既にご存知の方も多いでしょうが、法人向けの節税保険にメスが入りました。
具体的に取扱いが変わるのはまだ先ですが、2月13日に国税庁から見直しの意向を受けてから生命保険各社が順次販売を停止し、2月末にはほぼ全てが停止されました。
(最終的には問題がないであろう商品も販売停止中です)
平成20年に逓増定期保険、平成24年はガン保険と節税保険が封じられてきましたが、平成最後のタイミングでダメ押しという感じです。
今回は平成29年4月に日本生命が販売開始した節税保険を皮切りに、各社入り乱れてのブームが到来しました。それも約2年で終焉を迎えたことになります。
当社と付き合いがある総合保険代理店の担当からこの保険の説明を聞いた時、「普通に考えたらこの商品は無しだよね…」と返答した記憶があります。
それは商品としてお客様側のメリットを感じなかったからです。ですから商品の存在自体もお客様にはお伝えしませんでした。時間のムダだからです。
しかし、実際には全国で売れまくっていました…。結局、どのような商品性の保険であれ『節税効果』を強くうたえば契約してしまう経営者が相当数いらっしゃるという事実に変わりはありません。
ちなみに、この節税保険に対して最初に疑問を投げかけたのは国税庁ではなく金融庁です。
金融庁といえば、昨年退任した森前金融庁長官の時代から金融機関に対して『顧客本位』を強く求めています。
その金融庁が生命保険会社の監督官庁でもありますから、その商品及び売り方が『顧客本位』なのかどうかに疑問を持ったのでしょう。
お客様が節税できて喜べば顧客本位なのかというと、当然そうではないと私も考えます。素人であるお客様はその商品の本当の性質は理解できません。実際、節税保険に加入した後に生じたマイナスの経済効果を知らされることもありません。お客様の最初の満足度は高いのですが、その後が問題なのです…。
もちろん節税効果のある保険自体が悪いという訳ではありません。あくまで商品性が良く、その上で節税効果も見込めるのが経営者にとって良い保険のはず。
しかし、「この保険ですが、保険料の全額が損金に算入できます…」から説明が始まる保険の本来の商品性が良いはずはありません。そもそもの目的が節税好きの経営者に契約してもらうために開発された商品なのですから(顧客ニーズと一致はしていますね)。
この手の保険を売りまくって稼いだ関係者も多いことでしょう。その原資はお客様が支払った保険料から捻出されています。最終的には効果が無い(つまり損をする)であろう商品を売っておいて顧客本位とは口が裂けても言えないでしょう。売る側も本当の節税の意味を理解していない以上、無理もないことではありますが…。
このメールマガジンで繰り返しお伝えしているように、節税保険で実質的に経済効果(節税効果ではなく)を得られるケースは、限りなく少ないのです。
節税効果を得たい経営者と保険を知り尽くしている税理士が適切なタイミングを見計らい、そしてその効果を最大限発揮できる保険商品が存在することによってのみ、保険による節税が可能になるのです。節税とはあくまで税率の違いを利用したテクニックです。節税保険に加入したから節税ができるわけではありません。
結局、何事もやり過ぎると規制がかかります。そのために商品性の良い保険までつぶれてしまっては元も子もありません。
国税庁が生命保険料の損金性の取り扱いを明確にした後、生命保険各社は経営者保険のラインナップを見直すでしょうが、経営者にとって本当に必要な保険は残って欲しいものです。
なお、既契約はそのままの取り扱いで行けるでしょうが、ご契約されている方はどのタイミングが損切りとして適切なのかも十分にご検討ください。