【要注意!】マイナンバーに踊らされるな!!

皆さまご存じのとおり、来月から各個人の住所にマイナンバーが届きます。
昨年から「マイナンバーどうする??」と大騒ぎしていたところ、とうとう本番がやってきます。

しかも、皆さまのお手元に届く前から、消費税の食料品などの軽減分の還付にマイナンバーを使うなどの話が飛び出したりと、今後は困ったら“何でもマイナンバー!”という流れが構築されつつあります。

今までマイナンバーにほとんど興味がなかったであろう従業員の方々も、「消費税の還付に必要」という話を聞けば、「うちの会社は大丈夫なのか?」と気になり始めるはず…。

実際、マイナンバーは、皆さまが報道で見聞きしている以上の用途が検討されており、マイナンバーがないと何もできないという世界が遠からず到来することが想定されています。

私どもは職業柄、様々な媒体から情報を得ていますが、「マイナンバーの利用拡大が進むと、税理士事務所の仕事がなくなるよね…」と話題になります。

しかし、実際そのとおりで、マイナンバーと学習機能を備えたクラウドベースのシステムの発展により、私どもが今まで行ってきた仕事がなくなっていくのは間違いありません。

それほどマイナンバーは重要な制度であり、それ故に取扱いには注意が必要ということになります。

まず、企業にとってマイナンバーが重要な意味を持つのは、従業員の「扶養控除等申告書」や「源泉徴収票」に記載が必要なため、少なくとも従業員全員分のマイナンバーを預かる必要があるからです。

実際に預かると言っても、罰則があるとか、セキュリティを厳重にしろとか、事務所のレイアウトを変更しろとか、皆さまを不安にさせるような情報ばかりが強調され、「実際どうなの?うちは中小企業だよ…」という声が聞こえてきます。

マイナンバーをビジネスチャンスと鼻息が荒くなっている事業者以外の専門家にしてみれば、「実際はこれだけ対応すればいいので、そんな大げさな話ではない…」となりますが、これを大声で言ったところで、「罰則がー!!」などの声にかき消され、自らのお客様に対してだけお伝えするということになります。

また、冒頭でも触れたように、今後は従業員もマイナンバーについて気にされる時期です。中小企業と言えども、マイナンバーについて最低限の対策をしておかなければ、さらに採用が困難になってくる可能性もあります。

「中小企業はマイナンバーのセキュリティがずさんそうで入社したくない…」と。

さて、ここからは宣伝になります。

当法人では、「中小企業は、これだけ知って、このような対応をすれば、セキュリティ面も含めて十分」ということをお伝えするためのDVDを制作いたしました。

もちろん、そのためにはマイナンバーの最低限の知識も必要ですので、その知識もサラリとご紹介しつつ、セキュリティ面も考えると中小企業にとってはこれが一番簡単というレベルの内容となります。

まだマイナンバーの対応が決まっていないという方のみならず、既に対応を始めているが、ここまでする必要があるのかと疑問をお持ちの方は、是非ご覧ください!

『中小企業のための最も簡単なマイナンバー対応』DVD

 

消費税の還付案に見る、今後の税金の流れ

今月、以前より検討されていた消費税の軽減税率につき、軽減分を後日還付するという案が打ち出されたことは皆さまも報道で見聞きされていると思います。
まだ財務省案なので、最終的にどうなるのかは分かりません。政治が絡めば、制度の良し悪しにかかわらず、二転三転するもの…。
しかし、「またもマイナンバーが前提か!」と、まだ誰も手にしていないマイナンバーであるにもかかわらず、次々とデータが格納されていく模様。
消費税の還付案についてですが、一般消費者の立場では実際に支払うときに、支払う額が少ない方が良いに決まっています。だから、還付はダメ。ただし、消費税を受け取る事業者の立場を考えれば、その事務の煩雑さに辟易するのは容易に想像がつくと思います。還付なら今までと特に変わりはありません。還付OK。
還付をしないのであれば導入せざるを得ないと言われているインボイス方式なんて、事務負担の増大で売上が減ってもおかしくないし、費用は間違いなく増えるし、大変な目に合うのは間違いありません。
では、軽減分がどの程度のインパクトを与えるかと言うと、
仮に年間の食費が100万円(月8.3万円)だとして、軽減税率2%分と考えると金額にして2万円の消費税。年間の還付額が1人4,000円を限度とする案だと、5人家族でやっと元が取れます。
「この2万円が大きい!」と考える方は多いのでしょう。
ただ、このような計算が成り立ち、かつ還付の限度額まで設けるのであれば、バラマキと言われようが、消費税の軽減税率なんて導入せず、マイナンバーで収集した所得情報を基に、所得制限を掛けた上で、所得税を1人4,000円還付した方が効率的です(もちろん、これは理屈でのお話しをしていますので、乱暴な議論であるのは承知しています…念のため)。
最近、コンビニなどでもクレジットカードを使う方が増えていますが、レジに並んでいる前の人が支払にクレジットカードを使い、さらにTカードを取り出してTポイントを受け取り、さらにマイナンバーのカードを取り出して還付を受ける…なんてことを想像した場合、「レジで、カード三枚を処理してもらっている人の後ろに並びたくない!」。そう思うのは私だけではないはずです。
そして、「“痛税感”という言葉ってあるんだな…」と思いつつ、一回10,000円(税抜)の食品の買い物で、10,800円が11,000円になって、「痛税感あるー!」と自分が思うかと想像すると、おそらく思わない…。
さらに、クレジットカード派の私が、もう一枚マイナンバーカードを取り出すか…、絶対に取り出さない!(コンビニではクレジットカードは使わずモバイルSuica、Tカードは持っていません…こちらも念のため)
そこまで考えると、軽減税率が導入されなくても私の痛税感は鈍そうですし、マイナンバーカードをいちいち「ピッ!」とやってもらうのも面倒です。
とにかく、お金を還付してくれるのはありがたいのですが、「ピッ!」は止めて欲しい。間違いなく還付限度額の4,000円に相当する年間20万円の食費は支出しているのだから、単純に4,000円を振り込んで欲しい!と思ってしまいます。
そうであるならば、その名目は無理やり消費税の還付とする必要はないと思うのですが、これが通用しないのが政治なので、何とも難しい限りです。
ただし、この“税金を徴収して、マイナンバーを使って税金を還付する”という流れは、消費税のみならず、今後の税金のスタイルになっていくのは間違いありません。
例えば、年末調整については、毎月所得税を会社から徴収され、年末に会社から還付を受けています。しかし、遠くない将来、毎月所得税は会社から徴収されても、最後に還付を受けるのは国からとなる可能性は十分にあります。
マイナンバーが数十年も前から検討されていたように、年末調整という制度をなくすという話しもかなり昔から存在します。
マイナンバーを経由して全ての収入・納税・家族データが集まれば、それを確認して追加修正し、最後にまとめて還付を申請するということが可能になるからです。それを行っている国は既に存在します。
確かに効率は良いですし、無駄なコストも労力もカットすることができそうです。
「生産性の向上!」というのは安倍首相に言われるまでもなく、中小企業が取り組むべき絶対的課題でありますし、日本政府が率先して取り組まなければならないはず。
そう考えれば、還付案は悪くありません。ただし、「ピッ!」は明らかに生産性の減少につながりそう…。
軽減税率自体は導入されるのでしょうが、これがどのような形で決着するのか…。一般消費者としてのみならず、事業者側としても注目していかなければなりません。
P.S.
もしかすると、消費税の還付案は、ポイントマニアの方にとっては意外とうれしいのかもしれませんし、「うちは大家族だから、その軽減分のデータが必要ないなら、俺のマイナンバーカード使わせて!」なんてことが繰り広げられるかもしれません。
飲み会の会計の際など、意外と盛り上がりそうですね 笑

 

役員報酬改定時期に自社を長期で考える

配偶者控除の見直し、ベビーシッター代の所得控除の検討などなど、給与をめぐる所得税関連の改正や議論が多くされています。平成25年分以後に上限が定められた給与所得控除については来年、再来年と漸次引下げられることが決まっています。

個人への課税が強化されている一方で法人税率が下げられていることは、もうよろしいでしょう。そのことは解っているものの、役員報酬の改定時期のたびに、「今、税率って何%でしたっけ?」と顧問税理士に聞いている方もたくさんいらっしゃるはずです。では現在、法人と個人の税率はどの程度になっているのでしょうか。比較しながら改めて確認していただきたいと思います。
まず市県民税・事業税を含めた法人税の実効税率を確認しましょう。

(図:平成27年4月1日以後に開始する事業年度)

仮に法人の所得が800万円であった場合、上記の実効税率にしたがって計算した法人税額は1,783,600円です。所得に対する法人税の比率は【22.295%】です。法人の所得が2,000万円であれば、法人税額は5,903,200円、所得に対する法人税の比率は【29.516%】です。5,000万円の所得では【32.4%】程となります。

では、続いて個人の税金を見ていきましょう。税金には当然、社会保険料も含めて考えます。ご存知のように社会保険料は企業と本人で折半します。従業員の場合は自らが負担する社会保険料だけを考えれば良いでしょう。しかし、経営者が自らの役員報酬を考える時、従業員と同じように企業が負担する社会保険料を分けて考えて良いのでしょうか。

中小企業の経営者にとっては【企業が負担する】=【経営者本人が負担する】ことと同じではないでしょうか。実際、多くの経営者はそうした感覚を持っていらっしゃいます。であれば当然、企業が負担する社会保険料も役員報酬にかかる税金の1つと捉えて考えるべきなのです。

(図:役員報酬月額に対する各種税金)

この表は役員報酬の月額に対する税金を集計したものです。各種税金合計(1)と税負担割合(1)は通常どおり、会社負担分の社会保険料は考慮していません。しかし、各種税金合計(2)と税負担割合(2)については先に述べたとおり、会社負担の社会保険料も役員報酬にかかる税金の1つと考えて税負担割合を算出しています。

どうでしょうか?一瞬目を疑った方もいるはずです。月額20万円の役員報酬ですら、その税負担率は33%を超えています。いかに社会保険料の負担が重いかが分かります。

この結果を見ると現在の税制下で、ある程度、税負担の最適化を求めた場合、役員報酬は“そこそこ”にして会社に内部留保していくのがベターではないかという至極まっとうな考えにたどり着きます。しかし、今回考えていただきたいのは、内部留保のさらにその先です。

ここでお伝えしたいことは、現在の税構造においては、来期1年間の売上云々などではなく、「長期的な視点で企業経営を捉え、その一つとして役員報酬を決めていく必要がある」ということです。つまり、長期的な視点で自社の経営スキームを組みつつ、税制の変化や自社の変化に合わせて毎年そのメンテナンスを行い、それに合わせて役員報酬を改定していくことになります。

例えば事業内容的に自分の代で解散するであろう会社の場合であれば、税負担を覚悟のうえで会社に余計なお金は残さず、早い段階から個人に財産を移転していくのも一つです。しかし、既に退職(解散)時期がそう遠くない段階であれば無理に今、高い税金を払って役員報酬で取らずとも、今から法人税法上認められる退職金の額を予測し、計画的に会社に内部留保を行い、所得税・住民税の優遇税制の恩恵を受けられ、社会保険料もかからない退職金で取ってしまうというのも非常に有効です。

長年の経営により個人の財産もしっかり蓄え終わっているようであれば、役員報酬を抑えて、会社の内部留保をより厚いものとしていき、次世代へ引き継ぐ準備をするという戦略もあるでしょう。

しかし、実際にこうした長期的な視点で物ごとに備えて役員報酬を決めている中小企業は多くありません。来年1年や目の前の数年のことだけ考えて決めているケースが圧倒的に多いのです。

個人課税の強化が現在進行形で行われ、法人税の引下げも進む現在、私たち中小企業は、経営者個人と企業の「現在のステージ」と「今後進むべきステージ」をしっかりと捉え、長期的な戦略を練っていかなければなりません。税務戦略も長期で行うべき時代なのです。
次の役員報酬改定時期には、是非じっくりと考えてみてください。

 

今こそ自己株式を『消却』しよう!

第430号『本当はタダより”安い”ものはない!』において、地方税法の改正によってすべての会社に平等にかかっている法人住民税の『均等割』について引き下げとなる可能性が出てきたことをお伝えいたしました。

しかし、今回は逆に均等割が引き上げとなる場合があることについてお伝えいたします。
引き上げの対象となるのは、過去において『自己株式』の取得によって均等割の引き下げを受けている法人です。

改正の内容は以下のとおりです。

法人住民税の均等割りの税率区分の判定の基準となる『資本金等の額』が『資本金と資本準備金の合計額』を下回る場合の均等割りの税率区分の判定の基準は、「資本金と資本準備金の合計額」とする。

 

(図)

⇒上記に該当する場合には、法人住民税均等割の税率区分の基準を『資本金の額+資本準備金の額』とします。

なお、ここでいう『資本金の額+資本準備金の額』は貸借対照表に計上されている金額です。

 

(貸借対照表)

 

 

自己株式を取得しても貸借対照表上の資本金の額と資本準備金の額は減少しないため、典型的に今回のケースに該当することとなります。

また、ここで注意をしなければならないのは、過去に自己株式を取得している法人も対象になるということです。

そこで、過去に自己株式を取得し均等割りの引き下げを受けている法人については何らかの対応を迫られることとなりました。

具体的には、次の二つの手順を踏むことになります。

 

(手順)

この二つの手続きを踏むことによって貸借対照表の資本金の額を減少させることができます。

自己株式の取得をし、そのまま保有している法人はたくさんあります。

何故、すぐに消却をせずに今日まで保有していたのか?という疑問が生じます。

その最大の理由は『消却をする必要がなかった』からです。

実は、減資と株式消却については会社法に従った厳格な手続きと法務局への登記が必要となります。

つまり、そこまでしなくても均等割りを引き下げることができていたので当初の目的は達成されていたのです。

繰り返しになりますが、このまま取得した自己株式を放置していると均等割りのランクが引き上げられる結果となります。

今こそ金庫の中で眠ったままの自己株式を消却すべき時なのです。