10月5日、マイナンバーの通知がはじまりました。
JNNの世論調査によるとマイナンバー制度について、約8割が「不安」と答えています。
不安の理由はいくつかありますが、結局のところ『よくわからない』ということに帰着するのだと思います。
中小企業経営者の中にもマイナンバーによって税務署に情報が筒抜けになり、税金の追徴を受けるのではないかと、戦々恐々としている人もいます。
そこで今回から数回に分けて、マイナンバーの導入によって税務調査にどのような影響があるのかを分かりやすくお話ししていきます。
今回は『サラリーマン・OLで副業をされている方』についてです。
まずは確認になりますが、サラリーマンで主たる勤め先以外から給料をもらっている場合、その所得金額が20万円を超える場合には確定申告をする必要があります。
会社では毎年、『給与支払報告書』という書類をすべての従業員・アルバイトについて住民票のある市町村役場に提出しています。
マイナンバー導入によって、平成28年分以後に支払いを受ける給与について『給与支払報告書』にその従業員・アルバイトのマイナンバーを併記して提出することになりました。
まず、この段階で確認しておきたいことがあります。
副業でお勤めをされている場合、その会社がそもそも『給与支払報告書』を市町村に提出していたのかどうかということです。
本来は給与の支払いがあるすべての従業員・アルバイトについて提出が義務づけられている『給与支払報告書』ですが、かなりの数の中小企業や個人事業者の方が正社員である従業員については『給与支払報告書』を提出するものの、パートやアルバイトの『給与支払報告書』については提出をしていないという現実があります。
それ自体問題ですが、これが現実です。
マイナンバー導入によっても、会社が『給与支払報告書』の提出を怠っている場合には給与の支払い自体の把握ができないため、結果として今までと何ら変わることはありません。
つまり、副業について“今すぐに”税務署や市町村に把握されることはありません。
“今すぐに”と言ったのは、その会社自体に税務調査が入った場合にはパートやアルバイトへの給与支払いも調査の対象となるため、いずれはわかる時が必ず来るということです。
これはマイナンバー云々とはまったく別の次元の話です。
それでは、どのような場合にマイナンバーの影響があるのでしょうか?
水商売や風俗店などでは、この『給与支払報告書』を提出する場合にその人の本名ではなく接客上の『源氏名』によって提出している場合があります。
これは本人へのプライバシーに配慮しての店側の対応と思われます。
(もちろん正しい作成方法ではありません。)
『源氏名』では本名との一致が確認できないため、仮に『給与支払報告書』が提出されていたとしても申告漏れが発見されるには至りません。
しかし今後は『源氏名』であっても、マイナンバーを併記することで個人が特定されることから、税務署・市町村によって申告漏れが把握されることとなります。
ただし、わざわざ『源氏名』を使って『給与支払報告書』を提出している事業者がマイナンバーをきちんと記載して提出するようになるかは愚問でしょう。
そのようなことをすれば副業が会社にバレることを恐れ、働いてくれる従業員がいなくなってしまいます。
つまり、今まで申告の必要がありながら、それををせずに今日まで来ている人というのは、そもそもこの給与支払報告がされていなかった方である可能性が大なのです。
逆に言えば、会社から「申告のためにあなたのマイナンバーを教えてください。」と言われた場合には、今後は確実に申告漏れが発覚すると考えなければなりません。
また、風俗店の場合には給与という形式をとらず、個人事業者としての形式をとっている場合も多く、その場合にはあなたへの支払いは給与ではないため『給与支払報告書』の対象外であり、マイナンバーによる影響はありません。
なお、『給与支払報告書』の不提出および虚偽記載には『1年以下の懲役又は50万円以下の罰金』という罰則がありますのでその点はくれぐれもお忘れなく。
(地方税法第317の7に規定)
このように俗な話は本来税理士の私がすべきではありませんが、いい加減な情報によってマイナンバーを必要以上に警戒する向きがありますので、あえてお話しいたしました。
最後にマイナンバーに関係なく申告の必要があるものはきちんと自主的に申告を行っていただきたいと思います。
いずれ後悔するのはあなた自身です。