昨年は新型コロナによる緊急事態宣言を契機に、デジタル化・クラウド化推進の波が一気に訪れました。
年末に公表された税制改正大綱でもDX投資促進税制を始めとし、電子帳簿保存法の大幅要件緩和など、デジタル化への政府の意気込みが伝わってくる内容となっていました。
一方で、世の中のそんな流れにあらがうようなサイゼリヤの「アナログ化」への取り組みが12月25日の日本経済新聞で紹介されていました。
多くの外食産業が人手不足に加えて人と人との接触を避けるために、タッチパネルなどの最新機器を導入して料理の注文を受けるなか、サイゼリヤは携帯端末の使用をやめ、紙の注文票にお客様が手書きして注文する方式に変えたのです。
メニューには料理に対応する「DG01」といった4文字の英数字が割り当てられており、店員がコールベルで呼ばれたときにはお客様によって記入済みの注文票を受け取るだけ。接客時間は従来に比べ半分程度にまで減らせたそうです。当然、携帯端末にかかる費用も削減できます。
ここで注目したいのは、あえてアナログに戻すことによる効率化の実現と、注文票を「お客様に書いてもらう」という発想です。
皆さまの事業の中で、本来であれば、お客様から対価をいただいて提供すべきサービスについて無償で提供してしまっていることはないでしょうか。それは、言い換えれば対価をいただかないのであれば、お客様自身に行ってもらうべきことかもしれません。
年の初めに改めて自社が提供するサービスと対価について考えていただきたいのです。
もちろん、店員が注文を取る作業に対して対価をいただくことはできませんが、サイゼリヤのように低価格でお客様を満足させる商品の提供を実現するためには、お客様にも協力していただくという発想があってもいいはずです。
サイゼリヤがこの手書き式を導入したのは、特徴である末尾が「9円」のメニュー、ミラノ風ドリアを299円から300円、ガーリックトーストを189円から200円などに「値上げ」をしたタイミングと同時です。
にもかかわらず「値上げをしておいて、客に注文を書かせるのか」といった声は聞こえてきません。私も利用しましたが、注文を自分で書くことに特に何の違和感も覚えませんでした。
未だ終息が見えてこない新型コロナ騒動の開始から間もなく1年になろうとしています。
はっきりとしているのは、ここまで前提条件が変わってしまった今、過去の慣習や常識は何の意味も持たないこと、今やデジタルが当たり前のことも再度疑ってかかる必要があるということです。
そして、戦略の要である値上げを実行する次のタイミングに向けて、今から周到に準備を進めておかなければいけません。
今年もまた1年が始まります。
ともに見たくない現実に目を向けていきましょう。
本年もどうぞよろしくお願い致します。