“マイナンバーで脱税者を一網打尽”はホントか?<年末調整・扶養家族編>

前回に引き続き、マイナンバー制度の導入によって税金にどのような影響があるのかをお話しいたします。

今回は年末調整や確定申告で問題となる『扶養控除』についてです。

会社で年末調整をしている役員や従業員の方で年末調整を行って、しばらく経って税務署から『扶養控除等の控除誤りの是正のお知らせ』という文書が届いたことはありませんか?

確定申告をされている方の場合には、『確定申告についてのお尋ね』という文書になります。

文書を見てみると従業員の名前が書いてあり、続けて奥様のお名前が書いてあります。
さらに『扶養控除』、『所得超過』と書かれており、奥様の収入が多いため扶養控除が受けられなかったことが推察できる内容となっています。

すでにご承知のとおり、扶養控除とは納税者に一定額以上の所得がない家族(扶養親族といいます)がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。

つまり、扶養親族が多ければ多いほど控除額が多くなり税金は安くなります。

ただし、扶養親族となるためにはいくつかの要件があります。

その一つが『年間の合計所得金額が38万円以下』というものであり、収入が給与のみの場合は年収103万円以下がこの要件に該当します。

この扶養控除を受けるための方法は2つあります。
一つはお勤めの会社に『扶養控除等申告書』を提出する方法。
もう一つはご自分で『確定申告書』を提出する方法です。

仮に『扶養控除等申告書』や『確定申告書』を提出する段階で扶養親族として奥様を申告したとしても、パートやアルバイトで103万円超の収入がある場合には税務署から是正の連絡が来ます。

何故、税務署に奥様の収入がわかったのかと言うと、前回お話ししました『給与支払報告書』がご主人と同じ市町村に提出されているためです。

奥様の勤め先から給与支払報告書が提出され、そこに記載された住所・生年月日から家族であることを確認します。

市町村では扶養親族として申告された家族に103万超の収入がある場合、一定期間ごとに所轄の税務署に連絡することになっています。

その連絡を受けた税務署は、勤め先の会社に対して扶養是正のお知らせを送っているのです。

ところが、この手続きの流れではすべての扶養控除の適用誤りを見つけることはできませんでした。

例えば、大学生のお子様が県外でアルバイトをして、103万円超の収入がある場合です。
お子様の居住地が県外の場合、アルバイト先からの給与支払報告書は住所地の市町村に提出されます。

県外に引っ越す段階で、住民登録を移している場合には、移転先の市町村に対して所得の『照会』を行うことで扶養の誤りを確認しています。

問題となるのは住民登録を移さずに、県外で収入がある場合です。
この場合には両親の住民登録がされている市町村では、どこの市町村に対して照会をかけていいのかわからないため、多くの場合は扶養の是正がされません。

しかし、マイナンバー制度によって全国どこにいても個人番号で照会をできる仕組みが整理されると、従来は発覚しなかった扶養控除の誤りが見つかるようになると考えられています。

今までのように県外に出ている子供のアルバイトだからと、たかをくくっていると痛い思いをするようになるかもしれません。