「掛捨てなんてもったいない!損ですよ!貯蓄型保険が得ですよ!」こんな風に誰かに言われた経験ありませんか?でも、本当に貯蓄型の方が得なのでしょうか?考えてみましょう。
掛捨て保険は契約期間中に死亡や病気、ケガなどがなければ払った保険料は返ってきません。したがって保険料が割安です。これに対して保証に加えて貯蓄もでき、満期になれば満期保険金が受け取れ、一定の期間が経過していれば、解約すると払い込んだ保険料以上の解約返戻金が受け取れたりするのが貯蓄型保険になります。貯蓄型の保険としては終身保険、養老保険、個人年金保険などがあります。当然掛捨てに比べて保険料は高くなります。
予定利率という言葉をご存知でしょうか?予定利率とは保険会社があらかじめ約束する利率(運用利回り)の事です。つまり、この予定利率が高いほど元本となる保険料は安く済むわけです。
この予定利率、20年ほど前までは終身保険の場合、5.5%と高く、保証と貯蓄の両方の機能を兼ね備えていました。しかし、現在の予定利率は1.5%程度となっています。また、4月から金融庁が予定利率の目安となる標準利率を1.5%から1%に引き下げたため、保険会社各社も予定利率を引き下げます。ということは、保険料は上がり、貯蓄性はさらに低くなります。
貯蓄型という名前に惑わされてしまうことが少なくありませんが、どのような保険にも必ず掛捨ての部分があります。貯蓄型の場合、掛捨て部分に貯蓄分の保険料を上乗せするため、当たり前ですが高くなります。
予定利率が極めて低い今、要するに自分で貯めるか、割高な保険料を支払って保険会社に任せるかの違いになります。しかし、ここでの大きな違いは、その貯蓄したお金の“自由度”です。
当然、自分で貯蓄しているお金に関しては、いつでも自由に使うことができます。その資金を使って投資することも、急な予期せぬ出費にあてることもできます。
しかし、保険を使った貯蓄の場合、払込保険料以上の返戻金を受け取るには、一定期間以上、保険料を払い続けることが必要となります。何らかの理由でお金が必要になり、中途解約すれば保障を失い、さらに払い込んだ保険料の総額よりも少ない解約返戻金しか受け取れないといったこともあり得るのです。
保険の目的をいま一度考えてみましょう。やはりそれは万が一の時の「保障」でしょう。
20年前と現在では状況が全く違います。「保障」と「貯蓄」は分けて考えるべきなのです。
今回は個人の保険を取り上げましたが法人でも同じです。保険は本来、社長さんに万が一のことがあった時に、会社や家族を守るためなどに備えるものです。
節税を目的としても、それは結局“利益の繰延”でしかありませんし、何よりお金が出てしまいます。その時に税金を払わなくて済む代わりに保険料を払うことによって、お金はなくなります。
解約返戻率の高い保険であっても、返戻率のピークまではやはり一定期間以上の払い込みが必要で、その間お金の使い道は保険料の払い込みにロックされてしまい、投資にも、いざという時の使途にも回せません。退職金準備など、出口の戦略がきちんと出来ていれば、もちろん使い方によっては有効であることも事実ですが、今、目の前のお金が流出していくことも事実なのです。
ご存知のように中小企業の法人税率は随分下がりました。特に800万円までの所得であれば、所得の4分の1ほどの税金を払えば、残りの4分の3のお金は手元に残せます。残ったお金は貯蓄にしろ投資にしろ自由に使えるということです。
もちろんお金が出ない節税方法に関しては別ですが、800万円までの所得に対しては節税対策を講じる必要は無いと言っても過言ではありません。
800万円までは積極的に利益を出し、内部留保(貯蓄)を厚くして財務体質を強固なものにしましょう!