皆さんは保険にアレを付けていますか?

私がバカでした...。
危うく彼女の言葉に騙されてしまうところでした。
皆さんが私と同じ経験をしないように、今回は恥を忍んでお話いたします。
今回お話するのは生命保険契約、生命共済契約にオプション契約として付けることができる『年金支払特約』についてです。
年金支払特約とは、文字どおり年金で支払いを受ける契約です。
ナニを?
保険事故が発生した際の生命保険金をです。
例えば、代表者が死亡し、3億円の保険金を受け取ることとなったと仮定します。
この場合、死亡した日(一定の場合には通知を受けた日)において3億円全額を収益に計上しなければなりません。
これでは社長が死亡した事業年度の売上減少を補填することはできても、同時に多額の保険金が収益に計上されるため、税金により折角の保険金が社外流出してしまいます。
このような不合理を是正するため、生命保険協会は国税庁に対し、あらかじめ年金で受け取ることが約定されている保険契約の経理処理について質問をしました。
その結果、『平成15年12月15日、国税庁が各国税局及び生命保険協会へ見解を示した事務連絡』の回答がありました。
詳細は省きますが、あらかじめ『年金支払特約』が付加してあった保険については、年金を受け取る都度、その事業年度の収益として計上できることが明らかとなったのです。
これにより、先程の3億円に2000万円づつ15年で受け取る年金支払特約が付加されている場合には、15年間にわたって2000万円を収益に計上できることとなりました。
これこそが年金支払特約の付加による継続的な収益補填機能です。
ポイントは、保険事故(支払事由)発生前に、あらかじめ年金支払特約を付加してあることです。
保険事故(支払事由)発生時になってから特約を付加してもこのような処理は認められません。
ここで話はかわりますが、私がある時にお客様の保険契約の確認をしていると、この年金支払特約が付加されていない保険契約がありました。
ところが、その契約は生命保険契約ではなく『生命共済契約』だったのです。
生命共済契約とは、こくみん共済、県民共済、JA(農協)共済、コープ共済などがあり、生命保険とは監督官庁と根拠法令に違いがあります。
共済契約と言っても目的とするところは一緒なのだから、年金支払特約が付加できるものと思い、お客様の社長にお話し、契約手続きをした店舗に問い合わせていただきました。
すると、応答者より「生命共済契約については、年金支払特約は付加できない」との回答をされたというのです。
連絡を受け、私も直接話を聞いてみると、やはり同じように回答されました。
その回答を聞いて、私は、田舎の支店レベルではそのときの受付の担当者が何もわからずに適当に答えただけだろうと思い、すぐにその共済組合のホームページからお客様相談窓口の電話番号を調べ、電話で問い合わせをしてみました。
すぐに女性の相談員の方が親切に対応してくださいました。
先程と同じ質問をしてみると、「生命保険ではそのような取扱いがあることは存じておりますが、当組合の共済保険ではそのようなお取り扱いはありません。」とはっきりと即座に答えたのです。
私は、その落ち着いた口調と瞬時の返答から、この人が言うなら間違いないだろうと確信しました。
もちろん、以前から年金支払特約は付加できる保険会社と、できない保険会社があるとの情報も得ていましたので、そのときはさほどの抵抗もなく納得していました。
ところが、一年程たったあるとき、まったくの別件で生命保険を取り扱う大手代理店の方と仕事をさせていただく機会があり、そのときに以前の経験を話してみると、共済契約であっても年金支払特約はありますというのです。
後日、その方から共済契約の『約款』が送られてきました。
約款とは、契約のしおりのことで、契約の締結から共済金等の支払い、消滅までの取り決め等を記載したもののことです。
約款を見るとそこには『主契約の共済金の支払事由が発生する前に、共済契約者からこの特約を付加する旨の申出があった場合には年金支払特約を付加することができる』とはっきり記載されていたのです。
そこで、今度はこの約款を提示し、お客様相談窓口に電話をしてみました。
すると、数分は待たされましたが年金支払特約を付加することができるとの回答が得られたのです。
税金のことであれば根拠法令、根拠条文や資料を必ず確認するのですが、それが『共済保険』というだけで相手の言うことを鵜呑みにしていました。
皆さんは私と同じ失敗は絶対にしないでください。
その保険を紹介してくれた外交員さんや販売店の店員の言葉を鵜呑みにせず、ご自身の目で『約款』や『契約のしおり』を確かめ、すべての保険契約に年金支払特約を付けるようにしましょう。

現場検証 ~セカンドオピニオン~

皆さまが税理士にご不満をお持ちなのは十分に承知しております。

税理士にご不満がある場合、直接クレームを入れないのであれば、いきなり解約という方法で関係が終わることも多いのではないでしょうか。

当社は業界に先駆けて、10年以上前から「税理士のセカンドオピニオン」として相談を受け始めました。

最近では盛んに取り上げられるようになった医療のセカンドオピニオンも、当時は一般的ではなかったため、お客様にとっても「税理士のセカンドオピニオンって何?」というような状態でした。

当社が始めたサービスなので、とりあえず申し込んだだけというお客様もいらっしゃったくらいです。まず、何をどのように相談すればよいか分からないと…。

しかし、それでもご相談を受け始めると、どのお客様でも共通なのは顧問税理士に対するご不満でした。つまり、セカンドオピニオンのご相談の過半は、まず顧問税理士の不満から始まります。中には、当社も気を付けなければと考え直すようなご相談もありました。

税理士業界がサービス業として低レベルなのは、私自身もよく理解しております。まだまだ多くの税理士とそのスタッフは、法律と税務署を盾に、お客様よりも自らを守るような話し方がクセ付いております。

皆さまからすれば、そのような話し方をされるくらいであれば、税理士に相談するよりもAIに問い掛けた方が100倍マシなはずです。

とはいえ、セカンドオピニオンでお客様のお話しを伺って、ときどき気になるのは、顧問税理士から積極的な指導があって然るべきというお客様自身のスタンスです。

「税理士“先生”なのだから能動的であるべきであり、お客である自分達は受動的であって当然」というような感じです。

これは医師や弁護士に対する相談であっても同じではないでしょうか?

なぜ、セカンドオピニオンが成り立つのかというと、顧問税理士、主治医、顧問弁護士に対しては受動的でありながら、セカンドオピニオンに対してはお客様が能動的になりやすいからです。

「顧問税理士がこのように言っているのだが、納得できない。本当にそうなのだろうか?」

お客様自身が納得できない点を、本来相談すべき顧問税理士よりも、セカンドオピニオンに対しての方が話しやすい。しかも、現在の不満を最初にぶつけてくれる。それだけでセカンドオピニオンは成立します。

そして、中には顧問税理士には相談すらしていないというお客様もいらっしゃいます。もちろん理由は「相談してもムダだから」。

誤解を恐れずにお伝えすると、セカンドオピニオンでの相談内容自体は大したことがないことが多いのです。自らを守る顧問税理士と、その姿勢に不満を持つお客様との間でコミュニケーションが成立していないだけ。

顧問税理士が説明してもお客様が納得しない内容を、私どもが説明すると納得される場合もあります。

私どもがセカンドオピニオンをさせていただいても難しいと思うケースは、お客様からのご相談内容自体が曖昧で、私どもに何となく状況を説明すれば、解決策が出てくるとお考えの方です。

もちろん、ご相談内容が曖昧の場合は、私どもから具体的に掘り下げる質問をさせていただきますが、お客様自身が相談内容のゴールのイメージを持てていないため、話が進展しないケースも見受けられます。

そのようなお客様は、最後の解決策として、「では、エー・アンド・パートナーズ税理士法人と顧問契約をすればよいか?」とお言葉をいただくこともありますが、正直申しまして、このような場合は顧問税理士として契約させていただいても、解決できない問題かと考えております。

先日、当社グループの長年のお客様である高山さんが本を出版されました。

 

『治るという前提でがんになった』

治るという前提でがんになった

高山 知朗(著)

この本には、2度の「がん」を経験された高山さんの闘病記が綴られています。高山さんの闘病に対する姿勢は、経営者にとって非常に参考になると考えますので、是非お読みください。

高山さんは命を懸けて闘われました。そして、大袈裟に言えば、会社経営も、「法“人”」の命が懸かっています。しかも、法人の寿命は、人間の平均寿命よりも圧倒的に短いのです。

命がある会社の相談につき、経営者が受動的になってはいけません。皆さま自身が情報をかき集め、顧問税理士に積極的に質問と相談を繰り返し、回答に納得できなかったり、顧問税理士では役不足と判断すれば、セカンドオピニオンも利用すべきなのです。

また、このまま行くと本当に危ないという経営状態であっても、「顧問税理士の仕事には納得していないけど、付き合いがあって簡単に解約できない…」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

もし、ご自身の命が懸かっていても、「付き合いがあるから病院を変えられない…」とおっしゃるでしょうか? 

たかが税理士です。命までは取られません。顧問税理士ときちんとコミュニケーションを取れないのであれば、セカンドオピニオンで相談をされるべきですし、顧問税理士を変えるべきです。

高山さんのような患者は、医師に「治したい!」と思わせるはずです。私どもも同じで、「会社を本当に良くしたい!」と熱意を持っていらっしゃる経営者には、より「力になりたい!」と思うのです。

税理士業界がお客様に対する姿勢を改善すべきとともに、皆さまにもより積極的にご相談いただきたいと、業界人の一人として考えております。

      

マイナス金利と相続税対策

相続税が増税されたと聞き、何とかしなければと本を読めば賃貸用不動産を建てれば相続税対策になると書いてある。日銀のマイナス金利政策の影響で銀行融資の金利は過去最低水準、聞けば借金も相続税対策になるとか。消費税だって次こそ上がるに違いない。
「金利の低い今のうちに融資を受けて、賃貸用不動産を建設して相続税対策をしないと損をしてしまう!」そんな風に考えてしまう気持ちもよく分かります。
しかし、そんな今だからこそ冷静になって欲しいのです。
8月30日の日本経済新聞の記事によれば、賃貸用不動産の建設ラッシュにより賃貸マンションやアパートの空室率は上昇し、首都圏であっても神奈川・埼玉・千葉の3県は調査を始めた04年以降、空室率は最高を更新し、東京都もアパートに限れば上昇が続いているそうです。
また、首都圏の1都3県でも中心部から外れるほど家賃相場の下げ圧力は強まっており、賃貸物件の契約更新時に、借り手にとどまって欲しい貸し手が家賃を引き下げる動きが出てきたとのこと。
しかし、人口減少が続いている現在、これらは全て当たり前のことです。人口が減っているにも関わらず賃貸物件は急増しているわけですから、需要と供給のバランスは崩れ、今後更なる空室率の上昇により家賃の下落が更に加速することだって十分にあり得るのです。
不動産経営を行ううえで最も考えなければならないのは、上記のような家賃の下落や空室のリスクですが、不動産経営を勧める住宅メーカー等の試算では、多くの場合その入居率は高く見積もられ、家賃も下がらない前提で予測されているため、安定した収益が得られると錯覚してしまいがちです。
しかし実際には、首都圏の物件であっても空室率は上昇しており、賃料引き下げの動きが出ています。人口減少を考えれば今後もこの傾向は続くでしょう。
さらにマイナス金利政策よろしく、借金をして賃貸用不動産を手にした場合において、家賃下落や空室のリスクにさらされると、賃貸収入では借金返済ができないといった最悪の事態に陥ります。
中古の賃貸物件が数多く売りに出ている現実を見れば、結局、賃貸不動産を手放さざるを得なくなった方が多く存在することが容易に想像できますが、その売却価格は、都内であれば別ですが新築時の半分以下になることも珍しくありません。
また、不動産経営にかかる費用も実は思った以上にかかります。固定資産税や管理費、入退去時の原状回復費用、賃借人を募集する広告費、さらに年数が経つにつれて増える多額の修繕費。
「賃貸物件を建てれば、相続税が減る」こと自体は決して間違っていません。銀行からの借金も債務として相続財産をマイナスする効果があります。しかし、不動産経営にかかるリスクや費用を十分検討したうえでの投資でなければ、これらの相続税の節税効果をいとも簡単に打ち消してしまいます。
不動産経営による相続税対策を行う前提条件は納税資金が確保できていること、老後資金が十分にあること、賃貸需要が見込める土地をすでに所有していることなどがあげられます。
相続税増税に消費税増税、加えてマイナス金利。不動産経営を考えている人には一見追い風に見えますが、需要と供給のバランスは明らかに崩れています。今こそ、冷静な判断が必要です。

現場検証 ~ライバル分析~

自社の業績がこの先どうなっていくのか?
そして、ライバルと目する企業がどのような業績なのか?
経営者であれば気に掛けるのは当然です。
自社の業績がこの先どうなっていくのか?という点については、経営計画を継続的に立ててみるというのが一つの方法です。
しかし、5年後の経営計画が、5年後に実際に達成できていることなど稀ですし、その計画通りに進めたが故に、違う結果が待っているということも十分考えられます。
そこで参考になるのが、5年後に“あの企業”のようになっていたいなと考える、“あの企業”の業績です。外から見て憧れる“あの企業”のビジネスモデルや印象、そして規模も、業績から分析すると大したことがないというケースが多々あるからです。
つい先日も、お客様から、ある企業のサービスの手法を取り入れるとお話を伺った際、少し引っかかった点があったため、その企業の帝国データバンクの調査報告書を取り寄せていただきました。
お客様からすれば、サービス一つの相談からその企業の調査報告書にまで話が及んで、私が何を考えているのだろうと思われたかもしれません。しかし、そのある企業については、私が別のラインからあまり良くない噂を耳にしていたため、業績はどうなのかなと気に掛かったのです。
結果としては、その企業の業績はあまり良いと言えるものではありませんでした。現状では特別悪いという訳ではありませんが、この先どのような方向性に進むのだろうか?と、こちらが心配してしまう状態でした。
その企業は多くのライバル企業からベンチマークされていたらしく、お客様は少し驚かれていました。表向きの印象からはもっと良い業績と思われていたようです。
もちろん、その企業の数あるサービスのうち、ごく一部を取り入れたからといって、その企業の業績のようになる訳ではありません。しかし、そのサービスによってオペレーションが大幅に変わるようであれば、業績に与える影響も大きくなりがちです。そして、その企業と目指す方向性が同じであるならば、おのずと財務体質も似てくるのです。
もし、ベンチマークしていた企業が、実は業績不振であったとしたら、その企業をベンチマークするのがよいのかどうかを再検討しなければなりません。
ちなみに、そのお客様は他のライバル企業の調査報告書も持ち合わせていたため、自社も含めて分析を行い、今後の方向性について考えるよいきっかけになりました。
また、別のお客様からは、自社よりも規模がかなり大きい同業者が自社のエリアに入ってきたため、その影響を検討するためにその同業者を分析して欲しいという依頼がありました。その際もお客様から受け取った資料は、その同業者の帝国データバンクの調査報告書です。
分析の結果、そのお客様は健全経営を続けているのに対し、その同業者は規模は大きいもののかなり苦しんでいるというような状態でした。つまり、苦しさゆえに単価を下げてエリアを広げているような感じで、仮に短期的にはシェアを奪われても、長期的には自滅する可能性もありました。
そのような企業に合わせて自社も単価を引き下げ、ガチンコ勝負をしても意味はありません。また、製品の品質では優っているということで、相手にしないというのが基本路線となりました。そのお客様は財務体質が強固で耐える力は十分にあり、相手はエリアを広げている分、固定費も増え続けているのです。同業者の体力がいつまで続くか見物です。
なお、自社の業績を、規模もやり方も違う他社と比較しても意味がないとおっしゃる方が多いのは事実。しかし、比較しても意味がないかどうかは、比較してみなければ分かりません。そして、業績も情報です。
自社のエリアに殴り込みを掛けてきたライバル企業が、どの程度の体力があるのかどうかを知らずして戦うというのは馬鹿正直すぎます。
戦争はロジスティクスと言われますが、ビジネスも同じです。十分な体力を有さずに勢いだけで殴り込みを掛けてきた相手なのか。それとも、十分な体力を有して、用意周到に殴り込みを掛けてきた相手なのか。これを把握せずして、いたずらに張り合うのは相手の土俵で相撲を取るようなものです。
そして、もしライバル企業が自社の業績を分析した上で攻め方を検討していたとしたら、とても嫌らしい攻め方をされるかもしれません…。
ちなみに、同業者分析を行う際、帝国データバンクや東京商工リサーチの調査報告書の質が良いかどうかの問題はあります。ただし、決算書だけでは分析データとしては足りないため、それを補足するものとして調査報告書などのデータを用いて分析するというのは有効な手段と考えます。
「ライバル企業が何をしようが関係ない! 自社が頑張れば何とかなる!」も悪くないのですが、相手を知ることによって、余計な事をやらなくて済む場合が多々あります。
自社の今後を知る上でも、ライバル企業を分析してみることをお勧めします。