『税理士セカンドオピニオン』とメールマガジンのタイトルを変えてから3カ月が
経過しました。
たまにはタイトル負けしないような内容もお伝えしなければと思い、地方の方
から特にご相談が多い「税理士の探し方」について触れてみます。
とはいえ、これを真正面から取り上げても、抽象的な話で終わってしまいます。
あるいは、具体的過ぎてメルマガでは書けません・・・。
そこで、今回は都道府県別の下記データを用いて考察してみます。
(1)税理士事務所数(公認会計事務所を含む)
(2)企業等数(個人事業を含む)
(3)1税理士事務所当たり企業等数
(4)1税理士事務所当たり県内総生産
(5)1km2当たり税理士事務所数
まずは、下記表をご覧ください。
このデータから税理士の探し方の何が分かるのか?
お客様からお話を伺うと、税理士を探すポイントは大きく分けて次の3つです。
・税理士報酬は高くないか?
・頼みたい税理士事務所は近くにあるか?
・希望するサービスを行ってもらえるか?
■税理士報酬は高くないか?
どの業種においても競争相手が多いほど価格が下がるという理屈はご存じの通り。
つまり、税理士事務所が多い地域ほど、その報酬も低くなるという図式が成り立ち
ます。
税理士事務所が多い上位3地域は、東京、大阪、愛知(データ(1))。
とはいえ、この3都府県は企業等の数も上位3位を占めるので(データ(2))、一概に
税理士事務所が多いとは言えません。
そこで、企業等の数を税理士事務所数で割ったのが、「1税理士事務所当たりの
企業等数」(データ(3))。
東京、大阪、愛知は見事に下位3位に沈みました。
1税理士事務所当たりのお客様の数は少なく、それだけ競争が激しいと言えます。
ここで最初の理屈に当てはめて考えてみると、この3都府県の税理士報酬は
“意外と高くない”可能性があります。
その補完データとして「1税理士事務所当たり県内総生産」(データ(4))をご確認
ください。
県内総生産とは国民総生産(GDP)の都道府県別のようなもので、これを税理士
事務所数で割ってみました。
データ(3)と同じように、大都市地域の1税理士事務所当たりの県内総生産は下位
に沈み、お客様の数が少ないとともに、お客様の企業規模合計も少ないと推定
できます。
これが大きければ、数は少なくても比較的規模の大きな会社が多く、1企業当たり
の報酬も高いという図式が成り立つはず。
「いやいや、東京の税理士事務所の報酬は高いよ!」
という方もいらっしゃるでしょう。
当然、大都市に拠点を構える一部の大手税理士事務所は非常に高い報酬を
取っています。
こういう事務所はもともと大規模企業のお客様が多いため、人件費の高いスタッフ
を雇い、一等地に事務所を構えているからです。
もし、中小規模事業者がこのような税理士事務所に顧問を依頼すると高くつきます。
これは、企業の規模に照らして相対的にという意味です。
つまり、大都市地域の大手以外の税理士事務所は、その競合状況から、企業の
規模等に照らして報酬は低めに抑えられていると考えます。
当法人は東京と新潟に事務所があり、全国のお客様の相談を受けているので、
かなりの地域の報酬相場を把握しています。
正直なところ、大都市地域と地方の相場は同等レベルです。
例えば、東京の税理士事務所に頼むのならば“大きなところ”というのが盲点で、
地方と同じような感覚で探せば、数は多いし、報酬も変わりません。
■頼みたい税理士事務所は近くにあるか?
やはり、税理士事務所は“近くがいい!”というニーズは根強いです。
“近くがいい”だけならば問題はないのですが、これが“近くて、良い”税理士事務所
と続くので厄介です。
こうなると、大都市地域は狭いエリアに数多くの税理士事務所があるので、“近く
の”税理士事務所は探しやすいと言えます(データ(5))。
しかし、“良い”税理士事務所に巡り合えるかどうかは、“宝くじで1万円が当たる
くらいの確率”です。
当たる人には当たるけど、当たらない人には当たらない・・・。
だから、税理士事務所も当たるまで“買い続ける”のが現実的。
また、近くにないのなら、遠くに買いに行けばいいのです。
それも、隣県ではなく、思い切って大都市地域へ。
地方の方も、宝くじを西銀座チャンスセンターに買いに行くように!
そして、こういう声もよく聞きます。
「税理士が来ない」
もちろん、毎月来てくれる“近くて、良い”税理士事務所が見つかればベストです。
これが探せないのであれば、“遠くて、毎月来ないけど、満足できる”税理士事務所
を探してください。
これであれば、どこの地域の税理士事務所でも問題ないはず。
ちなみに、当法人は東京と新潟に事務所を置いておりますが、顧問契約を結んで
いるお客様の所在地域は15都府県です。
セカンドオピニオン契約を合わせると倍近くになります。
当然、遠隔地のお客様は近場のお客様に比べれば訪問頻度は下がります。
しかし、当法人を含め、遠隔地のお客様と契約しているような税理士事務所は、
訪問しなくてもサービスを提供出来るようにと工夫も行っております。
このような税理士事務所も大都市地域に多く、WEBで探しやすいはずです。
“近くて、良い”から“遠くても、良い”と基準を変えるだけで、税理士事務所の選択肢
も飛躍的に増加します。
■希望するサービスを行ってもらえるか?
昔の税理士事務所は、ほどほどの報酬で“何でも”やっていました。
しかし、近年は税理士事務所もメニュー化が進み、最小構成単位で仕事を依頼
すれば報酬は安くなります。
特に大都市地域の税理士事務所ほどメニューの細分化が図られ、少しでも報酬を
安くしてお客様を取り込もうと懸命です(東京、大阪、愛知はこの傾向が顕著です)。
これに比べ、地方の税理士事務所はまだ“何でも”の傾向が強いと言えます。
“何でも”だから、サービスが陰に隠れてしまう場合もありますので、まずは今の
税理士事務所に、「このサービスをやって欲しい」と明確にお伝えしてください。
意外とこれを言わない方が多いのも事実。
言ってダメだったら税理士事務所を変えざるを得ませんし、言うのが嫌であれば、
やはりメニュー制の税理士事務所の方が依頼しやすいのではないかと考えます。
とはいえ、気をつけなければならないのは、メニュー制を取り入れている税理士
事務所に“何でも”頼むと総額はかなり膨らんでしまうという点です。
最近は“顧問料なし”の税理士事務所も増えてきましたが、これにもカラクリが
あって、“顧問料あり”のときと同じような仕事を依頼すれば、むしろ報酬が高く
なる仕組みです。
その実態は、お客様のためというよりも、事務所の経営効率を高めるための場合
も多く見受けられます。
また、サービスメニューが多彩という事と、サービス品質が高いかどうかは別問題
です。
これも、税理士事務所という宝くじを買い続ける事によって“当たり”を探さざるを
得ません。
以上、なんだか大都市地域の税理士事務所が良いと推奨しているようになって
しまいましたが、そうではありません。
地方の方からの「良い税理士がいない」というご相談に対し、圧倒的に税理士
事務所が多い大都市地域も選択肢に入れる事によって、「税理士の探し方」に
幅が出る事をお伝えしたかったのです。
競争が緩い地方の税理士事務所は寝ている所が多く、昔からのお客様が多い
ので、口で言うほど危機感はありません。
危機感がなければお客様へのサービス向上など期待できませんので。
是非、皆さんに税理士業界をたたき起していただきたいです(笑)
【参考】
今回用いたデータは、統計局の統計データ「平成21年度経済センサス基礎調査」
です。
『政府統計の総合窓口』というサイトがあり、ここで様々な統計データを調べる事が
出来ます(URL:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do)。
私も今回このデータを加工していて、この地域に新しく事務所を出したら結構行ける
んじゃないかと思ってしまいました。
エリア戦略等、使いようによってはおもしろいのではないかと考えます。