店舗レジ業務、データ入力、電話オペレーター、電車運転士、薬剤師による調剤業務、公認会計士による監査業務、そして税理士の会計入力業務・・・
AIの発達によって今後無くなるであろうと考えられ、実際に機械に置き換え始められている仕事のほんの一部です。
5年以上前から、こうしたことが広く言われ始め、現在までの身の回りの変化を知る私たちは、自社の業界においても「無くなる仕事」があることを誰もが実感しているはすです。
しかし、どこかでこうも思っていないでしょうか。
「とはいえ、もう少し先の話だろ・・・」
国税庁は先月「税務行政の将来像」として、スマート税務行政の実現に向けた最近の取組状況をホームページで公表しました。
スマートフォン・タブレットによる電子申告や納税手段のキャッシュレス化など、利便性向上に向けて様々な取組がなされていることが確認できます。
中でも目を引いたのが、来年10月を導入予定としている「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」の無料提供です。
具体的には以下の流れになるようです。
① 従業員が国税庁ホームページから年調ソフトをダウンロードする。
(勤務先が年調ソフトをダウンロードして従業員に配布することも可能)
② 従業員が保険会社等から入手した控除証明書等のデータを年調ソフトに取り込むことで、控除申告書の所定項目に自動入力される。
③ 従業員は内容を確認して、そのまま勤務先にオンラインで提出する。
※住宅ローン控除申告書も同様の流れで完了。
国税庁の資料を見る限り、このソフトを利用することで年末調整計算は特別な知識も必要なく、基本的に自動でできるようになり、書類保管にかかる負担もなくなります。
つまり来年の年末調整の時には、既に税理士に報酬を支払って依頼するような事務仕事ではなくなっている可能性が高いのです。
IT化による技術革新によって、将来「いなくなる」とまで言われる税理士の業務の中で、年末調整や確定申告といった業務が無くなるであろうことは平成25年にマイナンバー法が成立した時点で、ある程度予測されていたことです。
そうは言っても年末調整業務が急に無くなることはありませんでしたので、多くの税理士は「無くなるかもしれないけど、もう少し先の話しだろう」そう考え、特に手を打つことなく、変わらず年末調整業務を受けてきました。
しかし、自動で年末調整計算をしてくれるソフトを国税庁が無料で提供してくれる来年以降、年末調整業務を税理士に依頼する企業は間違いなく減少していきます。
年末調整業務による報酬を当てにし続けてきた税理士事務所の売上に与える影響は決して小さくありません。
IT・AI技術の進化によって、皆さんの業界でも必ずあるであろう「無くなる仕事」。
仮にその仕事が残ったとしても、それはAIで代行できる価格競争に巻き込まれる仕事です。
そして、それは「もう少し先の話し」なんかでは決してありません。
現時点では、まだ受注がある仕事から手を引くのはとても勇気のいることですが、無くなることを前提に他の収益源に注力するなどの準備をすることはできるのではないでしょうか。
税理士にとって売上の一角を担ってきた年末調整業務が、「無くなる仕事」から、
いよいよ「無くなった仕事」になろうとしている今、これを対岸の火事としてはいけません。
その時はもう目の前です。
「無くなる仕事」
皆さんは、どう向き合いますか。