みんな結局、「ふるさと納税」が大好き?!

「今年からは、ふるさと納税の適用額が増えて、さらに確定申告も不要になるんですよね?」

いまだに良く聞くご質問のひとつです。
なんだかんだ言っても、みなさんふるさと納税の魅力にハマってしまっているようです。

みなさんも、ふるさと納税に改正が入り「どうやらこれまで以上にお得になったようだ」というのはお耳にされているのではないでしょうか。

ところで、本当にお得になっているのでしょうか。
今回はこの改正の概要について、改めてお知らせしたいと思います。

■ワンストップ特例!?
「ふるさと納税」これ自体のご説明はもう不要かと思います。

そう、ご存知のとおり、お住まいの市町村等以外の自治体に寄附をすることで、原則として寄附金相当額の所得税・住民税の税額控除を受けることが出来、かつ寄附をした市町村によっては、お礼品が贈られてくるという、なんともお得な制度です。

これまでは、寄附金をした場合には、サラリーマンであっても確定申告をしなければこの控除は受けることが出来ませんでした。
しかし今年の改正により、H27年4月以降の寄附に関しては、一定の条件により確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」が創設されました。

なお、この場合には「5団体の自治体(5か所)」までの寄附が、確定申告不要の対象となっています。

■控除額が2倍に?
「どうやら、控除できるのが2倍になるらしい・・・」

このように記憶されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には少し違います。

控除額が2倍になるのではなく、控除額の限度額が住民税額の約1割から約2割へ増加されるというものです。

所得の状況や所得控除の状況などは、その年によってその金額は変動するかと思いますが、その変動後の課税所得をベースとした住民税額に応じることとなるので、単純に2倍になる訳ではありませんから注意が必要です。
しかし、確実に控除となる金額は増えることになります。

■「ワンストップ」の落とし穴!?
上記を見ると、手続きが簡単になり、さらに控除も増えたようで、なんだかお得で身近になった気もしますが、果たしてそうなのでしょうか。

実は「ワンストップ」といっても、もうひと手間の手続きが必要なのです。

寄附をした自治体へは「寄附金控除にかかる申告特例申請書」を提出しなくてはなりません。それも通常はその「申請書の取り寄せ」から始めなくてはなりません。

先ほど「ワンストップ」、すなわち確定申告不要とするには「5団体の自治体」への寄附まで、ということを申し上げました。

すなわち、仮に5団体の自治体へ寄附をした場合には、計5回、申請書を取り寄せて提出する必要があるのです。

さらに、同じ自治体へ2回に分けて寄附をした場合には、その寄附の都度、上記の申請が必要になってきます。

これ、果して「ワンストップ」といえるのでしょうか・・・。

■さらに・・・
医療費が多額にかかり、「医療費控除」を受けていらっしゃる方も多いかと思います。
家族が多く、また高齢の親族がいらっしゃるような方は特にそうかもしれません。

仮に、この「医療費控除」を多額に受けられる場合には注意が必要です。
医療費控除を受けたばっかりに、上記の「寄附金控除」が受け切れない、あるいは受けることが出来ない、なんてことも考えられるのです。
「寄附金控除」は「医療費控除」の適用後の所得税等から受けるという、適用の順番が法令により決まっているからです。

すなわち、「ワンストップ」の恩恵を受けようと申請書を提出したものの、確定申告時に医療費控除を受けたために寄附金控除を受けることができず、結果、その「ワンストップ」のための申請書の提出が無駄になった、ということも考えられるのです。

(そもそも、こうなると寄附金自体も無駄では?というお話しになりますが、今は、手続きとしての「申請書の提出の手間」という論点で見て頂ければと思います!)

さらにさらに、こんなことも考えられます。年の途中で寄附金をして申請書を提出したが、その後引越しをした場合です。
この場合には、引越し後に、寄附をして申請書を提出した自治体に対し、新たに「引越しをした旨の届出書」を提出しないと寄附金控除の適用はされません。

なんとも面倒な話ではないでしょうか。

■結論
上記を考えてみると・・・
確定申告の必要のないサラリーマンであり、かつ、引っ越しもしない方で、1団体のみの自治体へ1回だけ寄附をして、さらに医療費控除を受けない方は、「ワンストップ特例」の適用を受けるべく、1回だけ申請書を提出することで、その適用が受けられます。

当たり前ですが、この場合は1度きりの申請書の提出で済み、ある意味「ワンストップ」といえると考えます。

それ以外の方はどうでしょうか・・・。
例えば2団体以上の自治体へ寄附をする場合や、同一の自治体へ2回以上寄附をする場合、また、医療費控除を受ける予定の方などは、年明けに1回で済む「確定申告」をする方が、実は手間が少なく無駄がないのではないかと考えています。

いつも通り会社で年末調整をしてもらい、その結果の源泉徴収票と寄附金関係の書類、あるいは医療費の領収書を持って確定申告すれば、手続きは1度で済んでしまうのです。
手続き自体もそう難しいものではありませんし、税務署でも親切に教えてくれます。

これから寄附をしようと考えている方、あるいは寄附はしたけれども、まだ「特例申請書」の提出はしていない方などは、ご自分の状況に応じて、1度の手間で済む年明けの確定申告を考えてみてはいかがでしょうか。

 

副作用

「相続税対策にお孫さんを養子にしませんか?」

専門家から、こんな提案を受けたことのある方、たくさんいらっしゃるはずです。
手続きは簡単、実親との親子間関係もそのまま、もともと名字が同じなら養子縁組によって孫の名前が変わることもありません。それで相続税の対策になるならと、実親も前向きに検討するケースが多いようです。しかし、未成年の孫を養子にする場合には、少し注意が必要です。

ご存知のように未成年者には「親権者」がいます。通常は実父母が親権を持っています。離婚裁判などで親権を争う話などを聞く機会がありますので、比較的よく知られた法律用語です。

もうピンと来ましたでしょうか?
そう、「未成年者である養子の親権は誰にあるのか」です。

実は未成年者を養子にした場合、その親権は実親から養親に移ってしまいます。
つまり法律上、実父母には実の子に対する「親権」が無くなってしまうのです。

相続税法上、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までを養子とすることで法定相続人の数に含めることができます。そして相続人が増えることにより相続税法上、次のような効果が生まれます。

  • 相続税の基礎控除(非課税枠)が増える。※1人当たり600万円
  • 生命保険金の非課税枠が増える。※1人当たり500万円
  • 退職金の非課税枠が増える。※1人当たり500万円

孫養子の相続税は20%割り増しになるというデメリットもありますが、通常は上記のメリットの方が大きく作用しますので、手続きも簡単な「孫養子」は一般的な相続対策として幅広く知られ、利用されています。

しかし、しかしです。前述のように、養子となった未成年の孫の親権は養親に移ってしまいます。
さて、実の親の心情として、実の子の親権を持たないというのは、どうなのでしょうか・・・
私は3人の娘(未成年)の親です。あくまで私の個人的な意見ですが、仮に私の親が資産家で、娘を私の両親の養子とすることで、相続税を減らせたとしても我が子の親権が自分にないという状況には大きな違和感を得ます。親権が私になくても、何かなければ特に問題は起きないかもしれません。しかし、それでもやはり私の子の親権は私が持っていたいです。

もちろん、相続税対策としてはとても有効ですし、考え方は人それぞれです。こうしたことを、ご理解のうえで未成年の子を両親の養子にするのであれば問題ありません。
しかし問題なのは、この養子と親権の話、意外と知らない方が多いのです。

専門家に勧められ、我が子を両親の養子にすることに同意したが、後から自分には親権がないことを知ってショックを受ける・・・こんなことは避けなければいけません。

もちろん何も起きないまま、子(孫)が成人すれば親権の話は関係なくなります。
しかし、逆に養子となった子(孫)が未成年の間に養親(祖父母)が亡くなってしまった場合でも、その親権は実父母には戻りません。この場合には家庭裁判所で後見人を選任しなければならないのです。

繰り返しになりますが、孫を養子にすることは相続税対策として有効であることは事実です。しかし、養子縁組のような法律行為を行おうとする場合、どのような法律効果をもたらすのかをよく理解したうえで実行していただきたいのです。

もちろんお金は大切です。しかし、それ以上に大切なこともあります。こうしたことは、一人ひとりの価値観によるところが大きい問題ですので、正解は人それぞれです。
相続税に限らず、節税効果を期待する行為の裏側には副作用のようなデメリットが発生することが少なくありません。メリットもデメリットも過不足なく分かり易く説明してくれる、頼れる専門家を味方につけ、みなさんにとって最適と考えられる選択をしていきましょう。

 

本当はタダより"安い"ものはない!

赤字の会社にとっては、1円でも税金が安いに越したことはありません。

先に行われた税制改正によって、すべての会社に平等にかかっている地方税の『均等割』についてランクが引き下げになる可能性が出てきました。

対象となるのは、資本金が1千万円を超える会社です。

『均等割』とは、資本金と従業員数の2つを基準にしてすべての会社に対して一律にかけられている税金です。

そのため資本金が1千万円を超える会社については資本金を減少させることによって『均等割』を減らすことが可能となります。

このように会社設立後に資本金を減少させることを『減資』といいます。

減資をする場面はいくつかありますが、その一つが節税を目的としたものです。

経営再建中のシャープが、減資をして税法上の『中小企業』になることで、中小企業に認められた税制優遇を受けようとしたことはまだ記憶に新しいと思います。

減資の方法には、金銭の支払いを伴う減資と金銭の支払いを伴わない減資の二つの方法があります。

これを『有償減資』と『無償減資』といいます。
(注)会社法上、有償減資は存在しませんが、あえてこのように説明させていただきます。

どちらも資本金を減少させる手続きなのですが、『均等割』のランクを決める基準となる『資本金』は決算書上の資本金ではなく、法人税法上の『資本金等の額』であり、この資本金等の額は『有償減資』でしか減少させることができませんでした。

さらに、この『有償減資』を行うことができるのは内部留保のある黒字会社だけで、債務超過の赤字法人は『有償減資』をしたくても会社法違反となるため、指をくわえて我慢することしかできないという現実がありました。

しかし、今回の改正によって『欠損てん補』のために資本金を減少させる『無償減資』を行った場合には、地方税法上では資本金等の額を減少したものとすることとなりました。

この取り扱いは、これから行う『無償減資』のみならず、平成13年4月1日以後に行われた『無償減資』も対象になりますので確認が必要となります。

また、注意すべき点が一点あります。

それは、資本金の『無償減資』から1年以内に欠損てん補に充てた金額に限ると規定されていることです。
通常は『無償減資』と同時に行われるため、気にするほどのことではありませんが、覚えておく必要はあります。

これによって、今までは『均等割』を下げたくても減資をすることができなかった会社においても、お金を払い出さずにタダで節税を行うことができるようになりました。

ただし、タダとは言っても手続きに費用がかかります。

では、減資を実行した場合の費用対効果を確認しておきましょう。

『無償減資』は、会社法の手続きに従って処理する必要があるため、官報への『公告』債権者への『催告』といった耳慣れない手続きが必要になります。

概算でかかる費用は以下の通りです。

≪減資にかかる概算費用≫

概ね20万円といったところです。

 

これにより、引下げとなる均等割額は以下の通りです。

(東京都の均等割額)

 

1年あたり『11万』の節税になりますので、2年で手続費用の元がとれる計算です。
そして3年目以降はプラスになります。

なお、この改正は平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用となり、期末時点での資本金で判断されます。減資が期末までに完了していれば適用されますが、減資の効力発生までに1ヶ月以上の期間が必要となります。余裕をもってご準備ください。

タダで税金が安くできるこの機会をお見逃しなく。

 

税務調査、始まっていますね…

ご存じのとおり、国税の人事異動は毎年7月10日になりますので、税務調査はこの人事異動後に活動を開始し、実際の調査は8月に入ってからというのが流れです。現在進行形の企業様もおありのことでしょう。

しかし、税務調査も少し流れが変わってきたようで、人事異動前に調査の事前通知が始まっています。実際、当社のお客様でも6月下旬に税務調査の事前通知がありました。早いなと思います。

事前通知が早まったということは、結果として税務調査の件数が増えるということにつながります。近年は税務調査の件数が減少傾向ですから、少しでも調査件数を増やすということなのでしょう。

こうなると、やはり税務調査が省略となる場合もある書面添付制度は有効ですから、ぜひご活用いただくのがよいと思います。もちろん、顧問税理士様に…。

ちなみに、上記の当社への事前通知も、書面添付を提出しているお客様に対してでした。

「あのー、33条の2の添付書面出していますけど、それでも調査の日程調整しますか?」

「…少々お待ちください。(ガサゴソ)、♪~…、…、…。もしもし、一度なかったことにしてください。調査自体行わない可能性がありますので…。」

もちろん、今回のケースはレアな笑い話ですが、書面添付制度にはこのような効果があります。

とはいっても、税務調査はやはり嫌なものです。何と言っても時間が奪われます。書面添付制度を利用しても、永遠に来ないということではないので、来てしまったら仕方ありません。税務調査に来てしまったら、早く終わってもらうしかありません。

では、どうすれば早く終わるのか?

一番は、顧問税理士に普段からしっかり仕事をしていただくこと。これに尽きます。次は、自社でも正確な処理を心掛けること。

ベタですが、問題がなければ税務調査も早く終わるのは当然です。税理士にも限界がありますし、ミスもします。帳簿の正確性を確保するには、自社と税理士の共同作業が必要です。

では、税理士に頼りきりにせず、自社でも正確性を心掛けるには、どのようにすればよいのか?

これはやはり税務調査のチェックポイントを抑える必要があり、チェックポイントを知ることが重要です。ちなみに、国税庁は下記のようなチェックリストをホームページに掲載しています。

   ・「大規模法人に関する要注意項目確認表」(PDF)

   *上記の関連ページはこちら

大規模法人とありますが、中小企業でも変わりません。慣れないと少し難しいかもしれませんが、よく出来ています。決算月まで会計処理が終わった後、改めてこのチェックリストでご確認いただき、漏れや修正すべき点、顧問税理士に伝えておくべき点をご確認いただくのがよろしいかと考えます。それだけでも随分違うと思います。

このチェックリストは税務署への提出対象ではありませんが、税務調査に来た時などに、帳簿書類の一番上に堂々と置いておくのも面白いかもしれませんね(笑)

「うちは、国税庁が出しているチェックリストでしっかり処理しているよ!」って。

もちろん、どの企業も「これは微妙かな…」と思う点はあるでしょう。しかし、それは既に皆さまも十分把握しており、かつ、覚悟をしている部分もおありのはず。

ネックとなるのは、想定外のリスクです。このようなものはチェックリストなどで炙り出しておくのが一番です。

税務調査対策にウルトラCはありません。調査官と上手く交渉して…という話しもありますが、それはあくまで問題が発生しているケースに対してです。

問題が発生しないようにするには、問題点を事前に抑えておく。本当にこれだけなのです。

調査官も税金を取りたいばかりではなく、調査が早く終わるものなら終わらせて、次の法人の調査に取り掛かりたいのです。

ぜひ、協力して早く終わらせてあげようではありませんか!
もちろん、修正なしで。

P.S.
少し税務調査から外れる内容もありますが、法人会などもチェックシートを公表していますので、ご参考にしてください。

   *【法人会:自主点検チェックシート】

 

思いもよらない贈与税課税にご注意を!!

社 長:建設業の許認可の関係で1,000万円増資して資本金を2,000万円にしようと思うんです。
税理士:ほう、特定建設業ですね。
社 長:そうなんです。現状の株主は私以外の家族もいますが、今回はすべて私が追加で出資します。面倒なんで@5万円の200株でいこうと思ってるんです。
税理士:それはダメですよ!200株発行してしまうと、社長さんに贈与税が課税されてしまいますよ!
社 長:ええぇ~、贈与税ですか?!
先日、監査で伺った会社さんでの会話です。
単なる増資の話に、なぜ贈与税が関わってくるのでしょうか。
今回は、うっかり税理士に相談しないでやってしまいがちな、この論点について触れてみます。
■なぜ贈与税が課税されるのか?
上記の会話のような、いわゆる第三者割当の増資(注)の場合には、その発行時の時価で株式を発行しないと、贈与税が課税される場合があります。
(注)第三者割当とは、会社の役員や従業員、取引先などに対して新株を発行する方法をいい、現在の株主の中の特定の者に対して発行する場合も含まれます。
それは、株主間で「一株当たりの価値の移転」が起こるからです。
★上記の会話を簡単な例題で見てみましょう。
・ 増資前の貸借対照表の純資産の額が3,000万円
・ 資本金は1,000万円で発行済株式は200株
・ ここで1,000万円の増資を行い@5万円で200株発行する

(図)

上記のように、
1. 増資前の発行株数は200株で純資産額(所有時価)は3,000万円
⇒すなわち1株当たりの純資産額が@15万円(ここでは時価と仮定します)であったものが、
2. 増資によって、3.合計では発行株式400株で純資産額(所有時価)は4,000万円
⇒すなわち1株当たりの純資産額が@10万円となり、増資前より▲@5万円が減少することになります。
言い換えれば、社長は@5万円の払い込みで@10万円の株式を取得したことになり、他の既存の株主から1株当たり5万円の価値の贈与を受けた状態となります。
ここに、株主間の「一株当たりの価値の移転」が起こったこととなり、この移転に対し贈与税が課税されるリスクが生じる、ということになるのです。
■第三者割当増資は時価発行!!
このように、上記のような課税のリスクを排除するためには、増資をする時点の時価による新株の発行が必要となります。
例題で言えば、1.増資前の@15万円で発行することになります。
こうすることで、増資前も増資後も、その時点で1株当たり@15万円の株式のみが存在することとなり、価値の移転を起こさずに済むわけです。
また、上記では簡便的に1株当たり純資産額を「時価と仮定」しましたが、税務上のリスクを回避するためには、税務上の評価方法による株価算定が必要不可欠となります。
このように「単なる増資」と簡単に考えていると、思わぬ落とし穴にはまる可能性がありますので、何を行うにも、まず税理士等の専門家にご相談することをお勧めいたします。
当社では「株価評価サービス」も行っております。
増資を検討している、あるいは自己株式の取得(金庫株)などを考えている場合には、まずはお気軽にお問い合わせください。