意外と知らない、出向者の社会保険とその影響!?

ねえねえ、「出向者の社会保険はどうしたらいいの?」
最近よくあるご質問の1つです。
そこで、今回はこの取り扱いについて簡単にご説明します。
★ 在籍出向
通常よくある出向の形です。
書いて字のごとく、籍は出向元に置いたまま、出向先で勤務するものです。
この場合には、いわゆる労働契約が出向元と出向先の両者で成立していることになります。
よって保険関係の適用はその使用者の責任の所在や、その給与の支払形態によって変わってくることになります。
★ 労災保険は?
まず、労災保険は実際に勤務をしている場所、すなわち出向先で適用することになります。
また、もし給与に出向元からも支払われるものがあれば合算して適用します。
★ 雇用保険は?
雇用関係は、出向元か出向先のいずれかにしか成立しません。
よって、いずれかのうち生活をするため必要な主な給与を支払う側での適用になります。
ちなみに、先のような給与の合算はありません。
■保険別の適用一覧
保険種類        適用先
労災保険   →    出向先
雇用保険   →    主たる給与の支払事務所
社会保険(健保・厚生)→ 給与の支払い事務所(一定の場合には保険者を選択)
★ 社会保険は?
健康保険や厚生年金の社会保険ですが、これは直接給与を支払うほうでの適用になります。
よって、勤務先が出向先でも給与は出向元が直接支払う、そんな時は出向元で適用することになります。(あくまで「支払う」ことであり双方の給与の負担は関係ありません)
★ 出向元、出向先の2か所から直接支給される場合は?
この場合には双方に使用関係が存在しることになるので、双方の会社において被保険者となってしまいます。
そこで、保険の二重加入を避けるため保険者を「選択」して、双方からの給与を合算して保険料を決定します。要は、従業員さんがいずれかを選択して、合算給与で適用することになります。
■給与の支払元と社会保険の関係
給与の支払元              適用関係
出向元で全額を支給       →   出向元で適用
出向先で全額を支給       →   出向先で適用
出向元・出向先から双方で支給  →   従業員が選択していずれかで適用
以上のように、
・直接支払うのはどちらなのか
・主な支給はどちらなのか
・支給に関わらず、勤務するのはどちらか
などによって保険の適用が変わってくることがわかります。
これを経営者の視点からみると、
例えば社会保険の適用は経費負担の面などから・・
・出向先でしたい
・出向元でしたい
また、給与自体の負担も
・出向先でしたい
・出向元でしたい
・双方でしたい
と、様々であることが考えられます。
そうすると・・・
例えば、「社会保険は出向先で適用したいので、給与は出向先から支給しないといけないな・・」
「しかし、給与の負担は出向元からもしたいので・・・双方から給与の支給をしてしまうと、社会保険の適用は従業員の選択になってしまうから・・」
「では、負担分を出向元から出向先へ「給与負担金」として直接支払って、給与自体は出向先から本人へ支払おう」ということになるのです。
会社を複数お持ちの経営者の場合には、この辺も知っておかないと人事の際の経費負担が
思わぬ結果となることもあるのです。
さらに、実際の給与の支給とその負担の関係や金額などによっては・・・
実は法人税法上の取り扱いも異なってきます。この辺はまた次の機会にお伝えしようと思います。
最近は建設業を中心に、社会保険の加入状況の現地調査、加入状況による下請けの規制など、厳しさが増大しています。
人事が思わぬ方向にならないよう・・気を付けたいものです。
【注:上記において、概要をお伝えするために、細かい規定部分は省略していますのでご了承ください。】