銀行から融資を受けている経営者の方であれば、他社はいったいどれ位の金利で融資を受けているのか?そもそも今支払っている金利は適正なのか?ひょっとして払い過ぎてるんじゃないか?等々、低金利時代とはいえ、会社にとって削減したい固定費の代表格ともいえる金利について考えたことのない方はいらっしゃらないでしょう。
皆さんの会社が支払っている金利が適正額かどうかは個々の会社の状況等によりますので、ここで判断することはできません。しかし、支払っている金利が表面上の金利ではなく“実質”どれくらいであるかを皆さんが計算、把握することで、銀行との金利交渉が有利に運ぶ可能性があることを、今日は知っていただきたいのです。
皆さんの会社が融資を受けることが決まると、銀行の担当者が約束の日時に現金を持って現れ・・・などということはありませんよね!?
そう、約束の日に預金通帳に数字が書き込まれるだけです。もし、その口座のお金を皆さんが全く使わず置いておいたとすれば、銀行は全くお金を動かしていない、つまり貸していないのと同じことになります。
もう少し具体的に考えてみましょう。
皆さんの会社が金利2%で3000万円の融資を受けたとします。そのうち2000万円は新商品の仕入れに使い、残った1000万円が預金口座に残っています。
ということは、前述の考え方によれば皆さんの会社が実質的に融資を受けている金額は3000万円から預金口座に残っている1000万円を引いた2000万円ということになります。
さて、では皆さんの会社が払っている本当の金利はいくらなのでしょうか?
便宜上、細かい計算は省略しますが、支払っている利息は3000万円×2%で60万円です。
残った1000万円を預金口座に入れていることによって、受取利息が発生しますが、少額ですので、ここでは無視します。
すると皆さんの会社は実質的に融資を受けている2000万円に対して60万円の利息を支払っていることになります。そう考えると、つまり60万円÷2000万円=3%の金利を負担していることになってしまいます。
金利2%で借りたはずが、実は3%で融資を受けたということになってしまうのです。
この実質的な融資の金利を「実質金利」といい、計算式は次のようになります。
実質金利=(支払利息-受取利息)÷(借入金-預金)
ちなみに当たり前のことですが、預金残高が多ければ多いほど実質金利は上昇します。
銀行の担当者から「得意先からの売掛金入金口座をうちの銀行に指定してくれませんか」と言われたことありませんか?
その理由の1つがこの実質金利です。銀行サイドに立ってみれば、融資を実行していても自行の口座に多く預金してもらっていれば、実質貸していない部分に対しての金利をも受け取ることができる、すなわち実質金利を高くすることができるのです。
こう考えると、途端に損している気になってしまいがちですが、事業を円滑に進めるためには必要最小限のキャッシュではなく、多少のゆとりをもったキャッシュを確保しておくことが不可欠です。そのため、ある程度の「実質金利」の負担は「保険料」として割り切る必要があります。
しかし、この「実質金利」を把握することが、銀行との金利交渉において具体的な根拠として役に立つのです。
「契約上の表面金利は○%だけど、うちは取引先からの入金口座を○○銀行さんに指定しているから預金残高も多いですよね?そうすると実質金利は○%くらいのはずです。もう少し金利を下げてはもらえませんか。」といった具合です。
業績不振であったり、すでに適正金利で融資が行われている場合は交渉の余地はそれほどありませんが、業績好調にも関わらず1ヶ所の金融機関のみから、高い金利で融資を受けている場合等には積極的な金利交渉による適正金利への引き下げが可能になります。
適切な知識武装をすることで、皆さんを悩ます固定費の1つを占める金利を下げることができるかもしれません。
是非、皆さんの会社の実質金利、計算してみてください。