皆さんご存知「青色申告」。この青色申告制度が税務調査の現場において、時として調査官の都合の良い道具として使われていることがあるのをご存知でしょうか。
青色申告は法定の帳簿書類に取引の記録、保存をし、税務署の承認を受けることで、赤字を繰り越せたり、30万円未満の資産を経費にできたりと様々な特典を受けることができる制度です。おそらくこのメルマガを読んでくださっている方の会社のほとんど全てが青色申告の承認を受けているはずです。
この青色申告ですが、場合によっては承認を取り消されることがあります。
以下にその主な原因を簡単に記載します。
・帳簿書類を備えていない、又は税務職員に対して帳簿書類の提示を拒む
・隠ぺい、仮装行為がある(詳細要件あり。省略。)
・2事業年連続で期限内に申告書を提出していない
これらの青色申告取消事由となり得る項目を見ると、それが事実であれば確かに取り消されてもしかたがないかな・・・と思ってしまいます。
しかし、問題なのは税務調査の現場において存在する、決して珍しくない、以下のようなやりとりです。
調査官 「前期の申告で計上すべき売上が漏れています。しかもこれは仮装・隠ぺい行為ともとれるので青色申告の取消事由に該当する可能性がありますね。」
社長 「えー、そんなぁ!?売上計上が漏れていたことは認めますけど、わざとじゃないですよ!仮装・隠ぺいだなんて・・・青色申告取消なんて勘弁してくださいよ!」
調査官 「困りましたねぇ・・・それでは今回は青色申告が取り消されないように、今から私が言うように“申述書”を書いて税務署長宛てに提出してください。」
社長 「それで、青色の取消は勘弁してもらえるんですね!?分かりました、提出しますので、どのように書いたら良いか教えてください。」
国税庁のホームページには法人の青色申告の承認の取消についての事務運営指針が掲載されています。そこには隠ぺい、仮装行為等があり青色申告取消事由に該当する場合であっても、その事業年度前7年以内の各事業年度について(1)青色申告承認取消処分を受けていなく、(2)調査に係る不正所得金額又は不正欠損金額が500万円に満たない場合で、今後適正な申告をする旨の当該法人からの申出等があるときは、青色申告の承認の取消しを見合わせると記載されています。前述のやりとりの中で調査官はこれを“利用”したのです。
調査官がこの社長さんに“申述書”を提出させる目的は、この社長さんの為に青色申告の取消を見合わせられるようにするといった事では決してありません。実はそもそも青色申告取消事由など生じていなく、申述書など提出する必要がないケースがほとんどなのです。表向きにはそのように感じさせておいて実際には他の理由があるのです。それは“申述書”を提出させることによって、隠ぺい仮装行為を自ら認めさせる形にして、重加算税をかけることです。
詳細によりますが、売上計上漏れは、意図的な売上“除外”とは異なり、隠ぺい、仮装行為とは言えません。実際に税務調査時に見つかるものの多くは売上計上漏れであり、隠ぺい、仮装行為には該当しません。にも関わらず、青色申告の取消を“チラつかせる”ことによって、申述書を提出させ、それを証拠として重加算税をかけるのです。
なぜそんな事をするのか。理由は1つです。重加算税は調査官の評価においてポイントが高いからです。
もし税務調査において青色申告取消の見合わせを理由に、申述書の提出を求められた際には、そもそもそれが本当に青色申告取消事由に該当するような行為なのかを顧問税理士さんに確認してください。もし納得がいかなければ、弊社で行っているようなセカンドオピニオンサービス等を利用し、他の税理士の意見を聞いてみるのも良いでしょう。
いずれにしても、調査官の言うことを鵜呑みにして安易に“申述書”提出の求めに応じることないように注意してください。