悪い税理士

「先生の事務所は、“経営革新等支援機関”ですか?」
この質問は、悪い税理士をあぶり出すための強烈な踏み絵となります。
経営革新等支援機関とは、税務や金融に関する知識や支援経験が一定レベル以上の法人・個人として、国から認定された機関のことをいいます。
(以下『認定機関』。)
その認定機関と付き合うことで、中小企業は、信用保証料の引き下げや、特別償却・税額控除など、様々なメリットを受けることができます。
それでは、具体的にどの位のメリットを享受できるのか、特別償却・税額控除を例として説明していきます。
H25年度の税制改正で、『商業・サービス業・農林水産業活性化税制』が創設されました。 この制度は、認定機関のアドバイスによって取得した固定資産(建物付属設備60万円以上、器具備品30万円以上)について、30%の特別償却または7%の税額控除を認めるものです。
例えば、100万円の設備投資を行い、税額控除を受ければ7万円の節税となります。
200万円の設備投資であれば、14万円の節税です。
このように、付き合っている税理士が認定機関か否かによって、会社に残るキャッシュが変わるのです。
「それにしても、その僅かな節税額だけで、悪い税理士を判断するというのは大袈裟ではないか?」
そのような疑問を持たれた方もいるかもしれません。
確かに、『私(お客様)を大切にしてくれる、様々な情報を教えてくれる、単純に馬があう』など、目に見える節税額よりも大事なことはたくさんありますし、むしろ、そのような定性的な部分を重視して税理士の善し悪しを判断したいものです。
では、なぜ私が今回の認定制度を踏み絵と言い切るのか?
それは、認定機関の認定を受けることが、容易だからです。
もしも、この認定制度自体が高いハードルであり、認定を受けることが難しいのであれば、様々な理由から認定を受けていない税理士がいることでしょう。
「先生は、腕はいいのだが、商売っ気の無さから企業規模を拡大せず、規模基準によって認定から外れた。」
「先生は、納税者第一の信念で、税務調査でも果敢に闘う。その姿勢が(国から見れば)仇となって、国の認定審査において外れてしまった。」
等々。
しかし、繰り返しますが、認定機関の認定を受けることは簡単なのです。
上記のような理由で認定から外れることはあり得ません。
認定を受けている税理士と受けていない税理士の違いは何か、と言われれば、『申請をおこなったか否か』、ただそれだけなのです。
もう少し言うならば、『申請をおこなっていない=仕事を放棄している』と言ってもいいかもしれません。
認定制度が施行されたH24年8月段階で、信用保証料ディスカウントの話は漏れ伝わっていました。
H25年1月に発表された税制改正大綱において、特別償却・税額控除の制度は明記されておりました。
(新聞報道レベルの話ですから、情報リテラシー云々は関係ありません。)
にもかかわらず、平成25年4月26日現在で、認定機関は8,165機関しかありません・・・。(税理士登録者数は73,725人)
認定機関の中には金融機関や、弁護士・会計士も含まれており、また、(分母となる)税理士登録者数の中には勤務税理士が含まれているため正確な数字は算定できませんが、おそらく、認定を受けている税理士は全体の10%~20%といったところでしょう。
認定を受けていない(つまり、申請を怠けている)ことにより、節税できなかった金額について、その税理士はどう言い訳するのでしょうか?
私は、新聞報道レベルの情報も活用できず、お客様の懐を痛めている税理士は、悪い税理士だと思います。
「先生の事務所は、“経営革新等支援機関”ですか?」
私が経営者であれば、必ずこの質問をおこないますね・・・。
※弊社エー・アンド・パートナーズ税理士法人は、認定経営革新等支援機関です。