「は?何を言っているんだ?一杯100円のコーヒーは、誰が買ったって100円にきまっているじゃないか!」
確かにその通りなのですが、ちょっと角度を変えて物事を見てみると、一概にそうとは言えない事実があるのです。言い方を変えてみましょう。
「コンビニの一杯100円のコーヒーを買うには、あなたはいくら稼がなければいけませんか?」
さあ、どうでしょう?
私達は労働によって得た収入から税金を支払い、残ったお金を自由に使うことになります。そして、みなさんご存知のように、日本の所得税は累進課税といって、所得が高い人ほど税率が高くなる仕組みになっています。
つまり、同じ一杯100円のコーヒーを買うにしても、支払う税金を考慮すると、その価値が人によって異なってくるのです。
例えば年収が90万円ほどのAさんであれば所得税・住民税ともに非課税ですので、100円のコーヒーを買うには100円稼げばよいことになります。しかし、年収が1800万円を超えるBさんは所得税・住民税を合わせると50%の税金がかかります(実際の計算は異なりますが、ここでは便宜上50%とします。)ので、Bさんが100円のコーヒーを買うには200円稼ぐ必要があることになります。
Aさんにとって、100円のコーヒーは100円の価値ですが、Bさんにとっては200円の価値ということになるのです。
「そんな当たり前のこと・・・」と言われてしまいそうですが、実際に普段からこうした“税金を計算した思考で行動”している人は多くないはずです。
次に、これに“労働時間”という物差しを加えて考えてみましょう。
あなたは乗っていた乗用車が故障してしまったので、新しく車を買い換えることにしました。車の値段は200万円でした。さて、この車を買うのにどれくらいの時間働かなければならないのでしょうか。
みなさんの年収が仮に500万円で、扶養家族なしであった場合、所得税・住民税・社会保険料を考慮すると、手取りは約400万円ほどになります。一般的な週休2日の企業の場合、年間休日は120日くらい、年間労働日数は250日程度です。1日8時間労働とすると、1年間の労働時間は2000時間になります。
手取り額400万円を2000時間で割ると時給は2000円です。購入する車の値段200万円を2000円で割ると、購入する車は労働1000時間分の価値ということになります。1カ月の労働時間が8時間×20日間=160時間とすると、6ヶ月分以上の労働に値することになります。
6ヶ月分以上の労働に値すると言いましたが、これは生活費などを一切考慮せずに、稼いだお金全てを車の購入に費やすと仮定して出した数字です。実際には私達は税金を支払った後に残る手取り額から、生活費を出さなければなりません。
仮に毎月必要な生活費を30万円として、税金と同じように考えて計算すると、年収500万円の人にとって、税金と生活費を差し引いて残る、自由に使えるお金は年間40万円(手取400万円-生活費360万円)。これを年間労働時間2000時間で割って時給換算にすると、なんと200円にまで減ってしまいます。すると200万円の車の価値は、労働10,000時間分、つまり5年分の労働に値することになるのです。
私達は普段、生活に必要な消耗品であれ、趣味にかかる物であれ、何気なく購入してしまいがちです。しかし、税金などを考慮して自分の1時間あたりの労働価値を算出したうえで、購入する物の価値を算出すると、かなりの価値になることに驚くはずです。
“税金を計算した思考で行動する”ことで、物の価値が、今までとは違って見えてきます。これは経営者の方だけでなく、従業員の方にも是非、知っておいていただきたい考えた方です。こうした思考を身につけることで、物の価値観が変わると同時にコスト意識が自然と高くなり、会社においても私生活においても、必然的に無駄な経費を使わなくなります。是非、実践してみてください。