「おもちゃ箱のような会社だが、いくつか壊れているおもちゃがある。壊れたものは修繕していかないといけない」
6月にRIZAPグループに加わった松本晃氏の言葉です。おもちゃ箱という表現をしなければならないくらい、成熟していない会社とも受け止めることができます。いくつか…という表現もかなり控えめな発言かもしれません。
その結果が11月14日に行われた会見での方針転換でした。
グループの18年3月期の売上収益が1,362億円で、19年3月期の予想が2,309億円。この増加額の多くが新たにM&Aで加わった子会社の売上分です。
RIZAPの急成長?の要因の多くは子会社の急増にあり、営業利益のほとんどは子会社を安く買い叩いたために利益とみなされた数字のまやかしでした。壊れたおもちゃなのですから、安く買えるのは当然でしょう。
「人は変われる。」を証明する
これがRIZAPの理念ですから、安く買い叩いた企業の再建もここに含まれていたのかもしれません。
加えて、RIZAPの本業は短期間でのダイエットですから、企業再建もそのくらいのスピード感をもって進めるのは当然と考えたのでしょう。
しかし、進捗管理が容易な1対1の関係性のダイエットビジネスモデルとは異なり、少数の経営陣 対 大多数の従業員(2018年3月時点で約7,000人)では関係性は極めて希薄になります。会社も事業内容も異なる数千人の改善は、短期間では無理がありました。
そして、瀬戸社長はこれまでの方針を誤りと認め、松本氏に再建を託したという結末です。
松本氏の新たな肩書は「代表取締役 構造改革担当」。グループ内部からはすでに反発があるようですが、プロ経営者である松本氏はどこまで切り込めるのでしょうか…。
いずれにしても、RIZAP自身のダイエットも短期決戦にならざるを得ません。
さて、RIZAPと同じようなことを、規模を縮小して行っているのがオーナー企業です。
ご存じのとおり、オーナー企業の弱点は経営者の判断ミスを「構造改革」してくれる方がいないことです。当然ですが、社内で経営者に意見できるほどのスタッフを抱えている中小企業などありません。
ですから、多くのケースで外部のコンサルタントを頼ることになりますが、コンサルティングにより部分最適ができたとしても、松本氏が行おうとしている構造改革レベルを一緒に進めてくれるコンサルタントなど皆無です。
そんなことをしたらコンサルタントが泥をかぶることになりますし、クライアント1社のためだけにそこまでリスクを取れる方などいらっしゃらないでしょう。
なお、中小企業で構造改革と言うと確かに大げさですが、業績が悪いと言われている企業の多くは本来行わなければならないリストラ、損切り等に手を付けていません(業績が良い企業はなおさら手を付けていません)。つまり、RIZAP状態です。
本来はそれほど難しくないアクションなのですが、一緒にリスクを取ってその一歩を踏み出してくれる方がいないことが問題なのです。中小企業の多くが急成長など困難であることを考えると、行うべきはやはり構造改革です。
その一歩を一緒に踏み出すパートナーに適任なのは内部事情を最も把握できる顧問税理士なのですが、まあ普通の税理士では無理ですよね…。社外取締役も迎えることができないオーナー経営者は孤独な職種です。
さて、どうなるかは分かりませんがRIZAPのダイエットの成果には注目しておきましょう。
構造改革でRIZAPが変われば、企業再建コンサルティングとして、それすらもビジネスにしてきそうですね 笑
皆さまも強制的なRIZAP送りにされないよう、くれぐれも会社の健康状態にはお気を付けください。きちんと損切りできる企業が長生きできるのですから。