信用保証制度の改正がやって来る…

「ゾンビ企業は市場から撤退しろ!」

このようなことが検討されていることをご存知でしょうか?

それは、信用保証制度の改正です。

中小企業にはお馴染の信用保証制度は、金融機関から融資を受ける際、国が返済を保証する制度です。現在は原則として80%が国によって保証されています(2007年までは100%保証されていました)。

仮に中小企業が返済できなくなった場合、金融機関は20%だけ泣けばよく、残りの80%は国が肩代わりしてくれます。これにより、金融機関は融資を実行しやすくなり、結果として中小企業は融資を受けやすくなっております。

ところが、この制度につき保証率を50%~80%に引き下げることが検討されています。現時点では2017年度以降とのこと。

意図は、中小企業に一律同じ保証率を適用するのではなく、創業間もない企業には高い保証率を、創業から一定期間を経過した企業には低い保証率という様に、メリハリをつけることのようです。

信用保証を受ける際、中小企業は信用保証料を支払い、信用保証協会はこの信用保証料を原資に返済できなくなった中小企業に代わって金融機関に弁済します。しかし、現状では信用保証料ではまかないきれないくらいの弁済額があるのです。

このまま現状を放置すれば、国の財政負担が膨らむということになります。

そのため、国は保証率を引き下げるとともに、金融機関の負担リスクを引き上げ、より厳密な審査により融資するよう金融機関に求めます。また、同時に保証制度の対象事業の絞り込みにも着手するようです。

この信用保証制度の改正によりどのようなことが起こるかは、皆さまもご想像ができるはず…。

金融機関からプロパーのみで融資を受けられる中小企業というのは財務状態が良い会社であり、信用保証制度に頼らざるを得ない中小企業の方がずっと多いのは間違いありません。

結果として、プロパーのみで融資を受けられない中小企業は融資枠が少なくなりますし、融資を受けられても借入の際の利率が引き上げられていくことになります。

金融機関の負担も増えれば、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)により返済を猶予し続けてもらっている企業も、大目に見てもらえなくなります。おそらく、2016年度中には再建の目途を付けなければなりません。

つまりは、借入について精算を迫られ、再建できない限り…

「ゾンビ企業は市場から撤退しろ!」

ということにつながります。

深い意味では、ゾンビ企業への国の支援を少なくし、成長企業に手厚く支援するという意図も隠されていることでしょう。それは近年の税制改正の流れでも明確です。

国がゾンビ企業を市場から撤退させたいのは間違いありません。限りある税金、労働力をどこに使うべきか?答えは明白です。そして、実際に撤退に追い込むことも簡単です。

しかし、現実問題として、市場からの撤退に追い込みきれない最後の砦となっているのが「雇用」です。ゾンビ企業も従業員を雇用しているからです。

もし、ゾンビ企業の従業員が他の健全な企業に円滑に雇用されるのであれば、国はゾンビ企業を簡単に潰しにかかります。

そういう意味では、国が大企業に賃上げを求め、人材難でもある大企業グループが雇用を積極的に増やしている現状を考えると、人材の流動化の環境が整いつつあるようにも思われます。

もちろん、いくら何でも簡単に中小企業を潰せないだろうという意見も根強いですが、外堀が徐々に埋まっている以上、このような流れを無視するわけには行きません。

2016年…。金融機関対策を含め、資金をかき集めるために重要な1年になるのは間違いありません。現状で資金繰りが大変な中小企業のみならず、安定している中小企業も中長期的な視点の下に資金計画をご検討ください。

金融機関との付き合い方も、少し深くせざるを得ないかもしれませんね。