iDeCoが始まりました

ここ数ヶ月、盛んに経済誌やマネー系の媒体で取り上げられているのでご存知の方も多いかと思われます。

iDeCoとは、個人型確定拠出年金の愛称です。キャッチコピーは…

「老後のために、いま、できる、こと。イデコ」

今年の1月から基本的に60歳未満の全ての方が利用できるようになったため、官民一体となってアピールされています(個人型確定拠出年金についてはこちら)。

このiDeCoを簡単に説明すると個人の節税商品です。支払ったときと受け取ったときに税制メリットがあります。

運用による投資商品としての側面もアピールされていますが、掛金自体が少なく、ほとんどの方がリスク商品を選択しないため、節税商品として認識していただく方が間違いありません。

では、どの程度の節税になるかというと、下記をご確認ください。

新年会議2017

SBI証券 WEBサイトから引用)

上記の図では、課税所得400万円の方が毎月23,000円の掛金を積立てた場合の節税額が年間84,000円程度となっています。

課税所得400万円とは、給与収入のみの方は年収600万円程度とお考えください(住宅ローン控除を受けている場合等は納税額が少なくなるため、別途試算が必要です)。

個人で積立てられる掛金の毎月の限度額は勤務先の状況によって異なりますが、中小企業に勤務されているほとんどの方の限度額は月額23,000円となるはずです。

このケースの場合、年間276,000円をiDeCoで貯金すると毎年84,000円の節税になるのです。利回りは30%となり、iDeCoが個人の最強の節税商品と言われる所以です。当然ですが、所得が高い方ほど利回りは高くなります。

つまり、節税メリットはとても大きく、所得が高い方が行わない手はありません。メリットに対しての主なデメリットは下記です。

・年間数千円程度の手数料が掛かる(節税額を考えれば特に問題無し)
・原則として60歳までは掛金を引き出せない(貯金と考えれば問題なし)

ということで、コツコツ貯金をされている方であれば、貯金するだけで税金が減るという優れものがiDeCoです。基本的に損はありません。ご興味がある方は是非ともご利用ください。

ただし、この程度だとご自分の節税だけですし、何か物足りないという中小企業経営者の方もいらっしゃるはず。そうであれば、企業型の確定拠出年金もあります。企業型は、役員及び従業員のための退職年金制度という位置づけです。

企業型には2016年3月末現在で548万人が加入しています(厚生労働省サイトより)。とはいえ、加入者のほとんどが大企業の社員ですので、中小企業にはあまり馴染みのない制度と言えます。

個人型に対する企業型の主なメリットについては、下記のとおりです。

・企業で一括管理を行うことができ、手数料は企業負担となる
・掛金が最大55,000円となる
・前払い退職金制度の導入ができる(退職金制度の導入を行わなくてもOK)
・社員の社会保険料負担の削減につながる場合がある

企業型は法人で確定拠出年金制度に加入することになるとはいえ、各社員が個人負担分として掛けることも可能です。つまり、個人負担と企業負担を兼ね備えることができる制度であり、法人にとっても個人にとっても節税商品となります。

当社グループも企業型に加入しておりますが、社員の約半数が個人負担も行って節税を受けております。

こういう国の制度でさえ、大企業と中小企業の社員で優遇差が出るのは癪なものです。現在では中小企業相手でも取り扱ってくれる金融機関もありますので、ご検討ください。

タワマン節税、やるなら今のうち!???

皆さまご存知「タワマン節税」。
昨年12月に公表された税制改正大綱において、この「タワマン節税」の封じ込めを意識したと考えられる居住用超高層建築物(高さが60mを超える、いわゆるタワーマンション)の固定資産税等の税額計算に関する改正が盛り込まれていました。
今回の改正はあくまでもタワーマンションの固定資産“税額”の計算方法に関するもので、固定資産税“評価額”に関するものではないため、原則として固定資産税評価額を基に計算する建物の相続税評価額が直ちに変わるわけではありません。であれば、まだしばらくはタワマン節税には何ら影響がないように思ってしまうのが普通でしょう。
しかし、相続税の計算に必要な「財産評価」について「そもそも」を考えると、今後一気にタワマン節税の封じ込めが行われる可能性が垣間見えてきます。
それではまず、タワマン節税について簡単におさらいしておきましょう。
「タワーマンション節税」とは相続税における財産評価方法を利用した節税手法です。
相続税では原則「財産評価基本通達」に従って、建物は固定資産税評価額で評価します。固定資産税評価額は時価の70%程度になりますので、現預金と比べると財産の評価額が低くなります。評価額が低くなれば当然、税金も安くなるというわけです。
マンションは一軒家よりも建物の割合が大きいので、時価の70%程度である固定資産税評価額での評価割合が高くなり、土地付き一戸建てよりも評価額が下がりやすいのです。
しかもタワーマンションであれば1戸当たりの土地の持分が普通のマンションよりも小さいので、さらに評価額が低くなる傾向があります。しかも評価額は専有面積に応じて計算するため、所有する物件が眺望のよい高層階であっても1階であっても専有面積が同じであれば変わらないため、値崩れしにくい高層階を所有することで、財産価値を保ちつつ、財産評価額を下げられるという効果が得られるのです。
今回の改正では居住用超高層建築物(タワーマンション)の固定資産税等の計算について、各区分所有者の専有部分の床面積を、階層別専有床面積補正率により補正することで、財産価値の高い高層階は増税される一方で低階層は減税となります。
繰り返しになりますが、この改正はあくまでもタワーマンションの固定資産“税額”の計算方法に関するもので、固定資産税評価額は変わりませんので相続税評価額がただちに変わることはありません。
しかし、だからと言って「タワマン節税はまだまだいける!」とは言えない理由が実はあるのです。
まず、地方税(固定資産税は地方税です)の改正については、通常、総務省から改正要望があがりますが、総務省の税制改正要望にはこの改正は記載されていませんでした。つまり、相続税評価の改正が本当の目的であることは、まず間違いないのではないかと考えられます。
加えて、相続税では原則「財産評価基本通達」に従って、相続財産を評価しますが、そもそもこの「財産評価基本通達」、限りなく法律に近い拘束力を持ってしまっていることも事実ですが、その名の通りあくまでも「通達」であり「法律」ではありません。
財産評価基本通達が通達であり法律でない以上、税制改正大綱に載せる義務はありません。義務はないどころか、そもそも法律でないのですから、通達の改正を税制改正大綱に載せること自体がおかしいとも言えるのです。
つまり、総務省からの要望がなかったことを踏まえても、今回のタワーマンションの固定資産税の計算方法の改正はあくまでも相続税評価改正の伏線で、この後年内にも、いきなり税制改正大綱に記載されていない財産評価基本通達の改正に踏み込んできても何ら不思議ではないのです。
私自身は、節税だけを目的としたタワ-マンション購入を勧めることはありませんが、上手くいけばかなりの節税が可能となることも事実です。
もし、現時点でタワーマンションを利用しての節税をお考えの方は、財産評価基本通達の改正など国税の動きに注目しつつ動いていく必要があるでしょう。また、相続開始直前に購入し、相続開始直後に売却するなど租税回避の色が強い極端な事例においては否認されかねないリスクがある手法だということを十分に理解し、検討にあたっては必ず相続税に詳しい専門家にご相談なさることをお勧めします。
タワーマンション節税が本格的に封じ込められるその時は、もう間近・・・かもしれません。