どの分野でもそうですが、自分にとって当たり前と思っていたことが、世間一般では当たり前でないということに気づかされる場面があります。
それが、私でいうと『税務調査』のことについてです。
最近、あまりにも“稚拙”といわざるを得ない事案や、経営者の認識に接する機会がありましたので、『税務署がどうやって不正を発見するのか!?』の大原則をお話いたします。
まず、税務署では調査先の選定にあたって、『机上調査』『外観調査』『内偵調査』の3つの手法が用いられます。
本日は、このうち、机上調査についてお話します。
これは、文字通り机の上で行われる事前調査で、いろいろな方法によって集められた情報の付け合わせ作業です。
この机上調査で用いられるのが、今から十数年前に国税が導入した『KSKシステム』です。
ちなみに、KSKとは『国税総合管理システム』の頭文字です。
KSKシステムには、地域や税目を超えて情報が一元管理されており、全国524のすべての税務署がネットワークで接続されています。
毎年提出される申告データはもちろんのこと、調査官が実際に見聞きした情報も入力され、蓄積されています。
KSKシステムを用いた、机上調査の一例を紹介します。
税務署には毎年、所轄国税局からさまざまな法人や個人の取引情報が記載された『資料せん』というものが送られてきます。
資料せんには大きく分けて二種類あります。
法律によって各企業に提出を求める“一般資料せん”と、税務職員が独自に収集した情報からなる“内部資料せん”です。
調査官が特に重視するのは、後者の“内部資料せん”です。
一般資料せんは、国税局や税務署からの依頼によって、売上げや仕入れ、外注費や地代家賃など、一定金額以上の取引について、所定の用紙に記入し、会社の経理担当者が提出するものですので、常識的に考えたら税務調査で問題になるものではありませんし、調査官も重視はしていません。
何故なら、当たり前に『おもてに出てくる取引』だからです。
例えば、「Aさんに地代家賃100万円を払いました。」という資料せんがB社から提出されたとします。
税務署では、このB社から提出された資料せんに従って、Aさんの申告にB社からもらった地代家賃が収入として計上されているのかをKSKシステムで確認します。
一度でも確定申告をしたことがある人は、『納税者番号』が付けられてKSKシステムに登録されていることから、この資料せんの内容に従って、申告がされているかどうかが一目瞭然となります。
今、例にとってお話しましたが、代表者が会社から地代家賃をもらって、それを確定申告していないなどというのは、絶対にやってはいけないことです。
申告をしていない人の中には、「(税務署から)言われたら申告すればいいや!」くらいに思っている方もいるかも知れません。
これこそが大きな間違いです。
その税金に対する考えの甘さこそが、調査官に『この社長は会社ではもっと大きな脱税をしているに違いない!』と思わせる伏線となるのです。
なにせ調査官は『商売人は皆悪人と思え!』と教えられているのですから。
ひとつでもほころびが出れば、調査官の疑いは『確信』に変わります。
一度かけられた疑いはそう簡単に晴れるものではありません。
「これくらいなら分からないだろう?」などの甘い考えは、金輪際捨ててください。
もしも、今現在そのようなズルをしている人がいたら、今すぐ申告をしてください。
日本の国税はそんなに甘くはありません。