2019年における経営計画の問題


「今年のことだって分からないのに、数年後のことなんてもってのほかだよ」

税理士が中期計画の作成を促した場合のお決まりの返答です。

今年は消費税の増税があります。
来年は東京オリンピックがあります。
原材料費や人件費は高騰し、採用難はより一層ひどくなっています。
生産性向上の号令のもと、システム導入も検討しなければなりません。

だから先のことを考えても…。
経営者であれば誰もが感じていることです。

数年後のことを考えるなんて本当に面倒なことだと、私どもも分かっております。

そして「先のことは分からない…」とおっしゃる方が中期計画を考える場合、良い計画を立てるわけがありません。お先真っ暗な計画になる可能性の方が高いでしょう。

結局、お先真っ暗な計画を立てるくらいなら、そんなものはわざわざ見たくないというのが正直なところでしょうか。

しかし、私どもの立場からすると「だからこそ先のことを考える必要がある」という説明になります。

この先バラ色の状態が待ち受けていると分かっているのであれば、計画を立てる必要などありません。儲かるのですから何だってできるはず。

また、破綻するのが分かっているのであれば、先のことを計画するのではなく現実的な準備を開始するだけです。

つまり、中期計画は「先のことなど分からない」とお考えの方にとって一番必要なものとなります。

それはなぜか?

「見たくない現実」を数値で見たあとにこそ、危険な未来を回避するための行動をあぶりだせるからです。

皆さまも十分お分かりのとおり、今年黒字を達成するために必要な行動と、5年後に黒字を達成するために必要な行動は異なります。

いま、いま、いま…の繰り返しの行動は火消しで終わってしまいます。しかし「もし5年後に売上高が半減するとしたら」という仮定の下であぶりだされた行動は、その会社にとって絶対に必要なものとなるはずです。火消しではなく土台の再構築です。

したがいまして、経営計画とは数値を予測するための計画ではなく、必要な行動を導き出すための計画であるということを頭に入れておかなければなりません。

この行動のみを導き出せるのであれば、そもそも数値の計画など不要です。ただし、行動の検証のためには数値との突き合わせが有効であり、逆も然りということになります。

皆さんが強調する節目である2020年。これは東京オリンピックが念頭に置かれていますが、その前年、消費税増税が意図的に設定されました。

節目の年の1年前にはじめて中期計画を考えるというのは遅すぎるといえますが、2021年以後の見たくない現実を見ておくには最後の機会ともいえます。

いま正に必要と考えて行っている行動が、3年後または5年後にとって本当に必要な行動なのか?

検証するにはいましかありません。

なお、本来であれば中小企業の中期計画の検討に今後の税制も絡めてお伝えしたいのですが、国が消費税対策に躍起で、“いまの税制”しか考慮できません。まさに中期計画を見失っているのが日本です。

いまの日本のように、この先どうなるか分からないけど計画もない(少なくともほとんどの国民はそのような計画は知らない)という状況を良いと思われる方はいらっしゃらないはず。

その状況を自社でも作り出しているようでは、政府を批判できる立場にはありません。“いまこそ”、この先に必要な行動をあぶりだしてみてはいかがでしょうか。

 

最後に宣伝になりますが、今年の税制改正の音声は消費税増税時における中小企業の考え方について岡本が解説しております。よろしければ参考にされてください。経営者にとってはタイトルにある“ふるさと納税”よりも重要な話です(笑)