社 長:建設業の許認可の関係で1,000万円増資して資本金を2,000万円にしようと思うんです。
税理士:ほう、特定建設業ですね。
社 長:そうなんです。現状の株主は私以外の家族もいますが、今回はすべて私が追加で出資します。面倒なんで@5万円の200株でいこうと思ってるんです。
税理士:それはダメですよ!200株発行してしまうと、社長さんに贈与税が課税されてしまいますよ!
社 長:ええぇ~、贈与税ですか?!
先日、監査で伺った会社さんでの会話です。
単なる増資の話に、なぜ贈与税が関わってくるのでしょうか。
今回は、うっかり税理士に相談しないでやってしまいがちな、この論点について触れてみます。
■なぜ贈与税が課税されるのか?
上記の会話のような、いわゆる第三者割当の増資(注)の場合には、その発行時の時価で株式を発行しないと、贈与税が課税される場合があります。
(注)第三者割当とは、会社の役員や従業員、取引先などに対して新株を発行する方法をいい、現在の株主の中の特定の者に対して発行する場合も含まれます。
それは、株主間で「一株当たりの価値の移転」が起こるからです。
★上記の会話を簡単な例題で見てみましょう。
・ 増資前の貸借対照表の純資産の額が3,000万円
・ 資本金は1,000万円で発行済株式は200株
・ ここで1,000万円の増資を行い@5万円で200株発行する
上記のように、
1. 増資前の発行株数は200株で純資産額(所有時価)は3,000万円
⇒すなわち1株当たりの純資産額が@15万円(ここでは時価と仮定します)であったものが、
2. 増資によって、3.合計では発行株式400株で純資産額(所有時価)は4,000万円
⇒すなわち1株当たりの純資産額が@10万円となり、増資前より▲@5万円が減少することになります。
言い換えれば、社長は@5万円の払い込みで@10万円の株式を取得したことになり、他の既存の株主から1株当たり5万円の価値の贈与を受けた状態となります。
ここに、株主間の「一株当たりの価値の移転」が起こったこととなり、この移転に対し贈与税が課税されるリスクが生じる、ということになるのです。
■第三者割当増資は時価発行!!
このように、上記のような課税のリスクを排除するためには、増資をする時点の時価による新株の発行が必要となります。
例題で言えば、1.増資前の@15万円で発行することになります。
こうすることで、増資前も増資後も、その時点で1株当たり@15万円の株式のみが存在することとなり、価値の移転を起こさずに済むわけです。
また、上記では簡便的に1株当たり純資産額を「時価と仮定」しましたが、税務上のリスクを回避するためには、税務上の評価方法による株価算定が必要不可欠となります。
このように「単なる増資」と簡単に考えていると、思わぬ落とし穴にはまる可能性がありますので、何を行うにも、まず税理士等の専門家にご相談することをお勧めいたします。
当社では「株価評価サービス」も行っております。
増資を検討している、あるいは自己株式の取得(金庫株)などを考えている場合には、まずはお気軽にお問い合わせください。