私、家計簿を付けています。
具体的にお伝えすると、最近TVでCMも流れている「マネーフォワード」というクラウド型の家計簿サービスを利用しています。既にご利用されている方も多いかもしれません。
「マネーフォワード」の運営会社は、「MFクラウド会計」というクラウド会計ソフトも提供しており、簡単に言えば「マネーフォワード」はクラウド会計ソフトの家計簿バージョン。
基本的な機能は無料で使用でき、有料バージョンは500円/月です。
私が家計簿を付けているのは職業柄と思われてしまうかもしれませんが、研究活動の一環で始めました。
なぜなら、私が「マネーフォワード」を使い始めた頃は、法人用のクラウド会計ソフトは発展途上段階で、家計簿のような個人向けサービスの方が自動連携機能(銀行、クレジットカード、年金、ネットショッピング、マイル、電子マネーなど)が充実していたからです。
また、スマホのアプリもあるので、いつでもどこでも使用できるというメリットがあります。どうせやるなら徹底的にと、取り込めるデータは全て「マネーフォワード」に連携させ、極力現金を使わないように決済方法を変更しました。
そして、この家計簿サービスは予算も登録できます。
月々の食費や日用品、交際費の予算を登録しておくと、「あと15日・残り64,686円」のように項目ごとに残り予算枠や消化額が表示されます。
私の場合、モバイルSuicaやクレジットカード決済、銀行口座の引落、アマゾンでの購入データが自動的に取り込まれ、数少ない現金支払いはスマホですぐに入力することにより、ほぼリアルタイムの家計簿が出来上がり、その時点での予算消化額などが表示されます。
これらは、機能だけを考えれば驚くようなものではありません。当然と言えば当然の機能です。しかし、現状の会計ソフトにはリアルタイムに予算消化額を管理する機能はありません。
ここまでのお話で何をお伝えしたいかと言うと、クラウド会計ソフトの次のステージが、経営計画や予算管理にあるということです。そして、その先行バージョンとして「マネーフォワード」のような家計簿サービスが存在しています(少なくとも私はそのように捉えています)。
もちろん、家計簿サービスとクラウド会計ソフトは全く別物なのですが、いまだクラウド会計ソフトでは実装されていない機能が家計簿サービスには存在します。
企業における月次決算というのは過去会計、つまり既に終わったことについて記録する業績管理。これに対して経営計画は未来会計、目標とする業績を定めるもの。この過去会計と未来会計をつなぐものとして、モニタリングと言われる予算実績管理があります。
しかし、月次決算が終了し、該当月の予算実績比較を行っても、タイムラグが存在します。結局、「先月はこのような結果だったね」止まり…。
「では今月からこうしよう」と決めたときには、既に月の3分の1程度は経過しており、その決定が該当月に完全に反映されることはありません。
ところが、予算の消化状況、あるいは売上の計画達成状況につき、クラウド会計ソフトから毎日又は毎週メールで配信されてきたらどうでしょう?
「今月の交際費が、予算額を大幅に上回っています。来月の交際費の予算枠は〇〇万円となりますので、注意をお願いします。」
「本日までの売上から予測される当月の目標達成度は78%です。対策をご検討ください。」
1ヶ月分の業績報告を後日まとめて受けるのではなく、都度情報が配信され、その情報について即時フィードバックが可能となる場合、目標達成度合いが高まるのは間違いありません。
つまり、経理担当や税理士から試算表を見せられ、過去の報告を受けるよりも、余程、有用であると考えます。さらに経営計画をきっちり作っているのであれば、進捗管理も容易です。
実際、freeeやMFクラウド会計では、先週のレポートという形式でメール配信が行われます。現状では利用価値のないレポートですが、内容が伴えば月次決算よりも早く結果を得ることができます。
私は、月次決算ならぬ日次決算なるものには懐疑的ですが、それがデータの自動連携可能なクラウド会計で運用され、予算の進捗管理とともに自動的に経営者に報告される形であれば、それは素晴らしいことだと思います。
現状のクラウドサービスの提供状況を考えると、現時点で最もクラウド会計での日次管理体制に移行しやすいのが、飲食業や小売業です。クラウドのPOSレジの多くがクラウド会計と自動連携しているので、クラウドのPOSレジとクラウド会計ソフトのセットで導入を図るケースが増えてきました。
これに対して、建設業など個別原価計算が必要な業種は当面実現が難しい状況です。
家計簿サービスに話を戻すと、「マネーフォワード」では利用者のお金の使い方を勝手に診断する機能があり、同サービスの利用者のうち、同程度の収入の人のお金の使い方・予算、毎月の貯蓄金額なども教えてくれます。
クラウド会計ソフトについては、クラウドで利用できる・銀行口座が自動連携する等がフォーカスされますが、真の力を発揮するのは利用者が増えて、データが蓄積されてからです。
つまり、利用企業間での業績ランク付けやAIでのアドバイザー機能まで実装してきた時、会計ソフトが業績管理及び分析ソフトに発展します。
お伝えしたように、家計簿サービスで既に類似の簡易機能が実装されているため、何ら障害はありません。
クラウド会計ソフトにて、いつ頃このような機能が実装されるのかは分かりませんが、それほど遠くない時期ではないかと考えられます。これは技術的な問題ではなく、開発に人員を割けるか程度の問題だからです…おそらく。。。
クラウド会計ソフトというものは、現時点で皆さまがイメージされている機能とは別のところに価値があります。今回お伝えしたのはその一端ですが、家計簿にさえ今回お伝えした機能があります。
クラウド会計ソフトの利用はまだ無理という方も、「マネーフォワード」などの家計簿サービスで、これから広がるであろうお金の管理方法を体験されてみてはいかがでしょうか?