「ごめんください。」
「はーい、いらっしゃいませー!」
「○○税務署法人課税部門の柴沼と申します。」
「はぁ、税務署の方?」
「はい、株式会社○○の代表者の△△さんですか?」
「はい、そうですが・・・」
「本日は株式会社○○の法人税の調査にお伺いさせていただきましたので、ご協力ください。」
ある日突然、皆さんのお店に税務署職員が調査に来ました。さあ、皆さんならどう対応しますか?
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平成23年度の税制改正により国税通則法の改正が行われました。なんと約50年ぶりの改正です。
国税通則法とは国税に関する基本事項、共通規程を定める法律なのですが、法人税法や所得税法などの税法と比べて馴染みは薄く、その存在を知らない方も多い法律です。
さて50年ぶりの改正の中身ですが、その1つとして税務調査に関する規定が法定・明文化されました。(2013年1月から施行)以下にその内容を記載しておきます。
・納税者に調査開始日時、場所、目的などを事前に通知する。
・納税者から合理的な理由があって調査日時などを変更するよう求められたら、税務署は納税者と協議する。
・調査の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあれば、事前通知は必要ない。
税務調査は納税者に調査日時・場所、目的などを事前に通知し、納税者の合意を得て行うのが原則です。税務調査を受けた事のある方なら、ご存知だと思いますが、税務調査日の約2週間程度前に顧問税理士に連絡が入り、日程調整をするのが一般的です。
この流れは調査の現場では、ほぼ定着していますが、今までは法定されておらず、今回確認の意味で明文化されたものです。
あれ!?でも、うちの会社の税務調査は通知なしに突然来たぞ!
こんな経験をお持ちの方は、きっと飲食店等の現金商売を営む方に多いはずです。
飲食店など現金商売の業種では事前通知なしで税務調査に来ることが少なくありませんが、今回の改正で、事前通知することにより違法又は不当な行為を容易にし、調査の適正な遂行に支障をきたす恐れがあれば、通知なしの税務調査も可能であることが明文化されてしまいました。しかし、同時に合理的な理由があれば日時変更が可能である旨も定められたのです。
所轄税務署による通常の税務調査は任意調査ですが、いくら任意とはいえ正当な理由なくして拒むことはできません。しかし、事前通知なしの税務調査については、業務に支障をきたす恐れがあったり、仕事・私的な用事を問わず予定があれば、その旨を伝えて日時を変更してもらいましょう。今回の改正において明文化されているように、それで全く問題ありません。
ある日突然、店先や自宅に税務調査官が現れたならば、まずは落ち着いて顧問税理士の先生に連絡を取り、できれば電話を代わってもらい調査官と直接話してもらってください。
その間、調査官には玄関や応接室等へ通すなどして待っていてもらいます。何か聞かれたり、資料の提示を求められても、顧問税理士の先生に連絡を取るので待って欲しいと伝えましょう。強制調査であれば別ですが、任意調査であれば、調査官は納税者の許可なく帳簿書類等に触れることはできません。
皆さんにとって大切なのは税務調査ではなく、お客様です。通知なしの税務調査に対応するために、お客様に失礼があったり、業務に支障をきたすようなことがあってはなりません。改めて日程調整のうえ税務調査に応じる旨を伝え、ひとまずお帰りいただきましょう。
日程調整については、顧問税理士の先生に希望日を伝え、交渉は任せてしまいましょう。
繰り返しになりますが、そもそも所轄税務署による一般的な税務調査は任意調査です。任意にも関わらず、現金商売だからという理由だけでの事前通知なしの税務調査が認められるのであれば、もはやそれは任意調査ではありません。
法律の名前も条文も覚えなくて大丈夫です。予告なしの突然の税務調査は、正当な理由があれば日時の変更が可能。これだけ覚えておいて下さい。