8月14日の日経新聞に、こんな記事が大きく掲載されていました。
【年末調整 ネットで完結 企業・会社員の負担減】
財務省と国税庁は年末調整の手続きについて2020年をめどにインターネットで完結できるようにするとのことです。
現在は郵送など紙で受け取っている年末調整に必要な書類が、今秋から稼働するマイナンバーの個人サイト(マイナポータル)に金融機関などから送られてくるようになり、私たち給与所得者はそのデータを勤務先に転送し、企業もネット経由で税務署に提出する流れになるようです。
実現すれば企業の事務負担コストは大きく軽減されることになります。
おそらく年末調整は報酬を支払って税理士に依頼しなくても容易に自社で完結できるようになるでしょう。
こうなるであろうことを予測していた当社では、数年前から年末調整業務を積極的に受けることはせず、できるだけお客様の方でおこなっていただくようにしながら、年末調整業務の受託そのものをやめることを検討していました。
実際には、現状自社ではなかなかそこまで手が回らないお客様からのご要望が根強く、年末調整業務の受託をやめることはしていませんでした。
しかし、行政が企業の利便性を高めるこうした取り組みを実行に移す以上、そこに私たちがすべき仕事はありません。いよいよ本気で年末調整業務からの撤退実行を検討する時が来たといっていいでしょう。
今まで何十年と当たり前に行われてきた税理士業務のメインの1つを「やめる」決断をすべき時が近づいているのです。
さて、この「やめる」です。
私たちはセカンドオピニオンなどで、業績が芳しくない企業様からの依頼により、業績立て直しのお手伝いをさせていただくことがあります。
業績立て直しのお手伝いといっても、何か特別なことをするわけではありません。
まずは、毎月次の試算表の数字を事業ごと、もしくは部門ごと、必要に応じてさらに細かく分解してもらい、それぞれの事業ごと、部門ごとの損益構造を把握していただくことで、どこに問題があるのかを一緒に考えていきます。
そうすると、多くのケースでは、ある特定の事業(部門)の業績が極端に悪く全体の利益を押し下げているか、そもそも全体的に値段設定に問題があることに気が付きます。
問題点に気が付いたところで、当然、値段およびコストの見直しを徹底的に行い、実行していただきます。
しかし、検討していく中で、値上げもコスト削減も難しく、業績改善が望めない事業が存在することが明らかになることがよくあります。
そうなると何か別の事情がない限り、残された道は一つ。撤退、「やめる」です。
経営者にとって、今まで続けてきた事業をやめる決断をするのは簡単なことではありません。
仮にその事業(部門)の業績が他事業に比べて悪いにしても、多少なりとも利益を出しているとなれば、なおさらです。
しかし、多くのケースでは、不採算事業を「やめる」決断をし、残す事業について値上げやコストダウンを通じて利益構造の改善を実行することで、業績を回復することが可能です。
中には脅威のV字回復を遂げたお客様も実際にいらっしゃいます。
もともとチャレンジ精神旺盛な経営者にとって、新しい何かを始めることは心理的なハードルを含め、それほど難しいことであはりません。
しかし、「やめる」こと、しないと決めた仕事を「しない」ことは意外と難しく、それでいて、それが経営において大きな大きなポイントでもあります。
皆さまも自社にとっての「やめる」「しない」を、今一度考えてみてはいかがでしょうか。