コロナ過における売上減少やコスト増、原料価格の高騰などをうけて、値上げに踏み切る企業が増えてきました。
新型コロナの出現から1年以上がたった今、改めて値付けについて考えてみたいと思います。
ある中小企業経営者とおこなった、先日のお打ち合わせでのことです。
新商品(サービス)についてのお話しが出たため、想定している価格設定をお聞きしたところ、直感的に私が考える価格の約4分の1の金額で答えが返ってきました。
この金額のズレがどこから来ているのかは、話していてすぐにわかりました。
この経営者はお客様から「もらえる金額」を基準に、私は「もらいたい金額」を基準に考えていたのです。
もちろん「もらいたい金額」がもらえるとは限りませんし、業界やお客様の動向をよく知る、この経営者が考える「もらえる金額」に近い金額が正解なのかもしれません。
しかし、問題は値付けを考える際、常に「もらえる金額」を基準にして考えるクセがついていることにあります。この経営者に本当に「もらいたい金額」はいくらなのかと尋ねたところ、倍の金額で答えが返ってきました。
役務提供では特に、「もらえる金額」を基準にしてしまうと、価格が価値を大きめに下回る状態、つまり安売りになってしまいがちであることを認識していなければなりません。
値付けの際には、本音で「もらいたい金額」を明確にしておくべきです。この時点では「もらいすぎかな」とか「お客様が減ってしまうかも」とかは考えてはいけません。
もし、現状では「もらいたい金額」での値付けが難しいと判断したのであれば、それには何が足りないのか、どれくらいの時間をかけて、どうやって「もらえる金額」を「もらいたい金額」に近づけていくかを考えたうえで、今回の値付けをおこなえばいいのです。
「もらいたい金額」を基準にした値付けは現場に緊張感を生み、良い仕事へつながる一方で、「もらえる金額」を基準にした値付けでは、無意識が自らに言い訳をしがちです。
ワクチン接種が広がり、世の中の動きが元に戻ったとき、その景色は以前とは大きく変わったものになっているかもしれません。
改めて自社にとっての「お客様」を定義するとともに、「もらいたい金額」に向き合った値付けを考えてみてください。