「最近、他のお客様の状況はどう?」
と聞かれることがあります。自社が膠着状態に陥っているときに、ふと隣の芝生が気になるという感じで口にされます。
自社が順調であったり、窮地に陥っている場合には、隣の芝生など気になりません。
当社のお客様は個性的な企業が多いため、業界動向や景気動向に左右されないケースが多く、比較ができないというのが難しいところ。そして、一般論をお話ししたところで新聞レベルと変わらないため、焦点を絞ってお話することが多くなります。
そのような中でお話しすることの一つに、与信管理があります。
例えば、現在は売上が増加傾向の企業数が増加しているように思えますが、このような状態が続くと、どの企業も債権額が増加していきます。
もちろん、増収・増益という好循環にあればよいのですが、増収であっても増益という企業はそれほど多くないように思われます。増益であったとしても、増収に見合った利益は出せていない。
そして、増収に応じたキャッシュを確保できているかというと、さらに怪しいと思われます。
増収であっても、債権がいち早く入金されない限り、資金繰りは改善しません。むしろ、仕入が先行するケースでは、増収により資金繰りが悪化します。状況によっては、黒字倒産が増える可能性が考えられます。
つまり、増収の企業が増えるということは、債権の貸し倒れ又は長期滞留リスクが高まっているとも言えるのです。
それでも、長期に渡る継続的な取引先であれば、すぐに異変を察知し、対応できるはず。
(とはいえ、継続的な取引先であるが故に、情が顔をのぞかせてしまう場合もありますが…)
問題は、初回又は付き合いが浅い取引先です。取引先も、取引する相手(つまり自社)を選んできています。自社に隙があると、相手に狙われてしまいます。
本来であれば、可能な限りリスクを排除するために設定された取引条件も、「まあ、今回は大丈夫か…」と崩してしまうと、崩したときに限って、何らかの問題が生じます。
「それは結果論でしょ」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、このような相手も、隙がない企業には近づきません。相手にされないことが分かっているから。
また、帝国データバンクや東京商工リサーチで信用調査をする企業も増えてきましたが、信用調査をしている企業でも、隙がある場合には引っ掛かります。実際に自分がそのような目に合うとは思っていないことでしょう。
実際、先日お話を伺ったお客様でも、数千万円の債権が期日になっても入金されないと相談を受けました。もちろん、信用調査は実施しています。
幸い、お付き合いのある弁護士がいたので、すぐにその場で電話をしてもらって対処しましたが、それで問題解決とはなりません。そのお客様だけではなく、他の取引先への支払いも同じように滞留している可能性があるからです。
このお客様は取引単価が大きいため、契約時半金、納品後半金の取引が原則です。しかし、色々理由を付けられ、そして説得され、渋々、納品後全額を受け入れてしまいました。
本来であれば、契約金を払わない言い訳をされた時点でアウトなのですが、ふとした瞬間に、売上を目の前にして、自分に言い訳をしてしまいます。ちなみに、このお客様の業績は良好で、金融機関からも優良企業とみなされています。正直、隙を見せたとしか言いようがありません。
そして、その取引相手を検索すると、「あ、ここ知っている」という企業でした。WEBサイトも見栄えが良いです。
皆さま例外なく、未知の相手には警戒されます。しかし、少しでも知っている相手ですと、「まあ、大丈夫かな…」と、原則を緩めてしまうきっかけにしてしまいます。
債権額が増加している状況で、一つでも歯車が狂えば、一気に窮地に立たされる場合があります。皆さまも、自社の債権額の推移を改めてご確認いただき、リスク要因は徹底して排除してください。消費税の増税延期という話しが出ている時点で、かなり雲行きが怪しいです。
ちなみに、予防線を張るという意味で、顧問弁護士がいらっしゃる企業には、WEBサイトの会社概要欄に、顧問弁護士を掲載することをお勧めしています。皆さまもご経験があるように、取引相手の会社概要欄は必ずチェックされます。顧問弁護士と記載があるだけでも、近寄ってこない相手もいらっしゃいますので。