買い物をしてもポイント充当前の金額で領収証を発行されていたこともありました。
その結果、ポイントを充当して購入したことなど知る由もない経理担当者は、その領収証をみて、実際に支払った金額よりも多い金額を帳簿に記入するはずです。
これではポイント充当分だけ多く経費に計上されてしまいます。
また、航空会社のマイレージやカード会社のポイントなどは電子マネーや換金性の高いギフトカードと交換できるものもあり、その課税上の取り扱いが気になるところです。
これについては個人のカードである限り原則として一時所得となり、特別控除額の50万円を超えない限り申告の必要はありません。
しかし、昨今、航空機を頻繁に利用するビジネスマンの一部には、この50万円の特別控除額を超えるマイレージやポイントを受ける人もおり今後の課税当局の動きが注目されるところです。
これらはまだ、ほんの一例にすぎません。
まだまだ、ポイントを取り巻く会計・税務上の課題はたくさんあるのです。
そこで9月に発刊される弊社ニュースレター「Power会計」ではポイント税務についてみなさんにまとめてお知らせいたします。
あるとき、ヨドバシカメラのポイントだけでパソコンを購入しました。
それを知った妻は何やら計算をはじめたのです。
「何、計算してんだろう・・・あっ!」
私の妻は鋭かった・・・(泣)

「税務調査」の新聞報道等は課税当局のリーク?

「落語家の林家正蔵さんが東京国税局の税務調査を受け、3年間で1億2000万円の申告もれを指摘されていたことが明らかになった。重加算税を含め約4500万円を追徴課税された。」
このように、企業や有名人の税務調査での多額の申告もれが、よく新聞等で取り上げられています。
皆さんは、不思議だと思いませんか?
いつも新聞報道等されているので、当たり前のことと思っているかも知れませんが、実は、問題なのです。
国税当局には、守秘義務があります。そして、この守秘義務が担保となって税務調査があるわけです。
そして、税務調査で帳簿やいろいろな書類等を調べることが出来るのです。
調査官も調査時には、「我々は、守秘義務があり絶対に外に情報がもれることはありません」と説明しています。
脱税事件で裁判となったり、国税当局の処分が不服で裁判を行っている場合であれば、新聞報道もわかりますが、普通の税務調査で申告もれの場合はわからないはず。
なのに有名人が申告もれを指摘されたというような報道がされています。
情報がもれているとしか考えられません。
マスコミは、独自の調査ということになっていますが・・・・・。
税務署や国税局では、税務調査の状況の記者会見を行っています。
その際には、多額の申告もれがあった事案や、珍しい事案などを発表しています。
会社名や個人の氏名は発表していませんが、業種や調査の内容等は発表していますので、その辺から記者が情報収集して報道しているのとも考えます。
記者が、企業等を取材して確認しているということもありますが、それにしても、内容が詳細であり、不思議でたまりません。
取材で報道される企業等が詳しく教えるとも思えません。
平成18年度の税制改正で「長者番付」と言われる公示制度が廃止になりました。
廃止前は、確定申告で個人であれば所得税の税額が1,000万円超、会社であれば法人税の所得金額が4,000万円超の場合は税務署の掲示版に氏名や会社名、住所、税額や所得金額が貼り出されていました。
税務調査により、修正申告を行った場合も同じで、例えば3年分を修正申告して、3年分とも公示の基準金額に達していれば、3年分同時に公示されていましたので、税務調査があった事がすぐにわかりました。
企業の中には、税務調査で修正事項を指摘されても、自分から修正申告はせず、税務署や国税局から更正処分を受ける会社もありました。
税務署からの更正処分の場合には、公示の対象にならないからです。
また、公示されないために、利益調整をして所得金額を4,000万円以下にしていた会社もありましたので、公示制度が廃止になったのは、個人同様、企業にとっても負担がなくなりました。
しかし、公示制度があった時には、ある程度わかったかも知れませんが、現在も通常の税務調査での申告もれがマスコミで報道されています。
相手先を取材して確認を取っているとのことですが、マスコミの情報収集がすごいといっても国税当局が情報をもらさなければわからないはず?
こんな話もあります。
記者が国税局の担当官に最近の調査状況を聞きにいきます。担当官は、直接は調査先の名前は言いませんが、記者の質問になんらかの反応をしているとの事。
また、記者会見の時等に実名の資料も置いておき、勝手に見られたようにしている。
定かではありませんが、このように国税当局がリークしなければ実名や詳しい内容などわかりません。
課税当局も報道により波及効果をねらっていると考えますが、リークしているとすれば、それこそ「守秘義務」違反になります。
申告もれが報道されれば、会社のイメージダウンにもなりますので、脱税等はやらないようにしなければなりませんが、それにしても、有名人や企業の申告もれの情報がマスコミ各社一斉に報道されるのも不思議です。

答えがない・・ということは?注:今回は言っていることが少し難しいです。

税理士さんが集まるとあるセミナーに久しぶりに行ってきました。
税理士という仕事も情報収集が重要ですが、残念ながら日本中の税理士が情報通ということはありません。
むしろ、専門の税金関係の情報でも格差は非常に大きいというのが実態。
そういう点で、中小企業の経営者は、税理士選びで運・不運を経験していますが、運・不運の事実に気づくことはあまりありません。
とりあえず、このセミナーに主席される税理士さんは国税関係の情報収集に熱心な方々でしょうから、こうした税理士さんと縁のある中小企業経営者は、本人は気づくことはないと思いますが、かなりついている方と言えるでしょう。
ところで、今回、税理士さんの集まるセミナーの中でも株式や資産の評価について意見がいろいろ取り交わされていました。
国税庁出身の大学教授と税調などの委員などで活躍するある税理士さんに実務における疑問点をぶつけるコーナーがあるのですが、その場での結論の大きな方向は、「答えはない」ということに始終しているのです。
しかし、税金を決める資産の評価額について、日本のトップクラスの税理士が意見をぶつけ合って「答えがない」ということになっているのはどういうことでしょうか?
私はこう思います。 
「答えがない」のに、そうした事象に税金をかけようとする行為は、本来かけるべきではない事象に税金をかけていることになっている。
税金は平等でなくてはいけません。
これに意見する人はいないでしょう。正に自明です。
でも、税金は平等ではありません。
だって、付き合う税理士で税額が変わるくらいですから、平等なわけはありません。
それにしても、どうして評価額を誰もがわからない。という事実を無視して、そのわからないことについて議論を続けるのでしょう。
そういう議論に意味はありません。
確かに、その議論の方向に税金を安くするためのヒントがたくさんあるから私も参加しているわけですが、優秀な人たちが、実は最初から意味のないことを議論している姿は滑稽です。
大きなものを見ることができない。
目先だけで考える。
そのおかしなことが、税の世界では普通なのです。
ここに税の専門家と一般の人たちの埋まらない現実があります。
そこがわからずに、一般人も専門家を相手に議論をする姿は、国が作ったナンセンスの上で起きている連鎖でしかありません。
それは徒労なのです。
でも、ここがわかると、税の世界はとても近いものになり、得なことが出てきます。
なぜならば、どこを議論すべきかが見えてくるから・・。
そして、くどいようですが、「答えがない」という答えに至った税理士と縁があった方が負担する税金は少ないはずです。
なぜならば、いろいろ工夫するから、そういう結論に至るからです。
ここら辺のニュアンスはなかなか伝わらないかもしれませんが、一度書いておきたかったので書いてみました・・・・・。

中小企業承継事業再生計画

『エルスバーグのパラドックス(※)』と呼ばれる有名な実験は次の通りです。
条件の違うボックスが、次のように2つ用意されており、中には赤と黒のボールが合計で100個入っています。赤のボールを引いたら当たり、賞金は1億円です。
●ボックスA
赤のボールが50個、黒のボールが50個、合計100個。
●ボックスB
赤と黒のボールで構成させており、同じく合計100個。
しかし構成割合はわからない。
あなたは、どちらの箱に手を入れますか?
実験の結果、多くの人がボックスAを好むことがわかっています。何故でしょうか?
ボックスAは、赤を引き当てる確率が50%です。
一方、ボックスBは確率不明、ボックスAより不利かもしれませんが、有利かもしれない。赤が100個という可能性だって十分にあります。
しかしながら、多くの人はボックスBを選ばない。なぜなら、人々は「不確実性」を回避する傾向にあるからです。
「リスク」よりも、「わからない」ほうが体感的に怖いのです。
「わからない」が目の前に広がっていたとしても、実験のように、代替案としてのボックスAが用意されていれば人々はリスクを感じながらもそちらに動くことが出来ます。
しかし、今の経済状態は「わからない」にもかかわらず、ボックスAが用意されていない状況。
となると、本来であれば、そのブラックボックスを少しでも「わかる」ように努力して、認知できた範囲で行動を決断していかなければなりません。
しかし、ここで邪魔をするのが最大の誘惑である「決断の留保」、つまりは先延ばし。
「わからない」のだから少し待とう、ということです。
企業経営に例えるならば、資金的に余裕のある大企業であればあるほど、留保期間は長く確保できてしまいます。
その誘惑に負けてしまった結果が、世界的に見てもわかるとおり、3つのうちの2つを破綻に招いてしまったのです。
「アメリカの会社がお国柄、ラフな経営をしていただけ、日本の大企業はそんなに脆くない。」と思われるかもしれません。
確かに、日本の大企業はきめ細かい経営をしているかもしれません。しかしその分、中小零細企業に歪みが来るのは必至。
そんな経済局面を受けて、政府は4月末に「第二会社方式」をバックアップするため
『中小企業事業承継再生計画』の認定制度を創設しました。
ちなみに「第二会社方式」とは、事業のすべて、または優良セクションを、他の事業者(第二会社)に承継させて、赤字部門を残した旧会社を閉じてしまう再生スキームです。
再生計画が認定されると、
●事業上の許認可を新会社に承継することができる
●金融機関から低利・別枠等の金融支援を受けることができる
●新会社への不動産移転に伴う、登録免許税・取得税等が軽減される
といった恩恵を受けることができます。
脱皮したての会社にしてみると、税優遇はおまけとしても、許認可の引き継ぎと金融支援は大変助かります。
今までのように、許認可を再取得しなければいけない場合(もちろん避けるための例外手法は存在しますが)には、事業上の空白期間が生じ、多額の機会損失が発生してしまいます。
機会損失で済めばまだしも、地域によっては、許認可の登録制限数がかかったり、法改正により、新規申請が認められない、といったパターンもありました。つまりは廃業です。
また、「第二会社方式」というと借金から合法的に逃れる方法・・・、というイメージが強かったため、不純物を取り除いて純白な新会社になったとしても、金融機関もそれなりの対応しか出来ず、資金調達が容易ではありませんでした。
それらの問題点をカバーした今回の認定制度創設は、本当に志を高く持って事業再生をめざす中小企業にとってはまさに朗報です。
認定を受けるための要件は多いのですが、「相続税の納税猶予制度」のように、通ることすらままならない程、網目の細かいフィルターがかけられているわけではありませんので、実務としても夏頃から本格的に動きを見せると思われます。
ただ、そういうネットが敷かれたことで、「決断の留保」の呼び水にならなければいいのですが・・・。
(※)ケインズのライバルと称されるフランク・ナイトの『不確実性理論』を、ダニエル・エルスバーグという経済学者が実験として発展させたもの。

あいつが帰ってきました・・・

17年振りに帰ってきました。
「欠損金の繰戻し還付制度」
これは当期に赤字(欠損金)が出た場合に、前期に納めた税金の一部または全部を還付請求することができる制度です。
適用対象となる法人は、資本金1億円以下の法人で、今年の2月決算法人から適用が可能となりました。
これによって景気後退による赤字決算の補填も少しはできるようになります。
ところが、この制度はひとつ大きな問題を抱えています。
それは、この繰戻還付制度の適用を申請する場合には必ず『税務調査』を受けなければならないという“都市伝説”があるのです。
政府も厳しい国家予算の中から税金を還付しなければならないのですから、あえてこの制度を使わせたいということが無いことは誰でも想像がつきます。
そこで、税務署が税務調査を制度適用の抑止力としていることは間違いないでしょう。
これによって、まだこの制度があったころ、制度の申請を控える経営者がいたのも事実です。
ところが、それだけではありません。税務調査を敬遠する税理士自身がこの制度の適用判断を経営者に知らせないという最悪の事態も考えられるのです。
あなたの会社の顧問税理士は皆さんの味方ですか?
本当に皆さんのほうを見ていますか?
みなさんの会社が前期が黒字決算で税金を納めており、今期が赤字決算である場合にはそれ自体が私たちの『踏絵』となるのです。
税務署の対峙は税理士に任せ、業績悪化による資金ショートを招かぬよう、必ず税金の還付を受けられるように準備を進めてください。