価格表示は経営の入口

消費税の総額表示義務化が始まって1カ月が過ぎました。

表示上の話ということもあり、必要以上に大きく取り上げられることも、混乱もありませんでした。

いまだに中小零細企業では総額表示未対応を見かけますが、罰則がある訳でもないので「忘れてました」、「変更作業中です」で通用してしまいます。

また、業界によっても対応はさまざま。
一番分かりやすいのがスーパーで、以下のような表示が王道です。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、イオンは一部店舗で『レジゴー』というスマートフォン端末により、商品のバーコードを自らスキャンし、無人レジで会計するサービスを導入しています。しかし、端末に表示される会計金額ですら以下のようになるという徹底ぶり。

これに対して、総額表示義務化に先駆けての値下げが話題になったユニクロの表示は以下のとおりシンプル。

そして、ユニクロは購入品の自動スキャンと無人レジ(まさにDX)にいち早く対応しています。

消費者がどちらを支持するかは一目瞭然ですが、こういうところに経営力が出てきます。

少し古いですが、以下は平成23年経済センサスの業種別1人当たり付加価値額データ。

【従業者1人当たり付加価値額(労働生産性)】

よくご確認いただくとお分かりのように、1人当たり付加価値額が低い順に本体価格を強調しがちな業種です(卵が先か鶏が先か…)。同時に、コロナ禍でダメージが大きい業種の順とも言えるのではないでしょうか。

平成23年と言えば今から10年前、まだ消費税率が5%の時期でもあります。つまり、消費税率10%(あるいは8%)も、コロナ禍も関係なく、当時から付加価値額が低い業種が今まさに苦しんでいるというのが現実です。

薄利多売で利益の蓄積が伴わず、財務は脆弱で、DX投資も遅れがち…。そこに天災でも人災でも禍が起きれば、結果は誰の目にも明らか。

もちろん、小売業がダメ、飲食サービス業がダメという訳ではありません。特に販売量に限界がある中小企業が、本体価格を強調せざるを得ないビジネスモデルを展開している時点で将来の見通しが悪過ぎるということです。

業種ごとから、さらに各企業ごとに焦点を当てるとピンキリであり、ユニクロなどは小売業の中でも異例ではあることは間違いありません。

そして、ユニクロに限らず、各業種で強烈な存在感を放つ企業は、経営者自信が強烈な存在感を放っているように感じるのは私だけではないはず。まさに中小企業的。

業種ごとの典型的なビジネスモデルに左右されず、経営者が強烈にけん引してこそ、その企業の強みが活かせるのだと考えます。

たかが消費税の総額表示の問題かもしれませんが、それこそが皆さまの会社のビジネスモデルを表しているかもしれません。1円でも安く見せなければならないという経営を続けていては、コロナ禍の次の禍には対応できないことでしょう。逆に1円でも安くしても十分な利益を出せるのが経営力です。

BtoBの価格に総額表示は関係ありませんが、お客様に価格を提示するという意味では同じです。お客様が求めていないムダな値引き、無理がある価格提示を行っていませんか?
無理に求められているのであれば、それは皆さまの本当のお客様でしょうか?

価格表示は経営の入口です。

相手に提示する価格が、皆さまの本来の価値を損ねている可能性があります。