首都圏の家庭を直撃!迫りくる相続税改正の影響!

首都圏においては、なんと10人に4人が相続税の申告の必要が出てくるかもしれない時代に入ろうとしています。今まで相続税と言えば一部の富裕層以外には縁のないもので「相続税!?うちには関係ないよ~。」という人がほとんどでした。しかし、平成25年度の税制改正によって、首都圏に住むみなさんにとっては特に、相続税は身近なもの変わろうとしています。
みなさん既にご存知のように平成25年度の税制改正で、相続税の基礎控除額が40%引き下げられることが決まりました。現行の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数ですが、平成27年1月1日以降の相続については3,000万円+600万円×法定相続人の数となります。法定相続人が妻と子供2人で合計3人のケースで基礎控除額は、なんと8,000万円から4,800万円に減ることになります。(図1)

現行制度下では、このケースの場合、相続財産が8,000万円以下であれば相続税はかかりませんが、平成27年以降は相続財産のうち4,800万円を超える部分に相続税がかかることになります。首都圏に少し広めの不動産と貯金があればすぐに越えてしまう金額であることがわかります。
それでは実際にどれくらいの人が相続税を納めることになると予想されているのでしょうか。
平成23年の死者数のうち、相続税の課税対象となった人の割合は全国平均で4.1%でした。改正により平成27年以降、相続税を納めなければならない人は全国平均で6%~7%になり、人数にすると3万人前後増加すると言われています。しかし、これはあくまで全国平均の数字であり、東京、名古屋、大阪など不動産の評価額が高い首都圏において相続税の課税対象となる人は10%~15%になるのではないかと見られているのです。
相続税を納める必要はなくても相続税の申告は必要という人については、さらに増えることが予想されています。相続税は財産が基礎控除の金額の範囲で納まっている人は申告の必要はありません。しかし、基礎控除が下がれば、財産が基礎控除の金額を超えて相続税の申告が必要になる人がかなり増えるのです。
ここでは説明は省きますが『配偶者の税額軽減』や『小規模宅地の特例』などの特例を使えば、結果として税金を納める必要がある人は、かなり減ります。しかし特例を受けて納税をなくすためには必ず『申告が必要』なのです。そこで冒頭で触れたように、首都圏においては10人に4人が相続税の申告の必要が出てくるということが予想されているのです。
また、基礎控除の40%カットに加えて最高税率が55%に引き上げられ、税率は8段階に分かれます。この基礎控除の40%カットと税率の引き上げによる相続税額の影響については(図2)を見てください。

これだけでも大きな影響があることが分かりますが、更に大きな影響が見込まれるのは2次相続、つまり妻や夫が亡くなった1次相続の後の相続、子供達世代が相続する段階です。
なぜなら1次相続、夫婦間の相続では税負担が大幅に軽減される「配偶者の税額軽減」という制度があり、税額を抑えることができますが、2次相続、子供世代への相続ではそうした軽減制度がないからです。(図3)

今回の改正を目の前に控え、今、まず皆さんがやらなければいけないことは、まず相続財産を把握し、個々の資産がどれくらいの評価額になるのか、そしてどれぐらいの相続税がかかるのかを知ることです。相続財産の評価額が分かれば、次は個々の資産を、いつ、誰に、どのような方法で渡していくかを考えて行きます。
相続を“成功”させるには大きく分けて(1)節税(2)納税資金(3)争族の3つの対策が重要であり、事前準備が不可欠なのです。
繰り返しになりますが、相続対策はもう一部の富裕層だけの問題ではありません。まずは相続財産の把握と評価、相続税額の試算を行うことを、今始めることが、みなさんの相続を“成功”へ導く第一歩です。

え?出向者の給与負担金が・・・寄付金になるなんて?!

前回は出向者の社会保険の負担についてお伝えしました。
今回はその給与負担にかかる法人税法上はどうなるのか?についてです。
出向者への給与の負担、法人を複数もつような経営者としてはいろいろ考えがあるかと思いますが、場合によっては「寄付金」となることがあるので注意が必要です。
★応益負担の原則
まずお伝えしたいのは、
「税務上は「応益負担」の考え方によっている」ということです。
応益負担=すなわち、出向者本人へ支払われる給与はどこに労務提供したものの対価なのか、を中心に課税を考えるということです。
そうすると例えば、出向先で100%の労務提供をしているときには、少なくとも出向先法人はその分の給与の負担はすべきである、ということになります。
しかしその給与の大半は実は出向元法人が負担している、ということになると、出向元法人から出向先法人への利益の供与、すなわち寄付金ではないか?という問題が発生することがあります。もし寄付金とされた場合には、ご存知のとおり税金計算上は費用にはなりません。以上を前提としたうえで、各種ケースの取り扱いについて説明していきます。

(1)出向先給与ベース<出向元給与ベースの場合
前述のとおり、給与というのは労務の対価ですので、その提供を受けた出向先法人が相当の給与の負担をすべきです。しかし時には給与規定が、出向先給与ベース<出向元給与ベース、という場合があります。その場合に出向元法人がその差額を補てんすることが考えられます。

この場合には差額の補てんを◎出向先法人経由で出向者に支払っても◎出向元法人が直接出向者へ支払っても、税務上の問題はありません。むしろ差額補てんの金額が両法人の給与規定ベースの差額になっているかが重要になります。なお、負担が多すぎる場合には、寄付金となる可能性があります。
(2)出向元法人給与の支給を行い出向先法人が「指導料」の負担をする場合
給与はあくまで出向元法人が支払う、という場合があります。この場合出向先法人からは「経営指導料」などの名目で給与相当額を出向元法人へ支払うことがあります。

この場合も考え方は(1)の場合と同じです。指導料の金額>出向者への給与の金額となるとその差額は寄付金となることがあります。
(3)出向元の従業員が出向先で役員となる場合
出向先では役員となっているので、出向先法人が負担する部分はもちろん役員報酬となります。しかし出向元では従業員ですので、出向契約の内容いかんでは出向者に対して賞与の支払いがある場合も考えられます。その場合に出向先法人が賞与部分の負担をした場合には、役員賞与となり出向先法人の費用とはなりませんので注意が必要です。
なお前述の通り、出向先法人では役員報酬になりますので出向先法人での議事録作成などの報酬金額決定の証拠書類が必要になります。
出向者の給与負担については、税務上の取り扱いを知っておかないと思わぬ税負担になりかねません。人事にもその辺をリンクさせていくことが重要です。

節税の作法

みなさんよくご存知の米アップル社。
米上院の行政監察小委員会は5月20日、米アップルが海外子会社などを活用して、巨額の課税逃れを行っていたとする調査報告書を公表し、翌21日の公聴会にティム・クック最高経営責任者(CEO)を呼び、この問題を追及しました。
新聞やテレビで報道されていましたので知っている方も多いと思いますが、アップルの節税方法とはどのようなものだったのでしょうか。
アップルの節税方法は、アイルランドと米国の税制の違いを利用したものです。企業は法人税を住所が存在する国に支払うのが原則です。しかし、実はこの課税上の「住所」がアイルランドと米国では異なるのです。
アイルランドでは、法人の実態がある場所が課税上の「住所」となります。一方米国では書類上、企業を設立した場所が「住所」になるのです。
アップルの節税方法は、国によって税金徴収の方法が違うことを利用しています。
アップルはアイルランドに会社を設立して、法人の実態はアメリカに置いたのです。つまり、運営の実権を米国に残したまま、アイルランドに会社を設立したため、米国にもアイルランドにも課税上の「住所がない」という状態になり、法人税を払わなくて済むというわけです。二重課税ならぬ「二重無課税」状態です。
さて、ここでのポイントはこのアップルがとった方法ですが、決して違法ではないということです。違法でないとういうことは、すなわち脱税ではありませんので合法的な立派な“節税”ということになります。
報告書によると、アップルは、2009年から12年に740億ドル(約7兆5000億円)の利益を米国から海外に移転しています。そのうち440億ドル分(約4兆5000億円)について課税を逃れたとし批判を受けています。繰り返しになりますが、違法ではありません。合法です。
では何故、アップルはこんなに批判を受けることになってしまったのでしょうか。
それは、違法ではないからといって「やり過ぎだ」ということではないでしょうか。
今回のような法の隙間をつくような節税手法である場合、節税効果が多額になればなるほど、何か言いたくなるのが人情です。違法ではないかもしれないが、そんな手法を使うなんて「けしからん!」ということです。
私は広く認められた節税方法はもちろんのこと、このような手法も、違法でない以上、ある程度積極的に行っていくべきであると考えています。しかし、同時にこうした種類の節税には、ある種の“作法”のようなものがあると私は考えています。
それは「やり過ぎない」ということです。
取引態様が多様化している現在、古い税法では対応しきれない部分があり、法の“隙間”が生まれているようなケースは、多くの場合、既に課税庁側もそのことを把握しています。しかし、法律の改正は簡単にはできない為、どうにも課税出来ないのが実態です。
しかし、ある法の隙間をつく節税方法が広く世間に知れ渡り、あちこちで使われ、それが多額になってくれば、当然課税庁側も動き出します。法改正です。
こうした場合課税庁側は、こうしたグレーな節税方法を場合によっては裁判で負けることが分かっていても否認します。なぜなら、負ける事が分かっていても、裁判に持ち込み問題を表面化させることによって法改正に導く事ができるからです。
中にはグレーな節税方法を得意満面に本に書いたり、インターネットを使って発信する専門家もいます。こうした行為は結果として、その節税手法に網がかかる時期を早めることになります。
グレーな節税方法は「ひっそり、こっそり、やり過ぎない。」これがポイントなのです。

消費税増税の裏効果をご存じですか?

来年4月からの消費税増税を前に、
中小企業者において消費税増税分を
価格に上乗せしやすくするため、大手小売業者の『消費税還元』などを
銘打った特価セールを禁止する臨時措置が話題となりました。
この臨時措置では、本来、消費者が負担すべき消費税増税分を値引き
したり、ポイント還元したりしていると解釈できる広告や宣伝を
禁止しています。
これらは中小企業の消費税増税による価格への転嫁を促進するための
対応として政府が決めたことですが、はっきり言ってありがた迷惑です。
そんな、ありがた迷惑な臨時措置ですが、一つだけ私たちにとって
とっておきの裏効果が隠れていました。
それが、『総額表示の特例措置』です。
総額表示とは、平成16年に導入された制度で、消費税を含んだ支払総額
で価格の表示することを定めた法律です。

この法律の施工前に、私は地元の商工会などで何度か講演の依頼を受け、
その度に、これは大事だと話をしていたのです、私の話し方がよくなかった
のか参加されていた皆さんはあまりピンときていませんでした(汗)
例えば、現在120円の缶ジュースは8%増税後いくらになるのでしょうか?
理論上は123円42銭です。
※120円÷1.05×1.08
ところがいうまでもなく自動販売機には1円、5円は使えません。
その結果、以前100円だった缶ジュースは、消費税が導入されたときには103円ではなく
110円となりました。
その後、消費税が3%から5%に引き上げられると、115.円ではなく、120円となりました。
それは何故か?
3%の価格アップでは事務コストすら賄えなかったからです。
これは便乗値上げではありません。
適正な利益を維持するための『価格改定』です。
ところが、価格改定の際にネックになってくるのが総額表示です。
改定後の価格に消費税増税分を乗せて表示をしなければならないため
一般の消費者に与える『割高感』は絶大です。
消費者からは、すぐに「便乗値上げだ!」と言われてしまいます。
現に、総額表示が導入されたときには、見た目で値上がりした印象が強く影響し、
一般消費者が買い物にいく機会が多いスーパーなどでは売り上げの減少が
みられました。
そのため、国は昔きめた法律を曲げる臨時措置をつくったのです。
この臨時措置によって新たに認められることとなった表示方法は
次のとおりです。

これらの表示方法は10月1日以降に解禁となります。
これによって、従来、税金によって割高感を与えていた商品等について
次のように表示することができるようになりました。

ただし、この措置を利用し税抜価格で表示した場合には、
『できるだけ速やかに』総額表示をするように努めなければならないとしています。
どの程度努めればいいのでしょうか?(笑)
皆さんはこの機会を逃していつ価格改定に手をつけますか?

意外と知らない、出向者の社会保険とその影響!?

ねえねえ、「出向者の社会保険はどうしたらいいの?」
最近よくあるご質問の1つです。
そこで、今回はこの取り扱いについて簡単にご説明します。
★ 在籍出向
通常よくある出向の形です。
書いて字のごとく、籍は出向元に置いたまま、出向先で勤務するものです。
この場合には、いわゆる労働契約が出向元と出向先の両者で成立していることになります。
よって保険関係の適用はその使用者の責任の所在や、その給与の支払形態によって変わってくることになります。
★ 労災保険は?
まず、労災保険は実際に勤務をしている場所、すなわち出向先で適用することになります。
また、もし給与に出向元からも支払われるものがあれば合算して適用します。
★ 雇用保険は?
雇用関係は、出向元か出向先のいずれかにしか成立しません。
よって、いずれかのうち生活をするため必要な主な給与を支払う側での適用になります。
ちなみに、先のような給与の合算はありません。
■保険別の適用一覧
保険種類        適用先
労災保険   →    出向先
雇用保険   →    主たる給与の支払事務所
社会保険(健保・厚生)→ 給与の支払い事務所(一定の場合には保険者を選択)
★ 社会保険は?
健康保険や厚生年金の社会保険ですが、これは直接給与を支払うほうでの適用になります。
よって、勤務先が出向先でも給与は出向元が直接支払う、そんな時は出向元で適用することになります。(あくまで「支払う」ことであり双方の給与の負担は関係ありません)
★ 出向元、出向先の2か所から直接支給される場合は?
この場合には双方に使用関係が存在しることになるので、双方の会社において被保険者となってしまいます。
そこで、保険の二重加入を避けるため保険者を「選択」して、双方からの給与を合算して保険料を決定します。要は、従業員さんがいずれかを選択して、合算給与で適用することになります。
■給与の支払元と社会保険の関係
給与の支払元              適用関係
出向元で全額を支給       →   出向元で適用
出向先で全額を支給       →   出向先で適用
出向元・出向先から双方で支給  →   従業員が選択していずれかで適用
以上のように、
・直接支払うのはどちらなのか
・主な支給はどちらなのか
・支給に関わらず、勤務するのはどちらか
などによって保険の適用が変わってくることがわかります。
これを経営者の視点からみると、
例えば社会保険の適用は経費負担の面などから・・
・出向先でしたい
・出向元でしたい
また、給与自体の負担も
・出向先でしたい
・出向元でしたい
・双方でしたい
と、様々であることが考えられます。
そうすると・・・
例えば、「社会保険は出向先で適用したいので、給与は出向先から支給しないといけないな・・」
「しかし、給与の負担は出向元からもしたいので・・・双方から給与の支給をしてしまうと、社会保険の適用は従業員の選択になってしまうから・・」
「では、負担分を出向元から出向先へ「給与負担金」として直接支払って、給与自体は出向先から本人へ支払おう」ということになるのです。
会社を複数お持ちの経営者の場合には、この辺も知っておかないと人事の際の経費負担が
思わぬ結果となることもあるのです。
さらに、実際の給与の支給とその負担の関係や金額などによっては・・・
実は法人税法上の取り扱いも異なってきます。この辺はまた次の機会にお伝えしようと思います。
最近は建設業を中心に、社会保険の加入状況の現地調査、加入状況による下請けの規制など、厳しさが増大しています。
人事が思わぬ方向にならないよう・・気を付けたいものです。
【注:上記において、概要をお伝えするために、細かい規定部分は省略していますのでご了承ください。】

通達は法律ではない!

税金。私達は何を根拠に税金を納めなければならないのでしょうか。
ほぼ100%の人がこう答えるのではないでしょうか。「法律」
競馬の払戻金を一切申告せず、約5億7千万円を脱税したとして所得税法違反罪に問われている元会社員男性の判決が5月23日にありました。大きく報道されていましたので競馬ファン以外の方でも、ご存知の方が多いのではないのでしょうか。
長年競馬をやっていらっしゃる方でも、意外と知らない方が多いのですが、会社員の場合、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告する必要があり、競馬の払戻金もその対象です。この元会社員の男性は競馬による所得、つまり収入から経費を差し引いた額が20万円を超えていましたので、申告して納税する必要があったのです。
この男性は競馬の所得を申告していませんでしたので、有罪になるのは仕方ありません。
しかし、今回の裁判で大きく議論の対象となった点は別にあります。それは「所得区分」の問題です。
所得税法では、個人の所得は「給与所得」「事業所得」など10種類に分けられており、どの所得区分に当てはまるかで所得の計算方法が異なります。馬券の払戻金については、“一応”「一時所得」とされています。
ここでは計算方法等の詳細は省きますが、今回のケースが検察側が主張するように「一時所得」であるとすると、認められる経費は当り馬券代だけになり、結果として脱税額は5億7千万円となります。
しかし、今回の大阪地裁が出した判決では、「一時所得」ではなく、男性の馬券購入を“営利を目的とする継続的行為”としてFX取引や先物取引と同じ「雑所得」に当ると判断しました。「雑所得」であれば、外れ馬券代や男性が開発した独自の競馬予想システムの運営コストなども含めて必要経費として認められます。その為、脱税額は約5200万円と結論づけられました。
うん?だって競馬の払戻金って「一時所得」決まっているんじゃないの?
そんな疑問がわいてきませんか?
実は競馬の払戻金は「一時所得」であるなどという事は法律には一切書かれていないのです。ですので先程、馬券の払戻金は“一応”「一時所得」とされている。と書いたのです。
法律に記載がないのに、どうして競馬の払戻金は「一時所得」とされているのか。実は「所得税法基本通達」というものに、その記載があるのです。
≪所得税法基本通達34-1(一時所得の例示)≫
次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(2) 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等
この「通達」、「法律」ではありません。
分かり易く言うと国税庁長官が部下である税務署職員に対して法律について「こう解釈しなさい」と命令する文章なのです。
つまり、「通達」は言わば“内部の決まりごと”のようなものであって本来、法的拘束力は一切ないはずなのです。しかし、税務署は通達に従って税務行政を執行しますので、結果として事実上、限りなく法律に近い拘束力を持ってしまっているのです。
また、通達の前文にはこのようにも書かれています。
≪所得税法基本通達 前文より抜粋≫
この通達の具体的な適用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るよう努められたい。
つまり今回のケースのように「馬券収入=一時所得」と杓子定規に判断してはいけません、様々な事象を勘案して、総合的に判断しなさい、と書かれているのです。
日本では実質的に通達が法律に近い効力を持ってしまっている事も事実ですが、通達による判断がひっくり返った今回の裁判を通して、通達はあくまで通達であって法的効力は無いということが分かります。
とはいえ、通達に記載がある以上、税務署側は必ず通達に沿った解釈、取扱いを行いますので、納税者が通達に反した解釈をすることは、それなりのリスクを覚悟しなければなりません。しかし、様々なケースがある税務において、通達に沿って解釈する事が必ずしも正しい判断であるとは言えず、通達に反した納税者の主張が認められる可能性があるということも事実です。
通達を根拠に課税されそうになっても簡単に諦めてはいけません。
しつこいようですが、「通達」は「法律」ではないのです。
ちなみにこの事件、先日、検察側が控訴しましたので、判断が更にひっくり返る可能性もあります。今後の判断も気になるところです。

消費税、5%のつもりが8%に?!

みなさんは、消費税の改正前の日付の契約でも税金の計算上は「8%」になってしまうことがあるのをご存知ですか?
ご存知のとおり、平成26年4月1日から消費税の税率が変わります。
しかし・・・
実は、取引の「契約日」とその「完成引渡日」によっては、税金の計算上の税率が変わってしまうのです。今回は便宜上、建設業等の「請負契約」を前提にお話しします。

出典:週刊税務通信NO.3250号より
簡単に図で見ると上記のようになります。
まず、平成25年10月1日が、ポイントになる日(指定日)です。
そして消費税率の変更の施行日は、ご存知のとおり平成26年4月1日です。
上記の図を見ると・・・
・「契約の日」が平成25年10月1日(指定日)の前か、あるいは、以後か
・「完成引渡日」は平成26年4月1日(施行日)の前か、あるいは、以後か
この2点によって税金計算上の税率が変わってくるのがわかります。
簡単にまとめるとこうなります。
(1)「契約の日」が平成25年10月1日(指定日)前の場合には、必ず5%になる
(2) 「完成引渡日」が平成26年4月1日(施行日)前の場合には、必ず5%になる
そして・・・
(3) 「契約の日」が平成25年10月1日(指定日)以後で、かつ、
「完成引渡日」が平成26年4月1日(施行日)以後の場合には、必ず8%になる
わかりやすく言えば、上記の(3)に該当する場合には、
たとえ契約書に「消費税5%×××円」と明記されていても、
税金計算上は「8%」になってしまう、ということです。
そこで・・・
★対策1 契約日を前倒しする
「契約日」が平成25年10月1日前後で、かつ、「完成引渡日」が平成26年4月1日前後になりそうな場合には、同年9月30日までに契約できるように調整するのです。「契約日」が前倒しできれば、必ず5%になるからです。
★対策2 契約金額を高めに設定する
「契約日」は平成25年10月1日以後であるが、「完成引渡日」が平成26年4月1日前後になりそうな場合には、そもそもの契約金額を、税率が「8%」の場合を想定して高めに設定するのです。仮に、施行日以降の「完成引渡日」になり8%税率が適用されてたとしても、その分の消費税の負担を避けるためです。
契約の本数が多い、あるいは契約金額が大きい、などの場合には、上記の対策をするだけでも、会社の損益・資金繰りにも大きな影響がでることがあります。
業界からのお達し等があり、事前に準備する方も多いかもしれませんが、
知らなかった場合には大きな損失になる可能性があるのです。
少し先の話のようですが、事前に出来る準備をして
自社にとって有利になるように進めましょう。
なお、今回は「請負工事」の前提でしたが、その他の業種の場合にも上記のような適用があります。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/201303.pdf
簡単なチラシですが参考にしてみてください。

「保険」と「お金」

「掛捨てなんてもったいない!損ですよ!貯蓄型保険が得ですよ!」こんな風に誰かに言われた経験ありませんか?でも、本当に貯蓄型の方が得なのでしょうか?考えてみましょう。
掛捨て保険は契約期間中に死亡や病気、ケガなどがなければ払った保険料は返ってきません。したがって保険料が割安です。これに対して保証に加えて貯蓄もでき、満期になれば満期保険金が受け取れ、一定の期間が経過していれば、解約すると払い込んだ保険料以上の解約返戻金が受け取れたりするのが貯蓄型保険になります。貯蓄型の保険としては終身保険、養老保険、個人年金保険などがあります。当然掛捨てに比べて保険料は高くなります。
予定利率という言葉をご存知でしょうか?予定利率とは保険会社があらかじめ約束する利率(運用利回り)の事です。つまり、この予定利率が高いほど元本となる保険料は安く済むわけです。
この予定利率、20年ほど前までは終身保険の場合、5.5%と高く、保証と貯蓄の両方の機能を兼ね備えていました。しかし、現在の予定利率は1.5%程度となっています。また、4月から金融庁が予定利率の目安となる標準利率を1.5%から1%に引き下げたため、保険会社各社も予定利率を引き下げます。ということは、保険料は上がり、貯蓄性はさらに低くなります。
貯蓄型という名前に惑わされてしまうことが少なくありませんが、どのような保険にも必ず掛捨ての部分があります。貯蓄型の場合、掛捨て部分に貯蓄分の保険料を上乗せするため、当たり前ですが高くなります。
予定利率が極めて低い今、要するに自分で貯めるか、割高な保険料を支払って保険会社に任せるかの違いになります。しかし、ここでの大きな違いは、その貯蓄したお金の“自由度”です。
当然、自分で貯蓄しているお金に関しては、いつでも自由に使うことができます。その資金を使って投資することも、急な予期せぬ出費にあてることもできます。
しかし、保険を使った貯蓄の場合、払込保険料以上の返戻金を受け取るには、一定期間以上、保険料を払い続けることが必要となります。何らかの理由でお金が必要になり、中途解約すれば保障を失い、さらに払い込んだ保険料の総額よりも少ない解約返戻金しか受け取れないといったこともあり得るのです。
保険の目的をいま一度考えてみましょう。やはりそれは万が一の時の「保障」でしょう。
20年前と現在では状況が全く違います。「保障」と「貯蓄」は分けて考えるべきなのです。
今回は個人の保険を取り上げましたが法人でも同じです。保険は本来、社長さんに万が一のことがあった時に、会社や家族を守るためなどに備えるものです。
節税を目的としても、それは結局“利益の繰延”でしかありませんし、何よりお金が出てしまいます。その時に税金を払わなくて済む代わりに保険料を払うことによって、お金はなくなります。
解約返戻率の高い保険であっても、返戻率のピークまではやはり一定期間以上の払い込みが必要で、その間お金の使い道は保険料の払い込みにロックされてしまい、投資にも、いざという時の使途にも回せません。退職金準備など、出口の戦略がきちんと出来ていれば、もちろん使い方によっては有効であることも事実ですが、今、目の前のお金が流出していくことも事実なのです。
ご存知のように中小企業の法人税率は随分下がりました。特に800万円までの所得であれば、所得の4分の1ほどの税金を払えば、残りの4分の3のお金は手元に残せます。残ったお金は貯蓄にしろ投資にしろ自由に使えるということです。
もちろんお金が出ない節税方法に関しては別ですが、800万円までの所得に対しては節税対策を講じる必要は無いと言っても過言ではありません。
800万円までは積極的に利益を出し、内部留保(貯蓄)を厚くして財務体質を強固なものにしましょう!

5年に一度の社員旅行でもNG?

福利厚生としての社員旅行。
単なるインセンティブであればボーナスでよいのですが、それとは少し違った意味合いを持っており、組織としての一体感や、その会社に勤務していることへの満足感を生むなどの効果も期待できます。
そのような意味合いから社員旅行を検討される方も多いと思われますが、税務上、福利厚生費として認められるためには、一定の要件を満たす必要があります。
要件を満たさない社員旅行を実施した場合には、“給与”として認定されますので、会社としては源泉徴収の必要が生じ、スタッフとしては所得になってしまいます。
もちろん、対象が役員であれば、役員賞与になってしまうため、注意が必要です。
(法人として経費にならない・・・)
その要件ですが、国税庁のHPで、次の通り明示されております。
(1)旅行の期間が4泊5日以内であること。
(2)旅行に参加した人数が、全体の人数の50%以上であること。
(工場や支店ごとに行う旅行は、職場ごとの人数の50%以上が参加)
(3) 自己都合により参加しなかった者に対して、金銭を支給しないこと。
(不参加者だけではなく、参加者も相当の額が給与課税されます。)
また、具体的に明示されていませんが、会社が負担する旅行費用は、一般的には一人当たり10万円が目安とされています。
この社員旅行について、平成22年に興味深い裁決が出されています。
土木建築業を営む法人が行った社員旅行の費用が一人当たり241,300円であったため、原処分庁はそれを一般的なレクリエーションから逸脱している(つまり、贅沢過ぎる!)として給与認定しました。
しかし法人サイドは、「今のご時世、毎年社員旅行に行く会社はない。当社も5年に一度の旅行なので、241,300円を5年で割れば、1年あたりは48,260円となり、常識的に考えても贅沢過ぎる旅行ではない。給与認定はおかしい。」と主張しました。
毎年、社員旅行に連れていけるほどの利益はない。
だからこそ、5年に一度とし、我慢した後には盛大に行う。
しかも1年あたりに割り直せばたかだか5万円弱。
しかし、国税不服審判所の判断は、「レクリエーションはあくまでもその行事ごとに判断すべきであって、単年度に引き直すなどの考慮をすべきではない。」として、課税サイドの主張を適法(つまり、法人の負け・・・)としました。
一見すると法人の主張にこそ一理ありそうですが、課税側の判断が覆ることはありませんでした・・・。
毎年、社員旅行を実施する事は我慢し、その分、数年に一度は豪華に!
そのような思考は自然のような気もしますが、今回の裁決等を参考に、十分に注意してください。

税務調査、今後のトレンドは・・・

あなたの顧問税理士は、御社の申告書に、「書面添付」をしていますか?
「え?書面添付?・・・」
初めて聞く、なんていう方はヤバいかもしれません。
そう、あなたの顧問税理士がヤバい、という意味です。
前回(2月6日配信号)、私のメルマでは「税務調査の手続きが変わりました!」
という内容をお伝えしました。
実はこの改正によって、税務署内では大きな変化が起きているのです。
 
「税務調査に行けない・・」
改正による事務作業量の大幅な増加によって、
これまでの件数の事務調査をこなすことが難しくなっているようです。
「じゃ、税務調査に当たる確立が減るの?」
いえ、そんなことはありません。
彼らにも、いわゆる「ノルマ」がありますから
なんらかの方策によって数をこなしてくるはずです。
そこで「書面添付制度」。
これは作成した申告書の内容について、
税理士が、どの資料をどの程度確認したのか、
といったことを記載した書面を申告書に添付するものです。
これにより、仮に税務調査が行われる場合には
事前に、税務署から税理士に対して、
この書面をもとに意見聴取が行われることになります。
そう、原則としていきなり実地の税務調査となることはないのです。
よって、この意見徴収で何も問題とならなければ税務調査は行われず、
それで終了することになります。
ご存知でしたか?
要は、通常であれば2日~3日の立会いを要する実地調査が省略されるのです。
(当然、意見聴取では不十分として、実地に税務調査になることもあります)
税務署としてはこの意見聴取のやりとりでも
「ノルマ」にカウントされるので、ここでの数を増やしてくるのは必至なのです。
なお、仮にこの意見聴取によって過ちが見つかって
修正申告することになったとしても・・・
なんと、ペナルティーである各種「加算税」が課されません!
この内容は税務署内の指針にも明記されています。
あなたの顧問税理士は、御社の申告書に、「書面添付」をしていますか?
弊社では、この制度の適用を推進しています。
少しでも不安を感じられた方は、まずは弊社までご相談ください。
弊社では「セカンド・オピニオンサービス」も行っております。
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