高いけど、いい

中小企業の経営戦略イコール「価格設定」。
そう言い切っていいほど重要な価格戦略には、何度も言ってきたことですが大きく分けて2つの意味があります。

当然ながら収益の確保。もう1つは顧客のスクリーニングです。

当社では昨年、新型コロナの影響で社内の懇親会等を一切行うことができなかったため、年内最後の営業日に事務所でランチをいただくことにしました。

そこで当社の女性スタッフが選んだのは麻布十番の中華屋さんからのラーメンの出前。
メニューの一部をご紹介します。

【メニューの一部】 (全て税抜価格)

タンタンメン 
1,900円
五目海鮮入り醤油味ソバ
2,900円
かに玉入り醤油味ソバ
4,000円
五目チャーハン
2,800円
焼餃子(5個) 
2,100円
天津丼
4,000円

今年は1回もみんなで食事に行っていないから、少しくらい高くてもいいよと言ったものの、この店でいいかと聞かれてホームページを見て驚きました。

一番安い麺類と餃子で税抜4,000円(笑)。ちなみにラーメンも餃子もごく普通サイズ、店の立地を考慮しても、なかなか勇気ある価格設定です。

価格に驚きながら、店の評判を調べてみるとさらに驚きます。

見る限り、個人のブログやグルメサイトなど口コミのほとんど全てが「高いけど、とても美味しい」「値段に見合う美味しさ」「至極」というようなものばかりで、「高過ぎる」といった批判的な声は見当たらないのです。

この店のラーメンが万人受けする美味しさということもあり得ますが、好みがありますので、一定数の批判的な意見は必ずあるものです。

では、なぜこの店にはそうした声が見られないのでしょうか。

おそらく、このラーメンとは思えない高価格が理由です。

ラーメンにこれだけの金額を出せるのは、価格が高いことにいちいちネットで文句など言わない層のはず。美味しくない、価格に見合わないと思えば、次はもう行かないだけ。
逆に美味しいと思えば、高くても繰り返し利用する層のはずです。

この価格設定でなければ、こうした層の顧客と出会えることはありません。
中途半端ではだめなのです。

この店の価格設定が、顧客のスクリーニングを意図してなされたものかは分かりませんが、結果として一部の優良顧客層だけを惹きつけることに成功していることは間違いないでしょう。

一方で、高価格であるとういことは、常に顧客から厳しい目で見られることになります。

この店はラーメン、チャーハン、餃子にこれだけの価格を付けることに相当なプレッシャーを感じながら、日々、質の高い仕事を続けてきたのではないでしょうか。

新型コロナで前提条件が大きく変わってしまった今、規模で勝負ができない私たち中小企業は、経営を一から考え直さなければいけません。

「高いけど、いい」

お客様に、そう言っていただける経営を、この店は実践しているのです。