扶養から外れてしまうので休ませてください問題

中小企業の採用市場は厳しさが増す一方。
他社より多少待遇を良くしたくらいでは、応募すらないという状況が当たり前になってきました。

こうなると、募集は常にかけつつも今いる社員でどう戦っていくかが重要になるわけですが、これから年末にかけて多くの中小企業で巻き起こるのが、パート・アルバイト従業員の「扶養から外れてしまうので休ませてください」問題です。

しかし、話しを聞いてみると現在の制度の内容を正しく理解しておらず、なんとなく「103万円の壁」にこだわっているケースがいまだに少なくなくありません。

ここ数年の改正で複雑さが増しているせいで、理解することを諦めた結果、知識が更新されることなく「103万円の壁」の印象だけが、なんとなく残り続けているのです。

ではまず、「収入の壁」から整理していきましょう。
最もよくある「ご主人の扶養の範囲内で働きたい妻」のケースで考えていきます。
壁は大きく6つです。

『収入の壁の整理』

結論から申し上げると、重要な壁は社会保険の加入が絡む「106万円の壁」と「130万円の壁」2つだけです。

皆さんの会社が従業員数101人以上であれば今月からの改正で「106万円の壁」がパート・アルバイト従業員に立ちはだかることになりますが、従業員数100人以下の企業を経営する読者が多いと思われますので、今回は「130万円の壁」を用いて、夫の年収が400万円の場合の影響額を具体的に見てみることにしましょう。

『世帯収入影響額表』

いまだよく耳にする「103万円の壁」ですが、ここを超えても収入が増えれば手取りも増えるため、気にする必要がないことが理解できるはずです。130万円の壁を超えなければ、税金はかかっても妻の手取り額は増え続け、夫も変わらず配偶者控除が受けられますので、働いた分だけ世帯としての手取り額が順調に増加していくことが分かります。

一方で妻の年収が130万円の壁を超えると、夫の社会保険の扶養から外れることで妻自身が社会保険に入る必要が出てくるため、手取り額が大きく減ってしまいます。妻の手取り額を回復させ、世帯の手取り額を再び増加させるには150万円を超えて稼がなければなりません。

妻の年収によって、ご主人が勤めている会社から配偶者手当をもらえなくなることがありますので、「配偶者手当の壁」も注意する必要がありますが、そもそも配偶者手当自体が廃止されている企業が増えたため、「ご主人の扶養の範囲内で働きたい妻」の多くが気にすべきは「130万円の壁」だけということになります。

経営者からの要望で、このことを顧問先のパートさんに丁寧に説明してあげると、それならばもう少し働きたいといった反応が返ってくることを私は何度も経験しています。

採用が困難を極めるなか、今あるパート・アルバイトの戦力はとても貴重です。
そして、あらゆる物の値段が上がるなか、扶養の範囲で少しでも家計を助けたい人が大勢いるはずです。

社内の知識を正しく更新し、しっかりと共有していきましょう。