皆さんは、障害者手帳を持っていなくても「障害者控除」を受けられることがあるのをご存知でしょうか。
「障害者控除」、その単語くらいは聞いたことがあるかと思います。
そう、障害者手帳を持っている扶養親族や相続人がいる場合には、その等級(障害の重度)によって、所得税や相続税から一定の税額控除ができる、という規定です。
一方、世の中には「成年後見制度」というものがあります。
これは、認知症、知的障害及び精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者(成年後見人)を選ぶことで、成年被後見人(援助される者)を法律的に支援するという制度です。
実は、この「成年後見制度」の成年被後見人は、特別障害者(重度の障害者)として、所得税や相続税から一定の税額控除が受けられるのです。ご存知だったでしょうか。
では、なぜ障害者手帳を持っていない成年被後見人が障害者控除を受かられるのか、簡単にご説明いたします。
まず、「成年後見制度」では、成年被後見人となりうる方を、民法第7条により「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」としています。そして、家庭裁判所や医師の診断により上記の状態にあると認められる方は、成年被後見人と認定されることになります。
一方、所得税法上では、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は特別障害者に該当する、と規定されています。しかし、その定義は所得税法上は明文化されていません。そう、具体的な定義はされていませんが、先の後見制度の民法7条と同じ言い回しとなっているのです。
また、相続税法上では、「障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で政令で定めるものをいい、特別障害者とは、障害者のうち精神又は身体に重度の障害があるもので政令で定めるものをいう」と規定しています。そして、その政令には、「所得税法(政令)に掲げる者を相続税法上の特別障害者に該当する」として規定しています。
すなわち、先の所得税法所の特別障害者である「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は相続税法上の特別障害者に該当する、ということになるのです。
そうすると、所得税法上の特別障害者である「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」といものと、「成年後見制度」における成年被後見人となりうる「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」が同じであると定義されれば、「成年後見制度」における成年被後見人は、所得税法上も相続税法上も特別障害者として税控除ができる、ということになる訳です。
ちょっとややこしいですね。。。
もし所得税法上で「民法第7条に規定する精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とでも記載されていれば同じと定義できますが、残念ながらそのような記載にはなっていません。実は、国税庁がH24年8月に、その見解について文書回答をしています。
http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/bunshokaito/shotoku/120831/01.htm
繰り返しになりますが、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」という言い回しが同じなのです。すなわちこれは、所得税では民法での定義を引用しているのは明らかであると考えられます。
したがって引用している以上は、その定義(本質)は同じでなくてはならないものと考えられ、永く疑義のあったこの問題に対し、国税庁が見解を発表したものと考えられます。
皆さんの中には、これまでの所得税や相続税の申告において、成年被後見人である扶養親族や相続人がいたのにも関わらず、この障害者控除を受けていない・・・なんてことはないでしょうか。
実はこのことを知らない税理士も、まだまだ多くいらっしゃると聞いています。
思い当たる節のある方は、過去の申告書を見直してみてはいかがでしょうか。