ふるさと納税は節税か…

と、聞かれれば節税ではありません。

しかし、ご存じのように「ふるさと納税」ブームです!!

個人的にふるさと納税には全く興味がなかった私ですが、お客様が確定申告時に証明書をたくさんご提出されるのを見て、驚きました。

当社の個人確定申告は、ほぼ顧問先の経営者さまですので、ご自身の限度額が高く、メリットがあることもお分かりのようでした(おそらく奥様が!)。

しかし、それでも
「ふるさと納税分の還付額はこれしかないの?」
「いえいえ、ふるさと納税は、個人住民税からも控除されるのです」
という会話が繰り返されたくらいですから、やはり節税と思っていた方が多いのです。

繰り返しますが、ふるさと納税は節税ではなく、最終的な税金は“変わりません”。どちらかというと、税金の前払いですね。ですが、ふるさと納税は、外れない懸賞品に応募するようなものです。

一般の方は限度額があまり高くはないので微妙ですが、高額所得者の方であれば、今年から数十万円程度の限度額となってもおかしくはありません。

ですから、お手間でなければ、ふるさと納税バブルに乗るのもよいかもしれませんね!

と、前置きが長くなりましたが、ふるさと納税のように、「節税、節税」と世の中で言われているものなど、実際には節税にはならないことがほとんどです。

ふるさと納税も、特産品というメリットは別として、“節税”という表現のアナウンス効果は非常に大きかったと思います。

法人でよく行われる生命保険を使った“節税”も、「単なる課税の繰り延べ商品なのですよ」と正直に表現したら、契約数は激減するはずです。あくまで“節税”商品として売られているため、ニーズが非常に強いわけですから…。

ということで、改めて法人の“節税”と呼ばれているものをご説明いたします。

いわゆる節税を単純分類すると、下記の4パターンのようなものがあります。
(他にもありますがとりあえず…)

  • 支払う税金が確実に少なくなる『消費型』
  • 今は支払う税金が少なくなるけれども最終的には変わらない『繰り延べ型』
  • 課税対象者を移転する『移転型』
  • 今ある資産を処分などする『オフバランス型』

『消費型』は、お金を使えば経費が増えて税金が減るという意味なので、「来月買うくらいなら今月買いましょう」という感じです。
つまり節税ではありません。

『繰り延べ型』は、夏休みの宿題を後回しにする小学生のようなパターンで、どこかで清算を迫られます。清算を迫られるときには法外な利息が付いているようなものなので、原則として、確実に終わると分かっていない限りは宿題を受け取ってはいけません。
もちろん、これも節税ではありません。ご存じのとおり、生命保険がトッププレイヤーです。

『移転型』については、「法人税を払いたくない!」、「それなら役員報酬を上げましょう!」という感じで、法人から経営者個人へ利益を移転するのが代表的です。
当然、決算時に支払う法人税は減りますが、所得税を源泉徴収されて毎月分割納付しているので、正確にシミュレーションをしない限り、節税になっているかどうかは微妙です。

また、以前からお伝えしているとおり、我が国の法人税は減税の方向性が示されており、個人課税である所得税と相続税は増税の方向性にあるため、利益を法人から経営者個人へ移転し過ぎる方法も再考の時期です。

『オフバランス型』は、「おっ、こんなお宝が倉庫に眠っていたのか!」と、過去の失敗を取り返すチャンス的な節税です。自社の貸借対照表をよくご確認いただき、お宝を探してください。探した後は処分(廃棄、売却など)です!
アンフィニッシュを清算しましょう。節税というよりも、リベンジに近いです。

以上のパターンには、節税に掛ける金額の大小と期間の長短に特徴があります。
『消費型』は、金額は小さくなりますが、即実行が可能です。
『繰り延べ型』は、金額も期間も比較的融通が利きますが、一度始めたら止めるのが難しい。
『移転型』は、役員報酬や事前確定届出給与であれば期間は短く、退職金は非常に長期間必要となります。金額は自由ですが、支払と同時に所得税を支払うことにもなるので少し微妙。
『オフバランス型』は、比較的短期間で実行可能で、金額も大きいケースが多くなります。ですが、オフバランスする資産がなければできないため超限定的です。

「とにかく税金を払うのは嫌だ!」という方がやりたがるのが、節税額が大きく、短期間で行う方法です。ということで、『繰り延べ型』が一番人気であり、これが節税の代表のようになっています。

中小企業の経営者のパターンで言えば、法人税を回避しようと利益を移転すれば、役員報酬で所得税が増えます。役員報酬を抑え所得税を回避しようとすれば、法人税が増えると同時に、貯まった内部留保が自社株の価値を押し上げ相続税が増えます。

法人税と所得税の落差が大きいため最も有効と言われる退職金に関しても、最終的には相続税で持っていかれることを考えると、さらなる課税の繰り延べとなる可能性もあります。

さらに課税を逃がすためには、贈与などで親族に分散し続けるしかありません。そのための制度としては、年間110万円の非課税贈与枠であり、住宅取得等資金の贈与であり、新設されたばかりの教育資金の一括贈与などが存在します。

節税など、すでに幻想レベルになってきていますが、それでも打つ手がない訳ではありません。表現は悪いですが、課税を逃がし続けるというのも一つの選択肢です。M&Aによる売却も、お金にならない自社株への課税を逃れるという意味では柔軟性を持ちます。

以上となりますが、“節税”と“商品”が付くものに手を出すのは十分気を付けてください。太陽光発電だって、つい最近まで節税商品として売られていましたし、その結果は散々たるものでしたので…。