国が社会保険の強制加入に乗り出しているのは、以前からお伝えしているとおり。
日本年金機構が国税庁から企業の納税データを受け取り、社会保険未加入の約80万社を特定し始めているからです。つまり、社会保険からは逃れられません。未加入の企業において、まだ連絡がないのは順番待ちというだけです。
最近も、社会保険未加入の企業から相談がありました。
利益も十分出ており、給与もそれなりの金額を支払っておりました。
時間の問題です。
「加入しなければならないのは仕方がない。それでも社会保険料負担を下げることができないのか?」
このお悩みは既に加入している企業においても同じですので、誰もが知りたいと思われることでしょう。
そこで、今回と次回に分けて、社会保険料の削減(案)をお伝えいたします。
ただし、どの企業でもできる訳ではありません。しかし、実行は可能であり、選択肢としての情報は多い方が有利のため、あえてお伝えいたします。実際に実行する場合には、顧問税理士や社会保険労務士にご相談ください。
【その1】加入できない
負担を下げると言いつつ、いきなり「加入できない」から始まってしまいましたが、実は法人においても社会保険料を支払わなくてよい方法があります。
そもそも、社会保険に「加入する」には、毎月支給する給与がなければなりません。裏を返せば、毎月支給する給与がなければ、社会保険に加入できません。
当然、従業員については、毎月支給する給与が発生するため、社会保険に加入しないという選択肢はありません。
ただし、役員についてはどうでしょう?
例えば、二社法人があり、主たる法人からは7割の役員報酬を受け取り、もう一社からは残り3割の役員報酬を受け取っているような場合があるとします。
今までは、片方で社会保険に加入し、もう一方の法人では社会保険に加入していないというケースが多く見受けられたのですが、今後はもう一方の法人においても社会保険の加入を迫られます。この場合は、二社での役員報酬の合計額から総額の社会保険料を算出し、二社の役員報酬の比率にて、それぞれの法人にて社会保険料を按分することになります。
このような場合、あえてもう一方の法人にて「毎月」役員報酬を支給する必要はあるでしょうか?
「ない」という場合は、その支給を年1回のみに変更できるはず。そうであれば、毎月支給する給与がないため、その法人において、その役員は、「社会保険に加入できません」。
そして、その支給は事前確定届出給与で支給時期と金額をコントロールすればよいのです。
繰り返しますが、社会保険の加入要件は、毎月給与の支給を受けている場合です…。
また、そのもう一方の法人が、社会保険に加入できない役員のみで構成される場合は、そもそも社会保険の加入事業者に該当しないため、社会保険の加入事業者にすらなれません。
以上となりますが、この方法は法人が一社しかない場合は中々難しいかもしれません。二社以上ある場合は、それほどハードルが高いとは言えません。実際に実行している法人もありますので。
ということで、次回は実際に毎月の社会保険料が削減される方法をお伝えいたします。