毎年この時期になると同じことをお伝えしているような気もしますが…7月に国税の事務年度が替わり、税務調査も本格化している時期となります。
この点、税務調査の件数が少なくなってきているためか、一昔前に比べると税務調査関係のご相談もかなり少なくなっています。
少し前になりますが、6月に国税庁ホームページで「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」という資料が発表されており、税務調査の件数が少なくなっている点についての記載がありました。
平成元年と平成27年を比較し、個人は申告件数、法人は法人数が増加しているにもかかわらず、税務調査が行われている比率(実調率)が減少している点が報告されています。
(「税務行政の将来像」の概要:5ページより引用)
もちろん、実調率の低下は書面添付が徐々に増加していることも影響しているのでしょうが、国税職員の定員も減少しており、今後ますます実調率が低下していくように思われます。これらは皆さまにとってうれしい情報であることは間違いありません。
しかし、そのままで終わらないぞとの意気込みが「税務行政の将来像」には記載されていました。いわゆるICTやAIの活用です。
もともと日本の税務行政は他の先進的な国々に比べて電子化等が遅れており、電子申告や電子納税、電子手続きの統計データは悲惨な結果になっています。従いまして、税務行政の人員が削減されていく中で、数年前から急ピッチで電子化を進めていくという「意気込み」は伝えられていました。
そして今回の発表です。10年後を目途として、とにかくICTをやり切ると宣言をしたいようです。
その中で皆さんがご興味があるであろう税務調査関係については、下記の記載がありました。
- 申告内容と財産所有情報等の自動チェックによる申告漏れ等の迅速な把握
- AIを活用したシステムによる
- 精緻な調査必要度判定、納税者への最適な接触方法と要調査項目の提示
- 納付能力の判定、優先着手滞納事案の選定及び滞納状況等に応じた滞納整理方針の提示
- 滞納者情報と国内外の財産情報等の自動マッチングによる差押財産等の迅速な把握
今回の発表だけでは実際にどのようなことが行われていくかは分かりませんが、税務行政はICTやAIとは相性が良いと考えられ、まだまだ先が見えないマイナポータル等と併せて、個々の納税者(法人も含め)の動きは確実に補足されていくように感じます。
そして、より集中的に狙われるのは富裕層や高額納税法人であり、重点課題としてもこれらに対する「適正課税」を確保すると記載があります。
税務調査では今まで調査官がパソコンを持ち込むことなどはありませんでしたが、この点についても具体的な取り組みとして挙げられています。調査の現場でデータを検索・閲覧だそうです…。
アナログ的な面が面白い税務調査ではありますが、デジタル的にやっていかなければ税務行政が破綻するのでしょう。
個人の納税者や法人の処理もデジタル化が急速に進んでいますから、この5年から10年で、税務調査の環境が大幅に変わっていくのは間違いありません。
従って、まだ慌てる必要はありませんが、デジタル武装された税務行政に翻弄されないよう、皆さまもデジタル防衛を検討していかなければならないかもしれません。
これについては指導すべき税理士の方が遅れているという側面は否めませんが…。