現場検証 ~金融機関との関係~

皆さまとメインバンクとのお付き合いの深度はどの程度でしょうか?
最近、私どもがお客様から相談を受ける金融機関の話と言えば「金利」がほとんど。
「この金利で融資を打診されたのだが、どうだろうか?」
「他社はどの程度の金利で融資を受けている?」
「他行と競合させればもっと金利は下がるだろうか?」
今年はマイナス金利の影響もありますが、金融機関から出てくる話は「借りてください」一辺倒です。
皆さまにとっても必要があれば借りたいというは当然でしょうが、話をろくに聞かずに「借りませんか?」と打診してくる金融機関は、余りにもお粗末と言わざるを得ません。
そもそも、中小企業に対する金融機関の役割とは何なのでしょうか?
前回、金融庁が打ち出しているKPIについて触れました。
・金融機関が主力とする企業の経営改善や成長力の強化
・持続可能性に懸念がある企業の抜本的事業再生や早期転廃業等円滑な新陳代謝の促進
・担保、保証依存の融資姿勢からの転換
これは、2015年に就任した森金融庁長官が打ち出した地域金融機関に対する方針に基づいています。金融庁は、今の地域金融機関の在り方に強烈な不満を持っており、金融機関が中小企業に融資をして利ざやを稼ぐビジネスからの転換を促しています。そうでないと、金融機関自体が生き残れないぞと。
もっと中小企業の経営に積極的に関わり、支援し、地域経済の活性化を担え!
将来性のないゾンビ企業の延命に手を貸すな!
担保や保証に依存せず、中小企業に融資を行え!
何やらアベノミクスの影も見えてきそうですが、地域金融機関の本来あるべき姿としては正しいかと思われます。
以前お伝えしたように、信用保証協会の信用保証枠が下がる予定です。保証枠が下がるということは金融機関が自らのリスクで融資を行わなければならない割合が増えるということです。
「金融機関が自らのリスクで融資を行うということは、貸し渋りにつながるのではないか?」
そうお考えの方もいらっしゃるかと思われます。事実、金融機関は過去にそのような行動を取っておりました。しかし、金融庁が“いま”金融機関に求めているのは、お客様である中小企業を自らの目でよく見て、状況を判断し、積極的な支援と、場合によっては最後通告を行えということです。
このような行動を行わない限り、金融機関と中小企業との関係は、お金を貸す借りるだけの関係で終わってしまいます。逆に、このような行動を取り切れれば、金融機関は本来あるべき機能を回復するだろうと。
そして、そこまでの関係を築ければ、企業は金融機関に正確な情報を開示でき、金融機関は正確な情報を基にリスクを取ることもできるようになります。そうであれば、そもそも信用保証の必要性は薄れてきます。
また、皆さまの会社を正確に理解している金融機関からの金利が、付き合いが浅い金融機関よりも0.1%高いからと言って、皆さまは借入先を変更するでしょうか?
それでも借入先を変更するような企業は、金融機関にとっても重要なお客様ではないということになるでしょう。
さらに、金融機関が融資を行ってくれるだけではなく、財務のアドバイスや取引先の紹介等まで行ってくれれば、皆さまも金融機関に信頼を寄せるのではないでしょうか?
金融機関に対する辛辣な言葉に、「雨の日に傘を貸さない」がありますが、雨の日に傘を貸してくれる金融機関に変われば、皆さまも信頼を寄せるのではないでしょうか?
現在は中小企業と金融機関の間にこのような信頼関係がないからこそ、お金の貸し借りのみ行われている状態ということになります。
それでは、今の地域金融機関がこのような信頼を得られるような業務ができるのかというと、非常に難しいと言えます。金融庁の指導があったからといって、地域金融機関の行動が変わるかというと、これも難しいと思われます。
金融庁に言われるまでもなく中小企業の支援に積極的な金融機関もあります。また、融資さえできればよいと考えている金融機関もあります。後者が大多数の中で、いくら金融庁の指導であるからと言って、自らの体質を簡単に変えられるとは思えません。
ですが、それでも金融庁は地域金融機関の在り方を変えようとしているようです。
さて、今後どうなっていくでしょうか…。
中小企業にとって、メインバンクの選定が本当の意味で重要になってくるかもしれません。そして、もし、本当に金融機関が中小企業のアドバイザー的なポジションを担えるのであれば、税理士やコンサルタントよりも重要な相手となるかもしれません。
結局、業種にかかわらず、皆さまの話を十分に聞いてくれ、アドバイスをしてくれる相手が、中小企業にとっては必要なのですから。さらに必要な資金を貸してくれまでしたら最強ですね。
金融庁と地域金融機関の行動については、目が離せなくなってきました。