会社を経営されている方なら一度は経験する事になる“税務調査”。しかし、できることなら来て欲しくない。誰もがそう思うのではないでしょうか。
もしこちらの努力次第で税務調査が免除されたり、調査に来る確率が減らせるなら・・・
国税庁は税務に関する企業統治の体制が優れていると認められる大企業を対象に1~3年に1回行っている税務調査の頻度を減らす新制度を始めたという記事が8月26日の日本経済新聞に掲載されていました。
これは公務員改革などで税務職員が減る中、税に関するコンプライアンス意識の高い企業の調査を省略し、国際的な租税回避灘など複雑化する調査に限られた人的資源を有効活用する狙いがあるとのことです。
現時点では中小企業はこの制度の対象になっていませんが、制度はなくても実際には税務調査で是認(指摘事項がなく、申告内容が適正であること)が続けば、その会社の調査の頻度は間違いなく減ります。調査官の仕事は是認通知を出すことではありません。いかに申告内容の誤りを発見し、修正申告をさせ、追徴課税をするかにあります。
調査に入ったものの、誤りを発見できず是認通知を出すことは言わば、調査に費やした時間で稼いだ売り上げがゼロであることを意味します。2日も3日もかけて売上ゼロでは調査官の査定は下がり、税務署も商売になりません。ですので、調査に入っても修正事項が何も出てこない会社に調査に入ることは税務署にとって単なる人件費のムダ使いということになるのです。
そうなると会社設立後、第1回目の税務調査がいかに重要かわかります。調査結果については全て税務署に記録として残ります。初回の調査で指摘事項がゼロであれば、その後に調査に入られる可能性はグンと減ります。この会社はしっかりしているので調査に入っても“ムダ”であると税務署側に印象付けられるからです。初回の調査後10年以上調査が来ていない会社だって珍しくありません。
一方、初回調査で指摘事項が多かった会社はその後も、コンスタントに調査に入られることが多いようです。税務署側に、あの会社に調査に入れば“取れる”と思われてしまっていることが分ります。こうした会社では3年に1回程度の頻度で調査が入ります。
しかし、初回の調査で多くの指摘を受けてしまった会社も挽回は可能です。次回以降の調査で是認が続けば、調査の頻度は減っていくはずです。
さて、私達の努力で税務調査を減らすことが出来る手段がもう1つあります。
皆さんの申告書には【税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面】がついていますでしょうか。これは「書面添付制度」に基づいて税理士が顧問先の申告書に添付して税務署に提出するものです。
「書面添付制度」とは税理士による申告書の、言わば「品質保証書」であり、「この項目について、この資料を、この程度確認をしていますので、この申告書に間違いはありませんよ。」という内容の書類を申告書に添付し、太鼓判を押して税務署に提出するものです。
この「書面添付制度」には大きなメリットがあります。書面添付を実施している会社への税務調査は、事前に顧問税理士に対して「意見聴取」を行ってからでなければできません。そして、この事前の聴取で税務署が納得すれば実地の税務調査は行われません。もちろん意見聴取をしてもなお、実地調査を行わせて欲しいということもありますが、書面添付を実施することにより、実地での税務調査が省略される可能性が生じます。
しかし納税者にメリットがあると同時に税理士にはリスクも生じます。書面添付をし、確認したはずの範囲に虚偽記載があれば税理士は懲戒処分の対象となるのです。その為、書面添付をしたがらない税理士が多いのが実情で、国税庁が発表した平成23年の法人税の書面添付割合はわずか7.4%とのことです。
税理士への「意見聴取」のみで実地調査が行われなければ、みなさんにとってのメリットは小さくありません。ただし、税理士が「書面添付」を行う前提として、納税者が自社で記帳を行っていることや、月次決算をきちんと行っていること等、会計帳簿に信頼性があることが必須です。適正性に疑義がある会計帳簿には書面添付はできません。
もしも自社で記帳行い、また月次決算も行っており適正な会計帳簿を作成しているにも関わらず自社の決算書に書面添付がされていないようであれば、一度その理由を顧問税理士に尋ねてみるといいでしょう。
いずれにしても、適正な会計処理を普段から行うことにより、税務調査を減らすことができる可能性が高まることは事実です。普段から適正な会計処理を行い税務調査に入られる確立を下げましょう。