他力による一本足打法

瞬間風速としては、リーマンショッククラスの影響が出ている新型コロナウィルス。

直接的な被害から始まった観光業及び製造業のみならず、飲食業・小売業並びにサービス業と幅広い業種に被害が広がっています。

残念なことですが、自転車操業を繰り返していた企業についてはこの春に掛けて倒産が相次ぐことでしょう。倒産までは行かなくとも内部留保が薄い企業については早急に資金手当に動いていただくことをおすすめします。

3月3日時点において公表されている政府支援策は以下のとおり(一部重複しています)。

1.経済産業省ホームページ
日本政策金融公庫等の支援機関相談窓口と、関連する補助事業を紹介する専用コーナーです。

2.中小企業基盤整備機構ホームページ(J-Net21)
各都道府県における金融支援の対応等が掲載された専用コーナーです。

5.日本政策金融公庫による主な融資制度

*TKC ProFIT EXPRESS(令和2年2月26日・28日、3月2日・3日付)より引用

昨秋の台風被害の際、このメールマガジンでも書かせていただきました。

「売上が半分になったらどうなるのか?」

しかし、今回は半分どころか8~9割の売上が飛んで行ってしまうという凄まじさ…。ブラックスワンが、実際に起こるとこのような事態にまで発展します。

何度も繰り返しますが、「売上が半分になったらどうなるのか?」

やはりこの問い掛けは常に行わなければなりません。今回は中国依存、インバウンド依存の企業が致命傷を負っています。

もちろん中小企業は選択と集中が重要です。業種特化、地域特化、特定顧客特化は当然の戦略ですし、効率も上がります。従って、中国特化、インバウンド特化が悪い訳ではありません。

しかし、今回倒産していくであろう企業は「他力」による一本足打法を行っていたはずです。中国「特化」、インバウンド「特化」ではなく、中国「依存」、インバウンド「依存」。ただ流れてきた売上を捌いていただけの他力です。

選択と集中による特化とは「自力」による一本足打法を指します。誰かに支えられながら一本足で立っている企業と、自力で一本足で立っている企業では中身がまるで違うのは皆さまもご理解いただけると考えます。

自力で一本足で立つにはリスクも織り込む必要があり、そのリスクすらも強みに変えていかなければなりません。それだけ覚悟が求められます。

ただ流れてきた中国からの旅行客を受け入れていただけのホテルはすぐに潰れ、自力で中国の販路を開拓していたホテルは耐えられる可能性が高まるでしょう。なぜなら、自力とは自社で考えてすぐに動ける状態を指すからです。

そして、皆さまも聞き飽きたであろう財務の重要性。危機を未然に防止するために必要な資金は保有し続けなければなりません。

「売上が半分になった。早く借りなければ…」では致命的に遅いのです。

自力による一本足打法とその足を支える財務体質の強化。極端に言えば、中小企業はこれができれば他に言うことはありません。

体重が重ければ(抱えるものが多ければ)それを支える足(財務体質)は太い必要があり、体重が軽ければ(抱えるものが少なければ)それを支える足(財務体質)は細くても問題ありません。

これから1~2年かけて徐々に退場していく企業が増えると予想されていましたが、ここで一気に強制退場が始まります。しかも国を挙げて盛り上げていた観光関連から…。

セーフティネット保証だけで何とかなるとも思えませんので、政府はリーマンショック時のモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)クラスの支援策を行うのか、それとも近年の傾向でもあったゾンビ企業は撤退という方針を貫くのか…。業種によって偏りがあるでしょうが、中小企業にとってこれから数ヶ月が正念場です。

皆さま、まずは守りを固めて、荒野になるかもしれない市場を攻略する体力を残しておきましょう。

そして、他力に頼る経営を行っているようでしたら、いち早く自力に脱皮できるよう動いてください。