Youtuberはあんなモノまで経費にできるのか!?

前回に引き続きYoutubeやアフェリエイトの確定申告をネタにして『必要経費』の話をいたします。

確定申告にあたっての最大の関心事は、何が必要経費となるのかということです。

例えばYoutubeのある番組では、大食漢の女性が毎回山盛りの料理を食べ食レポを行っていたり、またある番組では、人気キャラクターのおもちゃだけを次々とレビューしているものがあります。

番組登録者数、再生回数から推定すると年収で数百万はあると思われますが、この番組を作成するためにかかった飲食代や、人気キャラクターのおもちゃの購入費用は必要経費となるのでしょうか?

これらが必要経費となるのであれば、食べることが何よりも好きな人や、小さなお子さんがいらっしゃる親にとって、Youtubeは究極の『公私混同節税法』となり得ることになります。

Youtuberの中にはメインのチャンネルのほかに”サブチャンネル”を作っている方がいらっしゃいます。

表向きの理由は、動画作成の裏側やボツ集を公開したり、メインのチャンネルとは違うジャンルからの視聴者の獲得をすることにあるようですが、私は穿った見方をしてみました。(悪いクセです。汗)

メインチャンネルで商品のレビューを行っている人が、何故サブチャンネルでゲーム実況チャンネルやグルメチャンネル、果てには旅チャンネルや鉄道チャンネルを持っているのか?

前もって断っておきますが、ここからはすべて私の妄想の世界です。

Youtubeをやる方々は多かれ少なかれデジタルデバイスが好きで、もちろんプライベートで普段からゲームを楽しんでいると思われます。

ゲーム実況が再生回数を稼ぎやすいということもあるとは思いますが、もしかしたら、ゲーム実況やグルメリポートをすることで、購入したゲーム機やゲームソフト、外食費やお菓子の購入代を『合法的に必要経費化』させているのではないでしょうか?

購入したものや食べたもの、旅先での様子をYoutubeにアップすることでその動画から収入が発生します。

その収入を得るために、『直接』にかかった費用は『必要経費』という構図です。

もう一度断っておきますが、これは全て私の妄想の世界です。

Youtubeに動画をアップし収入を得ることで、あらゆる支出が必要経費となるというのであれば、やはりこれは究極の公私混同節税が実現してしまう可能性があります。

ここまでお読みいただいて「これはいいぞ!」と思われた方がいらっしゃるかも知れませんが、世の中、そんなに甘くはありません。

昨年にインターネットの"ライブチャット"によって得た収入に係る『必要経費』について争われた裁決について、その内容の一部が国税不服審判所で公表裁決事例として紹介されています。

ライブチャットサービス業務を行う請求人が主張する各費用のうち、少なくともパソコン等の購入費及びインターネット接続料金については必要経費に算入するのが相当であるとした事例(平成19年分~平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平26-05-22公表裁決)

事案では、ウェブサイト上でライブチャットサービス業務を行って収入を得ていた納税者が、平成19年~平成23年分の所得税についてまったく確定申告をしていなかったところ、税務署から本税と無申告による加算税の決定処分を受けたものです。
それに対して納税者が、業務の遂行上支出した『衣服費』、『化粧品』、『ダイエット用品』『室内装飾品』及び『食料品』等を必要経費に算入すべきであるとし争ったものです。

この裁決事例の興味深いところは、YouTubeやアフェリエイト等のインターネット関連から収入を得ることを前提とした場合に、納税者が会話レベルで「これって経費にならないの?」と考える、ありとあらゆる支出が否認されていることです。

一例をご紹介いたします。

  1. コートやジャケット、スカート等の洋服類
  2. バックや時計等の装飾品
  3. スーツケースやタンス、ミシン等の洋服関連品
  4. 登山靴、スキーウエア、カーキャリア等屋外撮影のための用具購入
  5. SDカードやデジタルカメラ、webカメラなどの写真撮影機材
  6. 健康食品、ダイエット用品、化粧品等の容姿をよく見せるための費用

まだまだ挙げれば切りが無い程に、沢山の支出を必要経費とすべく争っているのですが、その多くが「よくこんなものまで出したなぁ!」と驚かされるものばかりです。

今回の裁決の中で必要経費の解釈について、次のように述べられていますので引用します。

『(必要経費とは、)業務の遂行上生じた費用、すなわち業務と関連のある費用をいうが、ある費用が必要経費に当たるといえるためには、単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を有し、かつ、業務の遂行上必要なものに限られ、また、業務の遂行上必要なものというためには、その者の主観的な判断のみによるべきではなく、通常必要なものとして客観的に認識できるものでなければならないと解すのが相当である。』

上記の解釈を踏まえ、今回の結論は、若干の備品費とパソコンとインターネット接続料金の一部が必要経費として認められただけで、それ以外はすべて必要経費として認められませんでした。

それ以外の支出について一切の事業関連性が認められなかったかと言うと、中にはそのように判断されたものもありますが、その大部分が準備不足による証拠、証言能力の欠落によるものでした。

(納税者の)主張が総じて終始場当たり的で一貫性がなく、不自然かつ不合理な内容であり、証拠書類によって確認できない内容を無理に関連付けて述べるものと認められることから、全体として『到底信用することができない。』と記述されています。

つまり、税務署から過去5年分の税金を払うように処分が出たので、慌ててインターネット等から確認できる買い物のの履歴を検索し、いかにも事業と関係ありそうな、それらしい理由を並べて出せるだけ出したという状況です。

今回は税務調査ではなく無申告による決定処分を受けたことに対して、納税者が後出しで必要経費の算入を求めた事案ですが、これが税務調査であったならば、調査官が事業との関連性がない、ウソじゃないかと否認指摘をしてきた場合には、合理性のある証拠資料をもって反証できる準備をしておかなければ、ただ吠えているだけで何の意味もありません。

この事例を踏まえ、最低限、次のことを実行する必要があります。

  1. 業務との直接の関連性を裏付ける証拠を残す。(いつ、どこで、何故それが必要だったのか、金額 等)
  2. 一貫性のある説明が出来る用意をする。(そこにウソがなければ何も気にする必要はありません。)
  3. その支出が日常的に使用できるものである場合には、『事業割合』を考慮する。
  4. 記帳、記録は日頃からの記帳、記録でなければ、資料の証拠能力は認められない。

個人の確定申告では、必要経費の範囲を巡って税務署と争いになることが珍しくありません。

インターネットビジネスに関連する支出は、年配の調査官にとって理解に苦しむものが多くあります。

それだけに、自分の価値観に基づく主観的な意見を述べるだけでなく、通常必要なものとして、事業関連性を客観的に示す証拠づくりを日常的に心がけてください。