そろそろ本当に覚悟を決めなければならないでしょう。
2月24日の日経新聞に【厚生年金、加入逃れ阻止 79万社特定、強制も】という記事が掲載されていました。
記事では社会保険未加入の疑いがある企業が79万社にのぼっており、マイナンバー(法人番号)を活用し、2017年度末までに全ての未加入企業を特定すること、悪質な企業には立ち入り検査を実施して強制加入させる方針であることを伝えています。
また先だって1月19日の読売新聞では厚生労働大臣が、記者会見で社会保険料の支払いを逃れるため厚生年金に加入していない悪質な事業主について、刑事告発を検討する考えを表明した、という記事が掲載されていました。
既に昨年、日本年金機構から「厚生年金保険・健康保険の加入状況の確認について(お願い)」という書類が届いている未加入企業も多いようです。しかし、実際にそれをきっかけに社会保険に加入した、又は加入させられたという話は、まだそれほど聞こえてきていませんので、昨年までは厚生労働省もあくまで「探りを入れている段階」であったように感じます。
しかし、新聞報道にあるように、いよいよ厚生労働省も本当に本気モードに突入する寸前と言っていいでしょう。
社会保険への加入は経営を根本的に見直さなければいけないほどのインパクトを与える事項です。「近い将来、加入しなければいけないことは、もう分かっているが、少しでも加入時期を引き延ばしたい」。そう考えている経営者の方も多いと思います。
今回、私が未加入企業の経営者の方にお伝えしたいのは、「くれぐれも、加入指導を拒否し続けて強制加入させられたり、立ち入り検査を受けるようなところまで、加入時期を引き延ばし続けないで欲しい」ということです。なぜなら【強制加入はリスクが非常に大きい】からです。
「社会保険は過去2年に遡っての加入、保険料の請求をされることがある」というのを聞いたことはないでしょうか?
これは厚生年金法第92条および健康保険法第193条により、保険料の徴収の時効が2年と定められていることに起因しています。時効が2年であるということは言い方を変えると「2年間は遡って保険料を徴収することができる」ということです。
しかし、厚生労働省は自主的に加入した企業については、「原則として過去2年に遡ってまでの加入は求めない」というスタンスのようです。ちなみに、この“自主的に加入”というのは、未加入であることを指摘、指導されてから早期に観念して加入した企業を含んでいるようです。実際、加入指導後、早めに加入したケースで、遡って加入させられたという話しはあまり聞いたことがありません。
ここで、気を付けなければいけないのは悪質な企業と判断されるケース、立ち入り検査などの結果を踏まえて加入させられるケース、加入指導を拒否し続けた企業が職権により強制加入となったケースに関しては、法律どおり「最大2年、遡って保険料を徴収されることがある」ということです。
では、2年間遡って加入させられた場合の保険料を簡単に試算してみましょう。
通常、社会保険料は会社と従業員個人とで折半です。しかし、2年分の保険料を遡って従業員から徴収することは現実的に困難である場合が多いと思われますので、全額会社が負担すると仮定します。
現在、月給30万円の方の社会保険料は会社負担、個人負担を合わせると約8万3千円です。これが10名だとすると月額83万円。2年間でなんと、1,992万円・・・・・。
仮に従業員に遡って折半の負担を求めたとしても約1,000万円の負担・・・・・。
「冗談じゃない!そんなもん払えるか!!!」
今、これを読んでいるみなさんは、怒りさえ覚えているはずです。
こんなもの支払わされたら、会社規模によっては本当に潰されてしまいかねません。
しかし、月給30万円の従業員を10人抱えている企業が強制加入ということになれば、これだけのリスクがあるということは法律に基づく事実です。
ですから、強制加入させられるような事態だけは、なんとしても、なんとしても避けていただきたいのです。もし自社が2年間遡って加入させられた場合どのぐらいの保険料になるのか、簡単でかまいませんので試算してみてください。試算結果を見れば、どの時点をもって自主的に加入するかは、もはや重大な経営判断事項であり、想定して備えておく必要があることに気が付くはずです。
覚悟を決め、判断を下す時が迫っています。