つい先日、一人の社長さんが私のもとに相談に訪れました。
その社長さんの話では税理士が作った決算書が間違っているということでした・・・
そういえば少し前にも都銀の方から同じような質問受けたばかりでした。そのときは完全に税理士が間違っていました。
実は新会社法ができてから決算書の仕様もかわり、また、ここにきてリース会計基準の変更などもあって環境変化に対応できていない税理士が増えてきているのです。
その社長さんは建設業を営む中小企業の社長さんでした。
はじめに電話で話しを聞いたときには「税理士が作った決算書が間違っているので見てほしい」ということで、少し尋常ではありませんでした。
相談日の当日、果たしてあの社長さんの顧問税理士はどんな決算書をつくったのだろう?と考えながら待っていると、風呂敷にいっぱいの書類をもった社長さんがいらっしゃいました。
その、日焼けした顔つきは普段から現場作業に追われている社長さんの慌ただしい毎日を物語っていました。
テーブルについたところで
「決算書が間違っているということでしたが・・」
と私が聞くと、堰をきったように社長さんは話を始めました。
その社長さんの話をまとめると次のとおりです。
ある現場の工事について元請け会社からの入金が少なかったために交渉したところ追加で入金がありました。つまりこれは売上が増加したのだと社長さんは私に説明しています。
しかし、話を進めていくとその追加入金は元請け会社からの経費分の立替金であって返済しなければならないお金でした。その返済方法は今後の売上入金との相殺ということです。
これでは追加売上とはいえません。名目は何であれただの『借入金』です。
ところが社長さんにしてみれば通帳残高は増えているし、返済も通帳から引落されるものでもないため借入れをしたという実感がないのです。
私は丁寧に取引きの流れを図にして「売上とは何か」を説明させていただきました。最終的に、その社長さんは納得して帰られました。
通帳にお金はあるのに売上ではない・・理解しがたいのも無理はありません。
また、こんな話もありました。
それは私どもが税務顧問をさせていただいている会社の社長さんの話です。
その会社の社長さんは、私がつくった計算書などほとんど見ない社長さんです。
奥さんが経理をしていますが、パソコンで入力作業をしているだけで計算書の見方などほとんど知りません。
久し振りにその会社を訪れた私はパソコンの計算書を見てみました。
苦労の跡はみえますがまずまずの業績です。
「うん、調子良さそうだね!」
と声をかけると
「まぁまぁだね!」
と奥さんの明るい声。
「わかるの?計算書みた?」
と私が聞くと
「そんなもん見なくても通帳見てればわかるわよ!」。
そうです、これこそが商売の究極にしてもっともシンプルな業績の評価指標です。
そう聞いた私は奥さんの言葉に安心して会社を後にしました。
自分の会社が儲かっているかどうかわからないという社長さんのご質問をよくいただきますが、そのように質問される社長さんの会社はまず間違いなく儲かっていません。
こういった質問される社長の皆さんは、顧問税理士から「利益が出ています」と言われながら通帳の残高が増えていない方々ばかりです。
会計上のカラクリはありますが、通帳の残高が増えていないということは、儲かっていないのです。これが商いの世界での真実であることは今さら私がいうことではありません。
しかし、最初に登場してきた社長さんの通帳は増えているけど儲けではない・・これもまた真実です。
そこで中小企業にとって重要なのが『ROCA』。
これは企業が投下した資金に対してどれだけのキャッシュリターンがあったかということです。
ROAと一見似ていますがまったく異なるものです。
次回はこのROCAについてのお話をいたします。