ある経営者が、顧問税理士に質問しました。
「先日、“あなたの会社の決算書には、本来あるべきものが存在しない”と指摘されました。何故無いのでしょうか?」
顧問税理士いわく
「それは、あなたの会社では意味がないから付けなかったのですよ」
その経営者は、意味がないなら仕方ないかと、腑に落ちないまでも引き下がりました。
この顧問税理士の言葉は本心でしょうか?
もしかしたら、心中で違うことをつぶやいているかもしれません。
『そんな面倒なことまでやっていられないよ。その資料を付けたって見方も分からないのだから、適当にごまかしておけば問題ないさ』
一方、経営者の方とお話ししていると、最近よく気付かされる事があります。
それは、経営者の財務に対する知識レベルが、年々上がっているということです。
現代はあらゆる情報が溢れ、あらゆる情報が求められています。
経営者は例え苦手な分野でも、最低限の知識を得ようと努力されています。
そして、新たな知識は自社との照らし合わせで、疑問へと変化する場合もあります。
また、弁護士、医師、建築士等、専門家の不祥事も引き金になっているのでしょう。
ですから、専門家に対する信頼観が、『専門家の言葉は絶対』から『専門家の言葉でも疑え』という様に変わってきました。
今まで専門家は、ある意味【情報の非対称性】を利用して、素人を説得していた面があります。
「あなたは分かっていないのだから、私に任せておきなさい」
専門家による最後通告ですね(苦笑)
しかし、皆さんお気付きの様に、近年は専門家と素人の情報の保有度が急速に接近しています。
その差が100%埋まることはないでしょうが、より近づくにつれて、安易な言動には疑問を持たれ始めます。
さらには、疑問を持ったときに調べる術が増えてきたので、言動の矛盾が浮き彫りにされるのです。
税理士について言えば、顧問という特殊性から、経営者は顧問税理士に対する言葉を信じようとします。
納得が出来なくても、とりあえずは信じざるを得なかった・・・今までは。
しかし、税理士の中にも【情報の非対称性】が埋まり始めた環境に対応できない方々が多数存在します。
昔なら通用しても、今は無理です。
自分達が勉強している以上に、経営者の方々が勉強していることに気付いていません。
経営者も先生と呼びながら、心中ではバカにしているかもしれないのに。
冒頭の税理士の言動は、その典型でしょう。
これは、どこの業界でも一緒です。
税理士のような専門職ではなくても、皆さんもそれぞれの業界の専門家と言えます。
お客様への説明の曖昧さが、大きな事故につながることを体験されたことがあるのではないでしょうか?
一つ一つの言動が、お客様から評価される。
今ほど、専門家としての責任が問われる時代はないはずです。
私も他人事とは考えないように、自分の言動に注意を払っています。
忙しいときほど、説明の省略をしてしまいます。
ふとした瞬間、【情報の非対称性】を悪用しないように、皆さんも十分気を付けて下さい。
お客様は、皆さんの言動をきちんと覚えていますから。